CASIO Baby-G ベルト塗装 耐久テスト

gshock54少し前に仕事で塗らせて頂いたカシオのBaby-Gフロッグマンのベルトとベゼルです。

その後G-SHOCKの塗装についてのお問合せも多くなりましたが、金額が金額なのでご依頼に至る事はやはり稀のようですね。むしろそれで良いと思ってます(希少だからこそのオリジナルな訳ですし)。

gshock8ベルト部分は柔らかい上にストレスの掛かる所なので、先ほど紹介したBaby-Gは本塗りを行う前に塗膜の強度などの確認の為に色々テストしていました。こちらのページで紹介していますので宜しければご確認下さい。

gshock38実は本塗りの時にご依頼品とは別にテスト用の素材も用意していまして、そちらにも同じ方法で塗装を施していたので、今回はこちらの耐久テストを行う事にしました。どこが限界なのかも知りたかったのです。

gshock55 前回人口皮革への塗装で試した時と同じく、テストする被塗物を重量秤と共に両端を固定して引っ張ります。

gshock56 間にはデジタル秤を挟み、表示される数値を見てどれくらいの力で引っ張っているのかが判るようになってます。勘とかも大事かも知れませんが(そしてそれは経験を基にした物に限ります)、私的にはやはり数値として知っておきたいんですよね。

gshock57 ベルトは実際に腕時計として使っているような感じに固定しました。

gshock58 間に挟んだターンバックルを回して徐々に負荷をかけていきます。画像の状態でおよそ8キロの力で引っ張っているといった感じですね。

gshock59 みるみる伸びていきますが、塗膜には全く問題ありません。プツっとしているのは傷の毛羽立ちやゴミです(元々とても程度の悪いベルトですので)。

gshock60 と、そこでダブルリングが破損しました。ここの強度は余りなかった模様です。

gshock61 ここで「引っ張る力を見るより伸びた長さを測った方が判り易いんじゃ…」と言う事に気づいて、まず最初の状態の長さを計る事にしました。およそ69ミリといった感じです。

gshock62 10キロの力で引っ張った状態で長さを測る事にしました。

gshock63 およそ77ミリ、1センチ弱伸びた感じですね。余り伸びていない印象ですが、G-Shockを知っている方なら「そこはそんなに伸びる所じゃ無いですよ!」と判って頂けると思います。

gshock64 と、ここでベルトの端が切れました。そもそもこの方向に伸びるような素材では無いので、やはり透過結構な負荷が掛かっていたんでしょうね。

gshock65 見た目的には全く問題ありません。

gshock66 と、ここで折り曲げのテストもしてみる事にしました。この方が塗膜にとっては多分厳しいような気がします。

gshock67 シャコマン(万力)を使ってこれでもか!と言うくらい締め付けます。

gshock68 この状態で5分くらい放置しました。

gshock69 万力から外してみると、折れた所にシワが寄ってます。ただし恐らくこれは塗膜では無く素材のシワかと思います。

gshock70その後家庭用のドライヤーを当てて暖かくしたところ、シワは綺麗になくなりました。

塗膜自体が密着していないと一度出来たシワは元に戻りませんが(それはもう剥がれていますので)、密着性自体問題が無ければ硬化した塗膜でも雰囲気温度を上げてガラス転移点を超える事によって変形を元に戻す事が出来ます(勿論クリアーの特性に依る所がありますが)。

gshock71 さらに塗膜の密着性テストを行います。1ミリ幅にカッターで切れ込みを入れて100升を作る碁盤目試験です。

ちなみに現在のJISではこれでは無く、「素地まで達する6本の格子状(碁盤目様)の切り込みを入れた」時にできる25マスの試験方法に簡略化されましたらしいです。

gshock72 素地に達するましっかりと切れ込みを入れておきます。ベルトは元々ゴミのような物をわざと買いましたので勿体ないと思われなくて大丈夫です。

gshock73 そこにセロハンテープをしっかりと貼りつけ、JISの試験方法では45度の角度で引っ張ります。ただうちの場合はここはそこまで気にしていません(そもそもこれでは足りないです)。

gshock74 何度かバシバシとセロハンテープを貼っては勢いよく剥がしましたがまるで剥がれる気配はありません。まあ当然です。

gshock75そもそもプロ・フィットの密着テストではセロハンテープでは無くガムテープを使っていて、これで剥がれたらNGと言う事です。装飾クロムメッキへの塗装も、塗装不可能と言われていたPE(ポリエチレン)への塗装もこの方法でテストをして良い結果を得ています。

尚、PEへの塗装は公共設備への施工だった為か第三者機関でのテストも行われたようで、そこでも結果は良好でした。ただ作業内容(下地処理)がとても大変なので、現在は基本的にお受付していません。

gshock76 こちらも45度の角度と言わず、バシバシと貼っては直角方向に剥がしてを何度も繰り返します。新しいガムテープを3回使いましたが、一升も剥がれませんでした。被塗面は脱脂もしていますので油膜などは勿論ありません。

ちなみに、「ちゃんと下まで切れ込み入ってる?」と思うかも知れませんが、

gshock77 これくらい奥まで刃は入ってます(何故か笑)。

gshock78 勿論縦目も。

gshock79 さらに「どうせ後は捨てるだけ」と言う事なので、無理矢理ぐるぐる巻きにしたりしてわざと大量のシワを作ってみました。

gshock81 同じようにカッターでクロスカットしてみます。

gshock80さすがにここまでストレスを与えると塗膜の一部は剥がれて来ています。

ここで気づいたのですが、どうやら塗膜は引っ張るよりも縮める方が弱いようで、そう言えばギャラリーフェイク(と言う漫画)に登場する主人公の藤田氏が、「普通の人間は絵画を丸める際に表側を内側にしたがるが、本当は外向きの方が剥落し難い」と言っていたのを思い出しました。実際表側は何ら問題はありません。

と言う感じで、預かった依頼品でこんな事は出来ませんから、今回色々と試せた事は今後役に立つと思います。

CASIO BABY-G 乾燥硬化中

gshock35 先日本塗りを終えていますカシオBABY-Gのパーツ一式です。

画像は工場一階の乾燥炉(恒温機)で、BABY-Gは既に2回程熱を入れて強制乾燥していますが、念の為もう一度熱を掛けておこうと思っています。

gshock36 塗装方法は通常の2コートメタリック塗装ですが、クリアーに軟化剤を入れてフルフレキシブル仕様にしてあります。被塗物がゴムのように柔らかいので、その上に塗った塗装が割れないようにですね。

gshock37 クリアーに入れる軟化剤は通常10~15%程ですが、今回は念の為20%入れてあって、それ故に何度も熱を入れてしっかり硬化を促そうとしています。

ちなみに少し前にSTANDOXのオフィシャルサイトで軟化剤を30%入れるようなマニュアルを見たような気がするのですが(確かVOCクリアーとの組み合わせで)、その後それを探しても見つからず、結局15%添加のマニュアルしか見つかりませんでした。まさかここ数日で消えたとも思えませんし・・・夢でも見ていた気分です(本件とは関係ありませんのでご安心下さいませ)。

gshock39 ちなみにこちらはカップに余ったクリアーを取り出して一緒に熱を掛けて確認しているところです。

factory (1 - 1)-35通常カップから出したクリアーの塊は外気に触れると一気に溶剤が抜け、こんな感じでひび割れて崩壊が始まりますが、軟化剤が入っていればクリアーに柔軟性が持たれるのでこうはなりません。まあこれは極端な例ですけどね(笑)。

gshock40 今回は軟化剤を20%入れているという事で、ここまでの厚みの物をこんなに曲げても割れません。

gshock41 表裏どちらに曲げてもヒビ一つ入りません。

ただしこれは塗料樹脂が完全に硬化していないという事もあって、この後経年していく内に徐々に樹脂は固くなっていきますから、もしかしたら同じようにして割れてしまうかも知れません。

実はこういうテスト的な事は塗装屋さんなら誰でもやっていたりしまして(多分)、それが故にこういったゴミみたいな物(!)がその辺に溜まっていってしまいます。そう、それはただのゴミじゃないんですよ!(と言い訳を代弁しておきます)。

gshock38ちなみに今回テスト用の為にジャンク品のBABY-Gも用意しておりまして、ご依頼品と一緒にこちらも同じ条件で塗装しておきました。さすがにご依頼頂いた品で引っ張りテストとかをやる訳にはいきませんが、これなら本体が千切れるまで大丈夫!と言う算段です。一応分解するところから撮影はしていますのでいずれテスト結果と共に紹介したいと思います。

全然話は違いますが、湾岸ミッドナイトと言う漫画で「大田リカコ」と言う女性メカニックが登場するのですが(「スピードファクトリー RGO」代表の大田和夫氏の娘さんです)、悪魔のZと神谷エイジのランエボが対決する時にこのリカコもランエボに同乗し、自ら組んだエンジンの限界を知ろうとして隣のエイジを激しく煽るシーンがあるのですが(記憶が違っていたらすいません)、隣のリカコはエンジンが逝かなくてガッカリ・・・。恐らく自分が組んだエンジンがどこまで回るのか、どこまで行けば壊れるのか、壊れた後のエンジンの中が見たい!と言う心情だったのだと思います(何のことだか全く判らない方にはすいません・・・)。

エイジを煽るシーンでの彼女は異様に目をギラギラさせていて、若かった私は「コイツ狂ってる・・・」と結構引いたのですが(笑)、実際作り手の側になってみるとその気持ちが良く判るところがあって、なので今回のようなテストをしているのだと思います。

しかしあの漫画に出てくる作り手って確かに一芸に秀でているのですが、それ以外は人生を捨てているというかかなり狂っていますよね(苦笑)。私はそうならないように気を付けたい次第です。