5年くらい前にご依頼頂きましたSURLYのフレームとフォークです。別件でフォルダーから画像を探していたところ当時の元画像を見つけて、一応一連の流れが揃っていましたので改めて纏めて紹介致します。
旧塗膜の剥離方法としては、最初は要らなくなった溶剤に浸け置きしてある程度塗膜を剥がし、その後細部に残った個所はサンドブラストを使って剥がします。
全体的にサンドブラストを当てて足付け処理も行われた状態です。塗膜は隅々まで落としてあります。
下地処理についてはご要望により耐蝕性の高い「重防錆仕様」などが選べます。使用する環境やご予算に応じてどうぞ。
各個所の塗り分けについてはオーナー様自らイラストを作成され添付して頂きました。
色については見本としてこちらの漫画本を添付して頂き、さらにオーナー様のご希望に応じてホワイトパールを入れた2コートピンクパールを作製します。
ピンク自体はホワイトをベースに赤の原色を2~3色程度混入して作成します。
ホワイトパールは通常リキッド(液体)タイプですが、この時はまだ粗目のホワイトパールがパウダータイプしか無かったかも知れません。今だとMIX826が該当すると思います。
明度が高い色にホワイトパールを入れても効きが悪いのですが(それ故にホワイトパールは3コートとなるのです)、それでも普通のピンクとは若干の変化を感じられます。また恐らくこの時はマイクロチタンホワイト(MIX810)も入れていて、この色自体は白なのですが、表面で黄色味が出て透かしで青味が出ると言うフリップフロップ性のある透明な白です。
また黒については、「しっかりと黒い感じであればお任せで」、「パールが入れられれば」とのご希望がありまして、ただ黒にパールやメタリックを入れるとどうしても白っぽくなりますので、出来るだけ黒さを保ちつつパンチを効かせるという事でこの時はガラスフレークを採用しました。
そして本塗り開始です。塗る順番としては隠ぺい性~仕上がりの事を考えてセオリー通り淡い色から塗り始めます。
黒く塗る部分にピンクを塗る必要はありませんが、ミストが飛ぶと密着性が落ちたり艶引けの原因となるのでスプレー方向を考えて丁寧に塗ります。
ベースコートのピンクパールを十分自然乾燥させたらご指定通りの位置でマスキングを行います。
マスキング際をよくみると若干ピンクが残って見えるのはスプレー方向がマスキング側(画像だと左側)からしか塗っていないからで、髪の毛一本分程度の幅しかありませんが、ここでベースコートの「ボカシ」が出来ています。これによりブツ切りマスキングの段差を緩和させられるので、クリアーを塗った後も綺麗に仕上がります。
最後の1コートはセオリー通り被塗面に垂直にスプレーし、ピッタリとした見切り線として塗りあげます。
フェンダーの方も同じようにマスキングし、2トーンカラーに塗り分けます。
ガラスフレークの特徴は輝きの鋭さで、太陽のような強い光に当たるとガラスらしい輝き方をします。レクサスの黒などにも使われているみたいですね。
印刷物のピンクに比べると発色は足りませんが(そもそも違う物ですので)、ただのピンクに比べるとホワイトパールの発色(反射)によりそれらしいイメージには出来たと思います。
光に当たった時にはガラスフレークが輝き、黒の深みを殆ど損なう事無くアクセントを醸し出しています。
自ら色を決め、イラストまで描いた物が実際に立体物となれば、思い入れも相当の一台になったかと思います。自作したイラストを額装して漫画と一緒に壁に飾っておいたりしても画になりそうですよね。