艶消し塗装3分艶

 とある企業様からのご依頼で、白系の塗色を「3分艶」でご指定を承っておりまして、それの色板を作成しているところです。

 艶消し度合いの調整については各塗料メーカーから仕様書が出ていて、ただ塗装屋さんなら判ると思いますが、これはそんな単純な話ではありません。艶の具合はクリアーの塗り方はもちろん、下地の状態(ベースコート)やその日の気候によっても変わりますし、見る人によってそれの感じ方も違いますから、厳密な調整にはかなりの手間が掛かります。同じ艶消しでも白と黒とでは黒の方が艶があるように見え、また平面と球面では後者の方が艶があるように見えます。同じ材料・同じ塗り方、同時に塗っていてさえ見え方が違いますから、こんなに恐ろしい事はありません。

 また今回は調色作業も併せて行っていますので、指針となる艶ありの見本も作っています。艶消しクリアーはシリカゲル等の顔料が入っている為、それを塗った時点で色が変わってしまいますから、何にも影響されていない基準となる物が必要なのです(しかしながら厳密にいうと艶ありクリアーでさえ黒みが出ますが・・・)。

ちなみに艶消し黒に塗られた自転車フレームを「艶あり黒にしたい!」という事で、その上から艶ありクリアーを塗ってしまうようなケースがありますが、あれだと黒がグレーになってしまうので基本的にはNGです(勿論コストを落としたいという事であればやぶさかでは無いのかも知れませんが私ならやりません)。

 こちらが当店規定の「半艶」となります。半艶ならもう少し艶があっても良さそうに見えますが、それは色が白だからで、これが黒だともっと艶があるように見えます。

 これは当店規定の「半艶」と「艶消し」を1:1に混ぜた仕様です。画像だと3分艶に丁度良さそうに見えますが、もう少し艶を落としたいのでさらにもう一段階変えた物を作ります。

 そしてこちらが当店規定の「半艶」と「艶消し」を2:1に混ぜた仕様です。

面倒なのはどれも熱を入れて完全硬化させないと正確な艶具合が確認出来ない事で、今回は最初の3種類をまとめて作成し、最後のを別の日に追加で作成しています。塗っているのはご依頼品でもなんでもないのですが、ここだけでも相当の手間とコストが掛かっている訳です。

さらに最後の確認では本塗りさながらの塗り方で面積の大きい色板(テストピース)に塗装し、実際に色の見本となる物と見比べます。

この時点で色が違って見えたら再びベースコートからの調色のやり直しで、とてつも無く手間が掛かり、もはや終わりの見えない作業になります。当然それに伴ってコストが上がりますので、小さい物であれば塗装費よりもこれらの費用が数倍に!という事もよくあります。

という事ですが、大抵の場合ではそこまで厳密にご指定を頂く必要は無いかとも思いますので、艶具合に関しては「当店規定の艶消し」と「当店規定の半艶」から選ぶような感じで、また色に関しても「5分程度の簡易的な色の作成」または「色見本帳から似た色を選ぶ」といった事であればこれらのコストを省くことが出来ますので、そちらをお勧めしています。

尚、現在は「艶消し」と「半艶」は別途割り増し費用を計上するようにしました。艶ありと違って塗装後の磨き処理が出来ない為、どうしても神経質にならざるを得なく、またそもそも材料が高いのでこれらを同じ金額でやっていた方がおかしかったのです。特にマイクではデカールを使う場面が多く、艶消しの場合は塗装後に磨き処理が出来ませんから、一旦艶ありで仕上げて完全硬化後に研ぎ、再び艶消しクリアーで仕上げる!という作業を同額で行っていました。会社が破綻する前にこれに気づいて幸いだったかと思います(私もそうですが、金額の変更は後回しにしてしまうケースが多いので気を付けた方が良いかも知れません)。