PINARELLO ONDA FORK

pinarello ピナレロのフレームに使われているONDAカーボンフォークです。こちらのご依頼は塗り替えではなく、傷の修理となります。

pinarello1損傷があるのは水色の部分で、傷の上にタッチアップされた跡があります。

pinarello2その他にも塗膜が剥がれている箇所や、

pinarello3これから剥がれであろう箇所も多く見受けられます。

pinarello4 車の場合は必ず色名と色番号(カラーコード)と言う物があって、それを利用して塗料メーカーから配合データを入手する事が出来るのですが、自転車の場合はそれが無いので一から色を作製する必要があります。

pinarello5 塗装は塗った直後と乾燥した状態とでは色が変わる為(主に黒くなります)、一枚一枚乾燥させてから表面にシリコンオフなどを塗って艶をだした状態にして色を確認します。また現実にはクリアーを塗っても色は変わるので(若干黒ずむ)、シビアな調色作業では実際にクリアーを塗って熱を掛けて完全硬化させながら色を見ていきます。

艶具合の調整はさらに手間が掛かる為にその費用は大きくなりますが、当店で規定する「艶消し」または「半艶」のどちらかから選んで頂ければその費用は不要です。特にご指定が無ければ艶あり仕上げとなります。

pinarello8 色が出来たら下地処理を行います。一般的には傷をパテで埋めたりするイメージがあるようですが、正規の方法(塗料メーカーが推奨するマニュアル上)ではそれはやってはいけない事の一つで、傷は削り落とすのが基本的な作業となります。削り落として足りなくなった部分はパテ或いはサフェーサーで充填します。

pinarello9色を塗る部分は水色の箇所のみですが、クリアー(今回は艶消し)はフォーク全体に塗る為、フォーク全体をウォッシュコンパウンドとスコッチブライト(研磨粒子が塗布された不織布繊維)を使って塗膜表面を研磨・足付け処理します。

尚、今回はサフェーサーの前に全体の足付け処理を行っていますが、サフェーサー研磨後に行う場合もあります(車の塗装ではむしろそちらがセオリーです)。

pinarello10 傷を削った部分は緩やかなラインにする為にフェザーエッジを形成し、サフェーサーを塗る箇所の番手(傷)は#240~#400程度にしておきます。

pinarello11結局怪しい箇所はほぼ全周となりました。

pinarello14 ドライカーボンはエポキシ樹脂と炭素繊維で構成されている為、プラスチック専用プライマーの使用は必要ありません。

脱脂後、直接2液ウレタンサフェーサーを塗布します。

pinarello16 その後60℃40分程の熱を掛けてサフェーサーを硬化させ、#320~#400の空研ぎでライン出しを行い、#600~#800の水研ぎでペーパー目を均します。

pinarello17その後よく脱脂清掃を行い、水色の箇所以外をマスキングします。

pinarello18 本塗りを行う準備をし、塗料(ベースカラー)が無用に飛び過ぎ無いようさらに養生紙で覆います。

pinarello19 ベースカラーをグラデーションさせるようにして徐々にボカシ、境界線が判らないようにします。マスキング際まで色を入れると本来の色ではなくなってしまうので、ベースコートは必要小範囲に留めます。

pinarello20 マスキングを剥がし、ベースコートの塗装が完了です。

pinarello21 続けてクリアーを塗って本塗完了です。今回は艶消しなのでそれ専用のクリアーを使っています。

pinarello22 艶消し塗装の場合はゴミが着くと磨き処理が出来ない為、気持ち的には早い段階で熱を入れて表面を乾燥させたくなりますが、それを行うと艶にムラが生じてしまう為、クリアーの塗装が終わってから一時間程は自然乾燥で艶が落ち着くまで待ちます。

pinarello23 触るとまだ跡が付くような状態ですが、徐々に艶が消えてシットリと落ち着いて来ます。。

pinarello24艶消しでもしっかりとウェットコートで塗る事で表面はツルンとした仕上がりになり、これにより傷や汚れが付き難い塗膜となります。

pinarello25 その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させ、数日寝かしたら完成となります。

pinarello26 水色は全体に塗っている訳では無いので、オリジナルの状態から色が変わったと言う事はありません。また色の境界線のラインも新車時そのままとなります。

pinarello27 pinarello28 pinarello29オリジナルの状態戻す作業は量産品を作るのとは内容が変わり、単に色を変えるよりも手間が掛かる為に費用もその分高くなります。修理費用は新品の金額を超える事が殆どで、金額的なメリットは殆どありませんのでご注意くださいませ。

PINARELLOカーボンフォーク塗装 完成

pinarello25 大変お待たせしました!ピナレロのONDAカーボンフォークの補修塗装、本日完成となります。

最初の状態も紹介しますね。

pinarello2最初に会った傷自体は小さいのですが、周りの何でも無い部分でも既にダメージを受けていて、「剥がれる予備軍」みたいな状態になっていたので上側は殆ど一周削っています。

pinarello11こんな感じに怪しそうな箇所は削っておきます。うっかりしていると塗り終わってからプクプクとブリスターになって現れますからね(塗装屋は皆通る道なのですが・・・)。

pinarello26 今回塗った(作った)色は水色だけで、しかも全部塗っている訳では無く、水色に塗られた範囲内でボカしています。こういった淡いソリッドカラーはボカした箇所の粒子が結構目立つのですが(目で見えます)、それも判らず綺麗にボケたと思います。

pinarello27 全体的に小傷もありましたが幸いにしてクリアー層で止まっていてくれたので、全体を#800で軽く研磨してクリアーを塗って綺麗になっています。

pinarello28塗り分けのラインも既存のものそのままなので新車時とデザインが変わっているという事もありません。

pinarello29ちなみに艶消しのクリアーは部分的には塗装は出来ないので(最後の磨き処理が出来ません)、今回のように傷が小さくても塗装する範囲は部品全体になります。例えば新車のフレームで1ミリの傷でもクリアーはフレーム全部ですから、費用は丸々一台分+調色費やらマスキング費やら下地処理代で結構な金額になります。

ちなみに車の場合で、例えば屋根に付いた一ミリの傷を綺麗に直したい!となると、場合によっては前後ガラスまで外す羽目になって20万円なんて金額もザラだったりします。さらにルーフサイドモールが無くてマスキングの切れ目ば無い場合はリヤピラーでクリアーをボカす事になりますが、それも嫌だとなると(そういう方は居ます)両クォーターパネルまで全部塗装!となりますから、30万オーバーなんて事にもなったりします。当然テールランプやリヤバンパーも外しますしね。外資系のディーラーだとこれが普通と言うかむしろ安いくらいで、これは単にぼったくっている訳では無く、ちゃんとやるなら全部外して塗るのでそれだけ手間は掛かると言う事です。安く済ませたい場合は「仕上がりは二の次で良いのでとにかく安くやってください!」と言えば10分の1以下で出来る塗装もあるので、この辺を説明するのがとても難しいんですよね。

と、すいません話が反れまして!

それでは後ほど完成のお知らせメール差し上げます。この度のご依頼、誠に有難う御座いました!

PINARELLOカーボンフォーク 本塗り

pinarello16 大変お待たせしました!ピナレロのONDAカーボンフォークは無事本塗り完了しておりますのでご安心下さいませ。

上の画像は先日塗っておいたサフェーサーを研いでいるところです。

pinarello17 水気をよくとったら綺麗に脱脂清掃し、工場の二階に移動してマスキングを行います。

今回色を塗るのは水色の部分のみで、しかも塗るのは水色の部分全体では無く、その範囲の中でも範囲を抑えてボカシを行います。恐らく車体の方にも同じ水色が残っている筈なので、極力既存の色を残そうという事と、マスキングの際のラインもオリジナルの物を崩さないようにしようと言うことですね。マスキングするラインは既存のラインより髪の毛一本くらいを水色の外側に貼る様にします。

pinarello18 ベースコートは極力他の部分に飛ばしたくは無いので、最初はこんな感じで軽くマスキングをしておきます。

またいきなり色を塗るのではなく、最初はベースクリアー(色の着いていないベースコートみたいなもの)を塗っておき、この後に塗る水色が馴染むようにします。ミストが静電気で変な模様を描いたりするのでその防止の為とかもですかね。車の塗装でもベースコートを暈す場合はほぼ100%これは行います。

pinarello19 サフェーサーの部分が水色で完全に隠蔽したら養生紙を剥がし、グラデーションを掛けるような感じで色をボカしていきます。カーボン地と水色の境界線に貼ったマスキングには色が殆ど飛んでいないのが判ると思います。

pinarello20 そしてマスキングを全部剥がしました。

ここからいきなりクリアーを塗っても良いのですが、糊ハジキなども懸念されるので念の為全体にもう一度ベースクリアーを塗布してからのクリアーとなります。艶消し(半艶も)のクリアーでハジキとか出たらもうお終いですからね(艶有りの場合は後で行う磨きで復活は出来ます)。

pinarello21 クリアーは艶消し専用の2液ウレタンクリアーで、これは新車の時点で塗られている物と同じと考えて頂いて大丈夫です(勿論メーカーや商品自体は違うと思いますが基本的なところでは一緒です)。

塗り方はいつもの艶々のクリアーと同様、ウェットに2コート行います(ただし少し控えめには塗っています)。

pinarello22 その後自然乾燥で一時間くらい立つとこんな感じに綺麗に艶が消えてくれます。ただし表面が乾くまではホコリが付くとくっ付いてしまうのでその間ブースのファンは止めず、常にクリーンなエアーが降り注ぐようにしておきます。と言うか大抵のゴミは自分から出ているので、君子危うきに近寄らずって感じですかね。

pinarello23 まだ熱を掛ける前ですが、良い感じに仕上がっているのが判ると思います。艶消しでもツルンとしていて綺麗ですよね。

pinarello24言われなければ塗り直したとは思えない仕上がりに出来ていると思います。

ちなみに費用についてはやはりと言うか結構な金額が掛かっていまして、もしかしたら新しいカーボンフォークが買えるくらいかも知れません。今回はもう部品が入手不可能で、ただこのカラーリングを何とか残したいという事での御希望だったのだと思います。他に大きな傷が無かったというのも幸いだったと思います。

尚今回と同じようなお問い合わせは多いのですが(特にフレーム)、大抵の場合は新品部品よりも金額は高くなりますのでどうかその辺をご考慮の上でご検討頂ければと思います。調色とかマスキングなどの作業は勿論ですが、各作業でとにかく気を遣うので想像以上に手間と時間が掛かるのです。どうか御理解頂ければ幸いです。

それでは完成次第改めて紹介させて頂きますね。もう少々お待ち下さいませ!

PINARELLOカーボンフォーク 下準備

pinarello6 先日調色作業を終えたピナレロのONDAカーボンフォークですが、衝撃の事実が発覚しました。

クリアーの艶としては現状から判断して「3~4分艶」を予定していたのですが、恐らく新車の時点から貼ってあったであろうwarningのシールを剥がしてみると、何としたから完全マット(艶消し)の塗膜が出てきたのです。

検証した結果、恐らくはこの艶消しが本来の正しい艶具合で、その後の整備(洗車)などで塗膜を拭いている内に艶が出てしまったのだと思われます。

pinarello7ホイールが付く近辺の、ウェスなどが当たり難い箇所を見てみると確かにそこは艶消しだった頃の姿が見受けられます。

と言う事で予定していたクリアーは「艶消し」で行う事にして、もし車体と比べて艶が合わないと感じたらワックスを掛けて艶を出して頂ければと思います(フェラーリ腰下の艶消し黒を塗る場合もこれと同じ方法ですのでご安心下さい)。後から艶を消す事は出来ませんが、艶を出すのはこの方法で出来ますので一応オリジナルに合わせるようにしておきます。

pinarello8 そして傷部分の修正です。傷自体は小さいですが、ペーパーは一種類あれば足りるという事では無いので、結局こんな感じで色々使います。場所が曲面なのでクッションパッドも多用する感じですかね。

pinarello9 ここの順番はサフェーサーを塗った後でも良いのですが、他にも小傷がありそうなので先に全体の研ぎ(足付け処理)を行っておきます。

目で見える浅い傷は#600で削って、その後全体を#800で研磨、その後スコッチ(繊維状の研磨副資材)とウォッシュコンパウンドを使って足付け処理&脱脂清掃となります。

pinarello10 傷もそうですが、ブレーキを固定する箇所の塗膜が周りに盛り上がる程寄っていたのでそれらも全部削っておきました。とにかく塗膜が厚いです。

pinarello11 結局傷は無くてもそれなりにストレスが掛かっていた箇所は剥がれかかっていたので(ペーパーを掛けるとフェザーエッジが出ずブチブチと切れていくアレです)、そういった予備軍みたいな箇所も全部削っておきました。

pinarello12フォーク裏側の上の方にはタイヤで何か巻き込んだ?ような深い傷がありましたら、それらは#600で研ぎ落とせたのでサフェは必要ありません。

pinarello13 余りサフェーサーの範囲を広げたく無いのでマスキングは二段階方式にしました(たんに途中で貼り直すだけの事です)。

pinarello14 途中までは狭い状態でサフェを塗っていますが、半分くらいから紙の位置をズラしてサフェーサーの切れ目がブツ切りにならないようにしています。

一般的なイメージとして、サフェの面積は小さく収めた方が楽に出来そうですが、無理にそうしようとすると色々と問題が生じますので、サフェは極力大きく大きく取るのが基本です。

pinarello15ちなみにマスキングの端がペラペラした貼り方なのは、サフェーサーを塗った時の段差が付き難いようにする為で、範囲に余裕があればブツ切りでも構わないのですが、こういった時には普通はこうするのが基本です。車の塗装屋さんなら毎日やっていますよね(3Mのソフトテープより余程この方が綺麗に仕上げられますし)。

この後サフェに熱を掛けて強制乾燥~完全硬化させ、サフェを研いで形を整えたらいよいよ本塗りです。来週には本塗りを出来る予定です。もう少々お待ち下さいませ!

PINARELLOカーボンフォーク 調色作業

pinarello4 こちらもお待たせしました!ピナレロのONDAカーボンフォークも作業着手しておりますのでご安心下さいませ。

pinarello2ご依頼内容としては、「元のデザインはそのままに、フォーク上部にある傷を修理」と言う内容で、まずは色の作製をします。

pinarello5ベースコートは青い部分全部には塗らず、これから塗装するサフェーサーを隠蔽し、且つそこから周りに暈かしていくような塗り方にします。同じ色でグラデーションを掛けていくようなやり方ですかね。クリアー(3~4分艶)はフォーク全体に塗装します。

ちなみに上の画像でフォークよりも色板の方が緑味がありますが、これはフォークが画面右側に行くにつれて角度が付いて「透かし」を見るような形になっていくからで、今回の青色の特徴としては「透かしが赤い」と言う事があり、フォーク(画面)の右側に行き角度が付くにつれて、グリーン味から徐々に赤味にへと変化していきます(と言っても普段気付くレベルでは無いのですが)。

今回使った原色の青色(MIX588)も同じく「正面は緑味が強く、透かしは赤白味のブルー」といった特徴があって、単に赤や緑を入れれば良いと言う訳では無く、微妙な調色作業では青色の中からどれが合っているのかと言うのを選ぶ必要があります。青だけでも原色は5種類あるのです(ただこれでも幾つかの青は廃盤になって数は減りました)。

と言う事で色は出来上がりましたので、次は傷の部分の処理(研磨~サフェ)になる予定です。どうぞもう少々お待ち下さいませ!