2018.7.15 サーモス塗装ワークショップ③

 先日に引き続き、7月15日に行ったサーモス塗装ワークショップの紹介となります。

上の画像にあるのは主にG-SHOCKを塗装している塗装屋さんの物で、今回は色々な色見本と、キャンディーブルーに塗装したG-SHOCKを持って来て頂きました。相変わらずキレてますね~(笑)。

 こちらは今回新規で御参加いただいた方で、普段は仕事でUVプリントをされているとの事でそれのサンプルやUVプリントした転写ステッカーを持って来て頂けました。

今回参加している人間であればこれをどうやって、しかもどれだけ面倒な事をして行っているのが良く判っていて皆さん感心していました。実際の印刷屋さんなら判ると思いますが、通常量産品で360度丸々一周にUV印刷ってしない(出来ない)ですよね。業界のイベントでも人山が出来るそうです(恐)。

 こちらはアートトイペインターのGUNさんが塗っているBlackrabbitで、今回も面倒そうなマスキング塗装を施された物を持って来て頂きました。工程を想像してしまうと寒気がしてしまいます・・・。

 左は透明の素体に透明レジンと和柄の端切れを入れて固めた物で、右は蓄光顔料を練り込んだ素体をベースにしている物です。ちなみにこれらのBlackrabbit私も二体持ってます(何故か笑)。

またGUNさんは新しいカメラを購入されたとの事で、この日はそれも持って来て頂き、先日設置したストロボ撮影デスクを試して頂きました。やはりと言うかリモコン制御のストロボに驚いていて(多分今時だと普通だと思うのですが)、そして簡単に撮影が出来る事にかなりテンションが上がっていました。判ります判ります、私も最初そうでした(笑)。

 先程のGUNさんが塗装したサーモスはそのまま持って帰ってしまったのですが、他の物は後から発送と言う事で今回撮影も行ってみました(しかしながら毎回これでは大変なので今回が最後だと思います)。

 分解して塗装していたポッチも組み込んでおきました。

 こちらは普段お仕事で遣っているUVプリンターで印刷~作成した転写シールで、画像だと判り難いのですがかなりの厚みがあるので、エンボス加工したように一段高くなっています。点字とかに応用出来ないかなぁ、と。

 一緒に塗装した車型の色見本にはヒートンを挿し、キーホルダー化しておきました。

 一部膜厚が付き過ぎて発泡(ワキ=小さいブツブツ)が発生していますが、初心者としては十分綺麗に仕上がっているかと思います。

ちなみに今回使ったクリアー(クリスタルクリアー)は塗り過ぎるとこういったワキが発生し易く、これはキーホルダーの方にある微妙なタレ部分にも見つける事が出来ると思います。クリアーによっては同じ塗り方をしてもこれが出ない物もあるので、今回は気にしなくて大丈夫だと思います(美観はとても良いクリアーなのですが、そういったリスクから使用を諦める塗装屋さんが多いです)。

例えば今回使うクリアーが、同社STANDOXのイージークリアー(旧)であればそういったワキや泡噛みは生じなかったと思います。「イージーですから!」と言うのが当時のデモマンの口癖で、ただしイージークリアーの方が肌が出来難く垂れ易くはあります。ある意味イージーではありません(苦笑)。

ちなみに今回はこちらのウォッシュコンパウンド(ハジキシラズ)もご用命頂ましたので、後日サーモスと一緒に送らせて頂きます。

今までずっとハジキに悩んでいて、先日紹介したこちらの記事を読んで「まさにこれだ!」と思ったらしいです(笑)。ウォッシュコンパウンドは各社から出ていますが、私的にはこれが一番バランスが良くて気に入っております。

尚、調子が良くてもしこれが気に入られましたら次は是非メーカー市販の4キロ(!)のボトルをご購入頂ければと思います。メーカーの方が一生懸命開発した物を、あたかも自社製品のようにして売ったりはしておりませんのでご安心下さいませ。

 そしてこちらは今回二度目の参加の、私の従兄弟が塗装したサーモスです。

 生まれたばかりの赤ちゃん用にと、敢えて淡い色をチョイスしていました。

 下側には自身のブランドのオリジナルロゴとイラストなどを配していて、デカールは若干シワが残りましたが、剥がれたり浮いたりするような事は無く、また今回はクリアーが垂れていません。明らかに前回よりも上達したようです(相当イメージトレーニングを重ねていたのではと・・・)。

 先程までの画像だとソリッドカラーに見えますが、こうやってみるとパールが効いているのが判ると思います。まるで市販品のよう(笑)。

 練習用に塗装した車型の色見本は、一つは裏側に磁石を埋め込んでマグネット化し、もう一つはヒートンを挿してキーホルダーにしておきました。

折角綺麗に塗ったサーモスが使っていて傷が付くのは忍びない・・・。」

「だがしかし、折角のオリジナルカラーに塗装したサーモスを隠すのも勿体無さすぎるぜ!」

と言う場合はこんな感じにすればと思った次第です(ソフトケースは自分で買って下さい・・・)。

尚、他に私が塗ったサーモスもあるのですが、そちらは後日改めて紹介したいと思います。

取り敢えず今回のサーモスワークショップの紹介はこれで終了で、皆さま当日は暑い中大変お疲れ様でした!

次回は涼しくなったら開催するかも知れませんので、ご希望の方は是非ご参加頂ければと思います。

小物塗装屋集合

 今日は遠路はるばる愛知県からと、比較的工場からも近い川崎から塗装屋さん方々が工場に遊びに来てくれていました。川崎の方の塗装屋さんは以前こちらでも紹介したBLACKRABBiTのGUNさんで、以下の記事が判り易いかと思います。

マスキングシートを届けついでに

 もう一人の塗装屋さんはこちらのG-Shockを専門に塗装している方で、以前当店でも施工したBaby-Gの塗装では色々助言も頂き無事お納めする事が出来ました。

以下がその時塗装した記事で、上の三個は今回見本と言う事でわざわざ持って来て頂いた物です。

CASIO G-Shock Baby-G

 右手前は粒子の細かいピンクパールで、真ん中はキャンディーレッド、左端はイエローのソリッドカラーとなります。柔らかい素材に塗るにはどれも避けたい色ですが、とても綺麗に仕上がっています。

 G-shockのような腕時計は日常的に遣う物なので十分な耐久性も考慮する必要があり、その上でこの柔らかい素材をここまで綺麗に仕上げる塗装屋さんが要るとは思ってもいませんでした(なんて実は以前一度お会いしていて、塗装した物も見せて貰っているのですが話に夢中ですっかり撮影を忘れていた始末でして・・・)。

ちなみにG-shockの塗装屋さんは以前BlackRABBitのGUNの塗装ワークショップに参加していて一応顔見知りだったので、今回改めて三人でお会いしました。三人が一緒にと言うのは初めてですかね。

塗装の技術的な事や運営方法などを話していたらあっと言う間に時間が経ってしまい、うっかり夕飯を食べるのも忘れて10時間しゃべりっ放し!と言う一日になってしまいましたが、今日はとても刺激的な話が聞けて私のモティベーションもかなり上げられたと思います。

上の画像は以前真空脱泡のテストとして作成した注型樹脂で、こちらはGUNさんの造った溶けたウサギ「TOROBBiT」を基に、許可を頂いてシリコーン型を作製し、透明なエポキシ樹脂クリスタルレジンⅡで作成した物です。以下の記事で制作過程を紹介していますので宜しければどうぞ。

真空脱泡&透明レジン比較

こちらの実物をGUNさんが見たのは初めてで、何故か大層気に入って頂けたので型のお礼にと差し上げました。丁度良いので、今度はドライフラワーを入れた水中花仕様を新たに作ってみようと思います(そこは我々の年代的に少々微妙な感じではありましたが、まあ一周回って面白いかなぁと。笑)。

CASIO Baby-G ベルト塗装 耐久テスト

gshock54少し前に仕事で塗らせて頂いたカシオのBaby-Gフロッグマンのベルトとベゼルです。

その後G-SHOCKの塗装についてのお問合せも多くなりましたが、金額が金額なのでご依頼に至る事はやはり稀のようですね。むしろそれで良いと思ってます(希少だからこそのオリジナルな訳ですし)。

gshock8ベルト部分は柔らかい上にストレスの掛かる所なので、先ほど紹介したBaby-Gは本塗りを行う前に塗膜の強度などの確認の為に色々テストしていました。こちらのページで紹介していますので宜しければご確認下さい。

gshock38実は本塗りの時にご依頼品とは別にテスト用の素材も用意していまして、そちらにも同じ方法で塗装を施していたので、今回はこちらの耐久テストを行う事にしました。どこが限界なのかも知りたかったのです。

gshock55 前回人口皮革への塗装で試した時と同じく、テストする被塗物を重量秤と共に両端を固定して引っ張ります。

gshock56 間にはデジタル秤を挟み、表示される数値を見てどれくらいの力で引っ張っているのかが判るようになってます。勘とかも大事かも知れませんが(そしてそれは経験を基にした物に限ります)、私的にはやはり数値として知っておきたいんですよね。

gshock57 ベルトは実際に腕時計として使っているような感じに固定しました。

gshock58 間に挟んだターンバックルを回して徐々に負荷をかけていきます。画像の状態でおよそ8キロの力で引っ張っているといった感じですね。

gshock59 みるみる伸びていきますが、塗膜には全く問題ありません。プツっとしているのは傷の毛羽立ちやゴミです(元々とても程度の悪いベルトですので)。

gshock60 と、そこでダブルリングが破損しました。ここの強度は余りなかった模様です。

gshock61 ここで「引っ張る力を見るより伸びた長さを測った方が判り易いんじゃ…」と言う事に気づいて、まず最初の状態の長さを計る事にしました。およそ69ミリといった感じです。

gshock62 10キロの力で引っ張った状態で長さを測る事にしました。

gshock63 およそ77ミリ、1センチ弱伸びた感じですね。余り伸びていない印象ですが、G-Shockを知っている方なら「そこはそんなに伸びる所じゃ無いですよ!」と判って頂けると思います。

gshock64 と、ここでベルトの端が切れました。そもそもこの方向に伸びるような素材では無いので、やはり透過結構な負荷が掛かっていたんでしょうね。

gshock65 見た目的には全く問題ありません。

gshock66 と、ここで折り曲げのテストもしてみる事にしました。この方が塗膜にとっては多分厳しいような気がします。

gshock67 シャコマン(万力)を使ってこれでもか!と言うくらい締め付けます。

gshock68 この状態で5分くらい放置しました。

gshock69 万力から外してみると、折れた所にシワが寄ってます。ただし恐らくこれは塗膜では無く素材のシワかと思います。

gshock70その後家庭用のドライヤーを当てて暖かくしたところ、シワは綺麗になくなりました。

塗膜自体が密着していないと一度出来たシワは元に戻りませんが(それはもう剥がれていますので)、密着性自体問題が無ければ硬化した塗膜でも雰囲気温度を上げてガラス転移点を超える事によって変形を元に戻す事が出来ます(勿論クリアーの特性に依る所がありますが)。

gshock71 さらに塗膜の密着性テストを行います。1ミリ幅にカッターで切れ込みを入れて100升を作る碁盤目試験です。

ちなみに現在のJISではこれでは無く、「素地まで達する6本の格子状(碁盤目様)の切り込みを入れた」時にできる25マスの試験方法に簡略化されましたらしいです。

gshock72 素地に達するましっかりと切れ込みを入れておきます。ベルトは元々ゴミのような物をわざと買いましたので勿体ないと思われなくて大丈夫です。

gshock73 そこにセロハンテープをしっかりと貼りつけ、JISの試験方法では45度の角度で引っ張ります。ただうちの場合はここはそこまで気にしていません(そもそもこれでは足りないです)。

gshock74 何度かバシバシとセロハンテープを貼っては勢いよく剥がしましたがまるで剥がれる気配はありません。まあ当然です。

gshock75そもそもプロ・フィットの密着テストではセロハンテープでは無くガムテープを使っていて、これで剥がれたらNGと言う事です。装飾クロムメッキへの塗装も、塗装不可能と言われていたPE(ポリエチレン)への塗装もこの方法でテストをして良い結果を得ています。

尚、PEへの塗装は公共設備への施工だった為か第三者機関でのテストも行われたようで、そこでも結果は良好でした。ただ作業内容(下地処理)がとても大変なので、現在は基本的にお受付していません。

gshock76 こちらも45度の角度と言わず、バシバシと貼っては直角方向に剥がしてを何度も繰り返します。新しいガムテープを3回使いましたが、一升も剥がれませんでした。被塗面は脱脂もしていますので油膜などは勿論ありません。

ちなみに、「ちゃんと下まで切れ込み入ってる?」と思うかも知れませんが、

gshock77 これくらい奥まで刃は入ってます(何故か笑)。

gshock78 勿論縦目も。

gshock79 さらに「どうせ後は捨てるだけ」と言う事なので、無理矢理ぐるぐる巻きにしたりしてわざと大量のシワを作ってみました。

gshock81 同じようにカッターでクロスカットしてみます。

gshock80さすがにここまでストレスを与えると塗膜の一部は剥がれて来ています。

ここで気づいたのですが、どうやら塗膜は引っ張るよりも縮める方が弱いようで、そう言えばギャラリーフェイク(と言う漫画)に登場する主人公の藤田氏が、「普通の人間は絵画を丸める際に表側を内側にしたがるが、本当は外向きの方が剥落し難い」と言っていたのを思い出しました。実際表側は何ら問題はありません。

と言う感じで、預かった依頼品でこんな事は出来ませんから、今回色々と試せた事は今後役に立つと思います。

CASIO BABY-G 乾燥硬化中

gshock35 先日本塗りを終えていますカシオBABY-Gのパーツ一式です。

画像は工場一階の乾燥炉(恒温機)で、BABY-Gは既に2回程熱を入れて強制乾燥していますが、念の為もう一度熱を掛けておこうと思っています。

gshock36 塗装方法は通常の2コートメタリック塗装ですが、クリアーに軟化剤を入れてフルフレキシブル仕様にしてあります。被塗物がゴムのように柔らかいので、その上に塗った塗装が割れないようにですね。

gshock37 クリアーに入れる軟化剤は通常10~15%程ですが、今回は念の為20%入れてあって、それ故に何度も熱を入れてしっかり硬化を促そうとしています。

ちなみに少し前にSTANDOXのオフィシャルサイトで軟化剤を30%入れるようなマニュアルを見たような気がするのですが(確かVOCクリアーとの組み合わせで)、その後それを探しても見つからず、結局15%添加のマニュアルしか見つかりませんでした。まさかここ数日で消えたとも思えませんし・・・夢でも見ていた気分です(本件とは関係ありませんのでご安心下さいませ)。

gshock39 ちなみにこちらはカップに余ったクリアーを取り出して一緒に熱を掛けて確認しているところです。

factory (1 - 1)-35通常カップから出したクリアーの塊は外気に触れると一気に溶剤が抜け、こんな感じでひび割れて崩壊が始まりますが、軟化剤が入っていればクリアーに柔軟性が持たれるのでこうはなりません。まあこれは極端な例ですけどね(笑)。

gshock40 今回は軟化剤を20%入れているという事で、ここまでの厚みの物をこんなに曲げても割れません。

gshock41 表裏どちらに曲げてもヒビ一つ入りません。

ただしこれは塗料樹脂が完全に硬化していないという事もあって、この後経年していく内に徐々に樹脂は固くなっていきますから、もしかしたら同じようにして割れてしまうかも知れません。

実はこういうテスト的な事は塗装屋さんなら誰でもやっていたりしまして(多分)、それが故にこういったゴミみたいな物(!)がその辺に溜まっていってしまいます。そう、それはただのゴミじゃないんですよ!(と言い訳を代弁しておきます)。

gshock38ちなみに今回テスト用の為にジャンク品のBABY-Gも用意しておりまして、ご依頼品と一緒にこちらも同じ条件で塗装しておきました。さすがにご依頼頂いた品で引っ張りテストとかをやる訳にはいきませんが、これなら本体が千切れるまで大丈夫!と言う算段です。一応分解するところから撮影はしていますのでいずれテスト結果と共に紹介したいと思います。

全然話は違いますが、湾岸ミッドナイトと言う漫画で「大田リカコ」と言う女性メカニックが登場するのですが(「スピードファクトリー RGO」代表の大田和夫氏の娘さんです)、悪魔のZと神谷エイジのランエボが対決する時にこのリカコもランエボに同乗し、自ら組んだエンジンの限界を知ろうとして隣のエイジを激しく煽るシーンがあるのですが(記憶が違っていたらすいません)、隣のリカコはエンジンが逝かなくてガッカリ・・・。恐らく自分が組んだエンジンがどこまで回るのか、どこまで行けば壊れるのか、壊れた後のエンジンの中が見たい!と言う心情だったのだと思います(何のことだか全く判らない方にはすいません・・・)。

エイジを煽るシーンでの彼女は異様に目をギラギラさせていて、若かった私は「コイツ狂ってる・・・」と結構引いたのですが(笑)、実際作り手の側になってみるとその気持ちが良く判るところがあって、なので今回のようなテストをしているのだと思います。

しかしあの漫画に出てくる作り手って確かに一芸に秀でているのですが、それ以外は人生を捨てているというかかなり狂っていますよね(苦笑)。私はそうならないように気を付けたい次第です。