日本に在住する外国人の方からのご依頼は何度かありましたが、海外からのご依頼は今回の案件が初めてでした。
ご依頼内容はこちらのBMW E30 M3 EVO2のヘッドカバーとサージタンクを、現状と同じくMカラーでの塗装となります。
パッと見は綺麗なのですが、至る所に下地からのクラックが生じています。
こうなると上から塗り重ねても意味が無いので、一旦全部剥離して下地からやり直す必要があります。
サージタンクの方は小傷はありますが塗膜自体は生きているので剥離はせず進行しました。
ただし既存の塗膜の肌はとても悪いので、下地処理は全体に及びます。
塗装を剥がす前に各部を数値としてデータ化しておきます。塗装を剥がしてしまってから見本となる物が無いとなったら後の祭りですからね。
またネットで色々調べてみるとMカラーにはそれぞれ色名・カラーコードが存在し、当店で使っているSTANDOXのサイトで調べてみたら配合データが存在する事も判りました。これでオフィシャルの色を作製する事が可能となりました。
同じくサージタンクの方も各部を計測して数値データとして残しておきます。
データにさえ残しておけば、今後何もない所からでも同じような塗装が可能となりますし、また部品が違っても応用は効くと思います。
サージタンクの凸文字はクリアーの下で菌糸状の腐食が出ていましたが、それらも削り落としておきました。
既存の肌が悪いので、サイズまで砥ぎ付けて平滑にしておきます。
ヘッドカバーは旧塗膜を全て剥がすので、廃シンナーを貯めた溶剤槽に数日浸け置きして塗膜を柔らかくしておきます。
その後ワイヤーブラシやスクレーパーを使って塗膜を完全に除去します。
その後アルミ素地表面の化成処理としてリン酸処理を行っておきます。
旧塗膜を剥がして出て来たアルミ素地は表面が凸凹とした梨地で、これを平滑な下地に仕上げなけれなりません。
プラグホール周りは何度もマスキングするのが面倒なのでマスク型を作る事にしました。
作製したベクトルデータからレーザー加工機を使って6mmのMDF板をカットします。
こんな感じでマスク型の完成です。これで何度も貼ったり剥がしたりする必要が無くなりました。
サージタンクは旧塗膜は剥がさず、小傷を研磨して平滑にしておきます。 裏側も塗るので簡易的な台も作製しました。
サフェは裏側までしっかり塗り込みます。車体に装着されれば裏側は見えませんが、この状態でお渡しする以上見えない裏側もしっかりと仕上げる必要があります。
通常周りのボルト穴も一緒に塗りますが、今回は最初の状態でそこが塗られていなかったのでそれに倣います。
このザラザラな梨地を下地の段階で平滑に仕上げなければなりませんので、サフェ―サーはかなり充填する必要があります。
一度に厚塗りすると問題を発生するので、コート毎に十分なフラッシュオフタイム(乾燥時間)を設けて幾層にも塗り重ねていきます。
マスク型のお陰でプラグホール周りのマスキングも楽に行えました。マスク型はこの後の本塗にも使うので、トータルでかなりの時間短縮になったと思います。
本塗り編に続きます。