Viola da gamba Carbon case

violaこちらはヴィオラ・ダ・ガンバなる弦楽器のカーボンケースで、全体にちょっとした小傷があるとの事でプロの演奏者の方から修理のご相談を受けました。

viola1 しかし傷よりも気になったのがこちらのケース全体に出ているカーボンの繊維目で、まるで蛇の鱗のようになってしまっています。

今回はこれも払拭するべく、下地からやり直して塗装を行う事にしました。

viola2 付属品は全て取り外し、また今後のメンテナンス性と意匠性を踏まえ、元々固定に使われていたリベットはボルトナットに交換する事にしました。

viola3 ケースの周りには蝶番・ロック・取っ手などが固定されています。

viola4 リベットはドリルを使って揉み外します。

viola5 ケースの内部は全体にウレタンシートを貼っているので、リベットの箇所のみをカッターで切り取り、リベットを取り外します。

viola6 ケースの分解が完了しました。

viola7 楽器の固定用としてケースの中にマジックテープで貼ってあったパーツです。それぞれ元の場所に戻せるようマーキングして保管しておきます。

viola8 リベットで固定されていた外装部品も元に戻せるよう整理して保管しておきます。

viola10 リベットを取り外す際にカットしたウレタンシート部分に使う新たなウレタンシートを用意しておきます。塗装を終えて組み付けが完了したらこれを使って穴を開けた部分に被せます。

viola11 内側のウレタンシートを汚さないようマスキングします。

viola12これらの細かい凸凹模様は傷では無く、下地から起きている問題です。

viola13問題の箇所を削ってみると下地にはラッカーパテのような物が多用されていて、あれらの変な模様は恐らくこれが原因と思われます。1液性の溶剤揮発型樹脂はこういう問題が起こるので今時は多用しないのが一般的です。

viola14 全体を削ります。

viola18平滑な下地を作る為、全体に2液型のウレタンサフェーサーを塗布します。

viola19 その後熱を掛けて完全硬化させ、さらに全体を削って平滑なラインに整えます。

viola21元々リベットで固定されていた外装部品は全てボルトナットに変更します。

ただしネジが突起してしまうと中に収める楽器に傷が付いてしまう為、ここがピッタリになるようにネジを加工します。

viola22ボルトカッターを使い、それぞれの部位に合わせてネジを短くカットしました。

viola23 このような感じでネジがナットを飛び出さないように仕上げます。

viola24 本塗り後にこれらの作業を行うと無用に傷を付けてしまう可能性がある為、付属部品はある程度先に仮合わせをしておきます。

viola25 全ての仮合わせが完了しました。

viola26 色についてはどうせ塗り直すのであれば全く別の色に!と言う事で、オーナー様よりこちらのポルシェの淡いブルー色を選んで頂きました。

viola27 ご依頼が決定された方には無料で色見本帳をお貸出ししておりますのでどうぞお気軽にご利用下さいませ。

viola28 そして本塗り前に最後の仕上げとして、塗装面は#800~#1300程度の細かいペーパー目に整えます。

viola29 裏側を新しい養生しでマスキングし直します。

viola30 被塗物が地面に対して平行になるように台にセットし、いよいよ本塗開始です。

viola31 まずはベースコートを塗布します。

viola32 そしてクリアーを塗って本塗り完了です。

viola33 クリアーは2液性のアクリルポリウレタン樹脂で、今回は高品位なタイプのSTANDOXクリスタルクリアーを使用しています。

viola34 高品位なクリアーは美観も当然ですが、耐擦り傷性・耐UV性、耐薬品性などに優れています。

viola35 その後60℃程度の熱を40分以上掛けて塗膜を完全硬化させます。

viola36 その後フチの裏側を艶消し黒で塗装します。

viola38 最後の仕上げとして全体をコンパウンドで磨きます。

viola39 そして外した部品を取り付けます。

viola42 固定箇所の一部で工具が入らない箇所があったのでナットを加工しました。

viola43加工したナットを使ったのはこちらのハトメボタン部分です。

viola45ケース表面となる方の付属品の固定が完了しました。

viola47 同じようにしてケーズの裏側となる方も部族品を組み付けます。

viola48 それぞれを組み合わせました。

viola49 噛み合わせがピッタリになるよう、蝶番の位置を修正します。

viola51 viola52viola50 全ての組み付けが完了したら、内側のカットした部分にウレタンシートを貼ります。

viola53 新たに用意したウレタンシートを貼る部位のサイズに合わせてカットします。

viola54 穴を開けた箇所をこのようにして塞ぎます。

viola55 内側の処理も終わり、遂に完成です。

viola56これらの作業には3か月程を要しました。

viola57 viola58 viola59 viola60 viola61 viola62 しかし完成後、取り付けた部品が塗膜に強く当たり過ぎて一部で塗膜を持ち上げてしまう問題を発見し、急遽こちらも修正~改善する事にしました。

viola64対策方法としては、部品と本体の隙間に薄いABS樹脂製の板を挟む方法で、固定具と同じ形を一回り大きいサイズにした物をレーザー加工機で切り取ります。

viola63.jpgさらに固定具の内側にピッタリ嵌るスペーサーも作製しました。

viola65 こちらがそのスペーサーです。固定具のエッジが塗膜に当たらないギリギリの厚さのアクリル板を内側に嵌め込みました。

viola67同じく蝶番のパーツの内側にも嵌め込みます。

viola66 こちらは黒いABS板から切り出したワッシャー替わりのスペーサーです。少々判り難いですが、固定具よりも少し大きめに切り出した板が下に敷いてあります。

viola69 先ほどの黒いスペーサーを間に挟み固定した状態です。

viola71こちらも同じように間に挟み込み、これで固定具が塗膜を痛める心配も無くなりました。

オーナー様には非常に喜んで頂き、先方様のオフィシャルウェブサイトでもご紹介頂きました。

楽器本体の塗装となると難しい面もありますが、今回のように分解が可能なケースなどであれば塗装が可能な物もあります。詳しくはお問合せ下さいませ。