ホンダN-VANメッキフォググリル 下準備

先日お預かりしておりましたホンダNVANの純正メッキフォググリルです。

自動車部品のメッキパーツは大体がABS樹脂に装飾クロムメッキが施された物で、その特徴としては「耐食性が高く傷が付き難い」であり、美観に優れている反面これに塗装をしようとすると密着し難いので厄介な物でもあります。

確実なのは薬品でメッキを剥がしてしまうという方法ですが、少々手間が掛かる事と、部品自体の強度が落ちるという事もあるので通常は行いません。なのでメッキを残しつつ通常の塗膜と同様の密着性が得られる下地を作ってからの上塗りとしています。

被塗面に素地調整を行い、よく脱脂清掃した後にまずはプライマーを塗布します。

メッキは被塗物全体に施されているので、それを覆うように裏側にもしっかりプライマーを塗っておきます。

このままウェットオンウェットで上塗りを行う事も可能ではあるのですが、仕上がりが劣ってしまう場合がある為、

一旦サーフェサーを塗って区切りをつけるようにしています。特に今回のように艶消し仕上げの場合には艶具合が下地に依存してしまうので、そのまま上塗りを行う事はまずありません。塗装屋さんなら判ると思うのですが、ウェットオンで艶あり仕上げにした場合は艶が引け、逆に艶消し仕上げだと艶が出る(ダマとムラも出る)ので通常はしません。ここまでの工程でゴミが付いたらそれでお終いですし…。

メッキパーツはそれ自体でラインが出ているのでここでサフェを厚塗りをする必要は無いのですが、この後研ぎ作業を行った際に下地のメッキが露出したら最初からやり直しになってしまうので(厳密にはその時点でプライマーを薄膜にしたウェットオンで対応)、一応3コート程を塗っておきます。

爪の部分はサフェを塗らないようにしています。

ちなみにここまでの工程は、先日スバルのメッキ枠にサフェを塗った時と一緒に行っていました。どちらも同じABS+装飾クロムメッキ製品なので作業内容はほぼ同じなので効率をよくする為ですね(現在の料金設定ではいずれも単品での施工では採算が合わなく、なのでタイミングを合わせて他のご依頼品と一緒に作業するようにしています)。

その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、ガイドコートとしてベースコートの黒をパラパラと塗っておきました。

こちらのガイドコート、余り意味が無いように見えますが、

右が水研ぎ後の状態で、それぞれの違いが良く判るかと思います。

サフェは膜厚が充填できるという効果がある反面、それ自体で凸凹とした肌を作ってしまうのでそれを平滑に研ぐ必要があり、ただ肉眼ではそれが判り難いので、研いだ跡が良く判るよう今回のようにガイドコートを行うのは必須となります。エンジンバルブの擦り合わせで当たり面を確認する際に使う光明丹と同じような役割ですね。

裏側はペーパーが当たり難いので(下地を露出し易いので)ナイロンブラシとウォッシュコンパウンドで足付け処理のみとしてあります。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

メッキ素地の下地処理

先日お預かりしておりましたスバル純正エンブレムです。プレート部分は先日裏側を削って黒の塗装を行っておきました。

裏側に残っていた両面テープ糊のカスを除去し、素地調整を行った後にまずはプライマーを塗布します。

フチまでしっかり塗れるよう裏側に周り込むようにしてメッキ素地全体を覆う様に塗ります。

そしてこちらは先日お預かりしておりましたホンダフリードの純正リヤガーニッシュです。

スバルエンブレムの枠と同様装飾クロムメッキが施されていて、このまま上塗りは出来ませんから、同じく素地調整を行った後に、

プライマーを塗布します。

こちらも裏側まで満遍なく塗布します。

続けてサーフェサーを塗布します。

プライマーは防錆や密着性を高める為の効果があり、サーフェサーは主に膜厚の充填の役割があります。

この他のやり方としては、プライマーやサーフェサーなどは塗らず、メッキ素地にスプレー糊のような「密着剤」なる物を使ってそのまま上塗りを行う方法もありますが、そうすると無用に飛び石傷が多かったり(「点」では無く「面」でしかくっ付いていない為)、何かのきっかけでペリペリと剥がれたりする場合があるので、当店では対応していません。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

フリードのリヤガーニッシュはタイミング的にかなり早いのですが、それ単体で作業を行うと採算が合わない為、今回スバルエンブレムと並行して作業を行っています。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

スバルエンブレム(アセント&アウトバック)塗装 完成

大変お待たせしました!先日本塗りを終えていた北米スバルアセントオニキスエディションと、同社アウトバックのスバルエンブレム塗装、本日完成となります。

最初の状態も紹介します。

最初はアセント用のフロントエンブレムをわざわざ海外から取り寄せて頂き、

その後ご友人(?)の方の物という事で、アウトバック用の新品エンブレムも送って頂きました。同じ物、同じ仕様であれば複数割引が適用出来るのでこれはお得な方法かと思います。

メッキの枠はに本塗りを終えていて、完成したプレートとそちらを、新たにカットした両面テープで固定します。

両面テープは手でカットした方が早いのですが、新品時と同様の美しいラインのようにするのは難しいので、台紙からデータを作成し、レーザー加工機でカットしています。以下のツイートで動画が見れますので宜しければご参照くださいませ。

スモーク濃度はこちらを参考に調整しています。

左手前、オレンジ色の台紙が見えているのがアウトバック用の新品エンブレムとなります。

こちらが中古品だったアセント用の物となります。届いてから判った事ですが、どちらも同じ型式の物となります(そして現在作業中のフォレスターの大きいエンブレムも!)。

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

各画像はサイズの縮小以外は未加工となります。

メッキの枠はそのまま上塗り(今回の場合は艶ありの黒)を塗っても十分に密着しませんので、それ用の下地処理を行った上で塗装を施しています。

密着性は通常の塗膜と同様で、フェザーエッジも出せますので補修も可能です。

一般的に行われている密着剤を使って塗られたメッキパーツは「面」では抑えられていても「点」ではくっ付いていない為、飛び石等による傷が付き易く、また一部が剥がれるとそこを起点にペリペリと剥がれて来ます。ペーパーを掛けるとエッジがブツブツと切れるように剥がれるのでスムースはフェザーエッジは形成出来ず、その上から塗った塗料でチヂレ(または激しいエッジマッピング)が生じる為、全部剥離するか、部品自体を新しい物に交換して塗装する必要があります。私が一時期勤めていた町工場で、アメ車(ダッジチャージャー等)のメッキモールにスモーク塗装を行って「ブラックメッキ風」にする作業が多かったですが、やはり後で剥がれて来て、それの収拾には大変な目に遭いました(事前に剥がれる事は元請けさん、社長に進言し、さらには見積書にもその旨を記載おきましたが、結局泣くのは現場の方々でした)。

ですので当店でのメッキへの塗装は「スモーク」は受け付けておらず、今回のように下地を完全隠蔽する塗色のみとなっております。メッキ素地を活かした透過性塗装が格好良いのは私も知っているのですが、「だから言ったのに…」とは思いたく無いんですよね。

それでは後ほど完成のお知らせメールを差し上げます。この度も当店をご利用いただきまして誠に有り難うございました!

ROVER MINIメッキヘッドライトリム 下準備

先日お預かりしておりましたローバーミニのヘッドライトリム=アウターとインナー2台分、合計八個です。

このまま塗装を行っても密着しませんので、素地調整としてまずはサンドブラストを行います。

・・・が!

最初の一個に軽く(本当に軽く)サンドブラストを当てたところ、既存のメッキが浮いて剥がれ、その下からさらに綺麗なメッキが・・・。通常あり得ない事ですが、メッキの上にそのままメッキが施されていたようです。恐らく傷等があって新品として売れない物に、再度メッキを掛けてしまった物と思われます。今回サンドブラストで剥がれましたが、そのまま装着していても経年で剥がれていたと思います。

という事で一旦オーナー様にご報告をし、取り敢えず残りの7個を進行してみると、これらについてはいつも通り問題無くサンドブラストが出来ました。8分の1を最初に引いてしまったようです。

そして後日、代替品のリム(アウター)を、念のためという事で新たに2個送って頂きました。

・・・が!

今回は下地の銅メッキと装飾クロムメッキが密着していないようです。

ただ幸いにして(本当に幸いでした・・・!)もう一個のアウターリムは問題無かったので、ようやく8個のサンドブラウストを終える事が出来ました。

ちなみにプラスチックに装飾クロムメッキが施されている物の場合、素地のABS樹脂とメッキ(同じく銅+クロムメッキ)は殆ど密着していませんから、それにサンドブラストを行うと今回と同じようになる為、その方法はNGとなります(なのでそれの代替作業はとても大変でそして割高になるのです)。

その後シンナーで洗い流すようにして脱脂清掃を行い、

プライマーを塗布します。

メッキ自体は剥がしていないのでそのままでも錆びたりはしない筈ですが、メッキによっては気孔から水分(分子構造が小さい水蒸気)が入り込み、錆びてメッキを浮かす!という事が発生します。ミニのヘッドライトリムは純正でもそれが起こりますから、今回の御依頼は装飾以外にそれの防止の為なのでは、と思っています。

その後ひっくり返し、表側にも満遍なくプライマーを塗布します。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!(色々とお手配頂き有難うございました!)。

メッキ関係 下準備

先日お預かりしておりましたフリードHVフロントグリルメッキモールと、ホンダN-VANのフォグ周りに着くメッキ枠のパーツです(丸い物はスバルエンブレムのメッキ枠で、こちらは私物となります)。

装飾クロムメッキはそのまま上塗りを行っても十分に密着しない為、まず素地調整を行い、その後プライマーを塗布します。

プライマーは厚塗りを避ける為に溶剤で希釈し、2~3コートを満遍なく塗ります。

この後のサフェ研ぎでメッキ素地を露出させるとまたこれを塗り直す必要がある為、下地が出易い角等をしっかりと、また塗り重ねた際に流れないようコート間に十分な乾燥時間=フラッシュオフタイムを設けます。

なのでプライマーを塗るだけで一時間程は掛けていて、これが雇われの身だったらかなり嫌がられていたかも知れません・・・。

ちなみに以前一時期勤めていた会社ではこの工程に密着剤を使っていて、やはりと言うか後から剥がれた等のトラブルが絶えませんでした。施工していたのは主にダッチチャージャー等のアメ車で、メッキパーツが多用されたその車体を「オールブラックにしたい!」という要望が多く、私が入社してからは「密着剤を使うと後から剥がれるので止めた方が良い」として今の方法をお勧めしたのですが、塗装をセットにして車体を販売するスタイルだった為に掛けられるコストが限られていて、仕方なく「剥がれるのが前提」という事で引き受けていたのです。

ただ後でクレームになるのは避けなければならない為、見積書には「密着剤の使用委」(経年で剥がれる可能性あり)と必ず明記するようにしました。

プライマーは裏まで回り込むようにして、フチまでしっかり塗っておきます。

その後は通常通りサーフェサーを塗布します。

メッキパーツはその見た目から歪等は少ないのでサフェを厚塗りする必要は無く、ただし肌を研ぐ際に下地を露出させないよう、こちらもシンナーで希釈してコート数を増やして満遍なく塗っています。

サフェもコート間には十分な乾燥時間を設ける為、こちらも1時間くらい掛けて塗っています。

なのでこれ単品で作業をしようとすると採算が合わない所があり、ある程度数が溜まってから同時に作業するようにしています。

サフェは裏まで塗る必要は無いのですが、フチを研ぐ際に下地が出ないようそこはしっかり塗っておきます。

スバルのエンブレムは私物で、現在色々な仕様を作っているので、枠も塗れるよう準備しています。今回は黒では無く、キャンディーカラーを試してみようかと思っています。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!