スバルWRX S4エンジンカバー 下準備

 先日STIのチェリーレッド色を作成しておいたスバルWRX S4の樹脂製エンジンカバーです。

 裏側には遮熱の為のシートなどが貼ってある為、汚れないよう養生しておきます。外そうと思えば外せない事は無いのですが、各固定部は溶着されているので基本的に外れない(外さない)構造です。

 表側も同様に、塗らない部分は汚れや傷が付かないよう早めに養生しておきます。

 ちなみにエンジンカバーの向かって左側にはダクト穴が空いていますが、

 右側は塞がっています。代わりに水抜きの為の小さい穴が空いていて、さらにそこからは裏に貼ってある遮熱材の白が見えます。一体何故…。

尚シルバーに塗るのはフィンの部分のみで、その周りの枠は塗装せずそのままとします。今更ですが、ここをマスキングするのですが・・・と。

 そしてこちらは先ほどのエンジンカバーの中央に着くエンブレムプレートです。

 メッキっぽくなっているのは凸状になった天面のみで側面部分は黒くなっていますが、ここもマスキングして塗らず、チェリーレッドに塗装するのは底面のみとします。

 ちなみに先ほどのフィン部分ですが、手作業でマスキングするとこういった感じとなり、さらにカーブを緩やかにするとこの倍はマスキングテープを貼っていかなければなりません。しかもそうなるとマスキングテープの厚みで隙間が出来、綺麗には塗れないのです。

 そして何故か貫通していない向かって右側のダクト穴(風)の部分ですが、ここも手作業でカーブした個所を綺麗にカットするのには物理的に難しい為、

 境界線をある程度トレースしたら一旦剥がし、クリアーファイルに貼ってスキャナーで読み込みます。

それを基にソフトを使って美しいベジェ曲線を描き、

 貼ってはデータを修正してを繰り返しマスキングシートを作成します。

「そんなのカッターで直接切れば良いんじゃ」と思うかもしれませんが、補修塗装(所謂「板金塗装」)の現場でそういった方法はタブーなので、そういう発想は余り無いのです。

と言うか一般的な板金塗装の現場で、見習いの時期に塗膜にカッターの刃を入れたりしたら後ろから頭を思いっきり叩かれても仕方ありません。叩かないにしても怒鳴られるのが普通で、「直す」と言う塗装である以上塗膜や被塗物に刃を入れるなんて通常あり得ません。

ただしカスタムペイントはそういった趣向では無い為、逆にそこは気にしないのが普通なのかも知れません。私の場合は、と言う事です。

 そしてようやく下地処理です。念の為ですがこれらのマスキングは足付け処理の為の物で、本塗り用のそれとは別の作業となります。

 今回は下地(サフェーサー)は無しで直接上塗りを行う為、ペーパーでは無くスコッチ(#800)とウォッシュコンパウンド(とナイロンブラシ)のみで足付け処理を行います。

 裏の防熱シートを汚したくはないので、本来なら水を使わない「空研ぎ」で行いたいところですが、今回塗る色はシルバーで、この色はペーパー目が非常に目立ちやすい色でもありますから、足付け処理は慎重に&しっかりと行う為に水を使ってのこの方法としています。

濃色系やソリッドカラーならペーパー目は余り気にならないので空研ぎで行っていたと思います。

 逆にこちらはそういった理由では無く、ペーパーでは角までしっかり足付け処理が出来ない為、ナイロンブラシとウォッシュコンパウンドを併用して足付け処理を行います。同じようなやり方でもそれぞれ理由が違います。

 見切りのラインを美しく仕上げるのにはマスキングテープの種類や貼り方・剥がし方が重要となりますが、それ以上に密着性=足付け処理も重要な為、この辺はしっかり行っておきます。

足付け処理が終わったら、ウォッシュコンパウンドを残さないよう綺麗に洗浄します。

ちなみに当店が好んで使っている「ハジキシラズ」は比較的良いと思って使っている物なのですが、混ぜ物が無く研磨粒子が小さい為か「足付け」としての効力は比較的弱めとなっています。スコッチが古くなってくると(付着していた研磨粒子が取れてしまうと)それに伴って足付け効果も弱くなります。

対して関ペなどのウォッシュコンパウンドは「反応型」と銘打ったりしていてそれ自体で威力が強く、スコッチが古かろうが、そもそも研磨粒子が付いていない物だろうが(そういうのもあります)、かなりの足付け効果が期待できます。

ただしそういった作業性が良い反面、拭き残しなどがあるとその跡が残ってしまう事があり、私的には好きではありません。今は作業中に電話が鳴っても無視する事はありますが(こういった理由からです)、そうもいかない現場ではこれが致命的になる事もあります。

今は判りませんが、ソーラーのコンパウンドは塗膜を柔らかくする成分が強い為か、塗膜に乗せっ放しにするとその跡が残ってしまい大変な事になります(と言ってもこれはそもそものやり方が間違いで、本来コンパウンドはバフ面に垂らすのが正解です。と言っても現場でそれを徹底するのも難しのです)。

と言う事もあってコンパウンドは全て3M製品になっていたりしますが、それぞれ何が悪いという訳では無く、それぞれ作業する人間によって合った材料や使い方があるという事です。仕事上では人が言う事は全て鵜呑みにはせず、自らトライ&エラーを繰り返すのが良いと思います。

本体は既に本塗りが終わっておりまして、後程(もしくは後日)そちらも紹介します。どうぞもう少々お待ちくださいませ!