fi’zi:k(フィジーク)のカーボンシートポスト、アルミ製ステム、カーボンハンドルです。
ハンドルの三カ所にはザラザラとした滑り止めがあって、そこは塗装しないで最後まで残すよう承っています。
アルミ製のステムはサンドブラストで素地調整を行い、側面のロゴと前面のロゴを2トーンカラーの塗装で復元します。
シートポストは全体を塗装してしまうとフレーム本体に挿し込んだ時に塗膜が削れてしまう為、事前にオーナー様に挿し込む箇所までの位置を決めて貰い、印を付けておいて頂きました。
印は下地処理の途中で一旦剥がさなければならない為、塗装しない個所にあるラインを基準として距離を測り、数値を記録しておきます。
各パーツのベースカラーはこちらのマツダ アークティックホワイト(カラーコード:A4D)で承りました。
色については事前に色見本帳をお貸出しし、その中から好みの色を選んで頂いています。
塗装で再現する各ロゴのサイズを計測し、配色のイメージイラストを作成しておきます。
それぞれのロゴの位置も数値として書き留めて記録しておきます。
一旦作業が始まると見本としてあったロゴは消えてしまう為、後の為にこの作業がとても重要となります。
ステムのロゴデカールはペーパーで研磨して除去しておきます。ちょっとした事でもサンドブラストの当たり方が変わってしまうとアルミ素地の削れ方が変わり、その跡が残ってしまう為です。
サンドブラスト処理が完了です。ペーパーでは処理できない細部までしっかり足付け処理を行えました。
十分に洗浄を行い、各部をマスキングをしたら台にセットして脱脂を行います。
こちらはカーボン素材のパーツです。カーボンの継ぎ目や塗り分け部などの段差がある為、こちらは「研磨→サフェーサー塗布→完全硬化→研磨」といった工程で下地を整えます。
全体を研磨した後、最後まで残す滑り止め部分をマスキングして台に固定して脱脂処理を行います。
サフェーサーの塗布が完了です。足付け処理がされていればカーボン素材にプライマーは必要ありません(ドライもウェットも同様です)。
こちらはシートポストです。細部までペーパーで研磨して足付け処理をしてあります。
サフェーサーはウェットコートで5~6コート塗り、その後60℃40分程の熱を掛けて完全硬化させます。
サフェーサーが硬化したら研ぎ忘れ防止の為に全体にパラパラと黒を塗り(ドライコート)、#320→#400→#600→#800といった感じで研ぎ付けます。
2ウレタンサフェーサーは耐溶剤性が高い反面、足付け処理をしなければ上塗り塗料が密着せず、経年で剥がれてしまいます。細部までしっかり処理をします。
下地処理を終えたらマスキングを貼り直し、台にセットしていよいよ本塗り開始です。
予め用意していたマスキングシートを貼り位置に合わせてカットします。
最初にあった位置を確認し、それに合わせてマスキングシートを貼っていきます。
ロゴ入れ塗装が終わり、これで全てのベースコートが完了しました。ただしこのままだと耐久性は殆ど無い為、さらにクリアーを塗ります。
今回は艶あり仕上げで、またクリアーは高品位なタイプの「クリスタルクリアー」をご指定頂きました。高美観、耐擦り傷性、耐UV性、耐薬品性などに優れたスタンドックスのクリアーです。
尚、つや消し仕上げ・半艶仕上げも可能で、ただしその場合もそれぞれ最後にクリアーの塗装が必要です。
この後一晩常温でゆっくり乾燥させ、翌日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させます。
ロゴのサイズと位置は概ね元の通りに、色はオーナー様のオリジナルカラーです。
部分的に塗装をせずに残すというのは結構面倒な作業で、しかもブツ切りで見切りをつけた個所の仕上りはバリなどが出て悪くなりがちですが、今回はその辺りにも気を遣っていますので自然で美しい仕上がりに出来ていると思います。
見切りのマスキングはコート毎に剥がしたり貼り直したりして何度かに分ける事によって美しく仕上げています。最初から最後まで貼りっ放しでこういう仕上りにはなりません。
ドロップハンドルの塗装は予想以上に面倒で、次回はもう少し本塗り時の工程方法を工夫しようと思いました。
塗り難い3次元的なパイプ形状でしたが、全面艶々に仕上がっていると思います。
一番難しい作業はロゴの水平取りで、これがズレるととても大変なので真冬でも全身に汗を掻きます。
オーナー様からは「 いつも楽しくプロフィット日記を拝見させていただいておりました。今回の依頼品をイメージ以上に仕上げていただいて大変満足しております。ありがとうございました。」「 もしかしたら、三年後、四年後に同じパーツと更に自転車のフレーム塗装をお願いするかもしれません。」とのお言葉も頂戴しました。勿体ないお言葉で、嬉しい限りです。