そうだ、小物塗装屋になろう⑥(仮)

ferrari (1 - 1)今回は先日紹介した「間借り」についての続きを予定していましたが、ちょっと脱線して今回は「仕事の意味」みたいな事について紹介しようかと思います。「番外編」みたいな感じですかね。小物の塗装屋になる事とは直接関係無い事ですが、私には結構大事な事でしたので。

実は私は昔から働く事が好きでは無くて(そ、そうなんです)、アルバイトをしていた頃から余り長続きした職種は無かったのですが、塗装の仕事をするようになって、さらに独立してからはそう言う考え自体が無くなったと思います。多分働くのが嫌いだったのでは無く「遣り甲斐」みたいなのを見付けられなかったのだと思います。

しかし今では「どうやったら人生の終焉まで働き続けることが出来るか!」とさえ考えるようになったので、今の塗装の仕事を見つけられたのは相当ラッキーだったんだなと思いますよ。

mercedes11さらに独立してからはB to B(企業間の商取引)では無く、一般ユーザーから直接依頼を受けるB to Cを目指すことにしました。単に下請け的な仕事では無くそういった形態の方が絶対に仕事は楽しいですし、モティベーションも維持され易いですから、これのお陰で勤めていた時にずっと感じていた「やらされている感」と言うのは全く無くなったと思います。

昔は会社や上司に対する愚痴みたいなのも当然ありましたが、今ではそう言うのは一切なくなりましたからね~(と言うか愚痴る対象が居ないと言うだけといかも知れませんが・・・苦笑)。

eva_1 (1)そして現在行っている「小物の塗装」ですが、これは基本的には車を塗っていた頃と余り変わらないのですが、ただ仕事の殆どは事故車を直すような事では無く「趣味の世界」の事なので、マイナス的な事では無くプラス的な要素が強いお陰か比較的楽しんで仕事が出来ていると思います。ただプレッシャーの掛かり方は以前より増している気がしますけど(怖)。

gshock15この時御依頼頂いたCASIOのG-SHOCKは非常に柔らかい素材で、塗り方としてはフルフレキシブル仕様(軟化仕様)の塗装で対応しましたが、こういった技術は特段特殊な事では無く、一般的な自動車塗装屋さんなら誰でも出来る事です。ちゃんとマニュアルにも書いてあります。

ただやった事が無い事に関しては、何かあった時のリスクを考えると手を出さないのが賢明な筈で、ただ「他に引き受けてくれる所が見つからない」と言われたらついやってあげたくなるのが普通ですよね。当然失敗して凹む事もありますが、上手くいった時の達成感は半端無いので、手先の器用さに自信があるなら小物の塗装は是非お勧めの職種だと思います。(と言いつつ罠に嵌める感じで。笑)。

bmw385 (1)こちらは先日御依頼頂いてお納めしたBMWの内装スイッチで、完成して届いたその日にオーナー様からご連絡を頂き「まるで製品そのままで、これが塗った物だなんて全く判らないですよ!」とお喜びの言葉も頂戴しました。そうなんですよ!やっている事は塗装なのですが、「塗ったとは思えない」と言う事こそが一番理想的な事なので、こういった言葉を直接聞けるのが今の仕事をしていて本当に有り難い事だと思います(勿論そうでは無い事もあると思いますが)。

eva (1 - 1)ちなみに私の場合は独立してからは労働時間が長く、休日も人よりは少なくなったと思いますが、それらは決して縛られていると言う感覚は無く、むしろ自分のやりたい事が出来た充実した時間になっていると思います。勿論少し強がり的な所はありますが(笑)。

しかし一生の内に仕事が占める割合は大体3分の1くらいだと思いますので、それだったら嫌な事をやるよりも少しでも好きな事が出来れば絶対楽しい人生になると思うんですよね。しかもそれが人に喜んで貰える事であればこれ以上の事は無いですよ!と思う次第なのです。って、まあそれはちょっと言い過ぎかも知れませんが(笑)。

と言う事で、次回は再び 「間借りのメリット」か、または仕事の取り方(営業方法)を紹介したいと思います。

そうだ、小物塗装屋になろう⑤(仮)

img166独立してからの仕事の獲得方法(営業)の前に、やはり仕事が出来る環境が大事だと思いますので、まずは「間借り」の良いところについて紹介したいと思います。

会社の設立については特に場所が必要では無く、例えば自分の自宅を所在地にすればよいのでこれについては特にお金が掛かる事はありません。大量生産化したいと言うなら話は別ですが、小物の塗装なんて個人事業で十分です。

が!、作業場(工場)を構えるとなるとある程度纏まったお金は必要で、売上げの目処が立っている事業であればそういった初期投資も問題無いのですが、余り前例の無い事や、売上げが明確では無い場合は結構難しい所があると思います。

自分の土地でやるならリスクは少ないですが、月々の家賃が掛かるとなると一気にハードルは高くなり、仕事が無いだけならお金が入ってこないだけですが、何もしないでも毎月数十万円が消費されればあっという間に破産です。

img174本格的な自動車補習塗装の設備をそのままのレベルにと考えると初期投資が1000万円掛かるなんてザラですが、既にそういった設備が整った自動車板金塗装工場に間借りをする事が出来れば、初期投資は非常に少なく、また月々の家賃も相場よりもかなり安く済むことが可能になります。

今回のこのページに掲載している画像はどれも私が以前間借りをしていた川崎の自動車板金塗装工場のTACさんで、塗装ブースだけでも工事費を入れれば1000万円くらいは掛かる筈ですが、間借りであればこういう設備も利用させた貰う事が可能です。保険修理が存在しない小物の塗装で最初からこの設備を入れるって言うのは中々難しいですからね。

img2221またさらに間借りであればそこで請け負っている仕事の一部を依頼されたりする事もあります。

上の画像は車体のどこかを塗る仕事だったと思いますが、テールランプのスモーク塗装については私がいつもやっている事なので任せて貰えました。

特に営業活動をしていなくても自動的に仕事を確保出来るのですから、独立したばかりの時であればこれ程助かる事は無いと思います。

img402また私が間借りしていた工場には、私と同じくような形態でブレーキを専門に扱っている方が居りまして、上の画像のように中古品のブレーキキャリパーを再生させて販売する際の作業の一部として塗装は私が請け負っていました。

また逆に私が請け負ってブレーキ屋さんに洗浄から旧塗膜の剥離(サンドブラスト処理)などを御願いする事もあり、こんな感じで間借りには色々メリットがあります。

img246ちなみに車を塗っている工場であれば当然ブレーキキャリパーも塗る事は出来ますが、そもそもの工場の作りが車体向けに構築されている場合、こういった小物で採算を合わせるのは難しいです。

これは私的な見解ですが、小さい仕事を受けるメリットとしては、その後の大きな仕事、例えば保険修理といったおいしい部分が無ければ殆ど意味は無い(むしろやりたくない)のが普通で、そういった点では板金塗装屋さんにしても小物塗装屋の存在は有り難い筈だと思います。

zoff3ただこの「間借り」に関しては、小物の塗装をするからといって「自動車板金塗装工場」に間借りしなければならないと言う訳でもないと思います。例えば私が老後に目指しているメガネフレームの塗装のように、そこまで対称が小さければ極小型の塗装ブース(と言うより単なる換気扇) さえあれば良い訳ですし、またはデザインに特化した塗装であればそっちの方をメインにし、もし最後にクリアー塗装が必要であればそこだけ他の塗装屋さんに任せてしまえば良いのです。海外のカスタムペインターなんかはむしろそれが一般的らしく、彼らはエアーブラシで絵を描くだけに専念し、最後のクリアー塗装は別の塗装屋さんに外注として委託したりするらしいです。そういう形態ならオフィスの一画でも仕事は出来たりしますよね。

とりあえずこんな感じですが、間借りについてのメリットはまだまだありますので、出来ればこれについては後日もう少し紹介したいと思います。最初に「副業としての小物塗装」なんてやり方についても少し触れていますが、そんな感じで今の仕事をやりつつ、しかもその職場の一角を間借りして独立する!みたいな事でも良いと思います。どうせ先が見えないなら楽しい事をやる方が絶対良いですからね(と言うのが私の理念みたいなものでして)。

そうだ、小物塗装屋になろう④(仮)

mini193前回からの続きで今回は「間借りについて」を紹介しようと思ったのですが、ちょっとその前に「技術的な事」を紹介しようと思います。

私の場合は元々自動車の塗装屋だったので塗装の技術についてはある程度出来ていましたが、実はディーラー勤務の時は本当に「塗るだけ」しか出来なかったので、それ意外の部品の脱着や分解、板金作業、金属の溶接やFRPの修理などの技術については独立してから覚えました。ちなみに独立した時は板金屋さんと一緒に立ち上げたので、その時点で私は塗装だけ出来れば大丈夫でしたから、例えば自分一人では全ての事が出来ないとしても志を共にしてくれる仲間(共同経営者)が居れば何とかなったりするのです(ただし私的見解ですが)。

上の画像は私がまだ自動車塗装屋(兼板金)をやっていた時に作業した、錆びる事で有名なローバーミニで(ボディが亜鉛鋼板じゃ無いのであり得ない程錆びるのです)、フロントバンパーを留めているフランジが錆びてしまったのでスポット溶接してあった箇所を外して交換しているところです。折角新しい物に交換したのにまた錆びるのは嫌ですから、この時はスポット溶接と構造用エポキシ接着剤(3Mパネルボンド)を併用したウェルドボンディング工法で付けています。塗装の届かない溶接した部分が直接エポキシで覆われるって凄く理想的ですよね。こう言う事も後から覚えました。

ferrari46 また今は普通に塗っている結晶塗装についても覚えたのは独立してからで、これに限る事では無いのですが、後から覚えた事の殆どはその時出来ない事でも、何とかなるだろう何とかしようといって引き受けた結果得られた物だったと思います。出来る事だけをやっていたら成長できませんし、仕事としても面白く無いですからね。

profit21 ただ塗装の仕事を覚えるに当たって、一番てっとり早いのはやはり「自動車塗装」の仕事を経験してしまう事だと思います。専門学校などもありますがそれだとお金が掛かりますし、ディーラーは別として、小規模な町工場の塗装屋ならば塗装以外にも色々と覚えられるので(と言うかやらされます)何でも出来るようになります。ただし色々悲惨な業界なので普通では無いとある程度覚悟が必要かも知れませんが(笑。多分超ブラックです)。

ちなみに上の画像はPRO_Fitが新横浜の工場の時で、手前にいるプジョーのツナギを着ているのは私の元同僚の塗装屋さんです。現在は塗装現場を統括するお偉い立場にいる模様で、しかも実はPRO_Fit二階工場に居る面々とは元同級だったり元同僚だったりもします。何だかんだみんな繋がっているんですよね。

そして奥で白いツナギを着て塗っているのは当時雇っていたコミキで、最初に来た頃は未経験でしたが「二年で全部覚えたい」と言う事でかなりハイペースで仕事をこなして貰った記憶があります。ちなみに現在は会社の社長で、休日は自分の船でクルージングを満喫していたりするそうです。みんな凄いなぁ、と。

surlyそして自転車のフレームですが、そもそも車の塗装屋からしてみれば自転車に使われている素材のスチール(クロモリ)やアルミやカーボンは身近に扱っている素材ですから、例えば車の塗装屋を辞めて今日からいきなり「自転車塗装専門店」なんて感じで独立する事も可能です。分解はせず塗るだけなら素材だけの問題ですからね。料理人が同じ材料を使って違う料理を作るのと同じです(多分、ですが)。

上の画像は「この本のピンクを参考に」と言う事でご依頼頂いたSURLYのクロモリフレームで、色は簡易的に作成した物ですが、自動車塗装屋になると死ぬ程調色作業をやる事になりますからこう言うのも自然に出来るようになります。ちなみにピンクを作る時は赤系からではなく白から始めないと駄目なんですよ(殆どが白で構成されています)。

profit22ちなみに塗装と言っても種類は色々ありますから、その中から自分が一番好きな物を選んでやれば良いのだと思います。最近はプラモデルを代理で作成するような仕事もあって、しかも依頼は半年待ちとの事ですから、そういった事も職業としてちゃんと成り立っているんですよね。これってまさに私の子供の頃の夢でしたよ(まあ今もそれに近い事は出来ていると思いますが)。

と言う事で、私的に思う事としては「技術は後から付いてくる」と言う事ですから、まずは月々の固定経費を掛けないようにし、売上げが無くても当面やっていけるような環境を整えること、そしてどうやって仕事を確保するかに重きを置けば良いと思います。

それを実現するのが「間借り」でもあって、これなら月々の家賃は抑えられますし、そこに居れば仕事も貰えたりしますから、個人で始める形としては一番良い方法だと思います。

と言う事で次回は「間借り」についてか、または仕事の取り方(営業)を紹介したいと思います。

 

そうだ、小物塗装屋になろう③(仮)

stone (1 - 1)-2今回は小物塗装屋になりたかった「動機」の話ですが、これについては「小物の塗装なら一人で全て出来る」が一番の理由だったと思います。自動車を扱う業務ではどうしてもそれなりの規模が必要ですが、対象が小物であれば必要最小限の固定経費で好きな塗装が出来る!、という所ですかね。

ちなみに本来これは老後に行うつもりだったのですが、幸いにしてか途中で体が壊れてしまったので(単なる腰痛ですが結構大変でした・・・)、そんな体でも出来る事はと言う事で早い段階で踏ん切りがついたのです。

上の画像は元々天然の石だった物をパテとサフェーサーで下地を作ってメッキ調の塗装を施し、自然の中に人工的な物を紛れ込ませた、みたいなイメージとして撮影した物です。傍からみたら何かのオカルト的な行動に見えるかも知れませんから、とにかく人気の居ない河川敷の奥に分け入って行ったのを良く覚えています。ここで通報されていたら終わっていましたね(苦笑)。

hyoutan (1 - 1)先ほどの金属質な石を作製した元となったのがこのひょうたんでして、一見ふざけて見えますがこれが私の人生の転機になったと思います。勿論これもれっきとした仕事の一つで、ただ私としてもこういうのはこの時が初めてでした。

最初はオーナー様のVWパサートの板金塗装を御依頼頂いたのですが、その後「もしかしてタカハタさんだったら塗ってくれるんじゃないか?」と言う事で相談を受けました。どこかで聞いたような話ですが(笑)、今も昔もうちに来るお客さんは余り変わらないようでちょっと普通じゃないですよね(笑)。

これを御依頼された方はパッケージ関係のデザイナーをやっておられる方で(超プロです)、この時のコンセプトは確か「自然にある物を超人工的に!」みたいな感じで(違っていたらすいません)、本物のひょうたんに塗装を施す事によってピアノのような状態に仕上げて欲しいとの御依頼でした。ただそもそもの形が想像以上に凸凹で、パテを盛っては研いでを繰り返している内に画像のように高い部分に穴が開いてしまいました。ちなみにこの後内部にポリエステル樹脂を流し込んで無事穴は埋めまして、しかもおきあがりこぼしみたいなおまけまで付いて来たりして(笑)。

hyoutan1その後ひょうたんは無事完成し、パッケージ関連のデザイナーさん達が集まって開いた個展のような催しで飾られる事になりました。周りのデザイナーさんからの評判も凄く良かったようです。
この仕事をするまで私が行っていた塗装は常に実用的な物と考えているところがあって、飾られていたこれを見た時は結構衝撃的だった記憶があります。自動車とは全く関係の無い方々が、私が塗った物を見て感激してくれたのも嬉しく、こういった小物の塗装を仕事として出来れば毎日が凄く楽しいんだろうなぁ・・・と考えたと思います。この時に大分やられちゃっている訳ですね。

cabinet1ただ自動車部品以外で塗装にお金を掛けると言う方はやはりそんなに多くは無く、この状態でいきなり自分の工場を構えるとなるとかなり無理があったと思います。塗料のSTANDOXだけは手放さずに持っていましたが、固定経費で一番掛かる部分は「家賃」ですから、どうにかそこを抑えなければならなかったんですよね。

cabinetそこで考えたのが「間借り」といったシステムで、以前から知り合いだった自動車板金塗装工場の社長に御願いしてそこで新たに「小物塗装のプロ・フィット」が立ち上がる訳です。
これなら敷金・礼金といった形は無く、相場よりもかなり低い家賃で塗装に必要な設備(主に塗装ブース!)が使えますから、比較的高コストな塗装の仕事を、小物の塗装屋としてスタートする事が出来たのです。いやはや本当にありがたい限りでした。

上の画像は初期の頃の依頼品で、本来は医療用だったスチールキャビネットを、綺麗にレストアーして事務所で使うと言う事で御依頼頂いた案件です。外側の古い塗装は全部剝がし、動きの悪くなったキャスターは全部新品に交換しています。昔の事務用の製品は値段が高い分元々の造りも良かったりするので、新たに安物の新品を買うよりもこんな感じで綺麗にしてあげた方が長く使えてお得なのかも知れませんし。
こういう考えを持った方は全体的に見ると少ないかも知れませんが日本全国で見れば結構沢山居るのでは?という事で、当時は楽観的に考えていたところもあります。既に車の板金塗装ではネットからいらっしゃって来た方が殆どでしたから、ある程度の可能性は既に感じていたんですよね。

と言う事で、ちょっと今までは私事の紹介みたいになってしまいましたが、次からは「だったら私も!」みたいに独立を考えている人にも役立つ情報を紹介出来るればと思う次第です。ただ前に同じようなパターンで本当に独立してしまった方が居ましたから(!)、あまり本気で受け止めず、適当に流して読んで頂ければと思います。私に責任は負えませんので(笑)。