先日お預かりしておりましたBMW純正のボンネットフードバッジとトランクバッジです。
フチの部分はアルミ素地が露出しているので、その部分だけマスキングをしています。
その他の部分はクリアーが塗られているので、まず#1300相当で軽く研磨します。研磨した粉に色が移らないので、その部分にはクリアーが塗ってあるという事が判ります。
表面は凸凹しているのでペーパーだけで研ごうとすると下地が露出してしまいますから、細かい部分の足付け処理はナイロンブラシとウォッシュコンパウンド(液状の研磨剤)を使います。
金属に傷が付いているとこの時点で傷が目視できるのですが、ウェットにして見えなくなるので、この事からBMW文字などのアルミ部分にはクリアーが塗ってあるという事が判ります。
フチのマスキングを貼り直し、よく脱脂清掃をしたら本塗り開始です。
まずはベースクリアーを塗ります。色の無い=顔料の入っていないベースコートです。
ベースクリアーを塗る理由としては、これから塗るイエローが定着し易いようにで、これによってマスキングでバツ切りにした際がシャープに仕上がります(私的な見解ですが、両者が溶け合うからだと思います)。
よく乾燥したら場所を工場二階に移し、マスキング作業を行います。
まずは比較的隠ぺいの良い適当なイエローを塗布します。具体的にはVW社のサンフラワー(カラーコード:LB1B)です。これ自体決して隠ぺいの良いイエローでは無いのですが、断面に白が見えたりするのが嫌なので色相を揃えています。
右がサンフラワーで、左がそれに今回ご指定のポルシェレーシングイエロー(カラーコード:L1S1)を1コートだけ塗った状態です。かなり隠ぺい力が低いイエローなのでこれだけで塗ろうとすると大変な事になります(恐らくは8コートくらい必要で、もはやまともに仕上がるとは思えません)。
この後3コート塗って隠ぺいします。
通常ならこれでクリアー塗装となりますが、実際はそんな簡単ではありません(と言うかここからが本番です)。
バツ切りマスキングしたフチはどうしてもガタガタになっていて、これが文字や模様ならそんなに目立たないのですが、今回のように「円」と「直線」で形成された物はこういった事がちょっとでも目立ってしまうので、ここから修正を行っていきます。
まずは段差が着いた部分をペーパー(布状研磨副資材)で研いで均し、
これを何度か繰り返し、最終的には一か所ずつ仕上げていきます。
下地の青が完全に見えなくなり、また最初からズレていた部分も違和感なく仕上がったらベースコートが完了です。
再び台にセットし、タッククロス(塗装に影響の無い粘着剤の付いた不織布)とエアーブローをしてしっかり埃を飛ばし、
トップコートのクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!
普通に考えると「青い部分に黄色を塗るだけ」と思われがちですが、極近距離で見ても違和感なく(汚くなく)仕上げるのは意外と大変です(なので塗装のコストも新品エンブレムが何個も買える程になっているかと思います)。
密着剤などは使っていませんので経年で塗膜が劣化してクリアーがペリペリと剥がれるという事もありません(新品の塗膜に問題が無ければ、ですが)。
この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。
それでは完成次第改めて紹介をさせていただきます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!