BRABUSエンブレム 本塗り

brabus22 先日フェラーリの赤(カラーコード:322)を塗ってクリアーまで塗っておいたブラバスのエンブレムバッジです。全体に足付け処理を行いよく脱脂洗浄をしたらいよいよ本番(二回目)の塗装となります。

brabus23 まずは全体にベースコートの黒を塗ります。外資系の塗料の多くはベースコートには硬化剤を入れず、かといって1液性と言う事では無く「クリアーの硬化剤分がベースに浸透して2液反応を起こす」といった2K塗料、所謂「2Komponent」と呼ばれるタイプです(DUPONTは駄目ですよ。笑)。ちなみにコンポーネントは「C」ではなく「K」で間違いないらしいです。以前ちゃんとした資料を頂きまして読破しましたがちょっと上手く伝えられませんのでこの辺は割愛させて頂きますが、とにかく使い勝手の良いシステムになっているのです。

ちょっと専門的な事になりますが、昔の塗料はクリアーをいきなりタップリ塗るとその下に塗ってあるベースコートを溶かしてしまい、ソリッドなら大丈夫(らしい)のですがシルバーなどのメタリックだとこの粒子が動いてしまい、所謂「戻りムラ」なる現象が起きて大変な事になっていたのです。といっても私はその時代は知らないのですが・・・(気になる方は「中沖名人」の書籍を読むと判るかと)。

私がこの塗装業界に入ったのが丁度外資系が本格的に参入してきた時代で、それまでハーバーツやシッケンズ、PPGなどはありましたが余り使いやすい塗料では無かったようで(私的見解で一応後者2つは使いました)、その時入ってきたDUPONTは本当に使い勝手の良さと仕上がりとのバランスがよく、まだ見習い中の私としても目からウロコの出るような良い塗料でした(後に痛い目を見るのですが。笑)。

それらの外資系塗料は一発目からでも全く気にせずタップリクリアーを塗れるので比較的簡単に艶のある仕上がりが出せて、しかも余ったベースコート塗料は容器に戻して再利用出来ますから作業性も抜群だったのです。対して戻りムラが生じやすい塗料はクリアーをドライコートで塗らなければならないので、仕上がりは非常に艶の無い、極めて私的な感想ですが「今から塗るんですか?」と思うくらいの凄い状態なのです。なので塗り肌を気にする塗装屋さんは一旦そこでクリアーを研ぎ出し(「中研ぎ」です)、もう一度クリアーだけを今度は「ウエットで」塗ったりしていたそうです。ただクリアーは10:1が主流だったので硬化するのも早く研ぐのも楽だったので今のクリアー程面倒な事では無かったらしいですが(私もパナロックの10:1はバイト先でずっと使ってました)。

と、マニアックな業界の話になってしまいすいません。とにかく今使っているSTANDOXは素晴らしいと言う事です(笑)。こちらも私的見解ではありますがDUPONTからSTANDOXに変わった人なら誰もがそう感じていると思いますので。

brabus24 ベースコートの黒がしっかり乾いたら(前記の事からしてこの時点では「硬化」ではありません)、最初はシンナーを使ってある程度ふき取り(!)、その後ペーパーで削って上面の黒を完全に除去します。残すとどこからやり直しになるのか考えるのも恐ろしいのでここは何度も念入りにチェックしておきます。

ちなみに下に塗ってある赤とクリアーは完全硬化しているのでシンナーでは取れません(溶けません)。ただし長時間浸しておくと「チヂレ」が起きる可能性はあるのでその点に注意します。その後に掛けるペーパーも然りで、先日紹介した「耐溶剤性・耐擦り傷性に強いクリアーであれば」とはこういう事です。10:1のクリアーだとちょっと怖いですよね・・・(赤が取れたら終了です)。

brabus25 そしてよくエアーブローして不純物(研ぎ粉やホコリ)を飛ばしたらクリアーを塗って本塗り完了です。塗装屋としてよく見てみても元々黒が塗ってあったとは判らない仕上がりに出来ていると思いますのでご安心下さい。

brabus26こちらは一回り小さい方ですね。微妙に形が違います。

今回はこういった手法でしたが、一旦塗った黒を拭き取るのでは無く、「マスキングシートを作成して黒を塗る」と言う方法も出来なくはありません。ただしこの形にピタリと合うマスキングシートを作る為にはまずデータの作成が必須で、それにはかなりの時間と手間(と費用)が掛かりますからそれを選ぶのはナンセンスなのです。ただし場合によっては「そんな単純な事にそこまで手間を掛けるの?!」と言う事もあって、まあこの辺は何が正解かは判らないところがあって、実際に行う作業者の考えによる所が大きいと思います。私的にはシルク印刷をマスターしたいんですけどね(上記リンク先の作業がそれなら簡単に出来るのではと思っています)。

今回のこの作業は私的には最短距離で理想的な最終形に出来たと思いますが、他にもっと良いやり方はあるかも知れませんし、例えば3Dスキャンして3Dプリンターで作ってクリアーだけを塗るとか・・・なんて事も例え話じゃなくなると思います。3Dスキャンしたデータがラスターデータからベクトルデータに変換し、さらに色々なところから自動的にデータを収集してそれを作る意味(意義)を理解しつつ修正してくれれば人間では到底敵わないと思いますので・・・(私の老後の仕事が・・・笑)。

長々とすいませんでした。完全に帰り時を見失ってしまっておりまして(台風だというのに何かを間違えて自転車で来てしまいました・・・苦)。

それでは完成次第改めて紹介させて頂きますね。もう少々お待ち下さいませ!