ポルシェ内装色検証

現在塗装の仕事でお預かり中のポルシェ911 991の内装部品です。

ご依頼内容は黒いメーターカバーを内装パネルの色に合わせて塗装する作業なのですが、塗装屋さんなら判る通りこれは至難の業です。ドアパネルを交換したとして、隣接するパネル(リヤフェンダーとフロントフェンダー)は塗らずのブロック塗装、しかもそれを艶消しで塗るなんて無謀でしかありません。通常は調色作業をするだけして、さらに隣接パネルに色を暈すと言うのがセオリーです。

ただ今回は塗装する物がこのメーターカバーだけなので、当然ですがそこまでコストは掛けられず、なのでちょっと仕事以外の時間を使って色々検証してみようと思った次第です。本来ならさっさと原色を混ぜて色を作った方が早いのですが、やはりと言うか実際に出来上がった物の色が違うのは相当ショックですので…。

と言う訳で、今まで何度か登場した普段は使わない虎の子的なSTANDOXの色見本帳です。

以前車の塗装をしていた頃に担当してくれていたオートサプライヤーさんは非常に懇意にして頂いて、普通は手に入らないような色見本を色々とご提供いただいたりしました。

これらはSTANDOX North America、クライスラーやフォード、ジェネラルモータースに特化した色見本です。

これの素晴らしいのは「内装色」の色見本がある事で、

探してみると今回のようなポルシェの内装に似たような色も見つかります。

さらに素晴らしいのは既につや消しクリアーが塗ってある事で、これによって「クリアー塗装後の色変化」を気にしなくて良い事です。ちょっと判り難いかも知れませんので後程改めて紹介しますね。

意外にもエンジ色の内装は結構あるようで、

ただ今回のオーナー様からのご要望としては「 組み合わせる台座よりは、ほんの少し濃い感じで」と承っておりますので、ちょっと(と言うか全然)足りないかなぁ、と。

他にも良さそうな色はあったのですが、こちらは艶あり仕上げなので良く判りません。

そうなんです、下に塗ってある色は同じでも艶ありとつや消しでは全く違って見える為、艶違いの色見本は全く参考になりません。当然ですが調色作業も然りです。

こちらもSTANDOXの色見本で、これらの赤はベースコートはどれも同じ色ですが、その上に塗ってあるトップコートが違います。

こちらの黒もそうです。

最初から同じ色だと言われていればそう見えるのですが、この状態ではどうやっても同じ色には見えないので、多分これらが違う色でもそう言われたら同じ色に見えてしまうと思います。

なので艶消しで色を合わせるにはやはり調色の段階でもつや消しクリアーを塗らなければならなく、ただそうなると塗装費とは別に調色費(と艶調整費)に膨大なコストが掛かってしまう為、ご依頼自体が難しくなってしまうのです。車の事故修理みたいに200万円の工賃になら調色の為に5万円のコストを掛けるのは仕方ない(と言うか当然)と思いますが、今回程のサイズで塗装費とは別にその費用は現実的では無いですよね。

と言う訳でジャジャーンと!

って、まあこれはSTANDOXユーザーであれば普通の色見本なのですが、ただちょっと他の物とは違います。

こちらは主に外装の特別設定色で、日本車では余り見られませんが車体色とは別にバンパー等に塗られた塗色用の色見本となります。

最近は判りませんが、一昔前ではW124辺りのメルセデスベンツだとバンパーとサッコプレートがボディカラーとは別色&艶消し仕上げになっていた仕様が多くあって、そういった時にはとても役に立つ色見本です(ただ実際はそんなに使わなかったのですが…)。

こちらの方が種類が多い為、先ほどの内装用の色見本よりも近い色が見つかりました。

色見本帳自体凄く正確と言う訳でも無いのですが、適当に色を作ってつや消しクリアーを塗らないまま本塗りをしてしまうよりかはこちらの方が近い色に出来ると思います。

ただここまでやってしまうと「結局コストが掛かってるじゃん!」と突っ込まれてしまいそうですが、実は今回理由があって・・・

そうなんです。実は今回の内装色、別件でご依頼作業中のポルシェのミニカーと同じ色なんです!ちょっと興奮していました(笑)。

最初の画像にあった皮が貼られた部品は恐らくここにある肘掛だと思われます。凄い偶然と言うか、ここまで揃うともう何かの啓示としか思えません(いや、なんでもありません…)。

以前も少し書きましたが、いつかは自宅でひっそりミニカーでも塗って余生を過ごしたいという事もあって、ただミニカーを塗れる人は普通に沢山いる訳なので、そこはやはり差別化は必要だと思っています。

その方法の一つとして実車のデータをミニカーにフィードバックすると言う考えがあって、前回エンブレムのデータを作成したような感じで、今回実車の内装色を採取する事が出来たのは有り難かったです。カラーコードさえ記録しておけば30年後に同じ色を作る事が出来ますからね(ってカラーコードをオープンにしている時点でまるで駄目なのですが…)。

STANDOX MIX895

 特に新製品と言う訳では無いのですが、いよいよこれが無いと色が作れない!と言う日が来たので取り寄せてみました。STANDOX原色、「サンライズオレンジ」MIX895です。818と同じくハーフ缶ですね。

 色は見た通りのオレンジで、いわゆる「着色メタリック」の部類となります。通常はメタリックであるシルバーと顔料を混ぜて色を作りますが、これはアルミフレークに直接顔料がコーティングされた塗色です。

着色パールは何種類かありますが、著色メタリックの原色ははこれ以外にはゴールドメタリックだけです。

こちらがそのゴールドメタリック(MIX806)で、これ系の色は各塗料メーカーとも昔から販売されている原色です。DUPONTだとAM78ですかね。画像はSHUREのマイクに入れるロゴの色を決めているところです。

そんなゴールドメタリックを使った塗装としては、

スクーターのフロントカウルに入れたYAMAHAの音叉マークや、

ゴールド色に塗ったブレンボキャリパーなどです。

そして今回取り寄せた着色オレンジメタリックを使ったのがこちらの塗色で、VW社の純正色「ハバネロオレンジメタリック」(カラーコード:LB2Y)です。は、ハバネロ!(何故か笑)。

見た目はROVERのMG-FやMINIに採用されていた「ボルケーノオレンジ」に似ていて、ただ折角のメタリックオレンジが原色に埋もれてしまい、残念ながらこのサイズで見る限りでは余り大きなインパクトは感じられません。

まあでもこれが実車サイズとなれば相当派手になりますし、純正色でそこまで奇抜さは求められませんから敢えて抑えられた所もあるんでしょうね。今回は業者さんからの仕事の序だったので、いずれ機会があれば原色の色見本も作ってみようと思います。

それにしてもサンライズとかボルケーノとかハバネロとか、中々ボキャブラリーに富んでいるなぁ、と(笑)。

ポルシェ1/43ミニカー 下準備

先日塗装の仕事としてお預かりした1/43サイズのポルシェ純正ミニカーです。念の為ですが遊びではありません。

実は届いたその日にはある程度作業をしておりまして、分解の目処はつけていました。

ガラス部分は恐らくポリスチレン樹脂製で、これはカセットケースやCDケースとかに使われている素材と同じく手で触るだけで傷が付いてしまうような弱い樹脂の為、極力最後まで素手で触らないようにします。

取り外し方は隙間にヘラを挿し込んで両面テープをゆっくり剥がしていきます。

ただ両面テープ以外にも瞬間接着剤が点付けされている為、剥がす際にはピキピキと嫌な音が結構します。幸いにして何とか無事に取れました。

ちなみに一旦80℃程の熱を掛けて接着効果を無くしてあげるという手もあるのですが(物にもよりますが瞬間接着剤は大抵そのくらいの温度で効果が落ちます)、プラスチックが変形する恐れもあるので今回はパワープレイで行きました。

サイドガラスはピラー部分に嵌め込み&点付けで接着剤が塗ってあり、内側にマスキングテープを貼ってゆっくり指でテンションを掛けて外しました。

しかしこのサイドガラス、若干スモークが入っている所が素晴らしいと言うかちょっと感動してしまいました。

ヘッドライトなどの外装部品は穴に嵌め込んでの溶かしカシメのようで、まだ外してはいませんが壊さずに外せそうです。いやはや安心しました。

ちなみにボディパネルとシャーシの固定には普通ボディの下にネジやカシメが見えるのですが、今回はアンダーカバーでそれらが隠されていました。しかもやはりアンダーカバーは瞬間接着剤が使われています。ちょっとイヤらしい感じですかね。

そしてリヤのエンブレムです。デカールの作成はまだですが、先にデータだけ作っておこうかと思います。

まずボディの幅を測ります。

一応PORSCHEロゴの幅も。

ちなみにPORSCHEのロゴはいつもブレーキキャリパーを塗装する時に使っているデータがあるので今回はそれを利用します。turboは以前カッティングシートを作った時に使ったデータがありました。

ネットからエンブレムの配置が見易い画像を見つけ、それを下に敷く感じにして各ロゴの幅や字間、位置を調整します。この辺はミニカーを参考にするよりも実車の方がやり易いですかね。

ちなみにPC上で作成したデータのロゴ幅は13.12mmで、ミニカーの方をノギスで測った幅は12.68mmでした。誤差は0.44ミリで、どうせなら大きい方が良い気がしたので実車をトレースした方を使おうと思います。

後は後日一応プリントして実車合わせをするか、もしくはそのままデカール印刷を行ってしまおうかと思います。って、何だか仕事みたいになってしまいましたね(いや、普通に仕事なのですが・・・)。

ミニカーの塗装

先日日記でも紹介したポルシェ911 turboのミニカーです。

ちゃんと仕事としてご依頼頂いた案件ですが、デカールの作成など通常業務以外の作業も行う予定なので、その場合はこちらの社外記で紹介させて頂こうと思います。

ポルシェミニカーのサイズは1/43で、奥にあるのは以前こちらでも紹介した1/14のBMWです。あちらはミニカーでは無くラジコンベースのプラスチックボディで、配線を繋ぐと光ります(笑)。

ミニカーの塗装はとても面白いのですが、如何せんそれなりに手間が掛かってしまう為、製品自体の金額を考えるとどうしても割高な費用になってしまいご依頼に至る事は極稀です。私としてもお問合せを頂いた案件は全て引き受けたいのですが、工場の存続を考えるとそうも行かないと言うジレンマを抱えています。

と言う感じで今の環境ではこれ以上コストを落とす事は出来ませんが、いずれ引退した後は自宅でひっそりこういった事をやるつもりで、そうすれば今の半分以下の費用で出来る日が来ると考えています。ただしその日が来るのもまだ20年以上先の予定なのですが…(苦)。

 と言う事ですが、一応それ以外の対応策も考えていない訳でも無くて、もし当店で塗装のワークショップをするのならそういったミニカーが丁度良いのかも、と思った次第です。当然ですが実車の塗色(塗膜)をそのままミニカー再現する事が出来ますし、しかもそれがSTANDOXの塗料だとしたらちょっと自慢出来ると思います(普通あり得ません…)。

本当なら今年辺りどこかの土曜日を休日としてそういった事が出来ればと思っていたのですが、如何せん去年の売り上げが考えていたよりも芳しく無く、仕方が無いので気持ちを改めて今年は真面目に働こう、と考え直していた次第です。

それにしても到底やり切れない程の仕事量があるのに売り上げが落ちるなんて、余程効率が悪いと言うか、一体どうして…(苦)。

まあでも連休前の日曜日とかなら開催出来るかも知れませんので、そういったご希望があればいずれ実現するかも知れません。午前中に分解&本塗り、休憩中に強制乾燥硬化して、その日の内に組み付け完成持ち帰り!と言う事が出来ればきっと楽しいでしょうね。いずれ実現できればと思います。