キーボード&マウスカバー塗装承ってます

pc先日到着しておりましたパソコンのキーボード天板カバー(とその見本)、そしてマウスカバーです。この度のご依頼、誠にありがとう御座います!

pc1ご依頼内容としては見本のようなシルバーにして欲しいと言う事で、であれば「単に塗るだけか」と思いきや実際はそんなに簡単では無かったりするのです。

パソコンに使われている樹脂(プラスチック)はABSなる素材が多く、それ自体は塗装される媒体として比較的良く使われる物なのですが(例えばバイクのカウルなど)、ただパソコンに使われているABS樹脂は何故か比較的「耐溶剤性」が弱いのです。比較的と言うより「著しく弱い」というくらいで、どちらかと言うと耐溶剤性の弱い「AS」なる樹脂に近いと感じます。

パソコンを使う方なら良く判ると思いますが、使い込まれたキーボードはそのキーボタンが最初はザラザラだった物が「ツルツル」になっているのに気付いたことがあるかと思います。「俺のタイピングはキーを磨耗する程激しいゼ」なんて思われているのは実は勘違いでして(爆)、それは油脂によりプラスチック樹脂が侵されているのが原因かと思います。勿論摩擦も関係しますがそれだけであのザラザラがツルツルになってくれるのであれば塗装屋の下地処理はもっと楽な筈ですので。キーの表面は削れているというより「溶けている」に近いのだと思います。

結果、塗装による溶剤ではさらに素材を侵してしまうので、下地の影響を受け易い「シルバー」をそのまま塗るのは危険なのです。故に今回は直接シルバーは塗らず一旦それに耐えられる下地を造ってからの本塗りとなります。

ちなみに樹脂素地が溶剤によって侵される事が必ずしも悪いという事では無く、そもそもABSが塗装に適しているという事はその特性を利用して塗料の密着性を良くしていたりもするのです。バイクのカウルの塗装などは恐らく新車塗装の段階で足付け処理などはしていないと思いますから、それでも塗装が剥がれないと言う事はそういった理由からだと思われます。

pc2そして大変な姿になっているマウスカバーですが、こちらはオーナー様自らが自家塗装にチャレンジしたとの事でして、この事からも「単に塗れば」と言う事では無いのが判るかと思います。

と言ってもこちらは樹脂素地では無く、恐らくその表面にゴム状の皮膜「ラバーコート」が施されていたのだと思います。フェラーリやVWビートルの内装などによく使われているアレですね。最初は肌触りがシットリしていて良いのですが年数が経つとベタベタに溶けて収拾が付かなくなる皮膜です。塗装業界では有名ですね。劣化する前であれば比較的そんなに難しく無い方法で対応が出来るんのですが、ここまでとなると低溶解の溶剤を使ってネチネチと剥がしていくしか方法がありません。勿論その後は下地を平滑に整える為の処理も必要なので結構大変です。

ちなみに以前同じ様なご依頼がありましたので参考までにそちらを紹介させて頂きますね。

pc3元々はシルバーに塗られた物を白とグレーの艶消し仕様でご依頼頂きました。2色なので結構お金が掛かっていたと思います。

pc4キーボードは天板と底板、その他小物パーツも塗っています。

それでは作業進行しましたらまた紹介させて頂きますね。改めましてこの度のご依頼、誠にありがとう御座います!