SHURE SM58マイク カモフラ塗装 本塗り

先日色の検証をしておりましたSHURE SM58マイクです。その後オーナー様の希望によりグレーを濃くする事となりまして、改めてイメージイラストを作製しました。画像一番右が当初想定していた色で、その後一番左の濃いグレーの仕様となっております。

 イメージイラストを参考にして色見本帳から近似色を選び、配合データから色を作製します。

と言う訳で、今回はこちらのRAL 7016 ANTHRAZITGRAU(アンスラサイトグレー)を採用する事にしました。

尚、RALカラー色見本帳はドイツ製品で、同じくドイツのメーカーであるSTANDOXには配合データがありますが、恐らく国産塗料にRALカラーの配合データは存在しないのでは、と思った次第です。一応ロックで調べてみましたが確認出来ませんでした。ただその代わりニットコウ(日本塗料工業会)の色見本の配合データがあるようで、むしろこれは羨ましい限りです(SATNDOXにはありません)。

 そして本塗り開始です。いつものようにマイク本体は#800相当(アシレックスレモン)で足付け処理をし、グリルボールはペーパーだと網が重なった奥までは届かない為、ナイロンブラシとウォッシュコンパウンド(液状の研磨材)を使って処理しています。

 まずは一番濃いピンク(マゼンタ)から始めます。

尚、今回は今までやっていない「一部をグレーに置き換え」と言う塗装なので、いきなり本塗りを行う程の勇気は無く、予め色板と色見本用のマイク(樹脂による複製品)を先に塗りながら作業を進めていく事にしました。道先案内人のような感じですね。

 次は、最初に塗ったよりも少し明るいピンクを塗ります。

 同じくグリルボールのリング部にも塗ります。

 こちらは色見本用のグリルボールで(御依頼品は奥の物です)、先にグレーを塗り、その後ピンクを塗りました。

と言うのも、実際にグレーとピンクの組み合わせがイメージイラストと合っているかを確認したかったからで、この時点で具合が良くなかったらグレーは新たに検討し直そうかとも思っていましたが、問題無いようで安心しました。

 同じ様にして、再びカモフラ柄にカットしたマスキングシートを貼っていきます。

そしてさらに明るいピンクを塗ります。これで三色目ですね。

尚貼ってあるマスキングシートは一度も剥がさず、それぞれの色を塗った上に貼り重ねていくと言う方法になりますので、この塗り方だと大分膜厚がついてしまい段差が出来るので本塗りは二度に別けて行います。

 そして最後のマスキングシート貼り付けです。

本来はここで一番明るいピンクを塗るのですが、

今回は一番薄いピンクをこちらの濃いグレーへの置き換えで承っておりまして、ただ実際にこれがどうなるのかは私も判りませんから(前例がありませんので)、まずは本番の奥のマイクを塗る前に手前のサンプル用の物を塗って確認する事にしました。イメージイラストは勿論良い参考になるのですが、実際に塗るのとはやはり違いますからね。

 と言う訳でまずは色板(薄いスチール製)のマスキングを全て剥がしてみました。予想以上に良い具合だったので安心しました。

続けて色見本用マイク(自家製)のマスキングを剥がしてみました。

こちらも問題無いようなので、これでようやく奥の本物を塗れる!と言う訳です。石橋を叩いて渡るシステムですね。

 そしてベースコートが完了です。左が色見本(樹脂製)、右が本物のマイク(御依頼品)となります。

同じくグリルボールもベースコートが完了で、左が本物で右が色見本用(OEM)となります。

 最後にクリアーを塗って下塗りが完了です。

 カモフラ塗装はオス型のマスキング&塗り重ねていく方法になる為、このように塗装の段差が激しくなります。私的にはこれが一番嫌いな仕上りで、ソリッドカラーならまだマシなのですが、メタリックでこれをやった場合、いくらクリアーを平らに研いでもその段差は永遠に見えてしまう為、ちょっと残念な仕上りになってしまいます。なので通常は色の隠蔽力を考えて塗る順番を決め、極力段差をつけないような塗り方を基本としています(カモフラ柄に関してはそうもいかない訳でして)。

 クリアーは多めに3コート塗ってあって(通常は2コート)、この後熱を入れて完全硬化させたら全体を#800~#1500で研いで段差を平滑にし、「SHURE」のロゴをデカールで貼って次は艶消しクリアーでの本塗りとなります。

グリルボールはこちらで完了なのでクリアーは艶消しを塗っています。「本体の方もどうせ研ぐなら一緒に艶消しクリアーを塗れば良いのでは?」と思うかも知れませんが、艶消しクリアーにはシリカゲルが入っているので色が白くなるのを防ぐ為です。グリルボールに比べて本体の方が白っぽくなったら嫌ですよね。

ちなみに時々「艶消し黒」で塗られている自転車フレームに、「クリアーだけ塗って艶々の仕上りにして欲しいのですが」といったお問い合わせを頂きますが、これと同じようにそのままクリアーを塗っただけでは黒だった物が「グレー」になってしまいますので全くお勧めが出来ません。また足付け処理無しで上からクリアーを塗るような事は当店では行っていませんので、お受付自体が出来ないケースが殆どです。何卒ご了承下さいませ。

それではまた作業進行しましたら紹介をさせて頂きますね。どうぞもう少々お待ちくださいませ!