cannondale system six carbon frame

cannondale 以前ご依頼を頂いたキャノンデールのsystem sixです。

cannondale1 現状は腐食がひどく、塗膜が浮き上がってしまっていました。尚、素材はアルミとカーボンのハイブリッドです。

cannondale2 塗装を剥がしてみるとここまでアルミが腐っていました。

ちなみにこのフレーム、ここの腐食の修理も含め一年前に全塗装されたばかりとの事です。

cannondale3たった一年で再発してしまった原因は、浸食されて根深く入った腐食をしっかり取り除いていなかった事と、その際の防錆処理方法も甘かったのでは、と思われます。

cannondale4 先ほどの腐食をシングルサンダーで削り落とした状態です。パッと見は綺麗に見えますが、根本的な解決にはなっていないのでこのままプライマー(防錆塗料)を塗っても意味がありません。多分前回はこの状態のまま塗装工程を行われていたのはないでしょうか。

cannondale5 また今回の塗装でオーナー様が気にされていたのが「重量」で、新車のカタログ値は「1115グラム」との事ですが、現状で「1211.2グラム」となっています。尚この時点では先ほどの画像のように既にパテ部分を削った状態なので、実際これよりももう少し重かったと思われます。

cannondale6 ワイヤーガイド(アウター受け)などの付属品を外します。

cannondale7 旧塗膜をダブルアクションサンダーで削り落とします。

cannondale8 さらに手作業で塗膜を削り落とします。

cannondale9 この状態で1049.0グラムです。最初の状態から162.2グラム減りました。これは新車塗膜とその上に塗られた塗膜、そしてアウター受けなどの付属品の重さの分です。

cannondale10 カーボン素材にサンドブラストは当てられませんが、腐食した箇所は出来る限り根元まで削り落とします。

cannondale11 旧塗膜の剥離と素地調整が完了です。

cannondale14 今回腐食していた箇所が再発する可能性が高い為、下地には耐食性の高い浸透型エポキシプライマーを使用します。特に腐食がひどかった継ぎ目の部分には奥まで行き渡るようにしました。

cannondale18その後熱を入れて完全硬化させた状態です。

cannondale19 そして腐食が酷かった箇所の補修です。

cannondale20 隙間には構造用接着剤を充填しますが、一応その周りにもグラスファイバーを巻いて補強しておく事にしました。画像は仮止めです。

cannondale21 継ぎ目の奥まで接着剤を充填し、さらにグラスファイバーを巻いて接着剤で固めます。使っている接着剤は3Mのパネルボンドです。

cannondale22 さらにパテで形を整え、一旦重量を計ってみました。1073.9グラムでした。エポキシプライマーとエポキシ接着剤・パテの重さが24.9グラムと言う事ですね。

cannondale24グラスファイバーを巻いて補強した箇所は一段高くなるので、本来であればパテを使って段差をスムースに整えたいところでしたが、今回はオーナー様のご希望として重量を抑える必要があったので、ここは敢えて段差を残しフランジ状にして仕上げました。

またサフェーサーの塗装範囲もフレーム全体では無く、パテ処理をした部位のみに留めています。下塗り用の塗料は上塗り用のそれに比べて比重が大きい為、この辺はかなり徹底しました。

cannondale12 外したアウター受けは腐食が酷い物もありましたが、代替品は無かったのでサンドブラストをして再利用とします。

cannondale27サンドブラストで塗膜と腐食を除去した後、こちらも同じく浸透型エポキシプライマーで固めます。こうなる前に持って来て頂ければと思いましたが、これだけでも残っていただけでも幸いだったかも知れません。

cannondale25グレーの部分は耐食性の高いタイプのエポキシプライマー で、白っぽい部分は通常の2液ウレタンサフェーサーです。全体の研ぎも終わり、塗れる為の準備は整いました。

cannondale33 その前に最初に外したポップナット(ブラインドナット)を取り付けておきます。最後に打ち込む場合もありますが、今回は腐食しないさせないと言うコンセプトがあったので塗装前に着けておきます。

尚、通常は右奥のポップナットを使っていますが、今回はカーボンチューブに打ち込むので極力トルクを入れて締め付けなくても済むよう(後で空回りしないよう)接着面がキザキザになったローレット状の物を使います。

cannondale28 ポップナットを打ち込む前には足付け処理を行っておき、構造用エポキシ接着剤を塗って空回りの防止と防錆効果を期待します。

cannondale29 食み出した接着剤をシンナーで綺麗にふき取ります。その他外しておいたアウター受けも同じように取り付けておきます。

cannondale30 本塗り前に重量を計ると1108.4グラムでした。

cannondale31 ヘッドチューブのエンブレムは元々アルミ製の物が付いていましたが、軽量化の為にここは塗装に変更しました。

cannondale32 各ロゴ入れ塗装の準備もOKです。今回は隠ぺい性の事からマスキングは雄型を利用します。

cannondale34 そしていよいよ本塗り開始です。良く脱脂清掃をし、最初はまずロゴの部分を白で塗っておきます。

cannondale35 最初に塗った白がテープフリーの状態になったら各ロゴのマスキングシートを指定箇所に貼っていきます。この時点では被塗面に直接手を触れないようにしているので、正直ここが一番疲れます。

cannondale36 その後ベースカラーとなる黒を塗り、すべてのマスキングを剥がしてクリアーを塗って本塗り完了です。

白の上に黒を塗り重ねる事によって膜厚を少なく出来るので、ロゴ部分の段差を軽減し、且つ重量も抑えられると言う寸法です。

cannondale37完成後に重量を計ってみると、総重量は1141グラムでした。入庫時よりも70.2グラムの軽量化で、新車時に比べると26グラム増でした。腐食した箇所の補強に使ったエポキシ接着剤の分を入れてもこれで済んでいるのであれば許容範囲かと思われます。

cannondale38 完成画像です。

cannondale39 cannondale40 cannondale41 cannondale42 cannondale43 cannondale44cannondale45納品してから一年後、オーナー様よりその後の経過をご報告頂きました。

cannondale46「再塗装後1年が経過しましたが、修復部の状態は特に問題は出ていません。本当にありがたく、感謝しております。

今年の5月に3時間のエンデューロレース前に撮影した写真と本日(8月25日(日))を添付致します。

今でも時々プロフィット日記を拝見させて頂いています。色々なものを塗装されていて、高畑様の職人の技にいつも感動しています。

またご連絡をさせて頂きますので、その際はよろしくお願い致します。」

との事でした。

構造上継ぎ目の奥までは処理し切れませんんから、強度やその後については保証は出来ない旨を事前にお話しはしておりましたが、その後の状態は悪くは無かったようで本当に何よりでした。

尚もし今同じ作業をするのであれば、グラスファイバーの代わりにエポキシ樹脂を浸したカーボンを巻いてラップ&真空引きで対応するかもですね。