バイク用ブレンボキャリパー凹み文字 下準備

先日お預かりしておりましたバイク用のブレンボキャリパー2点です。

今回ご依頼頂いているのは凹んだ文字部の塗装で、その他の部分は何もしない仕様となります。むしろ全体を塗るよりも難しく手間の掛かる作業となります。

まずはマスキングシートを作成します。文字部にマスキングテープを貼り、鉛筆の芯を擦り付けて輪郭を抽出します。

それを剥がしてスキャナーでPCに読み込みます。

そのままでは精密さに欠けるので、ソフト(Illustrator)を使って細部を修正しながら輪郭線のベクターデータを作成します。

出来上がったデータを使い、カッティングプロッターでマスキングシートをカットします。塗装作業で使用するのは雌型ですが、輪郭線の作成では雄型を実際の被塗物に貼り付けて確認~修正を繰り返します。ちなみにどちらも同じように見えますが、若干形が違うのでそれぞれでデータを作成しています。多分切削加工時のブレかと思います。

データが出来たらキャリパー全体を脱脂清掃し、これから行うサンドブラストの為のマスキングを行います。

ちなみに今回のキャリパーはどうやら既存の文字部の塗膜を剥がす為に、鋭利な物で抉ったような傷が結構あります。今回のように全体を処理(塗装)しない場合はこういった箇所の修正が出来ないので、残った塗膜は無理に剥がさず溶剤に浸けるか剥離剤を使うのがベストですかね。

マスキング用のシートは、最初に仮貼りしたデータより0.3mmサイズを小さくした物を使っています。エッジ(山)のラインより少しはみ出るような感じで、万が一でもブラストが食み出ないようにですね。

尚、通常のマスキングテープ(和紙タイプ)だとサンドブラストをした際に貫通してしまうので、ブラスト箇所にはPP製のマスキングシートorテープやガムテープを使います。

凹み文字の塗装ではこれらの作業が非常に手間で、それ故に塗料を流し込む方法が多く採用されているのだと思います。メーカーとしても1年持てば良いという判断なのでしょうね(実際は半年くらいで浮いてくるようですが…)。

そしていよいよサンドブラストです。通常使っているメディア(砂)は番手が粗いので(#60くらい)、今回は(今回も)#180を単体で使います。

前回は直圧ブラストのタンクに入れて使いましたが、威力的には吸い上げ式でも大丈夫そうだったので、ペットボトルに#180の砂を入れてそこにパイプを差し込む方式にしました。結果からすると全く問題無く、むしろ通常の時もこの方がストレス無く出来そうです。

こちらが作業前で、

こちらがブラスト後となります。

ちなみにサンドブラストを行う理由としては、アルマイト処理された被膜に直接塗装を行っても十分に密着しない為です。アルマイト被膜自体塗料がくっつきにくい性質で、また足付け処理されていない面にも塗料は十分に密着しません。前者の対処方法としてはアルマイト被膜を溶かす薬品等もあるのですが、それこそワンミスで大変な事になるので今回のようなケースでの使用は現実的では無く、また後者にしてはペーパー掛けでも勿論良いのですが、やはりこの形状で周りを傷つけず隅までしっかり処理するのは難しい、という事となります。

砂が中に残っていると無用な傷がついてしまうので、一旦全部マスキングを剥がし清掃しておきます。

この後はさらにサイズを変えたマスキングシートを使い、いよいよ本塗りとなります。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!