真空脱泡実践

pomp17 先日購入した注型用透明樹脂、「クリスタルレジンNEO」です。現在進行中のトヨタのスマートキーに極小トヨタエンブレムを埋め込み、琥珀よろしく透明な樹脂で固める為に取り寄せてみました。と言っても普通にamazonで買っただけですが(笑)。

ビスフェノールA型のエポキシと言うとどうしても「褪色」(黄変)が懸念され、私的には既に耐候性テストも終えたポリエステル系の透明樹脂を使う予定だったのですが、この製品はその点がとても優れているらしいのです。

epoxy ちなみにどういう物か、手元にある参考書で調べてみました。以前当店を担当してくれているオートサプライヤーさんがかなりの変人なので(笑)こういうマニアックな本を届けてくれるのです。

epoxy1一応一通り読んでいたのでこういう製品があるのは知っていましたが、多分今回のクリスタルレジンNEOもこういう物だと判るので安心して使えます。ベンゼン環をシクロヘキサン環に変えた環状脂肪族樹脂=水素添加ビスフェノールAと言う訳ですね(多分ですが)。

pomp29 実際に出してみると若干青黒み掛かっています。うちで使っているスモークを間違えた垂らしたような感じでしょうか。

pomp19 通常は気泡を立てないように大人しく注ぎ込むのですが、今回はテストと言う事で上から勢いよく流し込んでみました。特に左にある極小トヨタエンブレムは樹脂が全く流し込まれていません。と言うか思ったいたよりも粘度が高いです。もっとサラサラかと思っていました…。

factory34 と言う訳ですが、無事設置も完了したドライポンプです。油回転型に比べると密封度が低いので真空脱泡には向かないという事実を後から知ったのですが(苦)、油を排出しないので塗装現場の、しかもコンプレッサーの上でも大丈夫です(ただしまだちょっと不安なので排気はホースで他に逃がしていますが)。

pomp20 早速ポンプを回してみました。-0.094くらいまでは数秒で達して、その後数分掛けて目盛りの位置=-0.096まで到達しています。真空の目安となる-0.1Mpaには届かないのですが、まあ仕方ありません。

pomp21 減圧すると樹脂中の気泡が大きくなり、浮力で上に浮いてくるらしいです。

pomp22 こちらは車型のシリコン型です。

pomp23 その後様子を見ながら、減圧→常圧に戻すを3回程繰り返してこんな感じになりました。

ちなみに「加圧脱泡」と言う方法もあるのですが、今回のような真空脱泡では減圧した状態から常圧に戻す時にそれと同じ作用が働くらしいです。

私も詳しくは無いのですが、こちらの「ねこぱんちのブログ」を参考にして納得出来ました。メールにてご教授・ご紹介頂いた方もいらっしゃいまして、色々と有難うございました!

pomp24 実際にやってみて判ったのですが、今回最も効果的だったのは「可使時間が長い」と言う事だったと思います。

今まで使っていたポリエステル系の樹脂は数分で反応が始まるので脱泡が間に合わない感じでしたが、今回のクリスタルレジンNEOはエポキシ系なので可使時間が長く(確か70分)、その点で脱泡し易いのだと思います。恐らくはわざわざ真空脱泡などせずとも勝手に泡が消えていってくれるのでは、と思う次第です(と言うと今までの苦労が水の泡なので信じないようにしたい所ではありますが・・・)。

pomp28 と言う訳で早速型からも外してみました。

ちなみに艶が無いのは最初に型を取ったマスター型自体がペーパーを掛けたつや消しの状態だったからで、ちゃんと艶々に塗っていれば複製も艶々になったと思います。普通はシリコーン樹脂を注ぐ前にラッカークリアーを塗ったりするみたいですね。

pomp26 ポリエステル樹脂を使った時のように痩せが無いので皺模様も残らず、綺麗な状態で出て来てくれます。これはスゲェ・・・の連発でした(笑)。

後日何かクリアーを塗る時にこれらも一緒に塗って艶を出そうと思います。

諸々が上手くいけば、いよいよトヨタスマートキーの本番の日も近いです。上手く行きますかね~(そっちは仕事なのでどうあっても上手く行かないとマズイのですが)。

自作真空脱泡器 デジケーター②蓋作成

pomp16先日デジケーターの配管の取り付けを紹介しましたが、今回はそれの蓋部分を紹介します。

pomp7 この容器の内部を真空にさせるので蓋は空気を完全に遮断する必要がありますが、加圧では無く負圧なので実はそんなに難しくはありません。単にパッキンを挟んで固い物を乗せるだけでOKなのです。

pomp9ただし中身が見えないと色々不便なので、蓋は20mm厚の透明アクリル板を使います。ネットで調べてみると30mm厚を使っている方もいらっしゃっいますが、どうやら相当重いらしく後悔されている様子で(笑)、殆どの方が20ミリを使っているのでそれに倣いました。ちなみにガラスは割れるのでダメみたいです。

アクリル板の値段は結構ピンキリで、私はこちらのサイトから購入しました。サイズは規定の 330mm×330mmで、 アクリル板の費用が¥6,426、送料が¥1,080、合計¥7,506でした。

pomp1 パッキンとして使うのはこちらの3ミリ厚のゴム板で、サイズは寸胴鍋に合わせて300×300の物を購入しました。amazonで¥302(!)でした。

pomp11 寸胴鍋をひっくり返してゴム板に乗せ、ボールペンでマーキングしたらカッターでカットします。

pomp12 内側は適当で大丈夫なのですが、引っかかって剥がれたりするのが嫌なので一応内径に揃えました。

ちなみにパッキン(ゴム板)はアクリルの方に付ける方法もあるみたいですが、今後容器を拡張するかも知れないのでアクリル板の方は汎用として使えるようにしています。

pomp13 多分挟むだけでも良いと思うのですが、ズレたりしたら嫌なので一応接着しておきました。

pomp32 使ったのは今回もこちらのカーコークです。シーラーでは無く、G17などの接着剤でも大丈夫だと思います。

pomp14 圧力と接着力は比例するので、こんな感じで重しを乗せて一晩放置します。

pomp15 そして翌朝完成です。材料さえそろえば作成は6時間程、慣れれば1時間で出来ると思います。一番大変なのは材料の取り寄せでしょう…(なので購入先全てにリンクを張っておきました)。

pomp18こんな感じでアクリル板を乗せるだけで真空OKです。

pomp17一番重要なのはポンプで、可使時間の短い樹脂を使う場合は能力が高い物(多分200L/minくらい) が必要になると思いますが、油をまき散らしても構わないと言う事であれば普通の真空ポンプで大丈夫なので、新品で5万円くらいを目安にしておけば良いと思います。

ただうちのように少しでも油が舞ってはマズイ環境では(コンプレッサーに吸い込んだら配管を通って全てが汚染されます)、油を使わないドライポンプが必須となるので、これが新品だと10万円くらいはするようです。仕事で使うかガレージキット愛好家ならともかく、遊びで時々しか使わないとなるとちょっと額が大きいですよね。と言う事で今回は中古品を購入したのですが、そもそもそれが失敗の元だったと言う…(今度直します)。

pomp24 真空にするにはこのメモリが-0.1の所までいかなければならず、今回購入したドライポンプは少々お疲れ気味のようで、粘っても-0.09で止まってしまいます。後で調べてみたら内部のカーボンブレードが摩耗して隙間から空気が漏れてしまうみたいですね。

pomp25 使い方としては、混ぜる前の樹脂を先に入れて予備脱泡を行い、その後硬化剤と混ぜて型に流し込み、蓋をして減圧→真空に達したらバルブを閉めてポンプの電源を切って気泡が出て来るのを待ちます。シャブい樹脂なら予備脱泡も必要無い(意味が無い)みたいですが、今回使った透明ポリエステル樹脂は結構粘度が高いので一応やっておきました。

pomp26真空脱泡の原理としては、真空状態になると気圧の体積は大きくなるので気泡が大きくなり、その浮力で表面に浮いてきたところを常圧に戻してあげると今度は加圧する作用が働いて溶解度が上がり、気泡が消えていくとの事です。ボイルとかヘンリーの法則らしいです。

pomp27泡が消えたらそのまま放置して樹脂が固まるのを待ちます。

 pomp31今回使った樹脂はノンパラフィンのせいか表面に固まらないベトベトした樹脂が残り、そのせいでシワシワの模様が出来てしまいましたが、通常の注型用エポキシ系樹脂を使えばさらっとした綺麗な仕上がりになる筈です。

factory73と言う訳でジャジャーンと!頼んでいたエポキシレジンが届きました。日新のクリスタルレジンNEOです。

一般的なエポキシ樹脂(ビスフェノールA)の弱点としては黄変がありますが、こちらは恐らく水素を添加してベンゼン環をシクロヘキサン環に変えてしまった環状脂肪族樹脂、所謂「水素添加ビスフェノールA型樹脂」と思われますので、この場合は非常に優れた耐候性があるエポキシレジンとなるのです(参考文献 室井壮一著「わかりやすいエポキシ樹脂」)。

と言う訳で、後日実際に試してまた紹介しようと思います。