カーボンフレーム&フォーク塗装 完成

project15 去年の夏頃からお預かりしておりましたカーボンチューブとクロモリラグで構成されたフレームとフォークはいよいよ完成間近です。とりあえず撮影を済ませておきましたので御紹介いたします。

こちらのフレームは新車時の状態から旧塗膜を全て剥離して塗りなおした物で、色やロゴ・デザインなどは基本的に「元通りに」と言う内容で承りました。元々あったロゴなどは一旦全て消えてしまいますから、それを元通りにという事がどれだけ大変かは塗装屋さんなら判るかと思います。いや、もう大変でした・・・。ちなみに費用も勿論それなりに掛かっている訳でして、大卒大手上場企業の初任給では多分間に合わない額かと・・・。

尚、ロゴはシルバーで11箇所を塗装で入れておりますが、こちらはオーナー様の御配慮により公にならないようにしております。それ故に変な撮り方になっていますが何とぞ御容赦下さいませ。

project16 塗装は特に派手な事は行っています。ただ細部の一つ一つの仕上がりをとにかく高くしています。マスキングの見切りなどは特にシャープになるように気をつけました。

project17 下地作業も同様で、本来であればこういった付属品が取れれば良いのですがカーボンに接着されているのでそうも行かず、これらの輪郭がサフェーサーで埋まってしまうようなボテっと感にならなにように気をつけました。ラグとチューブの継ぎ目の谷ラインなどは意識して研がないと緩やかなスロープ状(苦)になってしまうのでしっかり段が出来るようにしています。

project18 こういったラインは元々の形はちょっとズングリしていた所があったので新たに形を整えています。またこういった柄をフレームの左右に対称に入れるとなると恐らく人間業では不可能ですので、一旦データ化してそれを反転した物を使ってマスキングしています。マスキングも大変でしたけどね・・・(随分昔の事のような気がします)。

project19 フォークのライン形状もフレーム同様に作り直しました。フレームもそうでしたがこれらが入るのはどこも平面では無いのでそれが大変でした。

project20 このラインもデータ化してマスキングシートを作ったのですが最後は手作業で左右のラインを合わせています。細くなる部分が非常に繊細でして・・・。

project21色については基本的には元と似た色を見本帳から選んで頂いたのですが、仕上がってみた感じとしてはシャープさが増してスポーツメーカーによくあるような色の表現と言うか雰囲気が感じられるようになりました。恐らくは今回のホワイトパールには干渉パール(雲母では無い人工的なパール顔料)が多用されている為、一般的なホワイトパールよりもより白く見えるからだと思います。レッドパールも結構入っているんですよ。珍しいです。

それでは後ほど完成のお知らせメール差し上げますね。お預かりは問題ありませんので御都合の宜しい時にいつでもどうぞ。勿論配送で問題御座いません。

この度のご依頼、誠に有難う御座いました!

 

カーボンフレーム&フォーク 寝かし中

project_2先日塗り終えているカーボン&クロモリで造られたフレームです。先日磨き処理も終え、現在寝かし中です。昨日外に貼ったサインプレートを撮影する時のついでにこちらも撮っておきました。

工場の二階には5畳程の小部屋があって、元々は事務室として使われていたようですがちょっと手狭でしたので今はここを荷物保管庫として利用しています。天井には物干し竿を固定してあるので、そこにS字フックを掛けてこういったフレームなどを吊るしておけるようにしてあります。普段は人の出入りも無くホコリも立ちませんので丁度良いスペースなんですよね。

あと一週間くらい寝かしたらお渡し出来るかと思います。どうぞもう少々お待ち下さいませ!

カーボンフレーム&フォーク 磨き作業

projectタイトルは画像とは全然関係なく、こちらは本塗り時のロゴ入れ塗装で必要なマスキングシートを準備している所です。ちょっと前に撮影していましたが使う機会が無かったので・・・。

フレームとフォークは本日磨き作業を行い、いよいよ完成間近となります。このまま二階の保管室で吊るして寝かしつつ、他の案件で熱を掛ける時に一階に暖めてさせて貰おうと思っています。

あとは何とかしてメーカーロゴを写さずに完成画像を紹介するかですね。それまでに考えておきたいと思います。もう少々お待ち下さいませ・・・!

カーボンフレーム&フォーク 本塗り

project46 昨日までにベースコートの塗装は完了したので本日クリアー塗装となります。ただ昨日のマスキング~ロゴ塗装で疲労はピークに達していて、しかも寝れたのが5時となったので本日は一時間遅らせて11時からの出勤となりました。フレックスタイムみたいな感じで御容赦頂ければと・・・。

まずは昨日塗ったベースコートの最終チェックを行い、脱脂処理は出来ませんが(それ故に神経質になるのです)、時間が空いているので当然被塗面にはホコリなどが付いていますから、よくエアーブローをして最後にタッククロスで拭きあげます。

これは自動車塗装屋さんなら誰しも使っている物ですが、それ以外の塗装では余り使わないかも知れません。職業訓練学校の先生は建築塗装出身でしたが、その業界ではこういったアイテムは使わなかったそうです。まあ主に屋外で塗装ブースのような環境で塗る訳では無いですから使っても意味が無いですしね。ちなみに授業では使わせて貰えませんでした(意外と高いので)。

仕様としては不織布に粘着物質が付いたようなウエスで、主な用途としては塗装面のクリーニングになります。これ自体からはホコリは出なく、表面がベトベトしているので付いたホコリがこちら側にくっ付いてくれる、といった感じです。ただし近年では粘着物質では無く、繊維自体でホコリをキャッチ出来るような構造のようでベタベタしている事はありません。水性塗料などではこの糊物質が塗装の弊害になるみたいですね。

これが何故必要かというと、被塗面についたホコリなどはエアーブローで飛んでくれる物とそうで無い物があります。何故かは判りませんが、単にくっ付いているだけなのにいくら強くエアーを吹き付けても取れないのです。触ると簡単に取れる癖にです。そんな時に素手で触る訳にはいきませんから、その場合はこれで被塗面を軽く擦ると色々な物が取れていってくれます。通常はこれとエアーブローの併用で塗装直前に行うのが普通です。

その他のアイテムとしては静電気を除去する物が色々ありましてこれも奥が深いですかね。私の場合はこの時期水を撒く事で対応しています。全然違いますよ。ただお陰で床は汚れていきますが・・・(下の画像を見れば判るかと。細部に汚れが溜まっていってしまうんですよ)。

project49 そして無事本塗り完了です。メーカーロゴが写ってしまうので撮影はそれ以外の箇所のみとなります。まあ雰囲気が伝わればと・・・。

project48 クリアーはクリスタルクリアーで、ただ気温が低いこの時期はそのままだと固くて塗り難いので使う前に缶ごとお湯に浸けて暖めておきます。

外資系塗料の特徴としては粘度が高い事で、国産のクリアーは比較的シャブシャブしていますが(私的見解です)、外資系の塗料は高いエアー圧で塗る事が前提なので(特にSATAガン)最初からかなりドロっとしています。粘度についてはシンナー希釈量である程度調整は出来ますが、規定より多く入れれば肌が荒れたり艶が引け易くなったりします。よく勘違いされがちですが、クリアーをタップリ塗ると逆に艶引けの原因になるのはこれと同じで、塗膜の中に大量の溶剤分を残すと塗膜表面から抜ける時に何かしら跡を残していくのです。これがワキ(極小さなピンホール)や艶引けの原因ですかね。何事も適量が大事なのです。

project47なので固くて塗り難い場合はシンナーで希釈するのでは無く、クリアー自体を暖かくして柔らかくして対応するのが(多分)一般的です。シンナー量などで塗料の構成が変わると塗った感じが変わってしまうので仕上がりが安定しなくこれの方が厄介なのです。例えば気温によって硬化剤は主に3種類、シンナーは3種類くらいを使い分けますが、これらが切り替わる季節の変わり目が一番塗り難いのです。

ちなみに私的には夏よりは冬の方が断然好きです。気温が低いと確かにやり難い所はありますが、とにかくクリアーはよくレベリングしてくれるので気持ちが良いのです(それ故にタレ垂れ易いと言う事もありますが・・・)。しかも日本の夏場は気温だけでは無く湿度も高くなりますから、外資系の塗料ではそれを想定していないのか思った以上にクリアーの硬化速度が早くて思わぬトラブルを起こしたりするのです(硬化剤のイシアネートが水分と反応する為です)。二回目のクリアーを塗っていたら何だかチヂレが起きているっぽい!なんて事は皆さん経験ありますよね・・・(苦笑)。

それではまた作業進行しましたら紹介させて頂きますね。もう少々お待ちくださいませ!

 

カーボンフレーム&フォーク 下準備②

project39 本日は先程フレームとフォークのクリアーを無事塗り終えまして、ようやく、ようやく完成の日も見えて来ました。ただこの後は磨き処理も行いますし、出来れば今月一杯はこちらで保管して出来るだけ塗膜締まり切る所までお預かりさせて頂きたいと思います。ディレーラー固定のバンド跡は出来るだけ避けたいですしね(と最初に相談を受けておりましたので)。

と言う事で昨日の続きで下準備の内容を紹介させて頂きます。例の如くメーカーロゴなどは出さないようにしますのでちょっと判り難いかも知れませんが何卒御容赦くださいませ。

上の画像はフォークのマスキングで、やはりこちらもフレーム同様一旦ベースカラーとなるホワイトパールをクリアーまで塗ってあります。その後再度足付け処理~ベースクリアー(1液タイプの色の付いていないベースコート)を塗って乾燥させてマスキングに挑んでいます。

ちなみに通常であればベースクリアーをわざわざ塗る必要は無いのですが、以前紹介したように「マスキングによる塗装の輪郭をシャープに仕上げる為」と言う理由で行っています。ベースクリアーとその上に塗る色(ベースコート)は同じ成分(同じ樹脂とシンナー)から構成される塗料ですから、お互いの馴染み(溶解と言うか「侵食力」みたいな感じです)が良いので見切りのラインが綺麗に仕上がり易いのです(私的見解ですが)。

またわざわざ一度通常のクリアー(2液ウレタン)で塗装を完了させている訳は、ベースコートの塗膜の厚さが大きくなる事を懸念した事と、これから行うライン塗装の「修正」を比較的簡単に行う為です。ちょっと専門的な事になりますが、ベースコートは1液性で、これはこの上に塗る2液クリアーに含まれる「硬化剤」が浸透する事によって2液結合すると考えています。これによりクリアーとベースコートの2層が結合して「剥がれない塗膜」が出来上がるのです。

尚、今回はベースコートに直接硬化剤を入れていますから、このままクリアーを塗らずに放置するとその時点で「完全硬化」となり、その上にクリアーを塗っても十分に密着せず「層間剥離」を起こす可能性があります。「じゃあもう一度足付け処理をすれば」と思われたりもしそうですが、パールコートやメタリックに直接足付けしたらその傷はクリアーを塗っても見えてしまうのでこれは出来ません。その他色々な要因があって今回は一旦クリアーを塗って塗膜としては完成させてしまっています。じゃなければわざわざこんな手間を掛けませんので・・・。

project40ライン柄を入れる位置が決まったらその周りに本番用のマスキングシートを合わせて貼りつけ、最初に貼ったシールは剥がしてしまいます。この場所も平面で無いので左右で位置を合わせるのは大変でした・・・。ちなみにバインダーにある画像が今回のライン柄のモティーフ?となる自転車のようで、元々塗装してあった物とこれとを比較しながら(格好良い)位置を決めています。

project41 と言う事で無事マスキング作業が完了です。塗料が飛んではいけない箇所を完全に隙間無く貼るというのも結構大変ですが、実はこれを剥がす作業も大変です。こればかりはこの日の内に終わらせなければならないので昨日は夜中までの作業になってしまったのです(糊によってクリアーのハジキと言うか変な模様が出るのが懸念される為)。ただ雨のお陰か気温はそんなに低くは無く寒さは感じなかったのは幸いでした。真夏にこういった作業をするよりかは寒い方が全然マシですので(所詮関東の冬ですし)。

project42 まずはロゴのシルバーを塗装します。一部モザイクが入っていますが御理解ください。CSIなら解析出来るかもですね(笑)。

project43そしてライン柄の紫を塗布しますが、やはりと言うかこれらについてはそのまますんなりとは終われなく、注意に注意を重ねていたのにマスキングが浮いてきてしまった箇所はあるのです。と言っても想定内ですので御安心ください。

こういった場合、通常であればベースカラーの白い方を塗り直しますが、ただし今回は3コートホワイトパールなのでこれだけで色を二種類、しかもスポット的に塗るとムラが生じてしまいますからかなりの広範囲での塗り直しが必要です。しかしながら紫に塗った箇所を今度は全部マスキングするなどといった作業は有り得ませんので、今回は紫部分を塗り直す事で修正していきます。ここでわざわざ下地にクリアーを塗って完全硬化させていた事が活きてくる訳ですね。

project44下地のホワイトパールは一旦2液クリアーまで終わらせていますから、実はここで「シンナーによる拭き取り」が可能なのです。クリアーが塗っていない場合は勿論下に塗ったパールも溶けてしまいますから通常そんな事は出来ません。

ただし食み出た部分のみ綺麗に吹き取れると言う事ではありませんから(そんな神業無理でしょう)、多少オーバー気味にその辺りの塗装を拭き取り、再度白い部分をマスキングして紫を塗り直します。範囲にして3cm~5cmくらいでしょうか。マスキングシートはデータさえあれば何度でもカット可能ですので一時作業を中断して二階に上がり必要な部分だけカットして貰います。24時間付き合ってくれる機械の存在は有り難いのです(病)。

project45 そしてこんな感じでベースコート塗布完了です。

マスキングをする為の素材として、通常のマスキングテープは紙質ですから比較的薄く「コシ」が柔らかいのが特徴で、それのお陰で多少の段差でも剥がれずに収まってくれます。対してラインテープや今回使用しているマスキングシートは「プラスチック質」なので、仕上がりはシャープになりますがコシが強いのでちょっとした段差で浮き上がってしまいます。今回浮いてしまった箇所とは別に、例えばラグとチューブとのちょっとした段座でもわざわざ一旦そこでカットして紙質のマスキングテープを使っていたりします。「だったら紙のテープをメインに使えば」と思われそうですが、それだとスッキリとした見切りラインはやはり難しいんですよね。被塗物対象がもっと大きい物、例えば自動車の車体を上下色分けする2トーンカラーなどであれば細かいところまで気にしませんが、範囲が小さい塗装だとこういった所に目がいってしまうので気の遣い方がさらに細かくなってしまうのです。まあそれを気にするかどうかはまた別の話ですが(笑)。

と言う事で続けてクリアー塗装ですが、ちょっと長くなってしまったのでこちらはまた別に紹介させて頂きますね。