自作真空脱泡器 デジケーター②蓋作成

pomp16先日デジケーターの配管の取り付けを紹介しましたが、今回はそれの蓋部分を紹介します。

pomp7 この容器の内部を真空にさせるので蓋は空気を完全に遮断する必要がありますが、加圧では無く負圧なので実はそんなに難しくはありません。単にパッキンを挟んで固い物を乗せるだけでOKなのです。

pomp9ただし中身が見えないと色々不便なので、蓋は20mm厚の透明アクリル板を使います。ネットで調べてみると30mm厚を使っている方もいらっしゃっいますが、どうやら相当重いらしく後悔されている様子で(笑)、殆どの方が20ミリを使っているのでそれに倣いました。ちなみにガラスは割れるのでダメみたいです。

アクリル板の値段は結構ピンキリで、私はこちらのサイトから購入しました。サイズは規定の 330mm×330mmで、 アクリル板の費用が¥6,426、送料が¥1,080、合計¥7,506でした。

pomp1 パッキンとして使うのはこちらの3ミリ厚のゴム板で、サイズは寸胴鍋に合わせて300×300の物を購入しました。amazonで¥302(!)でした。

pomp11 寸胴鍋をひっくり返してゴム板に乗せ、ボールペンでマーキングしたらカッターでカットします。

pomp12 内側は適当で大丈夫なのですが、引っかかって剥がれたりするのが嫌なので一応内径に揃えました。

ちなみにパッキン(ゴム板)はアクリルの方に付ける方法もあるみたいですが、今後容器を拡張するかも知れないのでアクリル板の方は汎用として使えるようにしています。

pomp13 多分挟むだけでも良いと思うのですが、ズレたりしたら嫌なので一応接着しておきました。

pomp32 使ったのは今回もこちらのカーコークです。シーラーでは無く、G17などの接着剤でも大丈夫だと思います。

pomp14 圧力と接着力は比例するので、こんな感じで重しを乗せて一晩放置します。

pomp15 そして翌朝完成です。材料さえそろえば作成は6時間程、慣れれば1時間で出来ると思います。一番大変なのは材料の取り寄せでしょう…(なので購入先全てにリンクを張っておきました)。

pomp18こんな感じでアクリル板を乗せるだけで真空OKです。

pomp17一番重要なのはポンプで、可使時間の短い樹脂を使う場合は能力が高い物(多分200L/minくらい) が必要になると思いますが、油をまき散らしても構わないと言う事であれば普通の真空ポンプで大丈夫なので、新品で5万円くらいを目安にしておけば良いと思います。

ただうちのように少しでも油が舞ってはマズイ環境では(コンプレッサーに吸い込んだら配管を通って全てが汚染されます)、油を使わないドライポンプが必須となるので、これが新品だと10万円くらいはするようです。仕事で使うかガレージキット愛好家ならともかく、遊びで時々しか使わないとなるとちょっと額が大きいですよね。と言う事で今回は中古品を購入したのですが、そもそもそれが失敗の元だったと言う…(今度直します)。

pomp24 真空にするにはこのメモリが-0.1の所までいかなければならず、今回購入したドライポンプは少々お疲れ気味のようで、粘っても-0.09で止まってしまいます。後で調べてみたら内部のカーボンブレードが摩耗して隙間から空気が漏れてしまうみたいですね。

pomp25 使い方としては、混ぜる前の樹脂を先に入れて予備脱泡を行い、その後硬化剤と混ぜて型に流し込み、蓋をして減圧→真空に達したらバルブを閉めてポンプの電源を切って気泡が出て来るのを待ちます。シャブい樹脂なら予備脱泡も必要無い(意味が無い)みたいですが、今回使った透明ポリエステル樹脂は結構粘度が高いので一応やっておきました。

pomp26真空脱泡の原理としては、真空状態になると気圧の体積は大きくなるので気泡が大きくなり、その浮力で表面に浮いてきたところを常圧に戻してあげると今度は加圧する作用が働いて溶解度が上がり、気泡が消えていくとの事です。ボイルとかヘンリーの法則らしいです。

pomp27泡が消えたらそのまま放置して樹脂が固まるのを待ちます。

 pomp31今回使った樹脂はノンパラフィンのせいか表面に固まらないベトベトした樹脂が残り、そのせいでシワシワの模様が出来てしまいましたが、通常の注型用エポキシ系樹脂を使えばさらっとした綺麗な仕上がりになる筈です。

factory73と言う訳でジャジャーンと!頼んでいたエポキシレジンが届きました。日新のクリスタルレジンNEOです。

一般的なエポキシ樹脂(ビスフェノールA)の弱点としては黄変がありますが、こちらは恐らく水素を添加してベンゼン環をシクロヘキサン環に変えてしまった環状脂肪族樹脂、所謂「水素添加ビスフェノールA型樹脂」と思われますので、この場合は非常に優れた耐候性があるエポキシレジンとなるのです(参考文献 室井壮一著「わかりやすいエポキシ樹脂」)。

と言う訳で、後日実際に試してまた紹介しようと思います。

自作真空脱泡機 デシケーター作成(配管)①

pomp 先日紹介した真空脱泡器の制作手順を紹介しようと思います。

必要な工具は一般的なスパナやレンチと、後は穴を13ミリまで開けられる工具があれば大丈夫です。私の場合はドリルの刃(ステッピング)が12mmまで対応していなかったので、その後丸い棒ヤスリで穴を広げました。アルミなので簡単に削れますからその方法で全然大丈夫です。

pomp7デジケーターとして使うのはこちらのアルミ製寸胴鍋で、今回は内径240mm、厚さが3ミリの物を選びました。購入したのはこちらの楽天ショップで、コストは税込み¥3,690と送料が¥648、合計¥4,338です。

デジケーターとして使う容器は真空ポンプの能力によって容量が決まってくるらしく、ネットで見ると内径210mmのを選んでいる方が多いようです。ちなみにステンレス製の物は強度的に駄目との事らしく注意が必要です。

私が参考にしたのは主にこちらのサイトとなります。この場を借りてお礼申し上げます。

松枝悠希のABC

いたんぢ?

一期一会のハイジンクス

pomp4 配管については私も余り把握していなかったのですが、今回使ったのは塗装の現場でも良く使う「1/4」のサイズで全部統一する事にしました。画像だと余分な物が写っていますが、余っても今後使い道があるだろうという事で余計に買っています。

購入したのは一部を除いてほぼ全てネット通販で、利用したのは楽天・amazon・モノタロウです。それぞれ購入ページにリンクを張っておきましたので宜しければご活用下さいませ。

pomp3

 

汎用真空計・・・¥1,490(1/4サイズで、ネジ部がPT=テーパー状になっています)

 

 

pomp21

 

ボールバルブ×2・・¥769×2=¥1,538(1/4サイズです)

 

 


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チーズ・・・¥219(1/4です)

ニップル(上記チーズとボールバルブを繋ぐ両ネジ)×3・・・¥69×3=¥207(1/4です)

ナット・・・¥114×3=¥342(1/4です)


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エルボ・・・¥139(真空計を付けるのに使いました)

・寸胴鍋固定用ニップル・・・¥200くらい×2=¥400くらい(詳しくは下記で紹介します)

 

 

取り敢えずデジケーターに使った配管関係のパーツはこんな感じです。

pomp5 今回便利だったのがこちらのニップルです。ネットでは見つけられなかったので島忠ホームセンターで購入しました。品番が判ったのでこちらのサイトから購入可能と思います。これで家(または工場)から一歩も外に出ないでこれらが完成可能です(そこに意味があるかどうかは別として)。

pomp6両端のネジは同じに見えるのですが、一方はストレート=PF(平行ネジ)、もう一方はテーパー状=PTになっています。

pomp10殆どの製品がそうなのですが、「PT 」と表示されている物はこんな感じで途中でナットが止まります。シールテープを巻けば簡単にエアー漏れを止められるのでとても便利な反面、今回のように寸胴鍋に直接固定する場合にはこの隙間が出来てしまうのでNGなのです。

pomp8 それに対して逆側はストレート=「PF」のネジとなっているので、通常のボルト・ナットのように最後までピッタリ締める事が出来ます。求めていたのはこれですよ、これ。

pomp22こんな感じで配管を組み合わせ、寸胴鍋に開けた穴にチーズ(配管)を固定するのに先ほどのPFニップルを使います。

pomp19 ナットが最後まで締まるのでこのようにピッタリ&ガッシリ鍋に固定する事が出来ます。この時ネジを締める前に漏れ防止の為にシリコンシーラーを塗っておきますが、ナット自体がかなりピッタリになる為非常に少ない量で済みます。

ネットで見る自作デジケータはこの部分にタップリシーラーが盛られているので、恐らくそれらはPTネジを使ってしまい、仕方なくシーラーをタップリ盛って対応しているのでは、と思う次第です。ちなみにこれのお陰で買っておいたOリングは必要無くなりました。

pomp3こちらの真空計もネジ部がPT=テーパー状になっていますので、これも直接寸胴鍋に挿すのではなく、間に先ほどのPFのニップルを使い、さらにエルボー(画面右上にあるL型のパイプ)を使って固定します。

pomp20 寸胴部との固定部にはネジを締める前にシリコンシーラーを塗って固定後に拭き取り、その他のネジ部は全てシールテープを巻いておきます。

pomp21構造としては、右側のエアーホースが真空ポンプに繋がっていて、真空ポンプを止めた時に逆流を防ぐ為この弁(ボールバルフ)を設けています。

反対側の弁は内部の気圧を解放する時に使う物で、注型樹脂の気泡を取り除いた後に鍋の内部を常圧に戻してあげるのですが、私はやったことがありませんがいきなり開けるとどうやら大変な事になるみたいです(噴くのでしょうか)。

pomp2 Oリングも買っておきましたが、先ほど紹介したようにPTとPFを使い分ければこれは必要ありません。まああれば使い道があるので持っていて損は無いと思います。こういうの純正品で買うと信じられない金額しますからね。amazonで¥377でした。

pomp32 今回シーラーとして使ったのは自動車板金塗装屋さんにはメジャーなこちらの「カーコーク」です。無駄に性能が良いので(値段も高いので)今回のような物には全く必要なく、普通にホームセンターで¥200くらいので大丈夫です。

pomp33ただ仕事で使っているALPSのドライプリンターもそうですが、ちゃんとメーカーの説明書きでこうやって言い切ってくれるのはとても気持ちが良く、「※注1>」とか書いていない潔さが本当に大好きです。っていうかパッケージデザインが販売当時から変わっていない気が…(少なくとも私が小僧の時からこれです)。

pomp23最後に実際に真空引きをして弁を閉じ(画像では開いてますが…)、各ジョイント部に石鹸水をスプレーしてエアー漏れを確認します。と言ってもゲージが着いているので、真空状態にして数時間放置すれば漏れているかどうかは判るんですけどね。ちなみに漏れは全くありませんでした。

後は蓋に使う20mmのアクリル板と、それと鍋の間に挟むゴムパッキンについてはまた後日紹介したいと思います。

自作真空脱泡機(概要)

pomp16 今年は夏休みを返上してこのような真空脱泡器を作成していました。

用途としては注型時に混入した樹脂中の気泡を取り除く為の物で、現在仕事で行っているスマートキーカバーの塗装&トヨタエンブレム埋め込みにこれを使いたかったのです。

pomp 揃えた材料はこんな感じで、作り方についてはネットで自作されている方が多くいらっしゃいましたのでそちらを参考にさせて頂きました。後日こちらでも作り方と使用した材料を紹介しようと思います。

pomp18 仕組みとしては非常に単純で、真空に出来る密封容器を作ってその中に注型する樹脂を入れるだけです。

市販のデジケーターでは2万円くらいの安い物もあるのですが、素材がポリカーボネートなので溶解力の強いポリエステル樹脂などを使えませんから、その点では自作した方が手っ取り早いようです。

pomp17肝となるのがこの真空ポンプで、一般的な油回転真空ポンプだとその辺に油を撒き散らしてしまうので当店のような塗装工場では使えず、今回は油の出ないドライポンプ(中古品)を入手しました。

また真空ポンプのパワーが足りないと真空になる前に樹脂が固まってしまう!と言う事態になりますので、通常は最低でも一分間に100L程度の排出量が求められる所を、今回は235L/minと十分な物を選びました。

ただこのドライポンプがどうやら少々お疲れ気味のようで、いくら頑張っても真空になりません(失敗したかも知れません…)。

pomp24真空になるにはこのメーターが-0.1Mpaの所までならないといけないのですが、MAXで-0.09が限界です。到達速度は十分早いので、調べてみるとどうやら内部のカーボンブレードが消耗しているように思われ、ただこちらは既に馴染みの業者さんにオーバーホールキットの値段も調べて貰っているので、時間が出来た時に分解して自分で交換してみようと思います。

pomp25 と言う訳で既にテストランも済ませています。使うのは少し前に作製した溶けたウサギのシリコーン型です。

pomp26いつものように型に透明ポリエステル樹脂を注ぎ、容器の内部を真空にすると(実際は真空に届いていませんが…)、こんな感じで樹脂の内部に残っていた気泡がまるで水が沸騰するかのようにブクブクと表面に上がって来ます。

pomp27その後弁を開けて空気を入れてあげると、表面に出ていた泡のような気泡が潰れて落ち着いて来ます。樹脂の硬化が早くこのタイミングが遅いと泡が残ったままとなってしまうのでその点に注意ですかね。

pomp28 ちなみにここでも問題が露呈しまいた。現在使っているレジン(透明ポリエステル樹脂)は収縮率が高いので、固まった際に型から剥がれてしまいます。

factory33しかもノンパラ(ノンパラフィン)のせいか表面の硬化が遅くいつまでもベトベトしているので、型から出すと糸を引くは表面に変な皺が出来てしまうはで出来具合としてはとても良くありません。

ちなみにこちらは最初に作った失敗作なので気泡も入ってしまっています。

pomp31こちらが二回目に作った物で、表面のシワは同じ様に出来てしまっていますが気泡は殆ど無い状態で出来ています。

pomp30一緒に作った車型の方もシワは出来てしまっていますが、気泡は全く見られません。

今回使っている透明ポリエステル樹脂は粘度も高く(露店の水飴くらい)、注型に使うには比較的気泡が入り易い樹脂だと思いますが、それでこれなら十分真空ポンプが機能してくれていると思われます。

本番の際には注型専用の粘度の低いエポキシ樹脂を使う予定ですので、次回は艶々テロテロ透明な造形品が出来ると思います。

ちなみに自家製真空脱泡機は信じられないくらい簡単に且つ安く出来ました。ただドライポンプをまともに買うとそれだけで10万円は掛かってしまうので(それ以下は使い物にならないようです)、塗装屋さんでなければ安い油回転ポンプが良いと思います(ただ油の煙が出て床がヌルヌルになるらしいです…)。尚、ダイアフラム型は安いのですが排出スピードが遅くて脱泡用には使い物にはならないようです。

ドライポンプどうしても本体が高くなりがちですが、オーバーホールが上手くいけば値段的な事も解消出来ると思いますので(OHキットは1万円くらいとの事です)、その辺も今後試してみて紹介出来ればと思ってます。

今回の制作工程は後日また改めて紹介したいと思います。使用するニップルの規格さえ間違えなければエアー漏れなどの心配も無く、本当に超簡単に出来てしまうんですよ。