SHURE BETA58Aマイク 本塗り

先日お預かりしておりましたシュアBETA58Aボーカルマイクです。

本体は#500→#800相当の布状研磨副資材(アシレックススカイ→レモン)で研磨し、グリルはナイロンブラシとウォッシュコンパウンドで足付け処理をしてあります。

よく脱脂清掃し、まずは下色として隠ぺい性の高いシルバーを塗布します。具体的にはVWのリフレックスシルバー(LA7W)を使っています(別にSTANDOXの原色で隠ぺい力の高い物=例えばMIX595等をそのまま使えば良いのですが、余ってもまた再利用出来るようこういった使い方をしています)。

続けて輝きが強いメタリック=STANDOX原色のMIX598を塗布します。粗目のメタリックですが隠ぺい力が非常に弱い為、二回に別けているという訳です。

続けて透過性の赤=レッドキャンディーを塗布します。

その後場所を二階に移し、デカール貼りを行います。

今回は円錐部分にロゴを入れる為、いつも使う真っ直ぐの物をそのまま貼ると歪んでしまいますから、予め逆方向にカーブさせた形状のデータを作成しておきます。

念のため2種類×2=4個作成し、一番良い物を使います。

専用の接着剤で貼り付け、よく乾かします。

ここで熱を入れ過ぎるとこの後に塗るクリアーとベースコートとの密着性が悪くなってしまいますから、ここで行う強制乾燥は40℃15分くらいとしておきます。

ちなみに以前、国産系ディーラーの内製工場に勤めている職業訓練学校(自動車塗装科)の同級生から電話があって、「タカハタサンー、僕が塗った塗装、クリアーだけペリペリと剥がれる事があるんですけどなんでスかね?」という相談で色々聞いてみたところ、どうやらベースコートを塗り終わった時点でガツンと熱を入れてからクリアーを塗っていたようです。ブース焼き60℃40分くらいだったと思います。

使っていた塗料は確か関ペのPG80で、これはベースコートにも硬化剤を入れるタイプですから、そこで熱を入れるとベースコートが完全硬化してしまい、その後クリアーを重ねるには再度全体を足付け処理(!)しなければならなく、かといってメタリック・パールでそれをやる訳にはいきませんから(傷が残って見えてしまいます)、まずその熱を入れるのを止めてあげて!とアドバイスしました。ちなみに何故そんな余計な事(というか絶対やってはいけない事)をしているのか聞いたところ、「その後に塗るクリアーが垂れにくくなるからッス!」との事でした。そんな事をしたらむしろクリアーの肌が悪くなると思うのですが、恐らく「肌は磨きで作る!」というようなやり方だと思うので、その辺は深くは突っ込まない事にしました・・・。

そして最後にクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!

ちなみにデカールを貼った場合で乾燥が甘いと熱を入れた時にブクブクと膨れが発生したり(ブリスター)、デカール自体が浮いてきたりします(どちらも経験済みで、それはもう大変な事になります)。

ただ安全策だけを優先すると、その同級生のように後でクリアーだけが剥がれるような事態(層間剥離)が生じてしまうので、その辺のタイミングが難しい所でもあると思います。

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。アルミプレートは接着剤で固定されていて取り外しは難しい為マスキングで対応していますが、そのままだと仕上りが悪くなってしまう恐れがある為、2コート目のクリアーが塗り終わったら直ぐにマスキングを剥がしておきます。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

それでは完成次第改めて紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!