メルセデスベンツR129 V12エンジンのインテークマニホールドです。こちらと一緒にご依頼頂いたタペットカバーは紫の結晶塗装で、こちらは艶々のオレンジ(!)でのご指定となります。
素材はアルミニウムで、純正の塗装が残っているのですが状態は余り良くありません。
塗装がシルバーなので余り目立ちませんが、所々で塗装が剥がれ、その下からは腐食が見受けられます。
これをサンダーで削るのは現実的では無く、かといって当店の吸い上げ式サンドブラストでは能力が足りないので、いつもお世話になっているブラスト専門ショップさんにお願いする事にしました。多分相当大変だったと思います(本当にいつも有難う御座います)。
強力な直圧サンドブラストで旧塗膜も腐食も根こそぎ削り落として貰っています。
ただし今回のご依頼は「艶々仕上げ」ですので、この砂型鋳造特有の「梨地」を平滑にしなければならなく、まだまだ先は長く続きます。
そのままだと傷が深いので、ダブルアクションダンサーで均します。
各部のマスキングは通常テープやシートを使いますが、この時は6ミリ厚のMDF板をレーザーで丸くカットした物を作製しました。
表側も同様にウェットコートで5~7コート塗り重ね、しっかりと溶剤を揮発させたら60℃40分程度の熱を掛けて硬化させます。
サフェーサーが完全硬化したらまずはダブルアクションサンダーを使って肌を落とします。この時使うペーパー番手は#320・#400・#600で、空研ぎで行います。
その後エアーツールが入らない箇所を#400・#600・#800程の耐水ペーパーを使って水研ぎします。
今は自分で下地から上塗りまで行うのでどの作業も先を見据えて出来ますが、小僧(見習い)の頃はこういった下地処理ばかりが延々続くので、この時点で塗装の仕事が嫌になって辞めていってしまう方が多いです。実際は下地の方が奥が深くて楽しいんですけどね。
本塗りは裏と表を同時に行う為、それに対応したセッティングを行います。
今回のインマ二は左右のバランスがとても良く、中央に2×4材をビスで固定してまるでシーソーのようにして塗りました。
色については、以前施工したインテグラのヘッドカバーのオレンジにと言う事で、それに近い色を色見本帳から選んでいます。
ベースコートを塗る前に、サフェ研ぎ時に露出した素地部分にプライマーを塗布します。ピンポイントでグレーになっている箇所がそうです。
スプレーガンのパターンは一番細くした状態にして、細部はもちろん、全ての面を均一に丁寧に且つ激しくスピーディーに塗り込みます。
2液ウレタンクリアーは思ったよりも塗装面の乾燥は早く、モタモタしていると塗装ミストが馴染まなく肌が荒れてしまいます。かといって塗り過ぎれば当然垂れますので、その日の気温・湿度、被塗物の形状や面積によって硬化剤やシンナーを選んで適切な塗装を行うようにします。
上塗り塗装後にも60℃40分程度の熱を掛け、その後は必要に応じて磨き処理を行います。
クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーを使用しています。
艶々な仕上がりは偏に下地処理のお陰です。上塗り5%、下地に95%といったところでしょうか。
その後無事エンジンにも搭載されたとの事で、オーナー様から画像とご感想も頂いております。こちらのレビューページでご確認頂けますので宜しければご参照くださいませ。