スバルエンブレムプレート 本塗り

先日メッキを剥がしてクリアーを塗っておいたスバル純正エンブレムのアクリルプレート部分です。その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させておきました。

凹んだ部分はペーパーが入り難いので、ナイロンブラシとウォッシュコンパウンド(液状研磨剤)を使って足付け処理を行います。どんな場合もそうですが、ツルツルの箇所にそのまま塗装をするという事はありません(これは接着も同様です)。

星の部分は「蛍光オレンジ」 で御指定を頂いておりますので、そちらの塗料を作成しました。

STANDOXの原色に「蛍光色」の設定は無い為、こちらの顔料単体の物=パウダータイプの蛍光顔料を使用します。ネット上では比較的有名な顔料なのでパッケージを見れば判る方もいらっしゃると思いますが、一応自動車塗料の販売店から購入した物となります。

ちなみに以前Facebookに投稿されたドイツの塗装屋さんの画像に、スタンドックスの蛍光塗料が写っていた物があるので、もしかしたら欧州の方にはそれが存在するのかも知れません。ただし日本には流通していません。

塗料は「顔料+樹脂+溶剤」(+添加剤)で構成されていて、この顔料を単体で入れ替えればSTANDOXのシステムとして使用可能です。

画像左側にあるのはスタンドックスのベースコート用樹脂(MIX599)で、これに蛍光顔料を10%入れ、蛍光オレンジのベースコートを作成します。尚、粉をそのまま入れるとダマになるので、予めシンナーで溶かしてから樹脂に混ぜます。

ちなみに「マジョーラ」は日本ペイントの商標登録製品で、これに使われている顔料は、米国のJDSU社(現VIAVI)が開発したChromaFlairであり、これを各塗料メーカーが自社の樹脂と混ぜて販売しています。旧DUPONTであればクロマリュージョンカラー、イサム塗料ならTCパールコンク、他にはロッククロマと言った感じでしょうか。

尚、蛍光顔料単体では隠ぺい力がとても弱いので、それとは別に下塗り用の塗料を用います。

下色に使うのは、当店規定の色相環色見本、1時の部分のオレンジを採用します。

よく脱脂清掃し、本塗り開始です。

まずは蛍光オレンジを塗ります。

それと並行して同じ仕様のテストピースと、またそれとは逆に予め色相環オレンジを塗った物に、同量の蛍光オレンジを重ねていきます。本塗りをしているスバルのアクリルプレートを表側から見た状態がどれくらいになっているのかを確認する為ですね。

また念のため保存用の色板も作成しておきます。

蛍光オレンジを4~5コート程塗ったら色相環オレンジを塗って隠ぺいさせます。

同じ様に塗っているテストピースを黒い物の上に置き、下地が透き通っていなくしっかりオレンジ色が発色しているのを確認したらOKです。

・・・が!

芯棒から外したアクリルプレートを表から見てみると、星の先端の箇所に極少量の黒い点のような物が見えます。画像として見ても全く判らない程度なのですが、メッキが完全に取れ切れていない部分があったようです。透明な状態だと光が反射して判り難かったのですが、色を入れて初めて気づきました・・・。

ただこの状態でもよく見なければ判らないという程度で、もしこれが趣味的な物であれば全く問題無いレベルですが、ご依頼頂いた物として見るとどうにも納得が出来ず、結局この後シンナーで全部剥がしてやり直す事にしました。

ただクリアーはシンナーでは落とせないので(母材が溶けてしまうので)、カッターでその部分を彫り込んで除去するか、または新しいエンブレムを用意するかで色々悩みました。

そこから数日間色々と考え、工場のベランダで眠っていた小さいブラストボックスを持ち出す事にしました。実に今の工場に引っ越してから8年間使わずに眠っていた物となります。耐候性の無い焼き付け塗装なので見事に褪色していました。

 

と言うのも、少し前に重曹を使ったウェットブラストを試していて、その時プラスチックに当てても問題無かった事を確認していた為、今回こちらを試してみる事にしました。

一度塗ったオレンジを剥がしてしまうと、黒い点がどこにあったのか判らなくなってしまった為、ガイドコート代わりに再びオレンジを塗ってからウェットブラストを行う事にしました。

最初にテストで行ったドライブラストでは、母材を削り過ぎてしまい大変な事になってしまっていましたが、ウェットブラストではかなり良い具合に出来ました。母材(アクリルプレート)を傷めずガイドコートに塗ったオレンジと、その下に塗ってあったクリアーも削り落とせています。

ドライブラストで一度酷い目に遭っていたのでこれはもう駄目な物だと思い込んでいたのですが、今回の件で改めて再考出来たのはとても良かったと思います(ただそこまで毎日胃に穴が開くような思いをしていましたが・・・)。

尚、周りの平面に残ったクリアーは後にペーパーで削るのでそのままでOKです。

そして今回は残物が無いかしっかり確認出来るよう、水性絵の具の白を用意しました。

隙間までしっかり行き渡らせ、

表から見て黒い粒が完全に除去出来ているかを確認します。

少しでも怪しいと思った箇所は表側から印を着け、再びウェットブラストを当てます。

そしてようやく完全に不純物が取れた状態に出来ました。

正解としては、クリアーを塗る前にウェットブラストを行えば良かった事だと思いますが、ただあの時点でそれは出来なかった訳ですので、今回はよい勉強になりました。

ウェットブラストを行ったお陰で深い傷も除去出来(均せ)、今回はクリアーは塗らず、プラスチックプライマーを塗ってそのまま蛍光オレンジを塗ります。

また表からも視認出来るよう芯棒には固定せず、プレートを直接手で持って塗るようにしました。

胃を掴まれるような思いをしながら何度も確認して歩を進めます。

尚使っているガンはSATAのエアーブラシで、蛍光オレンジは口径0.3mm、色相環オレンジは口径0.5mmを使っています。専用のスタンドが実に使い易く、自作で複製しようかと考えています(懇意にして頂いているオートサプライヤーさんにセットで譲って頂いた物で、多分これ単体では手に入らないかと)。

最初の時と同じく、道先案内人のような感じでテストピースへの塗装も行っています。

テストピースで問題が無ければ、蛍光オレンジの上に色相環のオレンジを重ねます。

周りの部分がガサガサになっていますが、こちらは後で削り落すので問題ありません。

作業途中、地獄のような光景が何度もフラッシュバックしましたが、これでもかと粗探しをしても問題無いのを確認し、ようやくトラウマを解消出来たと思います。

問題無い事が確認出来たので、ここで芯棒に固定して、

クリアーを塗ります。

そのまま直接黒の行程に行っても良かったのですが、もう失敗は出来ないと考え、ここで一旦区切りをつける事にしました。と言うよりもう神経が持ちませんでした・・・。

この後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、さらに数日寝かして締まり切らせ、凹んだ部分以外のオレンジを削り落し、次は黒を塗ります。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!