ブツ切り艶消しクリアー 検証

塗装の仕事でご依頼を頂いている銅製のマイクです。

現在は既に艶ありの黒まで塗ってあって、いよいよ次は本番のファイアーパターン艶消し黒の塗装となります。

工程としては、先に艶ありの黒を塗り、その後マスキングをして、艶消しクリアーを塗ります。

一見すると簡単そうですが、艶消しクリアーは艶ありと同様2液ウレタンなので、実は激しく難しい作業です(塗装屋さんなら判るかと・・・)。

 と言う訳で、今回は事前に検証をしてから本番に挑む事にしました。画像は本番でも使う、事前にサイズを合わせてデータを作成したマスキングシートです。

 色板にも本番と同様、艶ありの黒に塗って熱を掛けておきました。

ここで足付け処理を行いますが、塗装屋さんなら判ると思いますが「マスキングのフチ」の部分は段差があって、上手く足付け処理が出来ません。たったコンマ数ミリ厚みですが、それだけで角の奥の谷部分にはペーパーが届かないのです。

 と言う訳で、今回は足付け処理(アシレックスオレンジ空研ぎ)をした後に、ナイロンブラシとウォッシュコンパウンドを使って「マスキング際の谷の角」までしっかり足付け処理を行うようにしました。

もしこの時マスキングの型が逆だったら、炎の先端が細すぎてこの方法は出来なかったと思いますが(位置がズレ&剥がれて浮いてしまいます)、今回は雌型で接着面が大きい為にこの方法が出来ました。艶あり黒を先に塗ったのはこれもその理由の一つです(他にも色々あります)。

また今後の耐久テストも見たかったので、ハジキシラズは使わず、密着剤で谷の角を補おうというサンプルも作りました。

 そして艶消しクリアーを塗布します。本番と同じく2コートをウェットで塗り込みました。

 本来ならこの後直ぐにマスキングシートを剥がしますが、今回はさらに別の事を検証したかったのでこのまま硬化させる事にしました(以前も検証はしていますが、さらに確認しておきたかったので)。

その後熱も掛け、完全硬化した状態です。ここでマスキングを剥がします。

通常だったらフチがベリベリと剥がれてしまうような気がしますが、

意外にもそうはなりません。

これは使っているマスキングシートがPP(ポリプロピレン)製な事が大きな理由で、PPはそのままでは塗料が全く密着しないという特性から、シートの角の部分(山部分)を境として綺麗に分断出来るのです。実際の現場を見たことがある訳ではありませんが、自転車フレームのロゴ入れなどは多分この方法で行われている筈です(この方がリスクが少なく簡単綺麗に出来ます)。

 こちらが以前テストで作成した色板です。前記した事を知り合いの塗装屋さん(GUNさん笑)に話したところにわかには信じがたいと言う事でこちらを見せようと思っていたのですが、どこに仕舞ったか忘れてしまい、少し前に見つけ出していました。

 ただ大きな問題として塗膜の段差が激し過ぎる事で、このままでは到底完成とさせる事は出来ず、この上にクリアーを塗る事が前提としてに限られるかと思います。ただ自転車フレームの塗装の場合、この時点で足付け処理をしないまま塗るような事が慣例となってしまっている為か、経年でクリアーがペリペリと剥がれる層間剥離が多く見受けられます。

同じように、こちらも塗膜の段差があり得ないくらい激しいので、本番のマイクの塗装では2コート目の艶消しクリアー塗装直後にマスキングを剥がすようにします。

また使用するガンも、今回使った口径1.0mmでは無く、さらに小さい口径0.5mmのエアーブラシを使い、膜厚自体を薄くして段差を軽減させます。

ラッカーなどの1液なら艶消しは比較的簡単なのですが、2液ウレタンの艶消しクリアーとなると断然難しくまた気を遣うので、今回のように事前に検証をしてから本番に挑むようにしています。

150mm幅マスキングテープ+色見本マイク塗装

先日紹介した150mm幅のマスキングテープを使い、早速色見本用のマイクを塗ってみました。

 左が150mm幅を使ってレーザーでカットした物で、右が従来の50mm幅のマスキングテープを3段に重ねた物です。

 150mm幅で作った方は当然ですが継ぎ目がありません。一枚物です。

 こちらが3枚に重ねた方です。

二重になった部分は下のマスキングシートがカット出来ない事があるので、重なりは極力少なくする必要があるのですが、

 マイクは円錐に見えて実はカーブしているので、シワを作らないよう多少無理目に抑えこんで貼る必要があり、それ故にテープ同士のつなぎ目が少ないと離れてしまって模様がズレてしまいます。心の中で何度発狂した事か・・・。

 今回はそれらが軽減出来て、今までで一番楽にそして綺麗に貼れました。なんて素晴らしい・・・!(惚)。

 そして全体を黒に塗り、

 マスキングを剥がします。下色にはシルバーを塗っています。

 そして透過性の赤=キャンディーレッドを塗り、最後にクリアーコートしました。

 マスキング際もガタガタにならず綺麗に出来ているかと思います。

窪んだ谷の箇所はヘラでマスキングテープを押し込んでいるので、色漏れやボケも殆ど目立たなく出来ていると思います。PP製のマスキングシートはフチがシャープに出来る反面、こう言う所は浮いてしまうので全く使えないんですよね。

これでマスキングシートのストレスはかなり軽減できたので、今後色々な柄や色の組み合わせて見本を作ってみようと思います。

桜柄マイク色見本作成

 仕事に追われて中々進んでいないのですが、最近少しずつ柄物の色見本を作成しています。

通常は桜の花びらをマスキングテープにして一つずつ貼っていきますが、それだとどうしてもコストが上がってしまう為、

 レーザーを使って「一枚物」のマスキングシートを作成する方法にしました。

 いつものカッティングプロッターだと「刃」でカットする為、糊の成分は残り、切り抜いた筈の物も一緒にくっ付いて来てしまいますが、レーザーだとその糊ごと分断してくれるので、ピンセットでシートを摘まむと画像のようにスルっと剥がれてくれます。この凄さは地獄のマスキングを経験した人じゃないと判らず、知り合いの塗装屋さん(GUNさん)が初めてこれを見た時はかなり興奮していました(笑。近々買うみたいです)。

 マスク型は一つでも配色によって色々な仕様が出来ますが、とりあえず今回は無難に白ベースにする事にしました。画像は既にベースコートの白(VWキャンディホワイト)を塗った状態です。

 現物合わせを何度も行っていて、多少のズレは問題無いように配置しているので、比較的簡単に(水無しで)貼れるようになっています。

 桜の花びらには濃淡2色のピンクを使いました。

 ちょっと(と言うかかなり)判り難いのですが、花びらは中心を薄いピンクに、外側を濃いピンクにしています。グリルはリングを薄いピンクに、メッシュ部は白にしています。

 そしてその上にパールを重ねます。パールは干渉型レッドとアメジスト(バイオレット)パールを入れています。

 そして最後にクリアーを塗って本塗り完了です。

 パールを入れたので色がちょっとぼやけてしまっています。もっとピンクを濃くした方がよかったですかね。

 今回のマスキングの利点は剥がす手間が非常に楽な事で、もしこれを花びら一枚一枚貼っていたらそれらを剥がすのは非常に面倒ですが(そしてリスクも)、今回のように「一枚物」なら簡単に剥がせます。

その後熱を入れて塗膜を硬化させ、撮影も行いました。

 画像だと判り難いのですが、光にあたると表面にピンクっぽいパールが浮かび上がります。

グリルのメッシュ部は白なのですが、その上に重ねたピンクパールでこちらも多少色味を感じられます。

 自然光でも撮影してみました。

 うっかりしていたのですが、これにSHUREのロゴを濃いピンクかマゼンタのメタリックで入れたらもっと引き締まっていたと思います。

 画像だと判り難いのですが、光い当たるとパールが浮かび上がります。

ちょっと判り難いので、先日スポットライトを取り付けた場所でも撮影してみる事にしました。

一方向からの光が当たるとこのように表面にキラキラとパールが浮かび上がります。

靴のデザイナーをやっている従弟からもアイデアを出して貰っているので、時間が出来たらそちらも試してみようかと思います。

スマートキー マスキングシートレーザーカット

key3何の事だか良く判らない方にご案内しますと、半年前くらいからこちらのスマートキーケースの塗装をご依頼頂いていまして、現在ようやくロゴ入れのマスキングシートが出来上がった段階となっています。

少し途中の工程を紹介しますね。

key60素地のザラザラをツルツルにする為の下地処理は当然で、今回は「少し入り込んだボタンをツライチにして豆みたいに」といったご要望もありまして、それらの加工も行っている内に数か月が経ちました。

key109その後3コートホワイトパールの塗装も完了し、いよいよボタンのロゴ入れを!と言う段階になったのですが、

key121さらに表面(裏面?)にLAND CRUISERのロゴを入れられたいと言う話にまで発展しまして、

key116ただ各ロゴや文字は余りにも細かく、もはや塗装では無理なのでデカールしかないのでは・・・と言う事になったのですが、その後STANDOXから新色が出たりして、状況はさらに泥沼に(苦)。

key143 そしてこちらが現在進行中の作業で、画像に写っているのは当工場二階にある、趣味で購入したCO2レーザー加工機です。

key144 レーザーの出力は0.1%~100%までの調整が出来て、例えば5ミリのアクリル板を切る場合は大体50%の出力で行っています。

key146またレーザーを照射するノズルの運行速度も毎秒1ミリから設定出来るので、これらの調整次第で10ミリ以上のアクリル板から、今回のような薄いマスキングシートのカットも可能と言う訳です。

ちなみに通常マスキングシートを作るのはカッティングプロッターなる機械を使いますが、それだと今回程に細かい物を綺麗にはカット出来ないので、このレーザー加工機を使っています。

key145  と言う訳でまずはデータ出しからで、取り敢えず室内を常温(20℃)に合わせました。

key147 最初は上手く行かないのですが、やっていくうちに段々コツが判って来ます。

key148 これだと切り過ぎで、これの一歩手前、寸切りといったイメージです。

key150 最終的に上手くいった方法としては、ノズルの運行速度を秒速3ミリに、対称物までの距離はいつもより2ミリ近く10ミリ、レーザー出力は最初に7.5%で始めてノズルを温めて(余熱)、徐々に0.1%ずつ出力を落としていき、最終的に6.7%~6.8%の出力で丁度よく切れました。

key12ちなみに今回作っているマスキングシートはこんな感じのボタンのロゴなどです。

key151 こんな感じで、画像だけで見ると簡単そうに見えますが・・・

key152サイズが米粒くらいなので細部まで綺麗に仕上げるのは結構大変なのです。

key140ただ今回のようにレーザーを使ってカッティングが出来れば、一般的なプロッターには不可能だった小さなサイズのカットでも自然な曲線や直角の角を表現する事が出来ます。

factory78と言う訳で、何とかここを凌げば塗装屋としてもう一皮剥けれるんじゃと思い、夜な夜な作業進めています。

しかしながら武士は食わねど高楊枝と言う訳にもいかず、おっと、つい非常食に手が(苦)。

key153と言う訳で、何とか予定通り年内にロゴ入れまでは終わらせておきたいと思います。どうぞもう少々お待ちくださいませ!