キャノンレンズ アルミリング塗装~完成

canon13 カメラ本体やレンズの塗装についてのお問い合わせは結構あるのですが、分解しなければ塗装が出来ませんので依頼に至るケースは極稀です。分解して直してとなると新しい物が何個も買える金額になってしまいますからね。カビが出たレンズが安く買えると同じ事です(分解してレンズ磨くより新品の方が全然安いですよね)。

ただ今回はちょっと特殊なケースで、以前キャノンのレンズフードをご依頼頂いた方から、「塗装によって何か問題が生じても一切の責任を問わない」と言う条件でこのまま塗る事をご依頼を承りました。ひどい話だと思いますが、内部に塗装ミストが入っても塗装費用はちゃんと頂戴すると言う事もお受付の条件になっています。

ただご依頼内容自体はそんなに複雑な事では無く、「レンズ中央にあるアルミのリングをポッチと同色の赤に」と言う内容で、一応レンズを送って頂いて検証してみた結果50:50くらいの確立で上手く行くのでは無いか?と言う事で作業着手してみる事にしました。

canon14 これならなんとかなるかも・・・と思えたのがリングの隙間にマスキングテープが入った事で、これが出来ない程に隙間が無いとなると綺麗には仕上がらないと思ったので少し安心しました。ただ隙間があると言う事は塗装ミストも中に入り易いという事でして・・・。

canon15 と言うことでまずは足付け処理です。アルミはアルマイト処理が施されているでしょうからそのまま塗っても簡単に剥がれてしまうので#320のペーパーとヘラで表面を削ります。当然ですが粉も出ますので、エアーブローは控えて掃除機で吸うようにして掃除をしながら作業をしています。

canon17 よく脱脂したらプライマーを塗布します。いつも通りですね。ただ内部に塗料(と言うか空気)が入らないようにしたいのでエアー圧は極力下げたいですから今回は最初からエアーブラシ(口径0.3mm)を使っています。

canon18 色はレンズに付いているボッチに合わせて作成した赤で(朱色っぽい)、これは以前レンズフードを塗装する時に作成した物がまだ残っているのでそれを利用しています。

ベースコート塗布後はやはりいつも通りクリアーを塗りますが、今回はキャノン純正らしく半艶クリアーにしました。

canon19 ただマスキングを剝がしてみるとフチの一部で色がちゃんと入っていない箇所も何箇所かありました。マスキングテープで影になっていた箇所もそうですが、アルミリングの上にあるピントリング?はギザギザになっていて、「ギザの谷」になる隙間から元のアルミ地金が見えてしまう箇所も結構あります。ピントリングを動かしてギザギザを半目ズラすと見えなくなりますがそうもいきませんし・・・。と言う事でクリアーが完全硬化してからさいどこの隙間だけを塗っていきます。エアー圧を控えめにした為に隙間の奥にまで塗料が行かなかったと思いますが、ただ責任は問わないといっても何をやっても良いと言う訳では無いですからこの辺は仕方無いですかね。

canon20と言う訳で改めめて赤いリングの上面のみ(といっても画像で説明出来るレベルではありませんが・・・)をスポット塗装して虱潰しにして二度目の本塗り完了です。膜厚がついて稼動が悪くなるはマズイので最初に塗った側面部分は塗っていません。

canon12 そして完成です。もし上手くいかなかったら当然紹介するつもりは無かったのですが(二度とお受付もしませんし)、オーナー様より問題無かった旨のご連絡を頂いたので撮り溜めておいた画像も日の目を見る事が出来ました。ただこれ以外のレンズではお受付しませんのでその点はご了承下さいませ。無理強いされるのは困りますので今回も控えようとは思ったのですが、全く同じレンズで同じ条件(問題が起きても塗装費用は頂戴しなければなりません・・・)で宜しければお受付は可能です。

canon11 オーナー様よりご感想も頂きましたので紹介させて頂きますね。

「火曜日にレンズ無事届きました。なんの支障もありません。ピントも可動式しますし試写しても一切ゴーストも見受けられません。完璧な仕上がりで感激しています。」

との事です。いやー、安心しました。何があっても一切の責任は問わないという事でしたがやはり使い物にならなくなったら残念過ぎますからね。本当に良かったです。

canon10じっくり見てもまさか後からここだけ塗ったとは思えないと思います。しかも密着剤とかで行う簡易的な塗装でも無く、ちゃんと足付け処理をしてプライマーまで塗っているなんて普通思わないでしょうね。各作業で採用した真空引きエアーブローが上手くいったのだと思います(実際は真空にはなっていませんが。笑)。

繰り返しますがレンズに限らず被塗物は分解した状態でのお受付が基本です。こちらで出来る事はサービスで行ったりもしますがそれに関しても一切の保証は出来ません。分解はメーカーあるいは専門でやってらっしゃる方に御願い致します。例外として今回と同じ製品で同じ内容のみお受付はしますがやはりそれでも保証が出来ません。何卒ご理解の程、よろしく御願い致します。