BRABUSエンブレム 下塗り

brabus15業者さんからの御依頼で「赤」を塗る仕事があったので、序にこちらのブラバスのエンブレム二個も一緒に塗る事にしました。ちなみに業者さんから御依頼頂いた赤はVWの赤で、こちらはFERRARIの赤(「ROSSO CORSA」カラーコード:322)となります。違い赤ですがどちらも下色を塗ったりするので一緒に塗った方が断然効率が良いのです。

brabus16 こういった凹んだ部分の足付け処理は物理的に難しく、アルミなどの金属であればサンドブラストと言う方法もありますが、今回の部品はどちらもプラスチック製で、且つ下地(既存の塗膜)はそのまま残すので#800よりも粗い傷は付けるとマズイのです。

と言うことで最初はいつも通りペーパー(のような布状の研磨副資材)を使って足付け処理をし、最後にナイロンブラシとウォッシュコンパウンドを使ってペーパーが届かなかった箇所を処理します。イメージとしてはウェットブラストみたいな感じですかね。ウォッシュコンパウンドには研磨粒子が入っているのでそれを付けてブラシで擦るだけでも足付け効果はあり、ついでに隅まで脱脂処理もしてくれます。業界では有名な「ハジキシラズ」ですね。

brabus18そして最後にシリコンオフでよく脱脂したらプラスチックプライマーを塗り、下色として「白」を塗ったら赤を塗ってクリアーで仕上げます。

ちなみに御依頼内容はこれを赤単色では無く「黒と赤」でご指定頂いています。赤になるのは上面のみでそれ以外の箇所は「黒」になるのです。

これとは逆の順番でも出来ない事は無いのですが、商業的な塗装では「最短距離でもっとも良いと思う仕上がり」が理想的な道筋となりますので、今回はマスキングでは無く「研ぎ出し」の方法で赤と黒を塗り分けることにします。といってもそんなに難しい事では無く、材料さえ揃っていれば誰でも出来るような簡単な方法です。コツは下塗りにクリスタルクリアーを使う事ですかね(耐擦り傷性と耐溶剤性に優れたクリアーならなんでも大丈夫です)。

それでは作業進行しましたらまた紹介させて頂きます。少しの間この状態で寝かしますので(出来る限り硬化させたいのです)次の作業はちょっと先になるかも知れません。どうぞもう少々お待ち下さいませ!

リカンベントカウルパネル 素地調整

cover10 ようやく裏側の補強が完了したので塗装の為の作業に入ります。ここまで来るのに随分と時間が掛かってしまいましたが、何とか塗膜が保持出来る程度までにはしっかりと出来たので安心しました。本当は素材が判らない物に関しては手を出さない事が懸命な筈なのですが、結局なんだかんだ言ってやってしまうんですよね。勿論その為の費用をオーナー様がご納得して頂けると言うのが前提ではあるのですが(毎回すいません・・・)。

cover11実は傷以外にエクボ状の窪みやピンホールなどが結構ありまして、本当は全体にパテを塗って研ぎ出したいところですが、使用用途を考えるとさすがにそれはマズイですので(相当重くなります)、今回はサフェーサーで均す程度に済ませるようにします。勿論軟化剤を入れてフレキシブル仕様にします。

ちなみにこの素材ですが、あれだけ柔らかかったのに切削性は比較的良く、素地調整として#180のダブルアクションサンダー(+スポンジパッド)で全体を研磨しましたが、ポリプロピレンやポリエチレンのように毛羽立つ事も無く綺麗に足も付きました(足が付く=「足付け処理」の事で、被塗面に傷を付けて投錨効果が得られるようにする事です)。ポリカーボにしては柔らか過ぎるのでPVC(塩ビ)?でしょうか。

しかしこの光景どこかで見たような・・・と思ったら実際に見た物では無く私の頭の中にあったイメージで、村上春樹氏の著書IQ84に出て来たあの大きな「繭」でした(これなら解りますかね・・・)。

とりあえずこれ単体では無く、他にサフェーサーを塗る物が揃ったらタイミングを合わせて一緒に塗りたいと思います。そろそろ並行してフラッグポールも着手致します。どうぞもう少々お待ち下さいませ!

キャブカバー結晶塗装 完成

cab3 結晶塗装は1液性の焼付硬化型なので(メラミン樹脂です)、硬化剤を入れなくても150℃程度の熱を掛ければそれで完全硬化となります。常温なら固まらないので、極端に言うとスプレーガンを洗わずとも一日中塗っていられるのです(まあノズル周りが汚れるのでそうもいかないと思いますが)。

ちなみに主剤と硬化剤を混ぜて硬化する2液型の塗料は可使時間が決まっているので、今の季節ならスプレーガンにクリアーを二時間も入れっぱなしにしていればもう塗料は出て来てくれません。ガンの中で固まってしまうのです(怖)。

ただしウレタン系の塗料であれば常温でも硬化しますので(私はそんな事はしませんが)、プラスチックのパーツなどが付いた状態でも塗装~完全硬化する事が出来る、といったメリットはあります。完成した車両を後から補修する場合にウレタン系の塗料が使われるのはそういうことでして、まさか全てのプラスチック部品を取り外すなんて事はとても現実的ではありませんので・・・。

cab2結晶塗装の特徴としては「熱を入れてみないとチヂレ目がわからない」と言うことで、塗っている時には単なる艶有りにしか見えませんからその辺りが慣れないとちょっと難しいかも知れません。「とにかく乗せればチヂれるから」といった塗り方であればその辺は余り深く考えなくても良いのですが(私も最初はそうでした・・・)、仕上がった時のチヂレ目の事まで考えるとこれが結構難しくなってきます。私の場合も未だ毎回戦々恐々な思いで結晶目の出現を見守っている程でして(笑)。

尚、この「チヂレ目」は塗り方に大きく依存していて、塗膜が厚ければチヂレ目が大きく、少なければ細かくなるのが特徴です。ただし塗り足り無いとチヂレ目すら出てくれない場合があるので、それを懸念して余計にタップリ塗りがちになる所もあります。今回のような小さい部品でそこまでタップリ塗ってしまうとそれはもう異様な光景になってしまいますから、今回のような小さな部品だとその辺の調整が難しくなるのです。

ちなみに現在別件で現在お預かり中のロードスターのヘッドカバーは、最初に依頼した塗装ではその結晶目のムラが強かったらしく、今回改めて当店に御依頼頂く事となりましたが、出来上がって戻ってくるまでは仕上がりが判らないので判断は難しいですよね。施工例としての画像だけを見れば当然一番良い仕上がりのものを載せる訳ですし、またはRAW撮影をすれば後からソフトを使って加工も出来たりする訳でして・・・。

cab4私もちょっと前からRAW現像を楽しむようになりましたが、これをすると余りにも元画像から逸脱するような素晴らしい画像(笑)にも出来てしまうので、仕事でこれを使うのはちょっと反則な気もしますからここで紹介しているのは余程何かの間違いが無ければ全てJPEG画像になります(時々カメラの設定をRAWにしたままで撮ってしまう事がありまして・・・)。代わりに「社外記」の方で紹介している画像のその殆がRAWで撮影したもので、それらはかなり弄っていますから元画像はとてもじゃありませんが見せられ無い程になっていたりします(笑)。

それでは後ほど完成のお知らせメール差し上げますね。この度のご依頼、誠に有難う御座いました!

バイク用キャブカバー結晶塗装 本塗り

cab5 先日お預かりしておりましたバイクのキャブカバーです。丁度業者さんからの御依頼で結晶塗装を塗る仕事があったので一緒に行いました。画像はリン酸処理が施された状態です。

cab6いつも通り最初にプライマーを塗布します。リン酸塩皮膜自体に耐食性はありますが、さらなる防食効果と上塗り塗料(今回の場合は結晶塗装)の密着性を確保する為にはプライマーの塗装は必須です。最初の数年は大丈夫でも一旦剥がれ出したらもう止められませんので・・・(全て剥がしてやり直しです)。

cab7そして本塗り完了です。部品が小さいのでいつもの通りタップリ塗ってしまうと結晶目がクドく汚い仕上がりになってしまうので、シンナーの希釈率を上げて膜厚を気持ち薄めにして仕上げます。ちなみに膜厚が薄過ぎると今度は十分にチヂレ目が出てくれないので、小さい部品はこの辺のさじ加減が結構微妙になってきます。余程大きいヘッドカバーの方が楽だったりするんですよね・・・(実際塗り直すようなケースも小さい被塗物の場合が多いです)。

実は本塗りを完了したのは数日前で、既に完成もしていますから後ほどそちらの画像も紹介します。業者さんに納める方は納期が指定されていて、そちらはちょっと急いでいたのでこちらのアップが遅れてしまいました。結晶目は綺麗に並んでいると思いますのでそちらはご安心下さい。