自動車部品に施されているメッキは殆どが装飾クロムメッキで、耐摩耗性・耐蝕性に優れる反面、塗装がし難い素材となります。
それ故に下地に「密着剤」といったスプレー糊のような物を使って塗装される事が多いのですが、そういった方法で塗装された塗膜は経年で劣化して剥がれたり、また十分な密着性が保持出来ていないので他の部品に比べて飛び石による傷が多く見られます。
ですので当店ではそういった密着剤の類は使用せず、塗料本来の性質で塗膜が密着するよう、メッキ素地用の下地処理を施した上で「下塗り・中塗り・上塗り」を行っています。
ただしその分手間と時間が掛かる為、通常の素材(鉄やアルミやプラスチック)に比べるとどうしても下地処理費は大きくなってしまいます。何卒ご理解下さいませ。
中塗りは通常のウレタンサフェーサーとなる為、こちらはいつも通り研磨して下地を平滑に整えます。黒い点々は研ぎ具合を確認する為のガイドコートで、サフェーサーの研磨は空研ぎ・水研ぎどちらかをケースバイケースで行います。
ベースコートにはスバル純正色の「クリスタルブラックシリカ」(カラーコード:D4S)を塗り、クリアーは高品位なタイプの「クリスタルクリアー」を使用しています。
クリアーはオプションで変更が可能で、STANDOX社のクリスタルクリアーは高美観・耐UV効果・耐擦り傷性・耐薬品性などに優れたクリアーです。宜しければ併せてご検討くださいませ(半艶・艶消しには対応しておりません)。
この後一日常温で自然乾燥させ、その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させます。
尚、簡単な分解や組み付けはサービスで対応しておりますが、その際に生じた破損等には補償が出来ませんので、ご懸念の場合にはお客様自身で分解し、塗装する部品のみをお預け頂けますようお願い申し上げます。
遠目だとソリッドカラーの黒に見えますが、近くで見ると粗目のメタリックやパールが入っているのが判ると思います。
メッキ素地に密着剤を塗って直接上塗りを行えば作業は非常に楽なのですが、一度剥がれて来ると再塗装は難しくなるので(部品の交換となる為)、塗装を検討される場合には見た目だけでは無く下地処理の作業内容なども調べる事をお勧めします。
時々「クリアーの硬度が云々」といった事を聞きますが、それは塗装の密着性には関係がありません。また日産のスクラッチシールドやメルセデスのナノクリア―は樹脂を軟質性にして傷を付き難くしたり復元したりします。硬さ=塗膜の強さと勘違いをしないように気を付ける必要があるかと思います。