LOTUSスーパーセブン用 ドライカーボン 本塗り

lotus50 先日二回目の下塗りまで完了しておりましたロータススーパーセブンのプリプレグカーボン製のボートカバー(トランクカバー)とその蓋です。本日は祭日でしたが通常営業にて無事本塗り完了しましたのでご安心下さいませ(単に祭日だという事を忘れていただけなのですが…)。

lotus51 二度の下塗りクリアーを経て無事巣穴も埋まりましたので、今回は本塗り用の下地処理となります。と言ってもやる内容は下塗りの時と同じく、固い当て板と耐水ペーパー#600でラインを平滑にし、その後スポンジパッドと#800の水研ぎでペーパー目を均します。

lotus52 裏側に貼っておいたマスキングも一部を貼り直しておきます。端を最後に貼っておいてあるので剥がすのはフチだけで大丈夫です。

lotus53 穴の部分は二度の下塗りクリアーで膜が出来て塞がっています。

lotus54 棒ヤスリとリーマーを使って穴を整えておきます。

lotus55 ちなみに今回の塗装は「通常のグリーンメタリックを塗装しつつ、素地のカーボンを透かして見せる」と言うちょっと変則的なキャンディーカラーとなっていまして、この場合ベース部分と蓋とをそれぞれ別にして塗ってしまうと色が違ってしまいますから、ベースコートを塗る時は実際に装着するこの状態で行うようにします。

lotus56 ただしあの塗り方だと隠れたフランジ部分が塗れないので、先に内側を塗っておく事にしました。

見切りのラインはプレスライン「山」の位置で、少しマスキングテープが飛び出すようにした庇状にして色を暈します。

lotus57 ちなみにここは後から塗装する順番でも構いません。私的には最初に透け具合の感覚を試し塗りしたかったと言う事もあって先に塗っています。

透け具合の見本とするノーズコーンはエアーブローしてホコリを飛ばし、塗料が付かないようビニールを被せてブース内に搬入しておきます。

lotus58 色板で透け具合を確認しながら慎重に色を塗り重ねていきます。

lotus59 ムラなく丁度良い具合に塗るため、配合データから出来上がった塗料をバインダー(樹脂のみ)で5倍に薄めて4コートで仕上げるようにしました(後にこれでは薄いと感じて5コートにしています)。尚シンナーだけで希釈してしまうと肌がパサついてムラが出易くなるのでやってはいけない事です。3コートパールの塗装と同じく、塗料中の顔料含有量を下げるようにして塗るのがセオリーとなります。

lotus60フランジ部分のベースコートを塗り終え、この状態で一日自然乾燥させました。

lotus61翌日、前の日にベースコート塗っておいた箇所をマスキングします。

lotus62見切りのラインは「谷」のラインで、マスキングテープの端を2ミリくらい折り曲げてペラペラとなる状態にした物をプレスラインに沿って貼っていきます。自動車補修の塗装では基本的なマスキング方法ですね。

lotus63 そして蓋を被せます。また塗装中に位置がずれないようマスキングテープで固定しておきます。

lotus64 2コートまではとにかくムラを出さないように塗り、3コート目からは見本となるノーズコーンとじっくり見比べならが塗り込んでいきます。

lotus65 丁度カーボン目が斜めになっていたので、スプレーの巡航方向は横→縦→斜め→逆斜めの方向で4コート塗り重ねました。

ただこの時点でとても悩みまして、最後にもう1コートを横方向に塗っています。都合5コートとなりました。

lotus66 ベースコートが指触乾燥したらそれぞれの部品を別け、フランジ部分に貼ったマスキングも剥がしてクリアーを塗って本塗り完了です。

lotus67 パッと見はグリーンメタリックですが、下のカーボン地が透けて見えるのが判ると思います。

尚、通常はお受付しませんのでご注意下さいませ(かなり特殊です)。

lotus68 クリアーは耐UV性の高いクリスタルクリアーで、念の為軟化剤を5%入れてあります(柔らかいと言うよりかはペラペラでペコペコするので後で割れたりするのではと不安でして)。

lotus69一度塗っている内容なので多分何とかなるだろうと考えていましたが、実際はそんな簡単な事では無くかなりの恐怖でした。ワンミスで部品買い替えじゃ・・・(と言うか恐らくワンオフなので製品自体作り直しか・・・)と、ベースカラーの最後の1コートは清水の舞台から飛び降りるくらいの気持ちで塗り重ねました。結果としてはノーズコーンと見比べても別々に塗ったとは判らないくらいの透け具合に出来ていると思います。

後日熱を掛けて強制乾燥させ、一週間程寝かしたら磨き処理をし、さらに一週間ほど寝かしたら完成予定となります。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

LOTUS SUPER7 Carbon parts

seven37 以前ご依頼頂いたロータススーパーセブン用のプリプレグカーボン製(ドライカーボン)の外装パーツ一式です。

seven38 最初にご相談を頂いたのはこの時から一年くらい前で、プリプレグカーボンの成型品そのままの状態だと非常に塗装のコストが上がってしまうので、一旦専門のショップさんにてこの状態にまで仕上げて頂きました。恐らくはUV硬化型のポリエステル樹脂と思われます。

seven39 こちらがプリプレぐカーボンの最初の状態で、これを艶々にするまでの作業も実際に当店で試してはいました。

seven40 当然ですが一度のクリアー塗装では繊維の凸凹はそのまま残ります。

seven41 1工程でクリアーを数コート(恐らくは4コート程)塗布し、一旦熱を掛けて完全硬化させます。

seven42 その後ペーパーを掛けてある程度平滑に均し、さらにクリアーを塗ります。

seven43 確かこれらを7工程繰り返してようやくこの状態になりました。

seven44 色に関してはこちらのグリーンメタリック(色はメルセデスのカラーコード6836)をご指定されまして、さらにですが、下地のカーボン繊維目を残して欲しい(!)と言うかなり特殊なご依頼でした。

seven45 クリアーの下塗りで艶々にしたプリプレぐカーボンに、先ほどのグリーンメタリックを下地が透けるように塗っています。

seven46 色はそのままだと簡単に下地を隠ぺいしてしまうので、バインダー(樹脂)を増やして塗料中の顔料含有量を減らし、さらにコート数を変える事で色味(カーボン地の透け方)を調整しています。

これらのテストピース作製を経て、それから約一年後に最初に紹介したパーツ一式が搬入されたと言う流れです。

seven47 下地は出来ているので、後は表面を研磨して足付け処理をするのみとなります。

seven49 場所によってはタレなどもありますので、その辺も一緒に処理しておきます。穴が開いているよりかはこの方が全然マシです。

seven48 こんな感じで下準備完了です。

seven50 必要に応じて裏側をマスキングし、十分に脱脂したら本塗り開始です。

seven51 予め作製しておいたテストピースと見比べながら色を重ねていきます。

seven53クリアーまで塗り終わりました。

seven52色板(テストピース)のイメージに近く出来たと思います。

seven54 その後磨き処理を経て、

seven58seven57 完成です。

seven55 パッと見は普通のグリーンのメタリックですが、良く見るとカーボン目が!と言う変則的なキャンディーカラー塗装です。

seven56 ワンミスで取返しの付かない事態(剥離~再下地処理)となるので、こういう塗装はお受付しないのが普通だと思います。

seven15 ちなみにこちらのオーナー様はこの時のご依頼より以前にも色々とご依頼を頂いていました。

こちらはワタナベのマグネシウムホイールで、ご指定の幅でイエローのラインを入れ、全体に半艶クリアーを塗装しています。

seven16 色褪せてしまったレンズなども透過性の塗装(キャンディーカラー)でご依頼頂いていたりもしました。

seven18 足回りのロッドエンドなどは元々黒かったパーツを、

seven17メッキっぽい感じの高輝度メタリックの塗装でご依頼なども頂いていました。

その他ヘッドカバーの結晶塗装や、レンジローバーでもお世話になったのですが、その辺りになると相当昔なのでもう画像が見つかりませんでした(笑)。

スーパーセブン ドライカーボンパネル 下塗り

lotus31 先日一度目のクリアー下塗りを行っておいたスーパーセブンのプリプレグカーボン製のボートカバー(トランクカバー)です。

クリアーが完全硬化しましたので二度目のクリアー下塗りの準備を行います。

lotus32 最初は前回と同じく固いパッドのダブルアクションダンサー#320→#400の空研ぎを行います。

lotus33 その後木片の当て板を使って#600で水研ぎ、その後柔らかいスポンジの当て板と#800でペーパー目を均します。

lotus34 蓋の部分も同じように行います。

lotus35 最初に比べると変な塗り肌もかなり改善出来ました。

lotus36 ちなみに手研ぎや柔らかい当て板を使っていても平らにはなりません。多少深い傷は入りますが最初は固い当て板を使ってしっかり研ぎます。

lotus37 研ぎ汁(研ぎ粉)を綺麗に清掃し、シリコンオフで脱脂をしたら二度目のクリアー下塗り開始です。

lotus39 今回もベースクリアーは塗らず、直接ウレタンクリアーを塗布しました。3コート塗っています。

lotus40 見たところ巣穴も全て埋まったようで、勿論ですがハジキもありません。塗装屋さんからすると信じられないかも知れませんが、うちの工場でハジキが出るのは一年に一個あるか無いかと言うくらいに良い状態を保っています。多分コンプレッサーがオイルフリーなタイプなのと、工場の中で油の取り扱いには気を付けているからだと思います。

lotus38lotus41ちなみに一時期勤めていた世田谷の工場ではコンプレッサー等機器の管理が余りよろしく無く、本塗りを行う度に3~5個くらいのハジキが出ていました。

その後知り合いの工場で間借りをして小物塗装をやるようになったのですが、そこで使っていたコンプレッサーがやはりオイルフリーのタイプで非常にハジキも少なく、私もそれに倣って今のコンプレッサーを導入しました。熱が出るのがデメリットみたいですがそれくらいは問題無いです。

状態としてはかなり良いので、予定をしていた「下塗りクリアー3回」を二回で終わらせるかも知れません。念の為完全硬化して研いだ状態で判断したいと思います。

どうぞもう少々お待ちくださいませ!

DUCATI Carbon Fiber Upper Fairing

ducati19 DUCATIの社外品アッパーカウルとリヤリップスポイラーです。ドライカーボンでは無くウェットカーボンで、現状の「つや消し」を「艶あり」へと、一見簡単そうな案件に思えますが、実際はそんなに簡単な事ではありません(でした)。

ducati20「艶消し」といってもつや消しクリアーを塗られたような物では無い模様で、成型時に出来た巣穴はそのままです。

ducati21 これくらいなら塗装で埋まるのでは?と思いがちですが、自動車やバイクの外装を飾る塗装は刷毛で塗るような塗装とは違いますので、クリアーだけでこれを埋めるのはかなり大変です。

ducati 全体に足付け処理を行い、よく脱脂処理をしたらまず一回目の下塗りとなります。

ducati2 小さく見える巣穴も塗装においては中々厄介な物で、穴の周りは表面張力でクリアーが盛り上がってしまいますから、このような感じで凸凹になってしまいます。

この後巣穴一つ一つにクリアーを筆指しして埋めていきます。

ducati23 その後熱を掛けてクリアーを完全硬化させ、凸凹になった肌をペーパーで削って均します。

ducati24最終的に#800のペーパー目まで均し、二回目の下塗りを行います。

ducati25 二回目の下塗りクリアー塗装完了です。

ducati26 下塗りといっても使っている材料や作業内容は本塗りと同様で、それ故に費用も嵩んでいきます。

ducati_2二回の下塗りで大分巣穴も埋まっていきました。

ducati_1  再び全体を研磨して肌を均します。

ducati27 「研ぎ→クリアー塗装→研ぎクリアー塗装→研ぎ」の工程を経て、これでようやく本塗りとなります。

ducati29尚、最後の本塗りは少々気合を入れ過ぎたようで、そのままの状態だとクリアーが垂れてしまいますから90度カウルの角度を変えてクリアーのレベリングが落ち着くまで待ちます。

ducati28 これにより今度は違う方向にクリアーが垂れたりもしますので、この間ずっとクリアーの動きを見守りながら経過に対応していきます(必要であれば逆さまにもします)。

ducati30 結局この状態で大丈夫だったようで、無事(!)本塗り完了です。

ducati31 アッパーカウルの裏側とこちらのリヤスポイラーの裏側にある突起はメーカーのロゴマークで、一応削り落とさずに残すようにしました。たださすがに3回のクリアー塗装で大分埋まってしまってはいますが…。

ducati33 その後熱を掛けて塗膜を完全硬化させ、しばらく寝かしたら完成となります。

ducati34 クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーで、通常のクリアーに比べて耐候性も良いのでカーボン(実際はポリエステル樹脂)の劣化も抑えられると思います。

ducati35ドライカーボンの塗装も大変ですが、ウェットカーボンも製品の出来具合によって同じくらい大変な作業となります。お問合せをされて想像していた以上に金額が高かった!と言うのはこういう事でして、部品を送って頂いてから値段を上げるは避けたいですし、穴だらけのまま完成です!とも言えませんからね。どうかご理解頂ければ幸いです。

スーパーセブン プリプレグカーボン クリアー下塗り

seven22先日作業前の準備として土台となる木型を作成していたスーパーセブンのプリプレグカーボン製のボートカバー(トランクカバー)です。

カーボン成型時のウネリは仕方ないにしても、下塗りの段階で出来たと思われる凸凹の肌はある程度均したいので最初にこれを削っておきます。

seven23最初は#320のダブルアクションサンダーで表面の凸凹を平らに削り、その後クッションパッドを間に挟んだ#400のダブルアクションサンダーでペーパー目を均します。

ダブルアクションサンダーで使うペーパーは予め丸くカットされた物で、糊が着いた物やマジックテープタイプの物など色々使い分けます。パッド(ペーパー)の大きさとしては125mm径の物が一般的ですが、場所によっては小さくないと入らない個所もあるので80mm径の物を使ったりもします。

その他シングルサンダーやオービタルサンダー、ギアーアクションサンダー・ベルトサンダーなど、用途によってそれぞれ使い分けるので、大抵は塗装屋(板金屋)一人でも15個~20個くらいは持っているのが普通です。

seven24今回はそうでもないですが、気合を入れて削る場合は粉塵が凄いので、サンダー自体を吸塵機(掃除機)に繋いで使うタイプなどもあります。当店の場合は対象が小物となった事で大掛かりなパテ研ぎ作業が殆ど無くなった事と、塗装ブースの排気装置がそのまま集塵機として使えるのでわざわざ吸塵機用のサンダーを使う事は殆ど無くなりました。

seven25 全体を綺麗に掃除し、裏側をマスキングしておきます(本来こちらを先にやっておくべきでした)。

seven26 塗装はフチ(とその断面)まで塗りたいので、裏側のマスキングは0.5ミリくらいオフセットして貼っておきます。

seven27 その後耐水ペーパーの#600→#800を使って水研ぎをします。

seven28 その後よく清掃し、十分に脱脂を行ったら下塗り開始です。

通常の本塗りであれば最初にベースクリアー(1液ベースコートのクリアー)を塗る事もありますが、むしろ下地の様子を見たかったので直接クリアー(2液ウレタン)を塗布します。

seven29 下塗りとしてのクリアーを1コート塗った状態で、大きなハジキは少ないですが、やはりと言うか細かい穴が無数に開いてます。

seven30 細かい巣穴はその後のクリアー(今回は3コート)で埋まるとして、大きい巣穴は予めコート毎の間にクリアーを筆指しして埋めておきます。

ちなみに「筆指し」と言っても今時本当の筆を使う塗装屋さんは稀で、それ専用の物があります。適量にクリアーが筆指し出来るよう各サイズもあってとても使い易いです。

seven31 まず一回目の下塗りはクリアーを3コート塗って終了です。クリアーには軟化剤を5%入れてあります。主剤95:軟化剤:5:硬化剤50:シンナー30といった割合です。

seven32 一度に5コート塗る事も可能ですが、そうすると塗膜表面に細かい気孔が出たりと良く無い事が起こるので普通(私)はしません。厚く塗りたい場合は一旦硬化させて研ぎ出してまた塗るという事を繰り返すのが一般的です。

seven33塗膜が少し盛り上がった個所は、クリアーのコート間に筆指しをした個所で、スムースになっているのが判ると思います。

seven34こちらはクリアーを塗り終わった後にクリアーを筆指しした個所で、その差が判ると思います。

今回はさらに下塗りを行うので粗い番手(再び#320~)で研ぐので問題ありませんが、このまま磨いて仕上げる場合は最初のようにクリアーコート間で筆指しをしておいた方が後の作業は楽になります。

seven35こちらは側面部分で、この辺は大きい巣穴が集中していました。

seven36よく見ると小さい気孔が無数に開いていますが、恐らくこれは下塗りの時点で垂らしたか、或いは一度に極端に厚塗りしたせいで塗膜に穴が開いてしまった物と思われます。一つ一つは極小さい物なので次の下塗りで埋まってくれると思いますからご安心下さいませ。

既に熱も入れてますので(ウェットカーボンでは無いのでその辺は気を使わなくて安心です)、数日寝かした後にまた研いで下塗りクリアーを行います。

どうぞもう少々お待ちくださいませ!