BMW R80GS Gas Tank Paris Dakar

bmwgs半年くらい前にお納めしたBMW GS80用の巨大なフェーエルタンクで、当時行った作業内容を一連の流れにしてまとめて紹介したいと思います。

このフェーエルタンクの素材はPA(ポリアミド)なる樹脂で、一般的には「ナイロン」と呼ばれている物です。洋服とかによく使われているアレですね。PP((ポリプロピレン)と同様に塗料の密着性が悪い部類の樹脂ですが、塗装不可能と言われたPE(ポリエチレン)に比べれば全然現実的な素材なので問題はありません。

bmwgs4 下地処理はいつも通りなのでわざわざここで紹介する事では無いのですが、順を追って画像だけ見れば判るようにと一応紹介しておきます。サフェ研ぎは地味に大変な作業ですし(笑)。

bmwgs4 問題大変だったのはカラーリングを「パリ・ダカール仕様」でご依頼頂いていた事で、最初は私も「二色にぶった切ってマールボロのロゴを入れるだけじゃ」なんて安易に考えていたのですが、如何せんタンクが凄い形なのでライン一本引くだけでも右を貼って左を貼って右を剥がして左も剥がしてとか延々繰り返すような大変だった記憶があります。

bmwgs11さらに大変だったのは年式?によって色々バリエーションがある事で、細かい部分はオーナー様に資料を用意して頂き決めて頂きました。

bmwgs17私が行っている塗装はフリーハンドで絵を描くような事とは全く違って、どちらかと言うと「元の状態に復元」といった事がベースとなっているので、基本となる部分を少しずつ積み上げていくような行程で行っていきます。この場合は水平の基準をフェーエルタンクの上部に決めたので(勿論オーナー様と)、そこから各部の配置位置を決めていきます。この辺はウキウキしてやると言うよりも色々な物を消費しながらやっていく感じですかね。苦しい時間が続きます。

bmwgs19ちなみにフェーエルタンクは安定性が悪かったので前後・左右のレベルがちゃんと出せる専用台も作成しています。と言っても単に木材を組み合わせてアルミのアングルやら全ネジを通しただけですけどね。ちなみにこの木製の台はそれを乗せているスチール台に直接ドリルビスで打ち込んでいますので倒れる事はありません。

bmwgs24 作業で一番嫌なのは迷いが生じる事なのでとにかく資料を揃える事が癖になりました。ただ単に集めるだけでは無く、イラストを作成したり数値をデータ化して頭の中で作業行程をイメージします。本塗りまでに大体何度か夢に出て来ますが、結構それで問題点が判ったりするのでそれはそれで助かっていますかね(見る夢はどれも失敗で、お陰でそれの回避方法もイメージ出来るのです)。

bmwgs27 各配置さえ決まればあとはそんなに難しくはありませんが、今回のオレンジは隠蔽力が弱いので下塗りをしてコート数を減らし、また見切りのラインが汚くならないようにスプレー方向に気をつけて行います。上の画像からするとこの状態でオレンジを塗る場合、見切り部のマスキングの厚みを使って段差を緩やかにする為にスプレーガンのノズルは常に左側を向いています。「スプレーは被塗面に垂直に」が基本ですがその辺は臨機応変という事ですね。

bmwgs31 複雑なラインの上にロゴを入れる事自体は問題無いのですが、これを左右同じ按配にするのに苦労しました。左右を対称にする場所とそうで無い場所をちょうど良く組合さなければなりません。昔の商用車などで文字も反転して描いたりしていた物があったと思いますが、多分あれの方が楽な気がします。

bmwgs37 最初に決めたラインがズレてしまうとその後それがどんどんと増長してしまって最後は収集付かなくなったりするのですが、地道にひとつひとつを揃えていくとどの角度から見ても違和感無く仕上がるようになります。

bmwgs39 インターネットを通じて知り合ったオランダの塗装屋さんがこれからこれと同じ内容の塗装を行うとの事で各部のデータや画像などを差し上げました。いずれ同じような物が出来上がるかも知れませんね。

bmwgs40  クリアーはクリスタルクリアーで、一部垂らした箇所があったので磨き処理はしています。

bmwgs42 いずれは3Dスキャナーなどで被塗物全体をスキャンして、塗り分けやロゴなどそれぞれの位置をレーザーポインターで示してくれるなんて時代が来るかも知れませんし、またはロボットが塗ってくれるなんて事もあるかも知れませんが私的には結構歓迎です。塗装は塗る作業以外にも下準備の方がかなり奥が深いと思うので、もっとそっちをやれれば面白いと思っています。

bmwgs43元々が修理の塗装で育ったので、派手さと言うよりも細部の仕上がりに重きを置く傾向にあると思います。とにかくラインが平行だとか隙間が常に均一だとか、左右は対象かつ非対称な部分も違和感が無いように仕上げ、「まさか後から塗ったとは思わなかった!」と」思ってくれれば最高ですかね。

 

BMW GSフェーエルタンク ステッカー作成

bmw195 先日マールボロ仕様の塗装で仕上げたBMW GSの巨大なフェーエルタンクです。ちょっとあり得無いサイズですから発送は避けさせて頂きまして、二時間以上掛けてオーナー様に引き取りに来て頂きました。ご足労頂きありがとう御座います!

と言う事ですが実は今回は塗装以外にもご依頼があって、先日塗ったタンクの空いているスペースに貼るスポンサーステッカーの作成のご相談を受けていました。

が、当店ではマスキングシートは作ってもステッカーの作成には対応していませんので、こちらの担当は当工場二階に間借りして貰っているステッカー専門の友人に御願いするに至りました。ちょっとまだ本格稼動はしていないので、段取りに関しては私が手伝ってあげたという感じです。一応今日は第三土曜日で公休日でしたからね(って土曜日に休めた記憶が・・・苦笑)。

bmw196パリダカ仕様のBMWはシーズン毎にスポンサーが変わったりするようで、それに伴ってデザインも色々あるようですからスポンサーロゴは塗装では無くシールにして気分で張り替えよう!と言う作戦のようです。

ただ情報が少ないですから、今回はプラモデルに付いてきたデカール(!)を見本にデータを作成しました。既存のロゴでも字間とか全然違っていて中々興味深かったです。

それでは後日ステッカー屋の友人から御見積もり等の連絡が行くと思いますのでご検討の程よろしく御願い致します。当店は受付窓口と言うものはありませんが、今回のようにステッカーの作成なんかでは直接受付も可能になるかも知れませんね(ただし私は仕事に夢中していますが)。

BMW GSフェーエルタンク&ライトカウル塗装 完成

bmwgs40 大変お待たせしました!BMW GSのフェーエルタンク&ヘッドライトカウル、パリダカ仕様の塗装で完成となります。

bmwgs42このパリダカ仕様は年式(スポンサー?)によって微妙に形やデザインが違うみたいなのですが、オーナー様に色々資料を用意して頂きこの形に落ち着きました。塗り分け自体は単純なのですがロゴとの重なりなどでは予想以上に大変でした。

bmwgs41撮影はいつもの窓の所で試してみたのですが、やはりと言うかサイズが大きくて全然上手く撮れなかったので今回は新たに設置した撮影スペースで行っています。壁を白く塗ったのでそれがそのままレフ板の代わりになってくれて良い感じです。テーブルが白くて広いのも丁度良かったですね。

bmwgs43塗り分けのラインとロゴの位置の組み合わせもそうですが、これらを複雑な形の上に配置しなければならなかったのと、さらにはそれらを左右揃えると言うのが本当に大変でした。もしも実車のロゴがシールだったりしたら相当凹みそうです(笑。それならここまで苦労しないでしょうからね)。

それでは後ほど完成のお知らせメール差し上げます。この度もごひいき頂き有り難うございました!

BMW GSフェーエルタンク&ライトカウル 本塗り②

bmwgs35 そしてクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!

bmwgs39艶が出るとプレスラインが複雑なのが判ると思います。ロゴのマスキングもシワが寄ってしまうので修正がかなり大変でした。

ちなみに「M」のフチにある白の幅と、「Mみたいなマーク」の上の白い隙間は同じ幅になっています。頂いた参考画像だとそこまでは確認出来ませんでしたが多分これで合っていると思います(普通そうしますよね)。

bmwgs37クリアー気合入り過ぎてタレた箇所もいくつかあるのでちょっと磨きで時間掛かると思います。

bmwgs38 樹脂製なのでやはり全体的に歪はあります。

bmwgs32 こちらも一旦白を塗ってからレッドに塗っています。裏側も何とか塗れました。

bmwgs33こちらは下地作業は足付け処理のみで、塗装も単色べた塗りですから手間も時間も殆ど掛かっていません。掛かっているのは向こうのタンクでして・・・。

それでは完成次第改めて紹介しますね。遅くても来週末までには完成出来ると思います。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

BMW GSフェーエルタンク&ライトカウル 本塗り①

bmwgs22 大変お待たせしました!BMW GSの樹脂製フェーエルタンクとライトカウル、無事本塗り完了しております。実は昨日から二日に掛けて作業していました。

bmwgs23先日作成した台にセットした状態です。よく脱脂をしたらエアーブローをしてまずはベースカラーの白を塗ります。

通常の車体色に使われる白は何かしら黒やオーカーなどが入って隠蔽性が高めてあるのですが、今回は既に塗装されたフレームの白にタンクの色も合わせるので原色の白としています。ただ原色のままの白は極端に隠蔽性が悪いですから(普通はしません)、膜厚も結構ついてしまうので予めベースコートには硬化剤を数%入れ、まず一日目はこのベースカラーのみの塗装としました。そして翌日に中研ぎをした後もう一度同じ白をコートし(今度は通常通り硬化剤を入れていません)、続きを行います。

bmwgs24 今回の肝はマルボロレッドの塗り分けと「Marlboro」ロゴの配置で、これが相当大変な作業でした。技術的な事であれば手を動かせば作業は進みますが、とにかく位置の割り出しが難しく、事前に何度も練習はしましたが本番になると一旦全部白く塗らなければなりませんから印が全て無くなってしまうのです(序に頭も真っ白に、という事です)。

なのでブース内には事前に書き出したイラストと数値と参考画像を並べ、四苦八苦しながらそれぞれの位置を割り出していきます。ちなみに既に白は塗られていますから被塗面には殆ど触る事が出来ない、と言うのがさらに作業を困難にしてくれます(苦)。

bmwgs25 という事で何とか最初の「Marlboro」の位置が決まりました。そこからマルボロレッドの塗り分けラインを割り出していきます。そして反対側ですね。ここまでで2時間掛かってますが最初のラインが一番大事なのでこれは仕方ないですね。

bmwgs26 そして反対側です。向こう側に引いたラインと対称に引きますが、ここでプレスラインと平行になっているのが判ると思います。多分製造時のラインではこれが起点になっているのでは?と思う次第です。ちなみに今回は参考になるのが画像だけだったのでこういう事は判りませんでした・・・(まあいつもの事です)。

bmwgs27 そして白く残す部分を養生します。ちなみに「M」はフチの部分もマスキングされています。後で判ると思いますのでとりあえず割愛しておきます。

bmwgs28 同じく反対側の「o」もフチ部分をマスキングしてあります。

bmwgs29 そしてマルボロレッドの塗装、そしてロゴの黒も塗装完了です。さらっと言っていますがここまでで多分6時間くらい掛かったかと・・・。マルボロレッドも白同様に隠蔽しない色なので下色から重ねて結構時間が掛っています。またタンクは前方から見た時に内側も少し見えるのでその部分にもレッドが入るよう、且つ後ろから外にはみ出てこないようにマスキングしています。塗装ミストは思った以上に色々なところに回り込むので完全防御しなければなりません。世の中の塗装屋さんは皆これで相当の煮え湯を飲んでいる筈です(笑)。

bmwgs30 そして反対側もマルボロレッドの塗り分け&ロゴの黒が完了です。塗り分けとロゴの重なりで色々なパターンがあるらしいのですが、今回はオーナー様の好みに近づけています。凄く大変で出来ればもう二度と(笑)。

そして最後に「Mみたいなマーク」を入れます。ここも同じマルボロレッドなので一緒に塗れば効率が良いのですが、何度頭の中で本塗りイメージしてもここで失敗してしまうんですよね。本塗りの途中に大変な事態は最も避けなければなりませんのでここは別物と考えて塗装する事にしました。

位置が決まったらガイド用のシールを貼ります。これは輪郭を出したかっただけなので後で剥がしてしまいます。

bmwgs31先ほどのガイド用のシールの周りをマスキングしたらマルボロレッドを塗って完了です。「最初からメス型のシールを貼れば」と思いそうですが、3次元曲線の上にさらにこのプレスラインでは上手く貼れないので、ガイド用のシールを貼ってその周りを直線に修正しながらラインを決めています。なので実際の型よりも少し大きめになっています。「Marlboro」のロゴと水平にしつつ各部もまっすぐになんてこの方法じゃないと出来ないんですよね。まあ実際オリジナルがどうなっているのかは怪しいところですが(笑)。そもそも塗装では無くシールかも知れませんしね。

bmwgs34そして全てのベースコートが完了しました。ちょっと地面(と言うか台全体)が曲がっていますが気にしないでください。

レッドとホワイトの塗りわけは頂点で中心を通るようになっていて、Marlboroのロゴも同じ高さにしてあります。ただし左側の「o」は小文字で、右側の「M」は大文字なので上のラインはそれぞれ違って見えています。単にロゴを左右に配置するならばここまで大変では無いのですが、今回は色分けのラインが絡んで来るので全部の位置が的確じゃないと全体が纏まらないのです。

ただ今回は台をしっかり作っておいたのでこれのお陰でストレスは大きく軽減出来たと思います。ライン引いていて被塗物が動いてしまうのでは疲れてしまいますからね。

クリアー塗装に続きます。ちょっと画像数があって大変なので少し時間掛かると思います。