こちらも先週に到着していたアルミフレームです。この度のご依頼、誠にありがとう御座います!
ただこれに乗るのはオーナー様では無く、ロードレーサーに興味を持った御子息用の自転車との事です。「中学校への進学祝いに新車を買うか、知人の「本格的な中古車」を譲り受けて再生するか迷った結果、後者を選択しました。」との事なのですが、実際には父親であるオーナー様自身が楽しんでしまっているのでは・・・と思っていたりします(笑)。どちらにしても羨ましいですね。
という事ですが、実際にこれを再生するのは結構大変ではあります。正直新車のロードバイク買った方が手っ取り早いのでは・・・と言う感じもしますがそれじゃ意味が無いんですよね。ちゃんと時間と手間を(そしてお金を…)掛けて上げて御子息に「大切にして貰える一台」を作る事が大事なのだと思います。ちょっと商売的ではありますが実際そういった事を親子で出来るのは羨ましい限りです(いや御子息がどう思っているのかは知りませんが・・・笑)。
ちなみにこのフレームには「クリアー」が塗られています。アルミの素地そのままじゃありません。
フレームのヘッドチューブに張ってあるシールには「7005 ALUMINUM」と記載してありますから7000系のアルミニウムを使用しているのでしょう。
7000系アルミニウムの特徴としては「耐蝕性に優れ」といった面がありますが、それでも屋外に放置されていたりすればこのようにはなってしまいます。クリアーには腐食を防止する効果がありませんし、アルミの表面には不動態皮膜(酸化皮膜)は形成されていますが極薄い物ですから何かしらのph変化でこれは破られてしまうのでそんなに長持ちはしないんですよね。ちょっと前に空のアルミ缶にアルカリ洗剤を入れた物が電車内で爆発しましたがそう言うことなのです(酸・アルカリに侵され易いです)。
腐食に対して有効なのは強制的に酸化皮膜を厚くする「アルマイト処理」で、これが施されていればこうなる事は無かったと思うのですが、アルマイトの上には今度は塗装が乗りにくい(密着し難い)と言う性質もあるので、この「アルマイト」か「塗装」かどちらかを選ぶようになるんですよね。勿論アルマイトを活かしつつその上に塗装を施すという方法もありますが、コスト的に新車の段階でそれは選べないと思いますので(ちゃんとやるには装飾クロムメッキの上に塗るのと同じくらい大変です)。
ちなみに自動車のボディはアルミは解かりませんがスチール鋼板には現代では必ず「亜鉛メッキ」が施されています。しかも普通のスチールでは無く薄くて強い素材ですから「高張力亜鉛鋼板」って所ですかね。なので雨さらしで放置してあっても簡単に錆が出てきたりはしないのです(まあ電子的な事もあると思いますが)。
あらにその上には防錆効果のある「プライマー」、充填効果のある「サフェーサー」がちゃんと塗られていますから車が雨風紫外線に強く錆難いっていうのは当たり前で、アルミ・スチール鋼板にそのままクリアーが塗られて売っている車なんて一台も無いのはそう言う事です。あぁでもデロリアンは金属素地そのままですけどね(あれステンレスです。笑)。
という事で、結構アルミ素地は侵食されてしまっていますから、一旦はサンドブラスト専門のショップさんで直圧ブラストを掛けて根こそぎ取って貰い、下地には浸透型エポキシプライマーにてその後の腐食の再発にも備える事にします。重防錆仕様でこの先も長く乗り続けられるように、ですね。ちなみに色は「3コートホワイトパール」で承っております。
それでは作業進行しましたらまた紹介させて頂きますね。改めましてこの度のご依頼、誠にありがとう御座います!