色見本用マイク シリコーン型Ⅱ 作成①

 色見本用マイクのシリコーン型は以前造っているのですが、何度も注型しているうちに型が劣化してきたので改めて作り直すことにしました。

また今回は片側ずつ作る分割タイプでは無く、一度にシリコーンを注いで後から割いて開く作戦です。この方が単純に時間が半分で済みますので楽なのです。

 底板にはアクリル板の端材を敷き、両面テープを貼ってマイクを固定しています。一応ブロックのところには漏れないよう油ねんどを盛っておきました。

 その後マイクがすっぽり収まるようにブロックの壁を積み上げます(ただ真空脱泡時に溢れるのでこの後さらに2段嵩上げしました。

 今回使うシリコーン樹脂も新しい物で、信越シリコーンのKE-1417なる製品となります。以前GMCのアルミホイールキャップを複製した時に購入して使っていなかった物ですね。

既存の物より離型性や耐久性において非常に優れているとの事で、ピューターなどの低融点金属などにも使えるようです。メーカーのカタログはこちらのページからどうぞ。

 主剤100に対して硬化剤は5%です。

 硬化剤はまるでハウスオブカラーのKK-05コバルトブルーのような美しさで、多分攪拌不良が判り易いよう着色されているのだと思います。ポリパテと同じですね。

 真空脱泡はサイズを大きくしたデシケーター弐号機を使います。まあ単にアルミ寸胴に穴を開けてドライポンプと繋げただけの物ですが・・・。

真空脱泡についてはこちらの記事が判り易いかと思います。宜しければご参照下さい。

ちなみに現在使っているドライポンプ以下の製品となります。ORION社のKHA750Aなる製品で、一般的な油回転式の真空ポンプと違って油を排出しないので、塗装現場で使っても全く問題ありません。ちなみに油回転式真空ポンプをこんな風にコンプレッサーの上に置いて使うと、その辺に油が散って工場が終わります(恐)。「排気のパイプを外に出せば良いのでは?」と思うかも知れませんが、塗装の現場においてはそういうレベルでは無いのです。

 主剤と硬化剤を混ぜた物をデシケーターに入れて予備脱泡します。

その後本番用の型に先ほど予備脱泡したシリコーン樹脂を入れ、再び真空脱泡します。動画も撮影したので今度インスタグラムでアップしてみようと思います。

油回転式の真空ポンプは油膜がシールになっているのできっかり-0.1MPaまでいく筈ですが、当工場が使うドライポンプはブレードの先端にカーボンが付いているだけなので密閉性が悪く、この辺が限界です。ずっと回し続けているともう少し下がっていくのですが、そこまでやる意味も無いかなといった感じです。そういった点でドライポンプより油回転式の方が使い勝手は良いですかね。

そして翌日です。

って、あれ?!

入れた量よりかなり減っている気が・・・。

どうやらブロックの隙間からシリコーンが漏れ出してしまったようです。こんな事は今まで一度も無かったので、既存のものに比べて分子が小さいのかも知れません(水は通さないけど水蒸気は通すゴアテックスのような感じではと)。

 と言う訳で、零れて固まった分を、

小刻みにカットして型に投入して嵩上げし、新たにシリコーン樹脂を50g程作って注ぎ込みました。

 再びデシケーターに入れて真空脱泡をします。

カットした端シリコーンがケバケバと突出していたので、プラ板をカットして無理やり押し込みました(笑)。

固まったシリコーンは既に切り開いてマイクを取り出し済みで、続きは後日改めて紹介します。

色見本用素体作成

 色見本用の注型ミニカーの在庫が無くなったのと、以前マイクの塗装を御依頼頂いた方から新たなマイク塗装のサンプルを見てみたいとの事で、こちらも見本用の素体を作る事にしました。

 気温が低い今の時期なら硬化の早いウレタンレジンでも真空脱泡が可能です。

 ドライポンプで容器内の空気を吸い出し、樹脂中にある気泡を取り除きます。

 30分くらい置いてシリコーン型を開くと、こんな感じでマイク本体の形をした樹脂の塊が出来上がります。

 いくつかは脱泡中に反応が始まって上の方に気泡が残ったまま固まっている物もあります。ちょっと欲張り過ぎた感じですかね。

 こちらは同じように注型で作成した車型の色見本で、かなり前ですがキーホルダー用としてサフェーサーを塗っておいた物です。艶があるのは軟化剤がかなり入っているからで、以前BMW M6のサイドスカートにサフェを塗った時と一緒に行っていました。普通サフェでここまで艶は出ません。

注型したままの仕上がりは一見綺麗なのですが、型の合わせ部や注口付近に巣穴が残っていたりするので、綺麗に仕上げる為には「研磨→サフェーサー塗布→完全硬化→研磨」 といった工程が必要です。サフェは普通の2液ウレタンなので当然熱を掛ける必要があり、ラッカーサフェと違ってかなりしっかり砥がないと削れないので結構な手間が掛かります。今回ようやく時間が取れたので、注型している合間にこれを行っておきました。

 と言う訳で今回の注型作業は5ターン行いました。ミニカーも40個は作れたのでこれで色見本が3色分作れます(それでも3色だけか・・・といった感じなのですが)。

 表面には塗装に有害な離型剤がタップリ残っているので、強力な洗浄液に浸けて綺麗にしておきます。

ちなみにこの洗浄液、いつもヘッドカバーなどを浸け置き洗浄しているのとは違うタイプなのですが、先日塗装の剥離に使えるかと思って試してみたら大変な事になりました。

こちらはいつもブレーキキャリパーを吊るす時に使っているアルミ製の冶具なのですが、シンナーより強アルカリの方が早いんじゃ?と思って一晩漬けておいたところ、アルミが露出した部分が溶けて細くなっていました(恐)。

まあある程度こういう風になるのは判っていたのですが、まさか半日でここまで無くなるとは思わなく、改めて薬品を扱う上での重要さを感じました(と言っても誰でも普通に入手出来る物なのですが)。

ちなみにエンジンパーツの浸け置き洗浄に使っているのはこれとは違うKMC-500です。

かのアルカリ洗浄液については以下の記事で紹介していますので宜しければどうぞ。

第3回~ 遠心注型

改めて真空脱泡

SHUREマイクの色見本用モックアップの作成は、いつもこんな感じにシリコーン型に注型用ウレタン樹脂をそのまま注いでいましたが、

 ちょっと思う所があったので、ウレタンレジンとしては久しぶりに真空脱泡を試してみる事としました。

最初の頃に使っていたウレタンレジンは120秒硬化の早いタイプで、さらにその時は気温が高かった為に真空脱泡をしている途中に硬化が始まってしまう(!)と言う大惨事ぶりだったのですが、その後今使っている180秒硬化の遅いタイプを教えてもらったのと、今の低い気温(10℃くらい)ならいけるのでは!と思ったのです。

 デシケーター内の空気をドライポンプで吸い出して気圧を下げると、予想通り結構な量の空気を脱泡する事が出来ました。

ただ余り欲張ると以前と同じ轍を踏むので、多少余裕を持って早めに終わらせるようにします。

 また巣穴が見やすいようにと、レジンに着色剤を入れて黒くしました。

 左が自然落下で注型した物で、右が真空脱泡をして作成した物です。色は違いますが樹脂は同じ物です。

 真空脱泡した方は見た目には殆ど気泡(巣穴)は見られず、

 単に注いだだけ(常圧)で注型した方には小さなピンホールが幾つか見受けられます。色が黒だと良く判りますね。

 今回の物は今までに比べてもかなり巣穴が多く、そのままでは到底塗れないのでサフェーサーを塗る事にしました。

 どうせ塗るならと言う事で、常圧で注型した物は結局全部サフェを塗っています。

 こちらは真空脱泡した方で、脱泡時に上に上がってそのまま固まった気泡がかなりの量なのが判ります。

試しに(と言うか他の塗装のついでに)、真空脱泡した方にはクリアーだけを塗ってみました。

下には何も塗っていませんが(当然ですがウレタンレジンに密着剤など不要です)、巣穴やハジキなど殆ど無く綺麗に仕上がりました。モックアップマイクでは今までで一番良い出来だと思います。

気温が上がってしまったらまた違う結果になるかも知れませんが、当面は真空脱泡で作って作業を楽にしていこうと思います。

と言うかもっと早くやっていれば良かったですね。

GMCホイールキャップ シリコーン型作成③

 先日表側のシリコーン型を作製していたGMCのホイールセンターキャップです。画像は裏返した状態で、ここからは反対側の作業となります。

 シリコーン型から原型が外れないよう注意し、油ねんどを取り除きます。

 型取り用のシリコーン樹脂は他の物質にくっ付きませんが、同じシリコーン同士だとガッチリくっ付いてしまう為、型の合わせ面には離型剤の塗布が必須です。

 準備が出来たらデシケーターの中に型を置き、シリコーン樹脂の予備脱泡を行います。二回目以降は直接注いだ状態で眞空脱泡を行いますが、表面部に気泡が入るのは避けたいので一回目だけはこれをやるようにしています。。

 この状態ではまだ主剤のみで、予備脱泡が終わったら3%程硬化剤を入れてよく混ぜます(規定は4%で夏場は2%で十分なようです)。

 再び真空脱泡を行い、一旦ここで半日ほど置いてシリコーン樹脂を硬化させます。

この後は使用するシリコーン樹脂の量を減らす為、表側の時と同様に不要となった型を切り刻んだ物を投入して嵩上げを行います(画像は使い回しです)。

 刻んだシリコーン樹脂を散りばめ、再びシリコーン樹脂を注ぎ真空脱泡を行います。この時点で2層目です。

 さらに後日固まったシリコーン樹脂の上に、やはり表側と同様ファイバークロスを敷きます。

と、この時点で在庫していた2キロ分のシリコーン樹脂を使い切りまして、

 新たに4キロを補填しました。硬化剤は沢山あってもう要らないのですが、セットなので仕方なく付いてきます(

 また今回は今まで使っていた旭化成ワッカー8012よりも少し固いタイプの8017を、その右の青い文字の缶はさらに固くて強いタイプの「信越シリコーンKE-1417-30」も買ってみました。KE-1417は粘度が高いので真空脱泡機が無いと使えないとの事ですが、今まで使っていたシリコーン樹脂よりも丈夫で長く使えるとの事で期待しています(ただ1キロ¥4,000と少々高いです)。

 と言う訳で3層目は今までより少し固い8017を使いました。

 そしてその後シリコーン樹脂が固まった状態です。こちら側も補強の為に最後に石膏で固めます。

10ミリくらいの厚みになるよう充填し、これでいよいよメス型の完成です。

この後壁のブロックを外して裏表それぞれシリコーンを開いて中の原型を取り出し、再び型を合わせ閉じたら中にエポキシ樹脂を注いでホイールキャップを複製!と言う算段です。

ただし型が上手く出来ていないとここまでの作業は全くの無駄となる為(しかも使った材料が全てゴミ)、今回は塗装以外の作業でも結構真面目に作業をしているという訳です。いつもは楽しんで行う社外記ですが、もうまるで仕事です(苦)。