Mitsubishi Lancer brembo Matt Gray

いつもご贔屓頂いている業者様から御依頼頂いたランサーエボリューション用純正ブレンボキャリパー一式です。

新品時のブレンボキャリパーに塗られている塗料は焼き付け型で、使っている内に色褪せたり(褪色)、クリアー層がペリペリと剥がれてくるのが特徴です(層間剥離)。

自動車の外装パーツ(ドアやボンネット)と違って形が歪な為にサンダー等での作業が難しく、なので一般的な自動車板金塗装店では敬遠されがちな物だったりします。私も車体を塗っていた時は殆ど扱っていませんでした。

ただその後車体から「小物」の塗装専門にシフトし、またその時間借りしていた知人の工場内に、私と同じような形態で作業をしていた方がブレーキキャリパーのOHや販売等を手掛けていて、それの下請け的に大量のブレンボキャリパーを塗らせて貰う事で作業的に慣れ、現在に至っています。

その後間借りしていた工場から今の場所に移り、現在もこれらブレーキキャリパーの下準備についてはその方にお願いしています。こちらのページで詳しく紹介していますので宜しければご参照くださいませ。

下請け時には先ほどの状態でそのまま塗装を行っていたのですが、現在はそれにサンディングの作業を追加しています。深い傷や打痕、梨地の処理等ですね。

塗装前の脱脂洗浄も2回繰り返すような感じでしっかり行っています。

ちょっと判り難いのですが、こちらは打痕部にエポキシパテを塗っています。

まずは全体にプライマーを塗布します。

膜厚を着けたくない箇所=ボディ固定部やガスケットあたり面、パッド固定用のピンが入る穴の内側等ですね。

続けてベースコートにトヨタ「マットストームグレーメタリック」(D08)を塗布し、bremboのロゴを黒、最後に艶消しクリアーを塗って本塗り完了です。

艶消しクリアーは艶ありの場合と同様、ウェットに2コート塗っています。垂れるとその後の処理(磨き)が出来ないので塗りなおし確定ですが、肌を荒らしてしまうとその後傷が付きやすい塗膜になってしまうので、艶消しでもツルンとした肌にする事でそれを防ぐようにします。

その後時間の経過と共に艶が消えていきます。

 その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

さらに数日寝かしたら完成となります。

各画像はサイズの縮小以外は未加工となります。

装着してしまえば細かい箇所など目立たなくなってしまうのですが、

製品単体の状態でのお渡しとなるとどうしても全体を隈なく見て(見られて)しまうので、そういった点で小物の塗装は同じ塗装屋さんでも嫌がられる傾向にあると思います。まあそもそも車体を塗る為の設備を構えた工場=所謂保険を使った事故修理を主体として作った工場で小物を扱うと採算が合わないという所もありますよね。

私の場合、小学生の頃から小さい物=プラモデルや鉄道模型(Nゲージ)が好きで毎日それらを作っては塗っていたので、それを仕事に出来た現在は毎日が楽しく、非常に幸運だったと思います。

そういった模型塗装の時にはカッティングプロッターやデカール作成、スプレー塗装等の技術が全く無かったので多くのジレンマを抱えていて、その後それらの事を出来るようになったのが楽しくて仕方ありませんでした。自動車のボディなんて絶対ロボットが塗っている!と思っていましたから、それを人の手でやっている姿を見た時の衝撃は今でも忘れられません(まさに動きはロボットのそれだったのでそれも衝撃的だったのですが。笑)。

なので当時の私からすると「艶々」にする事は非常に特別で、それがとても難しい事だと思っていましたが、

実際に塗装を続けていると、むしろ今回のような艶消し・半艶仕上げの方が難しい事に気付かされます。

ただその後、材料=艶消しクリアー自体も進化を遂げていて、昔非常に苦労したDUPONTのAU175に比べると、現在のSTANDOXマットクリアーシステムはとても安定した艶消し仕上げが出来るようになりました。使用されている顔料(恐らくはシリカゲル)が従来の1/15のサイズになったとかで、これによって樹脂中の分散や固形化がされなくなったのだと思います。以前は使う度にしっかり缶の蓋を開け閉めし、底に固まった顔料を攪拌棒で攫っていましたが、これが無くなったのでアジテーターカバーでも使えて作業効率も上がりました(その後検証していて問題無いを確認しています)。

ただ艶消しクリアーは通常のクリアー=5キロ缶に比べて容量が少なくとても割高で、また作業には多くの神経を使うので通常の艶ありよりも割増費用が必要になっています。その点はどうかご理解頂ければ幸いです。

セリカXX 1G-GEUヘッドカバー 本塗り

先日足付け処理をしておいたトヨタセリカの1G-GEUエンジンヘッドカバーです。

シルバーに塗装後、一旦クリアーで全体をコートして完全硬化してあるので、シンナーで拭きとっても大丈夫な状態です。

時々こういった凹んだ文字に「塗料を流し込む」といった事をイメージされている方が多いのですが、プラモデル等の模型の塗装と、今回のような実用を前提とした塗装とでは全く違うものなので、そのような事は通常行いません。またプラモデルの墨入れのように簡単に拭き取れる塗料=所謂「エナメル」と呼ばれるような物も使いません。そもそも足付け処理無しで塗料を塗り重ねるという事自体、絶対にやってはいけない事の一つですので…。

なので今回使う塗料も通常のSTANDOXベースコートで、通常自動車補修塗装(板金塗装)でこういった変則的な事は行いませんが、基本的な事はそれと同じ内容となります。

食み出た塗料はシンナーで拭きとるので、余計に膜厚を着けたくはありませんから、使用するガンは口径の小さいエアーブラシ(0.5mm)を使っています。

ブルーが終わったら、

今度はそこをマスキングし、

黒を塗ります。同じく通常のベースコートです。

しっかり乾いたらスポンジパッドにウェスをたるまないように巻き、シンナー(一般的なSTANDOXベースコート用シンナー)を少量垂らして周りに食み出た余分を拭き取ります。

その後#800~#1300で空研ぎして残りの塗膜を削り落とします。

拭き取った跡が少しでも残っていると一体どこからやり直せば良いのかと絶望的になるので、何度もチェックを行います。

また当然ですがそんな簡単に余分を綺麗に拭き取れる訳では無いので、再び塗り足してまた拭き取るという作業を何度も繰り返し、輪郭が綺麗に仕上がるようにします。朝からこれを初めて、終わったのが夕方といった感じでした(私自身ちょっと甘く見ていました・・・!)。

全体をタッククロスとエアーブローでしっかりクリーニングしたら最後にクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

オリジナルは半艶に近い仕上がりだったのですが、特に「純正同」に拘っているという事では無いとの事で艶あり仕上げにしています。そもそも純正の塗装はどれだけコストを落とせるかで決めている所はありますからね(私的には見た目より下地=せめてプライマーは塗っておいて欲しいといつも願っています)。

今回の塗装費用は結構な金額になっているのですが、それでも予想していたより倍くらい時間が掛かってしまいました。

しかしながらそれだけに中々良い感じに仕上がっているかと思います。

純正の塗装は当然ですが今回のような行程では無く、恐らくはマスク型のような物を使用してのライン塗装(大量生産)を行っているのだと思います。以下の動画のような方法ですね。

マスク型が金属で出来ているので、汚れたらその都度溶剤で洗う事が出来るので大量生産での塗り分けに有効的な手法ですね。

 

そう考えると面倒な事をしているとは思いますが、一つ一つマスキングテープを貼って行うよりかは遥かに短時間で出来るので、これでも比較的現実的な手法だとは思っています。

ちなみに見た目は同じような仕上がりでも、単に色を塗るだけ=下地処理(足付け処理)無しで行うと、

経年でこのように塗膜が剥がれてしまったりします。最近はメッキが施されたバイク用ブレンボキャリパーの凹み文字が、半年で剥がれたので何とかして欲しいといったお問合せがとても多いです。ただちゃんとやろうとすると塗る面積に対しての作業時間がとてつも無く大きくなるので、製品として販売する物は仕方ないんでしょうね。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

あとはスチール製のプラグカバーの塗装もあるので、まだもう少し掛かりそうです。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

セリカXX 1G-GEUヘッドカバー 下準備

先日旧塗膜の剥離とサンドブラストを行っておいたトヨタセリカXXのヘッドカバーと、

 スチール製のプラグカバーです。2台分(2セット)です。

こちらは両面にプライマーを塗りますが、

まずはスポット溶接で着いている金具の合わせ部分の処理をします。後で錆が出てくるのは大抵ここで、何故か多くの塗装屋さんは無視しがちなんですよね(判ってない筈は無いと思うのですが…)。

使用するプライマーはエポキシ系で、さらに耐蝕性の高い浸透型タイプを使います。

そのままだと隙間に入り難いのでシンナーで希釈し、さらにエアーブロー で強制的に隙間の奥まで届かせます。反対側から噴き出させるような感じですね。

その後はまず裏側に同じく耐蝕性の高いエポキシプライマーを塗り、

一旦60℃20分で半硬化させます。

少し冷まして塗膜が固くなったら(暖かいままだと柔らかく傷が付き易いです)、

ひっくり返して、

続けて表側にもエポキシプライマーを塗布します。

錆びていた箇所は浸食されているので、

今度はウレタンサフェーサーで塗膜を充填させます。

サフェを厚く塗っても結構な凹みは残っていて、「だったら先にパテを塗っておけば良かったんじゃ?」と思うかも知れませんが、それはやってはいけない事の一つでして、パテに防錆効果(防錆顔料的な化学的な効果)はありませんから、結果前回も紹介したようなこのような感じに後から大きな問題が起きてしまうのです。

ヘッドカバーの方も大分腐食で浸食されてしまっているので、当初予定していた方法ではちゃんと仕上がりませんから、こちらもエポキシプライマーを使った重防錆仕様にしておく事にしました。ちなみに表面はあまりにも凸凹していたのでダブルアクションサンダーで研磨してある程度均しています。またリン酸処理も行っています。

オイルキャップ部はテープでマスキングするのは手間が掛かるので、径を測ってアクリル板をレーザーでカットする事にしました。

若干テーパー状になっているので、サイズを合わせるとピッタリ嵌ります。

通常のヘッドカバーだとこの断面を最後にフライスで切削していたりするのですが、今回はこの面にも塗装が施されていたので、同じように仕上げます。

まずは耐蝕性の高い浸透型エポキシプライマーを2コート程塗布します。

これは難儀になりそうですね・・・。

ちなみにもう一方のセットは腐食による浸食の被害が少なく、

なので今回はそれぞれ違う方法で下地作業を行おうと思います。

先ほどの浸食が激しかった方は、スチール製のプラグカバー(プレート)と同じくウレタンサフェーサーをウェットオンウェットで重ねます。

後でしっかり研げるよう、ウェットで4コート程塗っています。

対してもう一方の程度の良いヘッドカバーは、サフェーサーでは無く「2Kエナメル」を使う事にしました。クリアーと同様トップコート用の2液ウレタンで、白と黒を混ぜたグレーを作ってそれを同じくウェットオンウェットで塗装します。

またこちらは凹み文字部の研ぎ作業も行わない予定なので、無用に膜厚が付かないよう(凹み文字が埋まらないよう)、口径の小さいトップコート用スプレーガン=IWATAエクリプス(HP-G5)を使う事にしました。先日1/18ビートルのミニカーに使ったガンですね。

ぱっと見は中塗り塗料(サフェーサー)と変わりありませんが、

クリアーと同様に塗膜表面が平滑化(レベリング)するので、研ぎにくい凹み文字の作業を簡略化する事が出来ます。

そもそも当初の予定では、ここでベースカラー(シルバー)を塗ってそのままクリアーを塗る予定だったのですが、旧塗膜を剥がしてみるとどうもそう簡単にはいかないという事が発覚し、なんとか大幅な作業量の増加を抑えらればと思っての作業としています。腐食が酷い方はどうしようも無いですが、それでも何とかコストを抑えつつ良い方法で出来ればと思っています。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

セリカXX 1G-GEUヘッドカバー 素地調整

先日旧塗膜を剥離しておいたトヨタセリカXXのヘッドカバーです。その後も溶剤槽から引き揚げてはワイヤーブラシで擦って再び浸けてを何度か繰り返し、ある程度の塗膜を剥がしました。

プラグカバーはハンマートンの塗膜が厚く剥がれ難かったので、サンダーを使ってある程度を削り落とします。

錆は素材を浸食し、さらにその奥で進行し続けるので、サンダーだけで削っただけではそれを除去するのは難しいです。よく自動車ボディのレストアで錆びている箇所をサンダーだけを使って削り、しかもその上に直接パテを塗ったりしている光景をみる事がありますが、あれは根本的な修理では無く、単なる延命でしかありません。

こちらの自転車フレームは、自動車塗装屋さんで施工して半年でこうなってしまったとの事です。下からは再発した腐食とパテが出てきました。

という訳で、

そういった浸食されて凹んだ箇所も切削が出来るよう、サンドブラストを行いました。

裏側も同様に行います。

ヘッドカバーは腐食が酷い方と、

こちらがまだマシな方ですが、どちらも同様に腐食が出ています。

ブラストを完了しました。

この後はエアーブローだけして、タイミングが良くなったらリン酸処理→洗浄を行います。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

1/18VWビートルミニカー 本塗り

先日下準備を行っておいた1/18のVW空冷ビートルミニカーです。

フチまでしっかり塗れるよう、極力隙間を空けた状態で固定しています。

よく脱脂清掃し、エアーブローを行って埃を飛ばします。

フチまでは足付け処理を行っていますが裏側全体にそれを行っている訳では無いので、こういった場合にのみ密着剤を併用しています。自動車のバンパーを塗る際に、念のためフチの裏側にプライマーを塗っておくのと同じような感じですね(見えない部分だとしても飛んだ塗膜が後でペリペリと剥がれるのを防ぐ為)。

それぞれのパーツは持って塗れるよう芯棒に固定しています。

ドアミラーが付いていた箇所に食み出た接着剤を除去する際、既存の塗膜も一緒に剥がしているので、その部分にはプライマーを塗っておきます(画像は金属素地が露出した状態です)。

同じ様に突起した箇所は足付け処理の際に金属素地が露出しているので、こういった箇所にもプライマーを塗っておきます。

こちらはテールランプの土台部分ですね。こちらもしっかり足付け処理してあります。

ドアの内側はフチがボディカラーなので、こちらはまず一旦全体にそれを塗装し、後で合皮の部分=内張りを当時の実車と同じように艶消し黒で塗り直します。

ボディ本体もアルミ素地が露出している箇所があるのでプライマーを塗布します。

プライマーも塗り過ぎないよう、スプレーガンの口径は小さめの0.6mmを使用しています。

プライマーが乾いたら、

続けてベースコートを塗布します。

色は当時オーナー様が乗られていた車体と同色の、VW純正色「パステルホワイト」(カラーコード:L90D)となります。

ベースコートも同じく口径0.6mmを使用しています。塗り過ぎて細部のディテールを埋めないようにですね。

ドアトリムは内側は塗らず、フチのみに留めておきます。

そしてクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!

通常小物にクリアーを塗る際は口径1.2mmのスプレーガンを使っていますが、今回ミニカーの為にこちらの口径0.5mmタイプを導入しました。家庭用のコンプレッサーでも使える、スプレーガンタイプのエアーブラシですね。

口径0.5mmとその前後のスプレーガンやエアーブラシはいくつか持っていますが、平吹きのパターンが出来て且つ微粒子化の優れたタイプが欲しく、今回の購入に至りました。

塗り肌で艶を出そうとするとどうしてもある程度の膜厚を着ける必要があり、ただそうなると表面張力でクリアーのフチが盛り上がる傾向にありますから、今回それを抑える為、エアーブラシ並みの微粒子で吐出出来るスプレーガンを使いたかったのです。

ちなみに以前塗った1/43のミニカーであれば通常のエアーブラシ(丸吹き)で問題ありませんが、今回程のサイズだとそれでは厳しいと思ったんですよね。

そういったエアーブラシの中でスプレーパターンを平たく出来る物が今回のスプレーガン=IWATAエクリプス(HP-G5)という訳で、

予想通り塗り肌が少ない仕上がりと、フチの盛り上がりも極力抑えられたと思います。

クリアーはいつもと同じくスタンドックスの高品位なタイプ=クリスタルクリアーで、ただ希釈率を通常の15%から20%としています。15%のままだと粘度が高過ぎて塗り難いからですね(ただ事前のテストでは塗れない事はありませんでした)。

ボディ以外の部品であれば丸パターンのエアーブラシでも可能ですが、今回のボディ程となると厳しかったと思います。

ドア内側のパーツは、塗装が完全硬化後に改めてトリム部分を艶消し黒で塗り直すようにします。

前回塗装しておいたナンバープレートは、クリアー層を砥石で研いで均し、

こちらも改めてクリアーだけを塗り直しておきました。

この後はボディ内装も含め、艶消し黒での塗装を行う予定です。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!