アングルポイズ アームランプ 組付け

先日本塗りを終えていたアングルポイズのアームランプ(スプリング式のタスクランプ)です。その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、さらに数日寝かしておきました。

各パーツには元々グロメットが付いていて、ただ同じ穴の径なのに付いていない箇所もある為、取り外す前に各部を撮影してあります。後で記憶が無くなっても「これは何のために撮影した画像か」が判るよう、指差し確認をした状態で撮っていたりします。

このパーツなんか結構微妙で、普通なら左右対称にしがちですが、実際には非対称の位置にグロメットが嵌っています。元の画像が無ければ絶対同じようには組めなかったですね。

この可動部も隙間に薄いプラスチックパーツが入っていて、そういった物も前後を間違えないよう元通りに組み付けていきます。

組付けはワンミスで塗り直し確定なので慎重に行います。

最初に勤めていた自動車メーカーのサービスセンターでは、塗装4人(後に外注が入って6人)、板金4人でやっていて、辞めるまで私は下っ端でしたから、塗った物(車)の部品を組み付けている鈑金屋さんが「デヘヘ、タカハタ、傷つけちゃったよ。ちゃちゃっと塗り直しておいて貰って良い?」と軽口を叩くのによく殺意を覚えていました(塗装屋さんなら皆そうかと)。

小物塗装を行う上でネックとなるのがこういった分解組付け作業で、ディーラー在籍時は塗装しかしていませんでしたが、その後独立して何でもやるようになったお陰でこういった事も何とか出来るようになりました。車のアウターハンドル周りや電動ドアミラーとかは構造が複雑なので、それらの経験が今も活かされているのだと思います(特に英・伊・仏・米は酷いですね…)。

工具に関しても、自動車を扱っている時に揃えた物があったお陰で今が成り立っている所もあります。保険作業の無い今の小物塗装屋では到底買えなかったと思います。

こちらは土台です。

ウェイトで入っていたスチール製の重りを取り付けます。

この後は事前に作成しておいたクッションシートを貼り付ける予定だったのですが、取り付ける方法として接着剤は避けたく、ただ既に丸く切ってしまった物に綺麗に両面テープを貼るのは困難だった為、

新たなシートに両面テープを隙間なく貼り付け(プライマーも塗っています)、

改めてレーザーカットし直しました。

するとどうでしょう!(笑)両面テープがフチまで綺麗に貼られたクッションシートの出来上がりです。気持ちが良いですね。

それを位置を合わせて貼り付けます。

良い具合に出来ました。

参考までに元の状態も紹介します。

元々貼ってあったクッションはフチが破け、伸びて食み出してしまった箇所もありましたが、

新たに似た素材と厚みのクッションシートを作り直す事で、土台も分解出来て綺麗に塗る事が出来ました。

フチから食み出なく、上品に仕上がったと思います。

あと元々貼ってあった裏側の品番が印刷されたアルミシールですが、

お湯に浸けてさらにシリコンオフを染み込ませたら、

折り目はついてしまいましたがなんとか破かずに剥がせたので、

新たに両面テープを貼り直し、

元のように貼り付けておきました。万が一メーカーで修理する際もスムースに受け付けてくれるかと思います。

ソケット周りの配線を繋ぎ、手元にあった電球を取り付けて、

点灯するか確認をしたら組付けて完成!

と思いきや、ソケットの後ろにある配線に被せる耐熱配線カバーを入れるのを忘れていたので(あるあるですね…)、

もう一度分解して組付け、最後にもう一度灯火テストを行って完成です!

自動車の部品であれば、万が一破損しても部品屋さんから新しい物が手配出来ますが、こういった物で、しかも毎回違う作業をするのはかなりリスクが高いのですが(そして採算も全く合いませんが…)、自分の性格的に同じ事を繰り返し行う=既に出来る事をやるのが好きでは無いので、お陰で飽きずに毎日楽しく仕事が出来ているのだと思います。

今は採算が合わなくても、コストの掛からない郊外を仕事場にするとか、もしくは地方の廃校とかを利用した再生プロジェクトとかなら何とかなるかもですね(あれらが上手くいかないのは新規でやろうとする人を集めるからで、既にそれで事業が成り立っている人に限定すれば良いと思うんですけどね。やはりと言うか楽しいだけじゃ長くは続けられないです)。

PRO_Fitオープンファクトリー

PRO_Fitでの塗装業務は主に工場一階で、それ以外の付帯作業=ジグの作成やマスキング・デカール等の制作やデスクワーク、壁時計の制作のような趣味的な業務については工場2階で行っています。ここは工場と言うよりかは「工房」って感じですかね。

その工房によく登場する人と言えば、こちらの社外記でも何度か紹介しているアートトイペインター(本業はデザイナー)のGUNさん(笑)で、比較的職場と家から近いという事もあり、仕事が終わってから遊びに来ていたりします。画像は趣味のバイクのパーツを塗装する前の下地処理としてサンドブラストを行っているところですね。

GUNさんについては以下の記事が判り易いかと思います。

マスキングシートを届けついでに

工場二階には趣味で使える工作機械があるので、

この日はアルミ素材をバンドソーでカットし、

それらをレーザーカットしたアクリル板に取り付け、

ネオン管風のLEDモールを嵌め込んで看板っぽい物を制作していたりもしました。

ただこれが予想以上に時間が掛かりそうで、このままだと今日中に帰れなさそう・・・!と思い、

急遽工場の近くに住んでいる3D原型師のくま3D-さんを呼びました(笑)。

くま3D-さんは、以前当工場2階の間借り一か月トライアルをされた方で、また前回参加したデザフェスの搬入を手伝って貰ったりもしています。

くま3D-さんについてはツイッターアカウントを見るのが判り易いかも知れません。公に出来ませんが、普通に市販されているフィギアの原型を担当していたりします。

この日は土曜日と言う事もあって(本来なら私は一応休日です)、比較的まったりしていた事もあり、夕方からはこんな感じで工作作業に勤しんでいました。

各個人が仕事が終わってからやりたい事や好きな事を、それぞれのプロが集まって手伝ったり助け合ったり出来る場所があったら良いな~!と昔から思っていましたが、この日はそれらしい事が出来たのがとても面白かったです。私がもっと元気なら朝までぶっ通しでやっていたい!と思うくらいでした(頚椎が潰れ気味なので今はしっかりした睡眠時間の確保が最重要事項なのでして…)。

その他、Twitterで知り合って、さらにデザフェスでわざわざ逢いに来てくれた自動車塗装屋さんが後日工場に遊びに来てくれたりもしていました!

情報過疎化が進む場末の工場としては、現役バリバリの塗装屋さんから新しい技術や材料などを教えて貰えるパイプが出来たのはとても有難く頼もしい限りです。愛知の塗装屋さんや町田の塗装屋さんももっと近くに居てくれていれば…。

その他以前当工場で行ったサーモスワークショップに参加してくれた(さらに後日塗装屋会にも参加してくれた)仙台の印刷屋さんも遊びに来てくれていました!

前回お逢いした時はまだコロナ禍で、当時売り上げは減ったとの事でしたが、その後業績がとても良くなったらしく、今回新たに購入した工場(!)に引っ越すとの事で、その中に設置する塗装ブースの設計の見直しの為に当工場の再確認しに来られたという訳です。

 ちなみに以前であれば、こういった訪問はワークショップや塗装屋会みたいな場合のみとしていましたが、その後東京都からの借り入れの返済が終わり、多少はゆっくり出来るようになったという事、またこの閉鎖的な環境を少しどうにかしなければ!と前々から思っていたので、多少無理をしてでもこういった事は積極的に対応するようにしました(念の為ですが、見積もり等の仕事上でのご来店は今まで通り受け付けていません。それをしてしまうと御依頼頂く方々に不平等が発生してしまうからですね。何卒御理解頂けますようお願い申し上げます)。

来週も京都からピアノを専門で塗装している方が来られる予定で、そんな感じで今の極狭い人間関係を今後は少しずつ広げていければと思っています。

折角アクセスの良い東京で工場をやっているのですから、いずれ「毎週土曜の午後はオープンファクトリー」みたいな感じに出来ると良いですね!

15cm色相環壁時計制作

色相環の壁時計は今まで色々なサイズを作っていて、

こちらの一番小さな15cmサイズは一旦廃盤としたのですが、

以前出店したデザフェスでこれを飾っていたところ、意外にもこれの人気が高かったので、今後はこれを量産販売とし、25cm以上の大きいサイズはオーダーでのみ受付とする事にしました。

また以前試作していたこちらのウォールナットを枠に採用したキーホルダーの組み合わせが良かったので、

それを背板とした15cmの壁時計を制作する事にしました。

ただ厚さ5mm~6mmのウォールナットはコストが高くなるので、薄くスライスされたそれをMDFに貼り付ける「突板」にする事にしました。

台座とするMDFはいつもの物で、裏側には艶消し黒を塗っておきます。見た目もそうですが、MDFは湿気に弱いので防止の為にですね。

MDF、ウォールナットそれぞれに接着剤を塗り、固定します。

ちなみに当て板に使っている物はテストに使用した物で、ウォルナットとMDFがしっかり食いつく事は確認しました(剥がれているのはMDF自体の層間剝離です)。

一日固定しておいたら完成です。これくらいの面積なら無垢材を使ってもさほどコスト高にならなそうですが、一度突板というのを自分の手でやってみたかったんですよね。

15cmサイズ用のピースはまだ塗っている途中なので、

在庫として残っていた物を使ってとりあえず試作品を作ってみました!

やはりと言うか、有彩色と無彩色との組み合わせは間違いが無いですね。

ただウォールナットの色味がちょっと明るかったので、今度スモーク塗装を行う時に一緒に塗ってみようと思います。オイルステインの方が楽ですが、これは経年で褪色するので避けています。

ちなみにこちらのキーホルダーのウォルナットは蜜蝋を塗っていて、多少色が濃くなっています。

ただ時計の背板に先にこれを塗ると接着剤が食いつかなくなる恐れがあるので避けたんですよね。後から塗る事は問題無く、ただとりあえずはまあ良いかな、と。

右が以前作った壁時計で、背板が違うだけでかなり印象が変わるのが判ると思います。

ちなみに「貼るくらいなら塗った方が早いんじゃ?」と思うかも知れませんが、

明るい色にした背板はフチと裏を黒(またはグレー)にしているので、

わざわざこうやって塗り分けるのも結構面倒なんですよね。レーザーでカットした断面は素材の接着剤が溶けるか何かで滲み(ブリード)が発生するので、結局何かしらの濃い色で塗る必要があるという訳です。

という感じで、以前作成して良かった色=VWのアクエリアスブルー仕様の背板も何枚か作りました。濁りのある淡い水色で色相環を邪魔をせず、またインダストリアル感があって12色にとても良く似合う色です。

ある程度の数が出来たらウェブショップで販売しようと思っています。専用スタンドも作ったのでセットに入れられそうです!

30cm色相環壁時計制作~完成

以前作成した30㎝のキャンディーカラー色相環壁時計ですが、さらにその後もオーダーが入ったので、新たにもう一つを作る事となりました。

ちなみに現在壁時計の販売はしていなく、それの理由としては採算が合わな過ぎる為でして(大変な赤字です…!)、ただ「それでも!」という方向けに、オーダーでの制作のみ対応しています(ただ当然ですが金額もそれなりに高くなってしまっています)。

キャンディーカラーで塗装した12色のピースはこれまでに6セット分作っていて、ただ残っている物はゴミが付いていたり傷が付いてしまっていたりするので、クリアーを塗ってリフレッシュしました。

壁時計としてはあり得ない金額になっていますが(市販の10倍くらいではと…)、それでもこれらピースを一つずつ依頼されて塗るよりかはかなり安く出来ていると思います。

赤字でもやり続けているのは、将来的にこういった事で収入を得られればという願いというか準備的な事があり、現在行っているようなオーダーを受けて一品を塗る事はいずれ難しくなると思いますから、歳をとっても何とかこの仕事を続けていけられるようにですね。

背板は元々ただの艶消し黒(ベースコートのみ)としていましたが、その後作成した結晶塗装の質感が良く、今回そちらもオーダーで頂いたので新たに作成しています。小さい方は量産向けの壁時計(15㎝)用の背板ですね。

もちろんこちらもそれ単体で行うと採算が合わないので、仕事で行う本塗りと一緒に(と言うかそれの前に行うテスト用)塗らせて貰っています。

ただしテスト用と言う事もあり、大体半分は失敗で塗り直しになります。手前の方は全滅ですね。

ただピースも含めこれらは一品物のオーダーとは違いますから、失敗したのは後で纏めて塗り直せば良いという事で、作業的にも精神的にも大きな負担が無いのがとても良いところです。ただこういった考えで毎日塗装をやっているとみるみるレベルが落ちてしまいますから、今は「趣味」といった位置づけで丁度良いですかね。

大きい方は3個の内2個が失敗で塗り直しました。

ちなみに失敗といっても廃棄はゼロを基本としています。

それぞれのパーツが出来上がったら組付けます。

これらの作業は一日の仕事が終わってからで、大抵は19時くらいから、動画を観たりお酒を飲みながらとかでまったり楽しくやっています。

結晶塗装は表面が凸凹しているので両面テープはくっ付かず、なので充填性の高いシーリング系の接着剤を使っています。エアロパーツや自動車ガラスの取り付けに使う、安心のシーカフレックス221ですね。

圧力を掛けた状態で数日固定しておきます。

ちなみにアクリル樹脂の接着面にはプラスチックプライマーも塗っています。PP程ではありませんが、PMMAも決してくっ付き易い樹脂では無いですからね。

基本的なコンセプトは仕事で行う塗装と同じで、経年でも劣化(破損や剥離)しなく、長い年月使える物を目指しています。

接着剤が固まったらムーブメントと針を取り付けます。針は汎用の物で、それぞれの大きさの壁時計に合わせてカットしています。

そして完成です!

これも元々は自分用の色見本が欲しいという事で作成したのがきっかけですね。

やはりと言うか、背板の結晶塗装の質感が渋くて格好良いです。

いつもの様に各完成画像はサイズの縮小以外は未加工となっています。Photshop等の画像加工ソフトを使えば綺麗に格好良く加工出来ますが、そういった事を知らない方や、それを隠して紹介する事例が多く見受けられますので、それとは違うという事を明確にする為ですね。

ちなみに量産品の壁時計では多少のゴミとかは気にせずそのままとしていましたが、オーダーメイド品は通常の御依頼品(仕事)と同様、その辺も気にして仕上げています(磨くよりは塗ってしまった方が早いという事でクリアーを2度塗りしています)。

ちなみにキャンディーカラーの壁時計は現在この30cm用しか塗っておらず、

残りはあと1セット分のみとなります。

今回オーダーで御依頼頂いたきっかけは、デザフェスで同じキャンディーカラーの色見本キーホルダーをご購入された方がそちらを大層気に入って頂けたとの事で、「多少お金が掛かっても!」という事で今回の御依頼に至りました。

既に小さい壁時計もどこに置こうかと考えて頂けているそうです。となるといずれは15cmでキャンディーカラーVer.も作らないとですかね。

ちなみにこのキーホルダーだけでも5千円程度の値段設定になっていて、それでもデザフェスではかなりの数をお買い上げ頂きましたから、だったらもう少し高くても壁時計を買う人が居るのでは?!と考え、一度廃盤にした小さい壁時計=直径15cmの物を一般販売用に価格を抑え、それ以上のサイズ(20cm~)を、オーダーメイドでの作成にしようと思った次第です。

色相環は元々この世の中にあって誰もが一度は見た事がある物ですが、印刷と塗装とではその質感は全く違う物なので、まずはキーホルダーでその良さを知って頂き、その後壁時計にステップアップしていって頂ければと思っています。20年後は郊外か自宅の作業場で、こういったプレッシャーの無い塗装をして生きていければと思っています(笑)。

その後オーナー様から画像も送って頂きました。