ピナレロのフレームに使われているONDAカーボンフォークです。こちらのご依頼は塗り替えではなく、傷の修理となります。
損傷があるのは水色の部分で、傷の上にタッチアップされた跡があります。
その他にも塗膜が剥がれている箇所や、
これから剥がれであろう箇所も多く見受けられます。
車の場合は必ず色名と色番号(カラーコード)と言う物があって、それを利用して塗料メーカーから配合データを入手する事が出来るのですが、自転車の場合はそれが無いので一から色を作製する必要があります。
塗装は塗った直後と乾燥した状態とでは色が変わる為(主に黒くなります)、一枚一枚乾燥させてから表面にシリコンオフなどを塗って艶をだした状態にして色を確認します。また現実にはクリアーを塗っても色は変わるので(若干黒ずむ)、シビアな調色作業では実際にクリアーを塗って熱を掛けて完全硬化させながら色を見ていきます。
艶具合の調整はさらに手間が掛かる為にその費用は大きくなりますが、当店で規定する「艶消し」または「半艶」のどちらかから選んで頂ければその費用は不要です。特にご指定が無ければ艶あり仕上げとなります。
色が出来たら下地処理を行います。一般的には傷をパテで埋めたりするイメージがあるようですが、正規の方法(塗料メーカーが推奨するマニュアル上)ではそれはやってはいけない事の一つで、傷は削り落とすのが基本的な作業となります。削り落として足りなくなった部分はパテ或いはサフェーサーで充填します。
色を塗る部分は水色の箇所のみですが、クリアー(今回は艶消し)はフォーク全体に塗る為、フォーク全体をウォッシュコンパウンドとスコッチブライト(研磨粒子が塗布された不織布繊維)を使って塗膜表面を研磨・足付け処理します。
尚、今回はサフェーサーの前に全体の足付け処理を行っていますが、サフェーサー研磨後に行う場合もあります(車の塗装ではむしろそちらがセオリーです)。
傷を削った部分は緩やかなラインにする為にフェザーエッジを形成し、サフェーサーを塗る箇所の番手(傷)は#240~#400程度にしておきます。
結局怪しい箇所はほぼ全周となりました。
ドライカーボンはエポキシ樹脂と炭素繊維で構成されている為、プラスチック専用プライマーの使用は必要ありません。
脱脂後、直接2液ウレタンサフェーサーを塗布します。
その後60℃40分程の熱を掛けてサフェーサーを硬化させ、#320~#400の空研ぎでライン出しを行い、#600~#800の水研ぎでペーパー目を均します。
その後よく脱脂清掃を行い、水色の箇所以外をマスキングします。
本塗りを行う準備をし、塗料(ベースカラー)が無用に飛び過ぎ無いようさらに養生紙で覆います。
ベースカラーをグラデーションさせるようにして徐々にボカシ、境界線が判らないようにします。マスキング際まで色を入れると本来の色ではなくなってしまうので、ベースコートは必要小範囲に留めます。
マスキングを剥がし、ベースコートの塗装が完了です。
続けてクリアーを塗って本塗完了です。今回は艶消しなのでそれ専用のクリアーを使っています。
艶消し塗装の場合はゴミが着くと磨き処理が出来ない為、気持ち的には早い段階で熱を入れて表面を乾燥させたくなりますが、それを行うと艶にムラが生じてしまう為、クリアーの塗装が終わってから一時間程は自然乾燥で艶が落ち着くまで待ちます。
触るとまだ跡が付くような状態ですが、徐々に艶が消えてシットリと落ち着いて来ます。。
艶消しでもしっかりとウェットコートで塗る事で表面はツルンとした仕上がりになり、これにより傷や汚れが付き難い塗膜となります。
その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させ、数日寝かしたら完成となります。
水色は全体に塗っている訳では無いので、オリジナルの状態から色が変わったと言う事はありません。また色の境界線のラインも新車時そのままとなります。
オリジナルの状態戻す作業は量産品を作るのとは内容が変わり、単に色を変えるよりも手間が掛かる為に費用もその分高くなります。修理費用は新品の金額を超える事が殆どで、金額的なメリットは殆どありませんのでご注意くださいませ。