先日枠の部分をイエローに塗り、全体にクリアーをコートして一旦下塗りとしておいたBMWi7の純正エンブレム一式です。トランクバッジの枠は最初の時点で完了し、今回は中央のプロペラ部分(画像左)を単体で行います。尚、一緒に御依頼頂いているモールは先日本塗りを終えています。
完全硬化したクリアーはそのまま色を塗っても密着しませんので、最初の時と同様、全体を足付け処理します。
各円の径を測り、それを基にマスキングシートを作成します。
直線部分は通常のマスキングテープを使いますが、曲線をそれで行って綺麗に弧を描くのは不可能なので、その部分だけマスキングシートを使う作戦です。ちょっと判り難いですが、円のライン部分に2ミリ幅に切ったマスキングシートを貼ってあります。
全部まとめて塗ろうとすると仕上がりが悪くなってしまうので、それぞれの扇状の部分を一つずつ仕上げていきます。地獄の時間のスタートですね(まあ私的にこういう作業は好きですが)。
今までの塗装と同様、青い色の上にそのままイエローを塗っても簡単に隠蔽しない為、下色としての白(VWキャンディホワイト)と、チャンピオンイエローそれぞれを入れたスプレーガン(エアーブラシ)を用意します。
まずは白を2コート程塗って青を隠ぺいし、
続けてイエローで完全隠蔽させます。尚、この時点で既に塗膜の段差が激しく出来てしまうので、きっちりよりも少し内側に意識した箇所でマスキングしています。
なのでマスキングを剥がすと下地の青が見えている箇所もあります。この辺は想定内で、これを無理して一度に遣ろうとすると取り返しがつかない=イエローの範囲がみるみる大きくなってしまい純正のような品質にならないので、その後段差がついた箇所をサンディングしたり、マスキングを貼り直して部分的にスプレーの行程を何度も繰り返していきます。信じられないくらいのネチネチな作業ですね。
という感じで一か所ずつきっちり仕上げていきます。最初はこれで1時間くらい、その後は他の物と並行しながら行って多少なりスピードをアップしていきます。
スプレーは連続して出来なく、その都度フラッシュオフタイム=コート間の乾燥時間が必要ですが、個数が増えると並行して作業を進めていけるので時間が短縮出来ます。
上の画像だとどれも同じ部品=ホイールセンターキャップで、一番左が下色の白、中央がイエローを塗った後のマスキング際の修正作業、一番右がベースコート完成品です。
朝から始めて陽が落ちるくらいまでこれらの作業を行い、ようやくベースコートが完了です。
再び芯棒にセットし、イエローに塗った部分を避けて脱脂清掃し、
タッククロス(粘着物質が塗着された不織布)で擦りながらエアーブローをして埃を飛ばし、
最後にクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!
クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。
正直、今回の塗装面積に対しての費用はかなり割高になっているかと思いますが(同業者さんでも引く金額だと思います)、ここまでの時間を掛けている事からすると、特段高過ぎるという訳では無いかと思っています(勿論仕上がりを見て頂ければそれが一番判り易いかと思っています)。
特に今回の場合は既に一度他店で塗装をされて酷い仕上がりになってしまったとの事なので、逆にその理由が判り易く、当店としてもある意味良かったと思っています。当店にお問合せ頂いて、かなり長い納期と他店より高い費用に驚かれる方もいらっしゃるかも知れませんが、一度失敗してどうしてそうなったのかを調べ、その理由や対処方法をについてどうやっているのかをこちらのブログで見て頂ければそういった金額になるのも多少なりご納得頂けるのではと思っています(逆にオープンにし過ぎて同業者さんからは疎まれている所があると思いますが…)。
元々こういった細かい作業(塗装)は好きなのですが、元々やっていたpro-fit=自動車板金塗装業だとどうしてもコスト的に合わなく、なので今のような小物専門の塗装はまさに理想的な環境だったりしています。
自動車板金塗装=車体を扱う塗装ではどうしても規模が大きくなりがちで、その場合「保険修理」が無ければ通常経営は成り立たなく、しかしながら現在の小物塗装ではこの保険作業が0%ですから、自動車補修塗装業を経営している人からすると結構無茶な事=最近の言葉で言うと「無理ゲー」をやっている感じだったりします。
ただその後段階的な価格の見直しや(これで依頼が0になった業者さんも居ます)、ホイール等の大きい物の受付を止め被塗物をより小さい物に限定する事で何とか維持出来ています。小物専門になって現時点で16年くらい、あと15年は何とか続けていけるのでは、と思っています(その後の10年は自宅でひっそりと極小さい物だけを塗って行ければと考えています)。
この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。
前後のエンブレムバッジは、最後にフチを艶消し黒で塗ります。元々黒いプラスチック素地だった箇所をマスキングで残すのは難しかったので、それを表現するような感じですね。
それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!