色合わせ一例

lambo仕事でよくある問い合わせで、自転車の一部分を傷つけてしまい「そこだけ元に戻せないか」といった内容の事がありますが、出来ない事は無いですが大抵の場合その費用は大きくなってしまいます。1ミリの傷でも4万~5万円掛かるのが普通だったりするのです(ロゴが絡むとさらに膨大になります)。

対して「好きな色に塗り直したい」という事であれば剥離無しなら2万円でも可能だったりします。これは塗る範囲はこっちの方が数倍大きかったとしても手間と時間と苦労度としては前者の方が数倍大変だからで、そもそも工賃の算出方法が「㎡」では無く「時間工賃」なので当然の事なんですけどね。

上の画像は以前一時期勤めていた会社で行った仕事の一例で、フロントバンパーがFRP製でこの時ボディ同色に塗ったのですが、実はボンネットも一枚塗っていたりします。ボンネットには傷一つありませんでしたがフロントバンパーとの色違いを無くす為にそちらにもベースコート(3コートグリーンパール)をボカしているのです。ベースコートはボンネット全体に塗装している訳では無くヘッドライト辺りのラインでボカし、クリアーはボンネット一枚塗っています。実際に記憶している訳ではありませんが塗装屋ならこれがセオリーです。序でに言うとボカシ際はボンネットの緩やかなラインに沿わせて山なりな感じでボカしている筈です。横一線でボカすよりも人間の目の錯覚を利用したボカし方ですね。ちなみに使った色は勿論配合データそのままと言う訳では無く、恐らく一日掛かりで調色したようなものです。

なのでこういった塗装ではこのバンパーの塗装費用にボンネットの塗装分も含まれていたりします(実際どうなのかは知りませんが)。ちなみにディーラーに勤めていた時に非常に色に細かいオーナーさんの、やはりバンパー交換の際にはボンネットに加えて左右のフロントフェンダーも同じ様にボカしました。バンパーを交換しただけで塗装部位は4部品、総額は50万円くらいの見積もりだったと思います。ちょっとあり得無い気もしますがそれも一つの方法(対処法)ではあるのです。作業者のレベルが低いと言われればそうかも知れませんが、100%同じ色を作れない以上、バンパーに隣接するパネルどれもと同じ色に見せる為にはこの方法しか無かったと思います。

塗装の場合には「フリップフロップ性」といって、一方向からだけでは無く全方向からの見た目の違いがあり、さらにこの車体色は下色のグリーンの上に透過性のパールコートが塗られた「3コートパール」の色で、下色(ベースカラー)とその上に塗るパールカラーのどちらも色を完全に合わせ、さらに透過するパールカラーを完全に同じ膜厚で塗るという神業を持ってしてようやく同じ色に出来る訳ですが、顔料自体が見る方向によって色が変わるものをさらに他の顔料と混ぜ合わせて全ての角度で同じ色にするなんて到底無理ですよ・・・。

ただそこまでの作業(費用)を行う意味があるかどうかの判断は難しく、本来であればユーザーのこの判断に委ねられる訳ですがどの程度色が違うのかどうかを説明するのは非常に難儀ですし(出来た物を見せない限り不可能かと・・・)、その責任を素人に押し付けると言うのもちょっと問題かと思うのです。

という事で、「補修」(修理または復元)といった塗装作業は非常に難しく、「1ミリの傷にその金額はどういう事だ」と思われそうですがこんな事もあって費用は高くなってしまうのです。特に自転車の色の場合には「配合データ」がメーカーから供給されている訳では無いので一から自分で作らなければなりませんから自動車のボディカラー以上に大変だったりするのです。さらに言うとこの「調色」は塗装作業の極一部の事でこの他にも大変な作業は沢山あるのです。

ちなみに自動車のボディカラーは近年の物であれば配合データが無いなんて事は殆どありません。ただしカラーコードが車体のどこに記載されているのか発見出来ない・・・なんて事は時々ありました。ご苦労お察しいたします(笑。私は車の塗装は引退しましたので)。