ハーレーエンブレム 本塗り(中塗り)

先日サンドブラストを行い、トヨタ「グレーメタリック」(カラーコード:1G3)で下塗りを行っておいたハーレーのメッキエンブレムです。その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させておきました。

次は凹み部に色を塗るので、全体を足付け処理します。ペーパー等を使うと下地が露出してしまい、また入り組んだ箇所にそれは当たらないので、ナイロンブラシとウォッシュコンパウンド(液状研磨剤)を使います。

よく清掃し、芯棒に固定したら本塗り準備完了です。

全体に均一な細かい傷がつき、下塗りで塗ったクリアーの艶が消えているのが判ると思います。こうする事でこの後に塗る塗料の密着性が向上するので、スプレー糊のような密着剤を使う必要はありません(逆を言えば足付け処理を行わず密着剤のみで塗った場合は経年で剥がれてしまい、それ故に「カラーメッキ」のような塗装は当店ではお受付していません)。

エンブレムの側面には色をつけたく無いのでその部分をマスキングします。

ピッタリでは無く、側面に色が付かないようになっていればOKです。

そして2色目の色=トヨタ「ブラックメタリック」(カラーコード:205)を塗布します。

どちらもグレー系(ブラック系)メタリックなのでちょっと判り難いのですが、この時点では特に塗り分けは無く、全体にベタ塗りとしています。

 

その後凸部上面(天面)の塗料をシンナーで拭き取り、#1300相当の布状研磨副資材(アシレックスオレンジ)で研磨して最初に塗った「グレーメタリック」(1G3)を露出させます。

ベースコートのみの状態ならシンナーで拭き取れますが、完全硬化したクリアーはシンナーでは溶けないので、このようにして2色を塗り分けます。プラモデル等だとそれぞれ違う種類の塗料=ラッカーとエナメル(フタル酸)等を使い分けたりしますが、屋外暴露&ガムテープをバシバシやっても剥がれないような塗膜にするにはその方法はNGです。そもそもその方法だと足付け処理も出来ませんし…。

自動車補修塗装はそれぞれの塗料メーカーによってシステム化され、提供されたマニュアルに沿って作業を行うのが基本となります。例えばDUPONT社(現CROMAX)のベースコートの上にロック社のクリアー(パナロック)を重ねると材料費が低くなり塗装後の磨き作業も楽になるので会社と作業者にとっては良い事だらけになりますが、これが数年経つと飛び石傷が異様に多く見られ、最後はクリアー層がペリペリと剥がれて来ます(私が若い頃にアルバイト先の工場でこれをやっていました)。

しかしそのお店の謳い文句としては「うちはDUPONTで塗ってるから!」と自慢して、しかも扱っている車体の殆どは販売前の中古車なので数年後に塗装が剥がれても全く責任を負わなくて良かったのです(W124の不人気色を安く輸入し、人気色に全塗装して高額で売れる全盛の時代ですね)。ただ早くて安いからお店は非常に繁盛し、その後世田谷の一等地に引っ越して大きくなったんですよね。

そして最後にクリアーを塗って本塗り(中塗り)完了です。

今回は【標準コース プラス】での御依頼で、ただこの形状で磨き処理は出来ませんから、この後もう一度クリアー塗装だけを行います。少し前に施工したBBSのホイールキャップも一旦艶あり仕上げで行いその後艶消しクリアーで塗っていますが、あちらもこのコースで同じような理由からとなっています(艶消し仕上げは磨き処理が出来ない為)。

ベースコートだけの状態だと判り難かったですが、艶が出るとそれぞれ違う色なのがよく判るかと思います。敢えて派手さを抑えた配色ですね。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

その後再度全体を足付け処理し、もう一度本塗り=クリアー塗装を行ないます。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

ハーレーエンブレム 下塗り

先日お預かりしておりましたハーレーのエンブレムです。

その後溶剤浸け置きで既存の塗膜を剥がしておきました。

こちらの製品は鉄に装飾クロムメッキが施されている物で(下地に銅メッキ)、そのまま塗装をしても塗膜は十分に密着しませんから、

足付け処理としてサンドブラストを行います。

ちなみにプラスチック(ABS樹脂)に装飾クロムメッキが施されている物にこのサンドブラストを行うとメッキが剥がれて浮いてしまうのでNGです。

裏側にもしっかり当てておきます。

被塗面が凸凹になる事でこの後に塗る塗料(プライマー)がしっかり密着してくれるようになります。ちなみにメッキの上にスモークを塗ると「ブラックメッキ風」になりますが、あの場合今回のような足付け処理が出来ない事になりますので、その場合はスプレー糊のような密着剤(私的にはプライマーとは呼べない)なる物頼りになり、ただこれだと点でななく「面」で抑えているだけなので十分に塗膜は密着はしていません。最初の頃は良いのですが、経年で密着剤の効果が下がるとペリペリと剥がれてくるので、当店では対応しないようにしています。

よく脱脂清掃し、

プライマーを塗布します。

表側が乾いたらひっくり返して裏側にもプライマーを塗り、

さらにベースコートの黒を塗っておきます。固定する際に隠れてしまう部分にプライマーのグレー色が残るのが嫌なのと、ベースコートをウェットに塗って肌を均しておき、最後に貼る両面テープがちゃんとくっつくようにですね。

ベースコートの黒が乾いたら芯棒に固定します。

塗装する際にはどうしても固定箇所が必要なので、その部分にプライマーが残らないようにしています(まあやらなくても良さそうですが…)。

そしてベースコートを塗布します。

今回の塗装(下塗り)では最終的に凸面の部分の色を塗っていて、こちらはトヨタ「グレーメタリック」(カラーコード:1G3)となります。

フチまでしっかり、裏側まで回り込むようにして塗布します。

完全隠蔽したら、

最後にクリアーを塗って下塗り完了です。

こういった形状で2色に塗り分ける場合、マスキングでの作業では現実的では無く(時間が掛かるのと仕上がりもそれに見合わない)、なので2回に塗装を別ける事でそれを表現します。

一度全体をクリアーで覆う事で簡単に下地が露出しない被膜が出来ますから、この後全体に黒を塗り、その表面を削り落とす(拭き取る)事で今回のグレーを露出させ、2トーンカラーを表現します。

模型などでは、エナメル塗料(フタル酸=ペンキのような強くない塗膜で、STANDOXの2Kエナメルとは全く違う塗料)を重ねて拭き取るような作業でこれを行いますが、それだと比較的弱い溶剤=ガソリン等で簡単に溶けてしまうので、今回のように屋外暴露下での使用は出来ませんからNGです。そもそも足付け処理無しで塗膜を重ねても全く密着しないので、これも実用する塗装(自動車車体補修塗装)では絶対にやってはいけない事の一つです。

この後は60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、再度全体を足付け処理してから黒の塗装となります。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

ブレンボキャリパー凹み文字部塗装承ってます

先日到着しておりましたバイク用ブレンボキャリパーです。こちらは硬質ブラックアルマイトが施された状態で、塗装をご希望されているのはキャリパー本体では無く、bremboの凹んだ文字部のみとなります。

これはどこかで見たような・・・と思う方はその通りでして、以前にも同じ施工を行った時のオーナー様から、今回はその時とは違うキャリパーで新たに御依頼をいただきました。まずはその時の画像を紹介しますね。

この時とはキャリパーが違いますからロゴのサイズも変わっていますので、今回もマスキング用のデータ作成からのスタートとなります。ロゴの色は前回と同様、VWのキャンディホワイト(LB9A)の艶あり仕上げとします。

施工方法も前回と同様、まずbremboの凹み文字部だけをサンドブラストで素地調整(足付け処理)し、プライマー塗装→ベースコート(白)→トップコート(クリアー)とします。塗装屋さんなら判ると思いますが、ワンミスで大変な事になりますので、出来れば避けて通りたい作業ではあるかと思います。

「だったら塗料を流し込めば良いんじゃ?」と思う方はいらっしゃるかも知れなく、実際私も近年よく見かける「ガンコート」や「セラコート」「パウダーコート」等の焼き付け型塗料であれば強い密着性を謳っているので、そちらを採用しているショップさんであれば対応してくれるのでは?と思いましたが(実際オーナー様に進言しました)、今回当店に再び御依頼頂けたので、他の方法は考えられなかったのかも知れませんね。ちなみに費用は塗料を流し込むような方法に比べると20倍くらいの金額になっていると思います。それでもこれをやろうと思う塗装屋さんは居ないのではと思いますが…。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!

ハーレーエンブレム塗装承ってます

先日到着しておりましたハーレー2023年ストリートグライドのエンブレム2点です。この度のご依頼、誠に有難う御座います!

素材は金属製で、

メッキが施された上に、凹んだエンボス部分に黒とグレーで着色されています。

御依頼内容としては、現状メッキとなっている凸部をトヨタ「グレーメタリック」(カラーコード:1G3)に、

凹部をトヨタ「ブラックメタリック」(カラーコード:205)の2トーンカラーに、艶あり仕上げクリスタルクリアー仕様で承っています。

このような組み合わせになる感じですね。

裏側に貼ってある両面テープは一旦剥がすので、

型を取ろうと思って直接エンブレムをスキャナーで読み込んだのですが、形状が湾曲しているのでその部分が暈けてしまいますから、

一旦両面テープを剥がし、本体から型を取る事にします。

ちなみによくやっているスバルのエンブレムであれば台紙のフィルムに色が着いているのでそのままスキャンできるのですが、今回のハーレーのエンブレムはこれが透明なのでそれが出来ないのです。塗ってしまう事も考えましたが、こちらは最後に再利用したいのでそれはしないでおく事にしました。

両面テープをしっかり剥がします。

ちなみに今回のエンブレムは同じ様に見えて実は左右が決まっていて、シールを剥がした時点でリューター等で印をつけておこうと思っていましたが、両面テープを剥がすとちゃんと記載がありました!こちらはⓇで、もう一方がⓁとなります。

両面テープを剥がしたエンブレムの裏側にマスキングテープを貼って、鉛筆の芯を当てて輪郭をトレースします。

それをスキャナーで読み込み、ベクターデータ作成ソフト(Illustrator)で輪郭のラインを作成します。

実際に作ってみて判りましたが、今回のエンブレムは左右対称では無く微妙に形が違っています。

まずは形の確認の為、カッティングプロッターでマスキングシートをカットします。

実際に合わせてみて細部を修正し、再びカットして確認します。比較的しっかりとしたラインからの作成だったので二回の修正のみで大丈夫でした。

出来上がったデータを基に、今度はレーザー加工機で両面テープをカットします。

「最初からカッティングプロッターで切れば良いんじゃ?」と思うかも知れませんが、厚みがあり糊の着いた両面テープは普通のカッターでは簡単に切れないので、レーザーで焼き切る!という方法で行っています。ハサミが一番楽なのですが、それだとどうしても綺麗な形に切れないので今のところはこの方法がベストですかね。

尚、今回は形の違うタンクに貼り付けるとの事で、エンブレムのテープの上に、さらにもう一枚両面テープを貼って隙間を埋めたいとの事ですから、2セット分を作成しています(有料)。

ちなみに時々「両面テープだけ作って販売して欲しい」というお問合せがありますが(結構あります…)、こちらはあくまでも塗装の御依頼の付帯作業と言う事で、これ単体ではお受付しておりません。同じような感じで、「自転車フレームの塗装の剥離だけを」や「色は自分で塗るので下地処理だけ」といった事もお受付しておりません。何卒御理解頂けますようお願い申し上げます。

尚、2色それぞれを塗り分ける方法としては、こちらのBRABUSエンブレム塗装の記事が判り易いかと思います。

こういった凹凸形状をマスキングで塗り分けるのは非常に難しいのですが、二回に別けて塗り分ける事で比較的現実的な方法で作業が可能です。

ちなみに「非現実的な方法」としては、例えばこれ一つの為にマスク型を作るような感じで、これに関しては以下の動画が判り易いかと思います。何百個も塗るならこうする方が断然お得ですが、当店のように毎回違う物を塗るとなると大赤字です。

また今回は「出来るだけ仕上がりを良く」との事ですので、一度仕上がってからもう一度全体を足付け処理してクリアーだけを塗る作業も承っております。本来であれば磨き処理が出来れば良いのですが、形が形ですのでそれは出来ず(あっという間に下地が露出します…)、なのでクリアーの二度塗りで対応させて頂きます。以前施工したホンダのオイルキャップ&フューエルキャップの時と同じような感じですね。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!

ヤマハNMAXアルミパーツ塗装 完成

大変お待たせしました!先日本塗りを終えていたヤマハNMAXのアルミパーツの塗装、本日完成となります。

最初の状態も紹介します。

元々はラバーコートのような艶消し黒の被膜が塗られていた物を、

溶剤槽に浸け置きして剥がし、「研磨→プライマー塗布→サフェーサー塗布→完全硬化→研磨」といった工程で下地処理を行ってから上塗りを施しました。

色はソリッドカラーの黒で、

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアー(今回は同社VOCエクストラクリアー)の仕様となります。

各画像はサイズの縮小以外は未加工となります。

それでは後ほど完成のお知らせメールを差し上げます。この度も当店をご利用頂き誠にありがとうございました!