SENNHEISER SKM835 Wireless Microphone

先日お預かりしておりましたゼンハイザーSKM835-XSWワイヤレスマイクです。

既に完成してオーナー様にも発送していますので、施工事例として纏めて紹介をさせて頂きます。

マイクボディにはグレーメタリックの塗装が施されているので、こちらは#800相当の布状研磨副資材(アシレックスレモン)で足付け処理を行っています。

マイクのグリルは艶消し黒(クリアー塗装無し)の塗装が施されていて、この形状だとペーパーや布状研磨副資材(アシレックスレモン)では網の隙間に届かないので、ナイロンブラシとウォッシュコンパウンド(液状研磨剤)を使って足付け処理をしています。

マイクとグリルの間に挟まるプラスチック製のスペーサーは樹脂素地の状態で、こちらも#800で足付け処理をしていますが、素材が不明で不安な所もありますので(削った感じではPP=ポリプロピレンと考えています)、

念のためガスプライマーを使った火炎処理も行っておきます。

ガスプライマーについては以下の記事で紹介していますので宜しければご参照くださいませ。

→>Mazda Diesel Fuel Cap

色については当初はお貸出しした色見本帳からお好みの色を選んで頂いていて、そこから原色のバイオレットの含有量を増やすよう(赤味を出すよう)承っておりましたが、その後参考画像を送って頂きまして、そちらにイメージを合わせる事となりました。

使用した原色を撮影するのを忘れてしまったので、後々の為に以下に記載しておきます。


・MIX598 ブルー(彩度のある標準的な青)

・MIX566 パープル(青味のある赤)

・MIX569 バイオレット(赤味のある青)

・MIX845 サテンブルーパール(粗めのブルーパール)

・MIX821 アメジストパール(バイオレットパール)

・MIX598 ブリリアントシルバー(最も粒子が大きいメタリック)

・MIX811 シルバーダラーコース(輝きの強い中目メタリック)


深みを残したかったので黒や白系は入れず、それ故に隠ぺい力が弱いので下色を使った3コート塗装とする事にしました。

左の色見本が最初に選んで頂いた色で、それに比べて赤味(バイオレット)が強くなっているのが判るかと思います。また色見本に比べると深みがありますが、今回はこの上にガラスフレークを重ねるので、それを想定してメタリックは少なめにしておきました。

まずは下色として、隠ぺい力の高い適当なブルー系メタリックを塗装します。具体的にはVW社のシャドーブルーメタリック(カラーコード:LD5Q )を塗って下地の黒を完全隠蔽させます。

その後今回作ったベースカラーを塗布します。

ちょっと判り難いのですが、先ほどのブルーの上にガラスフレーク=「PP304」を重ねました。

そして最後にクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!

 

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

よく見ると青系のキラキラした物(ブルーパール)と赤系のキラキラした色(アメジストパール)があるのが判るかと思います。

さらにその上に白く膜を張ったような物がガラスフレークで、ブース内の蛍光灯ではそんなに目立ちませんが、一点からの光=太陽光やスポットライトでこれが煌めきます。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

そして完成です。

スポットライト下だとガラスフレークが煌めくのが判ります。 この度のご依頼、誠に有難う御座いました!

Mitsubishi Lancer brembo Matt Gray

いつもご贔屓頂いている業者様から御依頼頂いたランサーエボリューション用純正ブレンボキャリパー一式です。

新品時のブレンボキャリパーに塗られている塗料は焼き付け型で、使っている内に色褪せたり(褪色)、クリアー層がペリペリと剥がれてくるのが特徴です(層間剥離)。

自動車の外装パーツ(ドアやボンネット)と違って形が歪な為にサンダー等での作業が難しく、なので一般的な自動車板金塗装店では敬遠されがちな物だったりします。私も車体を塗っていた時は殆ど扱っていませんでした。

ただその後車体から「小物」の塗装専門にシフトし、またその時間借りしていた知人の工場内に、私と同じような形態で作業をしていた方がブレーキキャリパーのOHや販売等を手掛けていて、それの下請け的に大量のブレンボキャリパーを塗らせて貰う事で作業的に慣れ、現在に至っています。

その後間借りしていた工場から今の場所に移り、現在もこれらブレーキキャリパーの下準備についてはその方にお願いしています。こちらのページで詳しく紹介していますので宜しければご参照くださいませ。

下請け時には先ほどの状態でそのまま塗装を行っていたのですが、現在はそれにサンディングの作業を追加しています。深い傷や打痕、梨地の処理等ですね。

塗装前の脱脂洗浄も2回繰り返すような感じでしっかり行っています。

ちょっと判り難いのですが、こちらは打痕部にエポキシパテを塗っています。

まずは全体にプライマーを塗布します。

膜厚を着けたくない箇所=ボディ固定部やガスケットあたり面、パッド固定用のピンが入る穴の内側等ですね。

続けてベースコートにトヨタ「マットストームグレーメタリック」(D08)を塗布し、bremboのロゴを黒、最後に艶消しクリアーを塗って本塗り完了です。

艶消しクリアーは艶ありの場合と同様、ウェットに2コート塗っています。垂れるとその後の処理(磨き)が出来ないので塗りなおし確定ですが、肌を荒らしてしまうとその後傷が付きやすい塗膜になってしまうので、艶消しでもツルンとした肌にする事でそれを防ぐようにします。

その後時間の経過と共に艶が消えていきます。

 その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

さらに数日寝かしたら完成となります。

各画像はサイズの縮小以外は未加工となります。

装着してしまえば細かい箇所など目立たなくなってしまうのですが、

製品単体の状態でのお渡しとなるとどうしても全体を隈なく見て(見られて)しまうので、そういった点で小物の塗装は同じ塗装屋さんでも嫌がられる傾向にあると思います。まあそもそも車体を塗る為の設備を構えた工場=所謂保険を使った事故修理を主体として作った工場で小物を扱うと採算が合わないという所もありますよね。

私の場合、小学生の頃から小さい物=プラモデルや鉄道模型(Nゲージ)が好きで毎日それらを作っては塗っていたので、それを仕事に出来た現在は毎日が楽しく、非常に幸運だったと思います。

そういった模型塗装の時にはカッティングプロッターやデカール作成、スプレー塗装等の技術が全く無かったので多くのジレンマを抱えていて、その後それらの事を出来るようになったのが楽しくて仕方ありませんでした。自動車のボディなんて絶対ロボットが塗っている!と思っていましたから、それを人の手でやっている姿を見た時の衝撃は今でも忘れられません(まさに動きはロボットのそれだったのでそれも衝撃的だったのですが。笑)。

なので当時の私からすると「艶々」にする事は非常に特別で、それがとても難しい事だと思っていましたが、

実際に塗装を続けていると、むしろ今回のような艶消し・半艶仕上げの方が難しい事に気付かされます。

ただその後、材料=艶消しクリアー自体も進化を遂げていて、昔非常に苦労したDUPONTのAU175に比べると、現在のSTANDOXマットクリアーシステムはとても安定した艶消し仕上げが出来るようになりました。使用されている顔料(恐らくはシリカゲル)が従来の1/15のサイズになったとかで、これによって樹脂中の分散や固形化がされなくなったのだと思います。以前は使う度にしっかり缶の蓋を開け閉めし、底に固まった顔料を攪拌棒で攫っていましたが、これが無くなったのでアジテーターカバーでも使えて作業効率も上がりました(その後検証していて問題無いを確認しています)。

ただ艶消しクリアーは通常のクリアー=5キロ缶に比べて容量が少なくとても割高で、また作業には多くの神経を使うので通常の艶ありよりも割増費用が必要になっています。その点はどうかご理解頂ければ幸いです。

SHURE SM58&Drumstick

先日お預かりしておりましたシュアSM58ボーカルマイクとPearlドラムスティックです。その後完成してお納めしていて、改めて施工事例として作業内容を纏めて紹介します。

マイクはいつものように足付け処理をして塗る準備を済ませ、

ドラムスティックについては固定箇所の関係から2回に別けて塗装を行ないます。こちらは#320→#800で足付け処理を行っています。元々プリントされていた「Pearl」等のロゴは削れて無くなっています。

マイクとグリルはいつものようにベースコートを塗布します。色はブガッティ・ヴェイロン「ティファニー・エディション」に採用されたTIFFANY GREEN(カラーコード:V603)となります。「ティファニーブルー」の名称は商標権があるみたいですが、自動車のボディカラーに設定された色を塗るのは何ら問題ありませんから、これを教えて頂いた塗装屋さんには感謝です!

ドラムスティックの方はある程度の所で暈すようにして一旦芯棒から取り外し、

よく乾燥させた後、最初に塗った先端部をマスキングします。色は塗っていますがここはクリアーを塗らず、この後の塗装で固定部として使う為ですね(どの道スティック先端は使えば塗装が剥がれてしまうので)。

また今回はロゴ入れも承っていますので、そちらの準備もします(当然ですが先にやっておきました)。

デカールにまず少しサイズを大きくした白(特色ホワイト)を印刷し、続けてマゼンタを印刷します。フチを白くする感じですね。

その後工場の二階に場所を移し、

デカールを貼り付けます。

その後よく乾燥させます。

マイクの方もSHUREのデカールを貼りました。

デカールはシールと違ってそれ自体では強度がないので、必ずトップコート=クリアーを塗る必要があります。

そして最後にクリアーを塗って本塗り完了です。

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーとなります。

そしてこちらのドラムスティックはつや消しクリアーとなります。

艶ありと同様ウェットで2コート塗りますが、こちらは徐々に艶が消えていきます。

艶が消えた状態です。

今回ドラムスティックを艶消しにした理由としては「木目」を目立たなくする為で、もしこれが艶あり仕上げの場合は別途サーフェサーやパテ等でこれを埋める作業が必要となり、かなりコストが上がってしまいます(塗装費と同等かそれ以上となります)。

今回はこれを艶消しとする事で木目を目立たなくし、またクリアーを塗っていない箇所との境界を目立たなくしました。

その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、さらに数日寝かしたら完成となります。

最初の状態も紹介します。

元々はこのような状態だった物に、

マイク本体をティファニーグリーンに、

ロゴをピンクで施工しました。

こちらは自然光での撮影となります。

ドラムスティックは元々は木製の未塗装無垢素材だった物に、

同じくティファニーグリーンの艶消しクリアー塗装仕上げとしました。

かなり華やかな組み合わせになるかと思います。

その後オーナー様より「本日、マイクとドラムスティックを受け取りました。想像以上の出来映えで、御社へ塗装を依頼して本当に良かったと思っております。」とのお言葉も頂戴しました。

この度のご依頼、誠に有難う御座いました!

BBS Wheel Center Caps

昨年お預かりしておりましたBBS純正ホイールキャップです。

既に完成して納品も済んでおりまして、施工事例のページとして纏めておくようにしました。

ホイールキャップはアクリル樹脂製なので、通常のテールランプ塗装と同じように#800→#1300で足付け研磨します。尚、ゲート箇所にバリがあったのでそこは#180→#240→#320→#400→#500で均しておきます。

手で持って塗れるよう、芯棒に固定します。

よく脱脂清掃し、

プラスチックプライマーを塗ったら本塗り開始です。

今回は「光が当たったときにBBSが見えるくらい」「さりげなくBBSなんだ〜ぐらいであまり主張が強過ぎないという風」といった濃さでご指定頂いておりますので、含有量を少なくしたスモークを少しずつ塗り重ねていきます。上の画像で1コート塗った状態です。

2コート、

 3コート、

4コート、

5コートと塗り重ねていきます。

光の当たり具合で大分見え方が変わりますが、

ホイールキャップは車体に装着されると位置的に目線よりも低くなるので、手で持った時に多少薄く感じるくらいに留めておきます。

そして最後にクリアーを塗ってまずは下塗り完了です。

今回は【標準コース プラス】で御依頼頂いておりまして、ただ仕上がりが「半艶仕上げ」となり磨き処理は出来ないので、まずはここで一旦艶あり仕上げで終わらせ、後日「半艶クリアー」のみと2回に別けて塗る事にしました。

2回に別けて塗るのは主にゴミの付着を防止する為で、半艶(艶消し)でこの時点でゴミが着くとそこで終了=塗り直し確定ですが、これをそれぞれ別ける事でリスクを減らします。

その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、後日二回目の塗装を行ないます。

最初の時と同様、足付け処理を行います。

よく脱脂清掃します。

現状プラスチック=アクリル樹脂(PMMA)が露出している箇所は無いので、この時点でプラスチックプライマーを塗る必要はありません。

半艶具合については特に調整は行わず、半艶クリアー(K9140)をそのまま使います(勿論ハードナー・シンナーは規定量入れます)。

通常の艶ありクリアー同様、ウェットに2コート行います。

例えばクリアーを塗った1コート目にゴミが付着しても、今回のようにクリアー塗装だけであれば、専用の工具(スピナール)やピンセット等を使っても下地を削る心配がありませんから、フォロー出来る場合があり安心です(勿論ゴミを付けないよう配慮するのが一番で、今回もそれは出来ています)。

塗り終わったばかりの状態だと艶々ですが、

この後一晩自然乾燥させ、

後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させると、

この様な感じの半艶仕上げとなります。

最初の状態も紹介します。

元々はこのようにゴールドが派手な感じでしたが、

スモーク塗装でそれを目立たなくしつつ光が当たった時には見えるようにし、

シットリと落ち着いた感じの艶具合になったと思います。

各画像はサイズの縮小以外は未加工となります。

光を反射させた位置(逆光)で見るとBBSの文字が光って見えますが、

順光(背からの光)で見るとかなり目立たなくなているのが判るかと思います。

オーナー様からは「想像していた以上のクォリティーで驚きました!主張しすぎないけどBBSロゴが見えない訳でもない…最高ですね」とのお言葉も頂戴しました。

この度のご依頼、誠に有難う御座いました!

RUNDUCE Brake Caliper

いつもご贔屓頂いている業者様から御依頼頂いた、RUNDUCEブレーキキャリパーです。フロント8ポット、リヤ6ポットです。

ブレーキキャリパー全体は未塗装で、アルマイト処理が施された物と見受けられます。

ロゴ部は切削されて一段低くなっていて、その中に透明な赤の塗料が流し込まれています。

スチール製のボルト部は錆が出ています。

アルマイト被膜に塗装は密着しませんので、

素地調整(足付け処理)としてサンドブラストを行います。凹み文字部の塗装は予め溶剤で剥がしておきました。

尚、キャリパー全体はショットブラストが行われた為か比較的大きいザラザラとした梨地で、そのままだと気持ちの悪い仕上りになりますから、目立つロゴ面は#120→#180の研磨である程度平滑に均しておきました。

まずは全体にプライマーを塗り、膜厚を着けたく無い箇所にベースコートの黒を塗ってマスキングをします。

ボディ取り付け部にタップリクリアーを塗ると固着したり後で緩んだりする為、極薄膜でプライマーとベースコートの黒だけを塗り、この後は最後までマスキングをして塗らないようにします。

今回は凹んだロゴ部を「赤」で承っていますので、まずはベースカラーのグレーメタリック(日産GT-Rに採用されているKH2)を全体に塗り、

一旦クリアーを塗って塗膜を完成させます。

この後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

その後全体を足付け処理し、凹み文字部の周りに赤を塗って余分を除去し、

最後にもう一度クリアー、今度は艶消し仕様となります。

クリアーは今年発売されたSTANDOX K9150スーパーマットを単体で使用しています(K9140は半艶で、艶の調整をする場合はそれぞれを混ぜて使います)。通常使うクリアー(艶あり)と同様2液硬化型の塗料となります。

二度塗り=本塗りを二回に別けて行う事で凹んだロゴの塗り分けと、ザラザラとした梨地を平滑に見えるようにしています。

その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、さらに数日寝かしたら完成です。

 

一般的な考え方だと、グレーメタリックに塗装後、凹んだ部分に塗料を流し込むような事を想像されるかも知れませんが、足付け処理無しにそういった事をすると経年で塗装が剥がれて浮いたりする為、当店ではそういった事は行いません。

また今回のような未塗装でもそのまま塗れる訳では無く、サンドブラスト等の素地調整が必要です。

各画像はサイズの縮小以外は未加工となります。

ボディ当たり面に塗ったベースコートの黒部分は、二回目の本塗りでも同じようにマスキングをし直し、最後まで無用に膜厚が付かないようにしています。

艶々の赤仕上げと言うのも良いですが、今回のように敢えて目立たない仕様も良いかと思います。