Wilsonテニスラケット サフェ入れ

 先日お預りしておりましたWilsonのテニスラケットです。

 全体にある傷もそうなのですが、経年の為か表面にウネリが出ていますので、今回はこちらも修正したいと思います。

 まずは全体を#120のダブルアクションサンダーで研磨し、

 グロメットが入る側面の溝は、それの形にあった当て板を使って研磨します。

ちなみにこれまで施工したテニスラケットは「コ」の字の形状でしたが、今回は「U」の形になっています。使っている当て板は以前BMW M6のサイドスカートを補修塗装した時の物ですね。

 その後は#180ダブルアクションサンダー、#240手研ぎで全体を均します。グリップが近い箇所は塗膜を完全に除去はせず、フェザーエッジを形成して布状研磨副資材のアシレックススカイ(#500相当)を使って足付け処理をしています。

側面にある穴にはグロメットが挿し込まれる為、膜厚の着き易いサフェーサーが入らないようマスキングをします。

 以前は綿棒の先端を詰めたりしたのですが、繊維のケバケバが気になったので、今回はより確実な方法を行う事にしました。

要らなくなったコピー用紙を小さくカットし、

 全ての穴に詰めました。

昔、新聞紙を丸めてチャンバラごっことかをされた方なら判ると思いますが、丸めた紙の内側をキュっと締めると、紙とは思えないような丈夫な棒になりますよね。こちらもそれと同じで、差し込んだ筒状の紙の穴から棒を挿して広げるようにして回してあげると、穴の径にピッタリ合ってかなりしっかりと固定されます。強烈なエアーブローをしても飛んでいったりしません。

 と言う訳で、台にセットしてサフェ入れ開始です。

 カーボン素材は強化プラスチックなどと呼ばれていますが、樹脂は普通のエポキシなので、プラスチックプライマーを塗る必要はありません。またウェットカーボンは大抵がポリエステル樹脂ですが、こちらも同様です。「密着が悪い」と思う場合は、恐らく離型剤がしっかり取れてはいないのではと・・・(特にカーボンは繊維の目に離型剤が詰まっていてかなり厄介です)。

 筒状にした紙が飛び出るようにする事で、スプレーからのエアーが吹き返しにあい、穴の周りには塗料が着き難く紙が固着しない、と言う作戦です。車の内装のウィンドウスイッチパネルのタバコを入れるような深い窪みの奥が塗り難いのと同じような感じですね(判りませんか・・・)。

 サフェーサーをウェットで6コート程塗りました。

 グリップ近辺はサフェがブツ切りにならないよう、6mm幅のマスキングテープを1/3くらい折り込んで端をヒラヒラとさせ、途中剥がしてずらしながら際を暈すようにしています。

 サフェはかなり塗り込んでいますが、穴の周りに溜まって固着していないのが判るかと思います。ここで段差を着けてしまうと、後でそれを均さないといけない作業があるので大変な事になってしまいます。

 たかがサフェ如きにかなり時間を掛けているかと思うかも知れませんが、いざ本塗りとなるともう後戻りは出来ませんし、失敗したら替えが無いと言うのは結構なプレッシャーなので、出来る事は先にやっておきます。こちらのラケットももしかしたら何かの記念や思い出の品で、同じ型でもこれと違う物では意味が無い!と言う事かも知れませんので・・・。

この後は一晩以上自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて硬化させます。

それでは作業進行しましたらまた紹介をさせて頂きますね。どうぞもう少々お待ち下さいませ!