ライン塗装

本日日記の方で紹介したBMWのアッパーカウルですが、ライン入れ塗装について別の方法もあるのでそちらも紹介しようと思います。

 今回のアッパーカウルはわざわざ後からライン入れの塗装を行っていますが、

 先にゴールドを塗ってラインテープ一本でマスキングをする!と言う方法もあります。貼るテープは一本だけなので当然こちらの方が作業は楽です。

 その上にマルーン系メタリックを塗ってテープを剥がせば見た目はアッパーカウルと同じような仕上がりには見えます。

が、この方法は極限られた場合のみで(私の場合ですが)、今回のようなアッパーカウルには適用が出来ません。そもそも上の画像を良く見て見ると判るように、ミニカーに入れたラインのお尻の方ではマスキングの際が浮いて色が食み出てしまっていますし・・・。

ラインマスキングの見切りに使っているのはこういったPP系のラインテープで、PP(ポリプロピレン)には塗料がくっ付かないと言う特徴を利用し見切りのラインが綺麗に仕上がり易くなっています(と言っても使い方を誤れば結局ガタガタになりますが)。

ただしこれの致命的な弱点として「引っ張ると伸びる」といった事があって、局所的に強い力が掛かるとそこだけ細くなってしまい、ラインが曲がってしまいます。

上の画像では5ミリ幅のラインテープを使っているので比較的それがなり難いのですが、やはりと言うか多少強い力で引っ張っただけで途中の太さが変わってしまいラインが曲がってしまっています。これはもう修正が出来ません。

ちなみに通常の和紙タイプのテープであればこういった事は起こらなく、また伸びにくい直線用ラインテープと言うのもあるのですが、使う場所は本当に直線に限られるので今回のようなケースでは…です。

もう一つの理由としては「塗膜厚」で、見切りラインを美しく仕上げるには塗膜の厚みを極力少なくする必要があります。

基本は隠蔽力の強い方を後にして、また塗装面積が小さければピンポイントでの塗装が可能なので口径の小さいガン(エアーブラシ)を使って無用に膜厚を付ける事も避けられます。今回はゴールドに0.3ミリのエアーブラシを使いましたが、まさか本体の方をそれで塗れませんしね(ドライコートになり過ぎてクリアーが密着しません…)。

後は修正のし易さで、今回も貼っている分よりも捨てている方が3倍くらいはあるのですが、それでも3回のやり直しで済んでいれば御の字です。

ちなみに今回塗ったマルーン系ブラウンは見た目は隠蔽力の強そうな色ですが、実はかなりこれが弱いです。白い色板に塗ったら4回塗らないと完全隠ぺいはしなそうな感じでした。

私的な想像ですが、一般的な茶色は「無機顔料」で、これは鉱物が原料ですから隠蔽力が高く、今回使ったマルーン系顔料(STANDOXだと583/883)は有機系顔料で、これは石油系ですから鮮やかなイエローと同じように隠蔽力が弱いのでは?と考えています。

塗装のやり方には色々あって、常に最も仕上りの良い方法でやれるのが理想ではありますが、仕事である以上時間的なコストも考えてバランスよく作業しなければなりません。その点ではディーラーで仕事をした事は良い機会だったと思います。

一般的にディーラー(正規サービスセンター)では「じっくり」と言うイメージがあるかも知れませんが、実はその全く逆で、全ての作業は時間で管理されているので「良かれと思って」なんて余計な事をすると評価に響きます。お陰で私のボーナスは同期の半分以下に・・・(いやまあそれは外国人の上司と色々揉めていたのが原因ですが。笑)。

塗装はケースバイケースで、重要なのは引き出しの多さですかね。あ、そう言えばアクワイヤーの新型出ましたね!(聞いてはいましたが曲面での読み込みが良くなったのは知りませんでした!)。