バイク用ブレンボキャリパー凹み文字 本塗り

先日凹み文字部のみをサンドブラストしておいたバイク用のブレンボキャリパー2個です。その後よく脱脂清掃し、次はいよいよ塗装用のマスキングを行います。

ただそれぞれのキャリパーで微妙のロゴの形が違うのでかなり大変です…。

マスキングの仕方としては、サンドブラストの時よりも0.1~0.2mm程大きくしています。

それでもラインピッタリという訳ではなく、少し食み出るような感じでマスキングしています。色が入らないとマズイし、ピッタリだとバリが出来てガタガタになってしまうからですね。

尚、前回の記事でも紹介しましたが、今回のキャリパーは凹み文字部に元々あった被膜を剥がす為か、何かしら尖った物でその辺りを強く抉った痕が結構あり、こちらのキャリパーでは「r」の部分に特に深い傷がありました。

また他にも気になる箇所が結構あったので、今回は本塗りでは無く「下塗り」として二回に分けて塗る事にしました。通常であればサフェまたはパテを使うところですが、さすがにこの凹み文字の中でそれを行うのは現実的では無いのでこの方法としています。まずはプライマーを塗布します。

もちろんピンポイントをエポキシパテで埋めるという手もあったのですが(ラッカーやポリエステル系のパテはデメリットがあるので使えません)、塗らない箇所(黒アルマイトを残す部分)を傷つける訳にはいきませんから、リスクを抑えつつ仕上がりが良くなる方法としています。

続けてベースコートを塗布します。

色は前回と同様、VW社のキャンディホワイト(カラーコード:LB9A)を使用しています。

深い傷があった箇所は、同色の2Kエナメル=1コートソリッドを使って筆挿しします。クリアーに直接顔料が入ったような感じで、それ単体でも仕上げられる塗料です。トラック等商業車に使われるような塗装ですね。クリアーと同様、ハードナーを添加して使います。自動車ボディならこちらの配合データもあるので、ソリッドカラーなら全部これを使っても出来るのですが、早く出来る以外にメリットがあまり無いので殆ど使う事はありません。

そして最後にクリアーを塗って本塗り(下塗り)完了です。2コート目のクリアーを塗り終わったらすぐにマスキングを剥がします。

今回は先ほどの「r」 の部分以外にも抉った痕があって、

この時点だと埋まって見えないのですが、完全硬化後にそれが目立ったので、もう一度クリアーだけを塗るようにします。

60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、部分的に白を塗り、再度凹み文字部全体にクリアーを塗りました。

画像は既に二度目の熱入れも完了した状態です。丸い部分(bとoの内側)のマスキングも剥がし、それらにはベースカラー(白)が殆どついていないのが判るかと思います。

どうしても抉った部分、特にこちらのキャリパーの 「c」と「m」の上側が目立ちますが、

一度目の塗装の仕上がりより断然よくなったと思います。

念のためこの後もう一度60℃40分程の熱を掛けて硬化させておきます。

それでは完成次第改めて紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

アウディエンブレム&内装パーツ塗装承ってます

先日到着しておりましたアウディクワトロのエンブレムと、エアコン吹き出し口の「つまみ」部のパーツ2点です。こちらのオーナー様は14年前に当店をご利用頂いておりまして、この度もご贔屓頂きありがとうございます!

こちらのクワトロエンブレムは少し前にも同じものをご依頼頂いておりまして、ただその時とは少し仕様が変わります。

判りやすいよう以前施工した時の画像を紹介します。

この時は文字と枠を黒、内側平面部を赤でしたが、今回はこれとは逆で、


「縁とquttroの文字を赤、文字背景の平らな部分を黒」


で承っています。

色については見本でお預かりしている物を参考に簡易的な色の作成(非調色・5分程度の作業)、艶あり仕上げ、クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

そしてこちらは内装エアコン吹き出し口のつまみ部分のパーツとなります。

現状は未塗装、黒の樹脂素地状態ですが、

これをこちらの見本と同じような配色にします。つまみ部分を艶ありの黒、レール部分を艶ありの赤ですね。

そのままの状態では塗装が出来ないので、まずは分解を行います。

樹脂素地は比較的柔軟性と粘りがあるので割れ難く、恐らくはPP=ポリプロピレン樹脂と思われ、その特性のお陰で各部割れずに分解出来ましABS樹脂だったら爪固定部分は全部割れていたと思います)。

分解すると一固定の為の金具と板バネがあるので、それぞれ無くならないように保管しておきます。

こちらが艶あり黒で、

こちらが艶あり赤となります。可動部(左右両端の突起部)はマスキングをして塗らないようにしておきます。

念のためそれぞれ元通りに出来るよう印をつけておきました。また組付け時に間違えないよう分解前の画像もかなりの数を撮影してあります。

参考までに以前ご依頼頂いた時の画像も紹介させていただきます。

この時は2010年頃で今の工場に引っ越す前、川崎にある知人の工場に間借りしていた時です。その時のメール等の記録は残っていないのですが、画像はありました!。ヘルメットに取り付けるデジタル速度計ですね。

今だったら音叉マークはデカールでやっていると思いますが、この時はまだドライプリンターを持っていなかったので(存在すら知らなかったので)、マスキングシートを作って塗装で対応していたようです。なんて恐ろしい…(笑)。

当時は固定経費が少なく済んでいたので比較的安価で対応出来ていましたが、今はその時に比べると2倍~3倍くらいの塗装費になっていると思います。それでも「あの時の塗装が非常に美しかったので今回また依頼させていただこうと思い問い合わさせていただきました。」との事で、有難い限りです。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!

IMPULアルミシフトノブ 本塗り

先日本塗りを終えていたIMPULのアルミシフトノブです。その後残った打痕部にクリアーを筆挿しし、60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させておきました。

全体を#800→#1500で水研ぎして表面を均し、ナイロンブラシとウォッシュコンパウンドで足付け処理を行います。

再び台にセットして本塗り準備完了です。

色を塗る必要な箇所は無かったので、

そのままクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

深い傷や打痕も綺麗に払しょく出来ました。

この後は再び60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

それでは完成次第改めて紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

ランドクルーザーテールランプ 本塗り

先日下準備を行っておいたトヨタランドクルーザーのテールランプ一式です。

こちらはウィンカー部分が赤いレンズになったUSテールですね。

ちょっと判り難いですが、こちらは上部レンズがオレンジ色の日本仕様です。いずれもトヨタ純正部品です。

ブース内は前日までに床と壁と台を清掃してあります。

プラスチックプライマーを塗布し、ベースコート=スモークを塗布します。

濃度については以前施工したメルセデスベンツテールランプの画像を参考に、スモーク含有量を減らしたベースコートを4~5コート程重ねて濃さを合わせます。

スモーク塗装の見え方はテールランプの構造によって大きく変わる為、一般的な塗色のように塗料の配合率等をデータ化する事は難しく、なのでこのようなアナログ的な作業となります。同じ濃さで作った塗料を使っても、被塗物によって全然違う濃さに見えてしまうんですよね。

ミラーウィンカーの濃さはテールランプに合わせます。

ベースコートを塗り終わったらしっかり乾燥させ、

最後にクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

そのまま置くと斜めになってしまうので、テールランプの裏側にガムテープの芯等を貼ってレンズが地面と水平になるように調整しています。

自動車ボディのように肌を残すとレンズっぽくないので、極力つるんとした塗り肌になるようにしています。

こちらは上部ウィンカーレンズがオレンジのテールランプですね。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

それでは完成次第改めて紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

Mitsubishi Lancer brembo Matt Gray

いつもご贔屓頂いている業者様から御依頼頂いたランサーエボリューション用純正ブレンボキャリパー一式です。

新品時のブレンボキャリパーに塗られている塗料は焼き付け型で、使っている内に色褪せたり(褪色)、クリアー層がペリペリと剥がれてくるのが特徴です(層間剥離)。

自動車の外装パーツ(ドアやボンネット)と違って形が歪な為にサンダー等での作業が難しく、なので一般的な自動車板金塗装店では敬遠されがちな物だったりします。私も車体を塗っていた時は殆ど扱っていませんでした。

ただその後車体から「小物」の塗装専門にシフトし、またその時間借りしていた知人の工場内に、私と同じような形態で作業をしていた方がブレーキキャリパーのOHや販売等を手掛けていて、それの下請け的に大量のブレンボキャリパーを塗らせて貰う事で作業的に慣れ、現在に至っています。

その後間借りしていた工場から今の場所に移り、現在もこれらブレーキキャリパーの下準備についてはその方にお願いしています。こちらのページで詳しく紹介していますので宜しければご参照くださいませ。

下請け時には先ほどの状態でそのまま塗装を行っていたのですが、現在はそれにサンディングの作業を追加しています。深い傷や打痕、梨地の処理等ですね。

塗装前の脱脂洗浄も2回繰り返すような感じでしっかり行っています。

ちょっと判り難いのですが、こちらは打痕部にエポキシパテを塗っています。

まずは全体にプライマーを塗布します。

膜厚を着けたくない箇所=ボディ固定部やガスケットあたり面、パッド固定用のピンが入る穴の内側等ですね。

続けてベースコートにトヨタ「マットストームグレーメタリック」(D08)を塗布し、bremboのロゴを黒、最後に艶消しクリアーを塗って本塗り完了です。

艶消しクリアーは艶ありの場合と同様、ウェットに2コート塗っています。垂れるとその後の処理(磨き)が出来ないので塗りなおし確定ですが、肌を荒らしてしまうとその後傷が付きやすい塗膜になってしまうので、艶消しでもツルンとした肌にする事でそれを防ぐようにします。

その後時間の経過と共に艶が消えていきます。

 その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

さらに数日寝かしたら完成となります。

各画像はサイズの縮小以外は未加工となります。

装着してしまえば細かい箇所など目立たなくなってしまうのですが、

製品単体の状態でのお渡しとなるとどうしても全体を隈なく見て(見られて)しまうので、そういった点で小物の塗装は同じ塗装屋さんでも嫌がられる傾向にあると思います。まあそもそも車体を塗る為の設備を構えた工場=所謂保険を使った事故修理を主体として作った工場で小物を扱うと採算が合わないという所もありますよね。

私の場合、小学生の頃から小さい物=プラモデルや鉄道模型(Nゲージ)が好きで毎日それらを作っては塗っていたので、それを仕事に出来た現在は毎日が楽しく、非常に幸運だったと思います。

そういった模型塗装の時にはカッティングプロッターやデカール作成、スプレー塗装等の技術が全く無かったので多くのジレンマを抱えていて、その後それらの事を出来るようになったのが楽しくて仕方ありませんでした。自動車のボディなんて絶対ロボットが塗っている!と思っていましたから、それを人の手でやっている姿を見た時の衝撃は今でも忘れられません(まさに動きはロボットのそれだったのでそれも衝撃的だったのですが。笑)。

なので当時の私からすると「艶々」にする事は非常に特別で、それがとても難しい事だと思っていましたが、

実際に塗装を続けていると、むしろ今回のような艶消し・半艶仕上げの方が難しい事に気付かされます。

ただその後、材料=艶消しクリアー自体も進化を遂げていて、昔非常に苦労したDUPONTのAU175に比べると、現在のSTANDOXマットクリアーシステムはとても安定した艶消し仕上げが出来るようになりました。使用されている顔料(恐らくはシリカゲル)が従来の1/15のサイズになったとかで、これによって樹脂中の分散や固形化がされなくなったのだと思います。以前は使う度にしっかり缶の蓋を開け閉めし、底に固まった顔料を攪拌棒で攫っていましたが、これが無くなったのでアジテーターカバーでも使えて作業効率も上がりました(その後検証していて問題無いを確認しています)。

ただ艶消しクリアーは通常のクリアー=5キロ缶に比べて容量が少なくとても割高で、また作業には多くの神経を使うので通常の艶ありよりも割増費用が必要になっています。その点はどうかご理解頂ければ幸いです。