HYOSUNGテールランプ レンズ割れ修理

先日塗装の仕事でお預かりしていたヒョースンの純正テールランプです。見ての通り真っ二つに割れてしまっているので通常はお受付出来ないのですが、今回は裏側からも施工が可能な事、また「予備用として使えるようになれば良い」との事ですので、趣味的な感じも含めて対応させて頂く事としました。

実際に作業をしてみて判ったのですが、問題だったのは割れているよりも半田ごてで修正した箇所の周りが変形してしまっていた事で、これの修正に一番時間が掛かりました。

断面をワイヤーブラシで研磨&清掃後、位置を決めてマスキングテープで固定し、アクリル樹脂用の接着剤(サンボンド)で点付けし仮止めを行います。

その後割れている箇所をリューターでV字に切り込みを入れ、さらにその周辺をダブルアクションサンダーで研磨足付け処理を行います。

そこを脱脂清掃し、プラスチックプライマーを塗布、そして透明なエポキシ接着剤(2液性ビスフェノールA型)を充填します。

昔一番最初にテールランプを修理した際、「エポキシだから大丈夫だろう」と思ってプラスチックプライマーを塗らないでそのまま接着剤を塗布した事がありましたが、見事に全部剥がれました(フェザーエッジが出ないので剥がしました)。それからはエポキシ系接着剤でも塗装と同様、足付け処理とプラスチックプライマーの塗布は必須としています。

一度に全部は出来ないので、少しずつ位置を変えて作業をしていきます。一日一回これを行うような感じ進行させていました。

同じ様に、割れた箇所をずらしながら修理していきます。

最初は溶剤系の接着剤(サンボンド)を隙間に流し込みます。樹脂を溶かして接着する「溶着」ですね。

乾燥後、

亀裂部分の表面をV字に削り、

プラスチックプライマー塗布後、エポキシ接着剤を充填していきます。

半田ごてで修理されていた箇所は変形が酷く、そこは何度かに別けて接着剤を充填していましたが、

どうしても「角」に盛れないので、

PP=ポリプロプレンの板を壁にしてクリップで固定し、

そこにエポキシ接着剤を流し込む方法としました。もはや注型ですね。

PP=ポリプロピレン樹脂もプライマー無しでは塗料も接着剤も全くくっ付かないので、離型剤等を塗る必要は無いのが便利です。

型を外した状態です。良い感じに角に接着剤が残りました。

その後は同じ様にダブルアクションサンダーで研磨してラインを整えます。

巣穴等残っている箇所もありますが、一旦下塗りのクリアー塗装を行うので、表面の処理はこちらで完了です。

そして最後に裏側に接着剤を盛って割れの修理は完了です。見た目を気にするなら裏側は何もしない方が良いのですが、レンズ単体の状態となると強度を考えて裏側にも補強をしておいた方が確実ですね。

この後は通常通りの塗装業務で、次のテールランプ系本塗りのターンと一緒に下塗りを行おうと思います。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

プラスチック溶接機

知り合いのオートサプライヤーさんが工場に遊びに来て、新しい製品を見せてくれました。なんとPP=ポリプロピレンを溶接出来る機械です!

PPの修理方法や工具自体は昔からあり、ただそういった溶接では比較的表層部分のみ、ABS樹脂のように芯からしっかり溶かし込もうとするのは難しく、なので大抵はホッチキスの芯のような物を埋め込んだり(または打ち込んだり)、ファイバー繊維と接着剤(エポキシまたはウレタン系)の併用が主な修理方法でした。

今回の機械でのPP溶接の肝としては「炭化させない事」らしく、樹脂を溶かす為の熱風は酸素を取り除いた「窒素」を用いるようです。金属の溶接にアルゴンガスを使うのと同じような感じですね。内部に搭載されているフィルターで酸素と二酸化炭素を取り除けるようになっています。

エアーの温度や流量は機械で調整可能との事です。溶接棒は手で持って使うので、イメージとしてはTIG溶接機みたいな感じでしょうか。

施工時の動画も見つけました。

 

バンパー等であれば既存の方法でも構わないと思いますが、ヘッドライトステーのように厚みが変わってしまうとマズイ箇所や強度が必要な部分への使用にはとても良さそうです。

金額はそれなりにしますが、ヘッドライト一個数十万するような車体(要は外車)を扱うボディショップならすぐに元が取れるのではないでしょうか。オフロードバイクのカウル修理を手っ取り早くやるとかにも良さそうですね。

パンフレットを見るとガスボンベ搭載型もあるみたいです。という事は、ボンベを自前で用意して本体のみで買えば初期費用はかなり抑えられるのでは・・・。まあうちのような小物塗装屋ではどちらにしろ死ぬまで使っても採算が取れないと思いますが。

溶棒も充実しています。が、これはわざわざ買わなくても捨てるバンパーとかをカットすればそれでも良さそうですね(保険修理の仕事ならそんな事するより買った方が早いですね)。

これを見つけ懐かしい!と心の中で叫びました。切れたバンパーの修理なんかに使いましたね。ホッチキスの芯みたいなのを熱して割れた部分に埋め込むという機械で、私も持っていましたがどうもイマイチだったので使わなくなりました。

今回の機械は日本に入ってまだ日が浅いらしく、つい最近に保険会社さんでのデモを行ったばかりとの事でした。なのでこれからメジャーになっていくかもですね。

興味のある方はご連絡頂ければ販売店ご紹介します。社長直々に紹介できるのでかなりお安くなるのではと、勝手に思っています(笑)。

SHURE SUPER55ガイコツマイク 分解~ワッシャー作成

先日塗装のご依頼でお預かりしております、SHURE SUPER55ガイコツマイクです。

今回はこちらのボルトナット部の塗装もご依頼頂いておりまして、

ただここに使われているワッシャーが緩み止め防止の菊座金(歯付きワッシャー)の為、

母材にその歯が食い込んでしまいますから、動かすたびに塗装が剥がれてしまうと言う事で、何か対策を考えていて、

今回はこの部分のプラスチックワッシャーを作ってみようと思いました。CORSAIRのPCケースを塗装した時に作った物と同じ感じですね。

外径と内径を測ってデータを作成し、

1mm厚の透明アクリル板をレーザー加工機でカットします。完全な透明では無く濁っているのは保護フィルムが貼ってあるからです。

出来上がったプラスチックワッシャーです。

試しに装着してみると良い感じで、ただ実用面ではどうなのか判りませんから、最初に着いていた歯付き座金も普通に塗装し、どちらも使えるようにしておこうと思います。

と言う訳で本体の分解作業も完了しました。

今回作った透明ワッシャーは塗装はせず、ただ本体はゴールドの艶消し仕上げなので、それに合わせるようウェットブラストを掛けてマイク本体と同じ様に艶消し=曇りガラス風に仕上げようと思います。

KORGショルダーキーボード 分解

先日より塗装の仕事でご依頼を頂いているKORG社のショルダーキーボードです。

分解については仕事としてはお受付しておりませんので、PRO_Fitの仕事とは関係の無い、こちらの個人的なblog=社外記で紹介します(稀にですが分解のみや修理などのお問合せが入ってしまうので誤解を招かないようにです)。

キーボード表面には一部突起したレバースイッチが着いているので、

そこを囲むようにしてクッションシートを貼っておきます。ひっくり返して作業した際、スイッチ部分の破損を防止する為ですね。

分解は比較的簡単で、各ネジを外しただけでキーボードの機械部分から木製の枠が取り外せました。

さらにネック部分を本体から分離し、コンソールパネルも取り外します。

何故か違う穴にネジを打った痕が残っていたので、組み付ける時に間違えないよう印を着けておきました。

コンソールパネルを固定している土台部分のプレートも取り外しました。

と言う訳で分解が完了です。各ネジは元々着いていた位置等が判るよう印を着け、さらに何枚も撮影をしながらの作業でしたが、一時間しないくらいで無事完了しました。少し前に分解した、同じくKORGのキーボードに比べると大分楽に出来ました。

塗装するのはこちらの木製外装パーツで、この後はいつも通り仕事の方のblog=PRO_Fit日記の方で紹介をさせて頂きます。