カーボンフレーム&フォーク 下準備

project30 お待たせしました。深夜になってしまいましたが先程無事ベースコート塗装、完了しました。朝一の段階では「あわよくばクリアーまで」なんて考えていましたがその半分にも達しませんでして・・・。まあこちらの御依頼は元々時間制限は設けてませんので(謝)、とにかく確実に作業して進めていっています。

上の画像は一昨日作業前の状態で、ベースコートのホワイトパール、そしてクリアー(極薄膜)までは昨年末に塗ってありました。画像で見ても判るようにこのままでも完成でおかしくは無い状態ではありますが実はここからが本番となります。この日の為に全てのロゴやライン柄などをデータ化しておきましたので(地味ですがこれがかなり大変なのでして)。

project31 と言う事でちょっと勿体無いですが再度全体を足付け処理します。ちなみにこの後はロゴとライン以外に色は塗らず「クリアーのみ」の塗装となる為、汚れが付くのは絶対に避けなければならなく、また足付け処理でも削り過ぎて下地を露出させてもマズイので(相当マズイです)こちらも注意して行います。

project32 そして足付け処理が完了です。艶が無くなってサフェーサーを塗ったような感じですがこうしないとこの上に塗装しても剥がれてしまうので必要な作業なのです。ちなみに今回は「汚してはいけない」「角(下地)を出してはいけない」と言う事で随分と時間が掛かってしまいました・・・。

ちょっと画像を撮り忘れたのですがこの後よく清掃をしたら続けて「ベースクリアー」を塗っています。前回LOOKのフレームを塗装した時に良い塩梅だったので今回もその方法で行う事にしました。

ここまでやっておきこの日は終了となります。

project33 そしてこちらが本日朝一の状態です。二階には大きな作業台があるので前の日から必要な物をここにセットしておき、前の日にベースクリアーを塗り終わっていたフレームを二階に持ち込んでマスキング作業を開始します。

尚ロゴに関してはオーナー様の御配慮により伏せる事になっておりまして、ただその為にちょっと判り難い撮り方になっていますが何卒御理解くださいませ。

それにしても普段は使っていないこの巨大な作業机が今回かなり重宝しました。必要な物は全部乗っかってしまいますし、私自身も乗っかって作業する事が出来ましたので。

project34 最初に各ロゴのマスキングを終わらせ(これは紹介出来ませんので)、続けてライン柄のマスキングを行います。尚今回はちょっと変則的なやり方で、わざわざ手間が掛かる方法になっています。

本来であれば先にライン柄の色「紫」を塗っておき、そこに上の画像のようにマスキングを貼った上にベースカラー(ホワイトパール)を塗装、その後マスキングを剥がしたら下から紫が出てくるのでもうそれでライン塗装は完成、といった感じで非常に簡単に出来るのですが、それだと色々と弊害がありまして、そもそも今回の御依頼は「デザインは元の通りに、とにかくクオリティを上げて仕上げて欲しい」といった内容ですから、最初に行われていたその方法ではちょっと足り無いんですよ。とにかく今回は至る所にかなりの伏線を敷いてますので。

と言う事で、まずはラインの位置を決める為に上のシールを貼っています。単に貼るだけではありますが左右で揃えなければならないので実はこれが一番難しく、実際この位置決めだけで一時間以上掛かってしまいました。まあこれは想定内ですけどね。

project35 位置が決まったらその周りをマスキングします。当初はラインテープで行う予定でしたが、アールが結構厳しい事、また上の部分がかなり複雑な形をしているのでその方法ではちょっと厳しく、だったらと言う事でメス型のシートを使う事にしました。

project36 こんな感じで立体交差点のようになっていますから、普通にマスキングをしようとするとちょっと無理ですよね。

ちなみに一枚で貼っているように見えますが実際にはカットし分割にして貼っています。でなければ水無しでは到底貼れないかと・・・。

project37リヤのステー上部にもラインが入ります。PCモニターに写っているのが最初の状態で、こういった柄を全てトレースしてデータ化し、それをマスキングシートとして出力しています。準備を万端にしていても実際に作業するとなると予想以上に時間が掛かってしまいまして、特に今回は「気軽に触れない」と言う事があるので非常に神経質になってしまいます。途中から電話回線も切ってしまいました。他の物を触るとその都度手を洗わないといけないのでこれがかなりのストレスになってしまいまして・・・繋がらなかった方には申し訳御座いません。御理解下さい。

project38位置が決まったらそれに沿ってマスキングを行います。こちらは先程とは違ってラインテープを用いて行っています。ただ先端(シートポスト方向)に行くにつれて先細りとなり、しかもフレーム形状が山形になっているのでラインテープだとコシが強すぎて端が浮き上がってしまい、これは本塗りしながらラインを修正~マスキングし直すと言う事で対応しました。ただこれに結構時間が掛かってしまったんですよね。勿論それ以外でも修正はかなり行って、とてもじゃありませんがクリアーを塗るどころではありませんでした・・・。

他にも画像はあってまだ続くのですがちょっと本日はもう全てを使い果たしてしまったような状況でして、後は何か違う物が出て来てしまいそうですから都筑は後日改めて紹介させて頂きたいと思います。何とかキリは付きましたので御安心くださいませ・・・!

カーボンフレーム&フォーク 下準備

project11 こちらも大変お待たせしております。新年明けましていよいよ完成間近になって来ましたが、ここまで掛けてきた時間をふいにしたくはありませんので確実に進めて行きたいと思います。しかし日に日にプレッシャーが高くなる一方でして・・・(まあ覚悟はしていましたが)。

フレームのベースカラーとなるホワイトパールの塗装は一応下塗りとしてクリアーまで終わっていて、再度下地処理(足付け処理)をしてこれからライン柄やロゴ入れ塗装をしていきます。まずは色の作成からですね。

project12ちょっとした塗料の扱いでも室内で行うと溶剤臭はしますから通常は換気を良くした状態で行うのですが、二階は事務所的な使い方もしているので寒いのは避けたいですから大抵はベランダで行っています。

ライン柄は濃い紫色で、今回使った原色は上記5種類となります。主に紫系の原色と白と黒、セオリー通りですかね。

ちなみに通常は「缶」にアジテーターカバー(攪拌する為のプロペラが付いていてワンタッチで注ぐことが出来る専用のカバー)を装着しているのですが、それら原色フルセットは全て自宅に置いてあるので工場には良く使う白・黒系と、その他は画像のように小ボトルに詰めた状態で置いてあります。ボトルの中にはパチンコ玉を入れてあるので使う前には良く振って攪拌させます。

ただこの場所だとちょっと日の当たりが悪くて色の確認がし難かったので、改めて一階の調色室(のような場所)で確認する事にしました。結構濃い紫なので見る角度によっては黒にしか見えないんですよ。

project13 と言う事で一階北側の窓で見るとこんな感じです。見本帳の「5」の紫に合わせています。

ちなみにこの塗料はベースコートなので、現状では艶がありますが乾いていくと艶は消えた状態になります。

project14そして次はロゴ用の色を作成します。ブルー味のあるシルバーですね。こちらは配合データ通りなので計量器を使っての計量調色で作成しています。

それではまた作業進行しましたら紹介させて頂きますね。もう少々お待ち下さいませ!

カーボンフレーム&フォーク 下地~下塗り

project9 お待たせしております。カーボン+クロモリラグのフレームとフォークは下塗りまで完了しました。普通だったらもう本塗り完了といった所ですがまだ色々あるので先は長いです。

画像は先日二度目に打った(塗った)サフェーサーを研磨した状態です。#320→#400で全体を空研ぎ、その後は布製の研磨材を使ってペーパー目を#800まで均していきます。

project10空研ぎで行うメリットは色々ありますが、デメリットとして「粉っぽい」と言う事があるので研ぎの作業中は全身粉だらけになります。作業用として履いているダークグリーンの軍パンですが作業している内に雪中迷彩みたいに真っ白になってしまいます。吸い込むと体に悪いと思うので防塵マスクを着用しています。

project21 そしてようやく下地の完了です。本来ならこで「本塗り」となりますが、今回はロゴやライン入れ塗装が複雑なので一旦ベースカラーの「ホワイトパール」で仕上げ、後日改めてそれらの塗装を別工程で行う事にします。効率は悪いですが、一旦全体がクリアーでコートされていればロゴ入れ塗装などで色が食み出てしまってもシンナーで拭く事が出来るので実はこの方が確実です。ベース色が普通の2コート塗装であれば部分的な修復が出来ますが、3コートパールの場合はかなり面倒な事になるので予防線は張っておく必要はあります。

project22 ただしそんなにストレスを貯めないで一度に塗り上げる方法が無い訳ではありません。先にラインとロゴの色を塗り、そこに形取ったマスキングシートを貼り付け、全体にホワイトパールを塗ってしまえば良いのです。

ただし明度の低い色(濃い紫)の上にホワイトパールを塗り重ねるとすると隠蔽性が非常に悪く余計に塗膜の厚みが付いてしまい、結果最初の状態と同じく各見切りのラインで激しい段差が出来てしまいます。それでは今回同じデザインでやり直している意味が無いので、今回は隠蔽力を考えての「白」→「シルバー」(ロゴ色)→「紫」(ライン)のセオリー通りで行く事にしました。その方がラインもロゴもシャープに仕上がると筈ですので。

そもそも3コートホワイトパール自体膜厚の付き易い塗装ですから一旦クリアーで閉じたい(終わらせたい)と言う事は塗装屋さんなら皆そう思う筈です(ただしそれが許される環境であればですか)。ベースコートの厚塗りがどんなに恐ろしい結果を招くか・・・は良くお判りですよね。これについては後述します。

project23 ちなみにボトムブラケットが付くフレームの内側にはクロモリが露出していた箇所があったのでプライマーを塗っておきます(と御依頼承りました)。ネジ山部分は折角塗装を剥がしておいたのでマスキングしておきます。装着時はグリースタップリでお願いします。

project29画像はカラーベースである「ホワイト」を塗っている所です。白はかなり隠ぺい力の弱い色ですからこの時点で5コート程度、そしてさらにこの上にパールコートを2~3コートは塗りますから通常の色よりもベースコートの膜厚が付くのです。これの上にさらにロゴやらラインの塗装をするのはとても嫌なんですよね。

ちなみに一般的な2Kシステム(=2Komponent。Componentの間違いでは無いですし「2コート」ともまた違うようです。これについては色々見解があって複雑です)は、ベースコートに硬化剤は要らない(入れない)のが主流だったりしますが、ベースコートでこれ程の厚みになるとクリアーの硬化剤が差し込まなくなるので(浸透して2液反応しなくなるので)、この場合は直接ベースコートにも硬化剤を入れたりします。1液ベースコートを使う塗装屋さんでもこれは常識で(特にDUPONTユーザーは・・・)、ただ「余った塗料が戻せない」と言うデメリットもあるので無理(と言うか無茶)をしてしまうケースもあると思います。

今回はクリアーを薄膜で終わらせる事と、フロントディレーラーなど強く締め付ける箇所があるので芯からしっかりと硬化させたいですから(と言うご要望です)、ベースコートでも最初から最後まで硬化剤を添加して行っています。

ちなみに知人が勤めていた会社ではこの厚塗りによる硬化不良のせいで、一度塗り終わったオールペン車両の塗膜を全てスクレーパーで剥がす、なんて事態に陥っていました。「厚塗りしませんでしたか?」と聞いても「いつも通り塗った筈」との事ですが、DUPUNT(センタリ6000)で硬化剤を入れないで5コートもしたらアウトですよ。デュポンは隠ぺい力が強いのが売りなので2コート無いし2.5コート程度で終わらせられないなら硬化剤は必須ですよね。

project24 そしてパールベースをコートし、クリアーを塗って本塗り完了です。パールベースはクリアーの中に数パーセントのパール顔料が入る程度なのでパッと見は透明な塗料ですが白の上にこれが塗られると真珠のような質感になるのです。時々このパール顔料を「真珠をすり潰した粉」と勘違いされている方が居ますが、これは鉱物の一種「雲母」が原料となっています。

ちなみに今回は膜厚を抑える為、パールベースについても「パール顔料を倍」にしてコート数(膜厚)を少なくするようにしています。これも特に型破りな事では無くケースバイケースで利用される手法です。ボンネットやドアの裏側などはこうやって時間を短縮させるのです。自動車の外板パネルのような平面だとムラが生じ易いですが、こういったパイプ形状や骨組みなどがある複雑な部位であればその心配も殆どありませんので(勿論それを想定した塗り方は必要ですが)。

project25 タップリ塗られているようですがクリアーの膜厚はいつもの3分の1以下だったりします。

通常クリアーを塗る時のスプレーガン口径は「1.3mm」を愛用していますが、今回は1.0mmでしかも1コートしか塗っていません。ロゴやライン入れをした後にはさらにしっかりとクリアーを塗りますからこの時点で無用な膜厚は避けたいのです。

project26 溶接のビート部分も最小限のパテで違和感無く出来たと思います。

project27 塗装自体はようやく中間地点といった所ですかね。ベースとなるデータ化は全て済んでいるので残る作業は神経戦といったところでしょうか(ライン入れが相当大変かと・・・)。

project28綺麗に見えますがクリアーは薄膜1コートなので肌が出来ていない箇所もありますが、完全硬化後には全体を研磨して足付け処理をするので問題はありません。

次のロゴ&ライン入れ塗装は来年に持ち越すかも知れません。全てはデータ化が済んでいますので特に急いでやる必要は無く、出来れば慎重に作業したいのでLOOKのフレーム塗装の時と同様に2日間に分けて行いたいと思います。となると年内でこの時間を作るのがちょっと難しいんですよね。何卒ご理解頂ければ幸いです。

それではまた作業進行しましたら紹介させて頂きますね。どうぞもう少々お待ち下さいませ!

カーボンフレーム&フォーク 下地処理

project14先日エポキシプライマーとウレタンサフェーサーを塗ったカーボン+クロモリのフレームです。強制乾燥して完全硬化しましたので次はいよいよ研ぎ作業です。

黒く見えるのはパテで、実際は濃い緑色なんですが画像になるとこんな風になってしまったんですよ。何故でしょう・・・。

project15 パテを塗ったのは溶接部分で、旧塗膜を剥離してみたらビートの凸凹が結構あったのでそれを均します。

project16 オーナー様からは「パテを塗って後で割れたりしませんか?」と御質問がありましたが、そもそも残るのはこの程度ですし、パテは柔軟性のあるタイプを使っているのでこれで割れることはまずありません(紙に盛ってクルクル丸めても割れないようなパテです)。

ちなみに今まで見てきたフレームでは「こんなにパテ入ってたのか!」と思うような物もありましたがそれでも割れた物は見たことが無いので意外に簡単には割れないものなのかも知れません。もし割れるとしたらその下で錆びが発生していたという事の方が可能性は高い気がしますが、今回のように一番最初にプライマーが塗ってあればそんな可能性も殆ど無いと思います。自動車のボディでもパテが割れたりするケースがありますが、大抵は板金や溶接後の鋼板の処理の甘さで、パテの厚みがある分発見は遅れるのですがそれが出た時はもう手遅れと言うか大変な事が起きていますので・・・。

project17 しかし想定外だったのが研ぎ作業が思っていたよりも大変だったと言うことで、ラグの継ぎ目の段差が研ぎ難いのは覚悟をしていましたがまさか根元のビートでも研ぎが必要だったとは・・・。普通はラグか溶接かのどちらか片方じゃなかったでしたっけ?(笑)。まあフルオーダーメイドとの事ですからラグの角度もオーナーの体に合わせて作っているんでしょうね。

で、結局いたる所にパテが入ったので、これだと部分的にサフェーサーを塗るよりも全体に塗ってしまった方が早いですから、研ぎの作業は粗研ぎとして#320→#400でストップさせ、もう一度全体にプライマーとサフェーサーを塗るようにします。

project18 二度目のプライマーはエポキシ系では無く通常のウォッシュプライマーで、ウレタンサフェーサーはシンナーでの希釈率を上げて膜厚が付かないようにします。チューブの部分に厚く塗っても意味が無いですからね。ビート部分以外にはペーパー目を均す程度として2コート程度で終わらせます。

project19 言い感じで滑らかになりました。

project20自然な感じになったかと思います。

この後サフェーサーを研げばさらに滑らかに仕上がりますのでもう少しですね。次回までに体力を回復させておきたいと思います(いやそんなに疲れる作業ではありませんか)。

カーボンフレームとフォーク 下地処理

project1大変お待たせしました!カーボンとクロモリの複合フレームは先日ブラスト屋さんから戻って来ましたので早速防錆&下地処理を施します。

それにしても随分な格好になりました。生まれたままの姿に戻ってしまった感じですかね。

project2ボトルブラケットにはブラストをしないようにマスキングをしていたのですが、実は新車時の塗装はこの中まで塗られていたのでプライマー塗装の前にシンナーとワイヤーブラシを使って除去しておきます。

project3よく脱脂をしたらいよいよ下塗り開始です。ここまで本当に長かったです(いやまだこれからが本番なのですが)。

project4最初はエポキシ系のプライマーを塗ります。所謂「重防錆処理」ですね。エポキシ系の樹脂は紫外線に弱いというデメリットがありますが、こういった下地として使うには最強でもあります。ボーイング787のボディはカーボン繊維で有名ですがそれを固めているのはエポキシ樹脂だという事はあまり表には出て来ていませんからね。

project5エポキシ系の樹脂がそんなに優れた材料なのに余り塗装の現場で出て来ないのはその「作業性の悪さ」が原因だったりします。特徴としては、

・硬化するのに時間が掛かる(十分な熱が必要)

・硬くて粘りがあるので研ぐのが大変

といった事があり、特に後者が敬遠される理由ですかね。#600辺りじゃ到底歯が立ちませんので。

project6それらを解消する方法がエポキシプライマーとウレタンサフェーサーとの組み合わせで、最初にエポキシプライマーを塗ったら少し時間を置き、それが完全に硬化しない内にウレタンサフェーサーを塗布します。所謂「ウェットオンウェット」の塗装方法ですね。ちょっと手間は掛かりますがこれにより両者の良いところ取りが出来るので私的に気に入っている工法です。

project7こちらのパーツは膜厚をつけると付かなくなるのでエポキシプライマーのみにしておきます。ウレタンサフェーサーと比べると色が全然違うのが判ると思います。

project8サフェーサーを塗り終わって判ったのですが、旧塗膜を剥がした状態の溶接部分は結構ガタガタが残っています。ブラスト屋さんに確認した所、案の定ここにパテが塗られていたとの事なので同じ様にして対応しておきます。