S-WORKS VENGE VIAS②

前回に引き続き、キャンディーグリーンに塗装したS-WORKS VENGE VIASのカーボンフレームとフォークの作業内容の紹介となります。

今回のフレーム塗装でご指定頂いている塗色はキャンディーカラーのグリーンで、オーナー様からは以下ページの色を参考にとご指示を頂いております。

https://matome.naver.jp/odai/2146741650393168701/2146938553598436603

http://www.cyclowired.jp/image/node/20676

キャンディーカラーとは透明な塗料を用いて、光が塗膜を通る事によって生じる色変化を表現する塗装です。

例えば上記の画像ではシルバーメタリックの上に透明なイエローを重ねてゴールド色に表現しています。メタリック自体に色は混ぜている訳ではありません。

 キャンディーカラーは通常の補修用塗料とは違い、それ専用の物を使います。今回はカスタムカラーではメジャーなハウスオブカラーを使いました。

 色は「黄味寄り青」と「青味寄りの緑」を混ぜて作ります。

それぞれ配合率を変えた塗料で色見本を作成します。

キャンディーカラーは塗料中の含有量やコート数(膜厚)で色が変わる為、同じ配合でも違う塗り方をした色見本も作成します。

平面だけでは判り難いので、立体的に見える色見本も作成しました。

  最後にはクリアーも塗り、色を比較していきます。

と言う訳で最終的にこちらの色に決定となりました。配合はキャンディーグリーンが2に対してキャンディーブルーを1の割合となります。

 そしてサフェーサーを研ぎ終わったフレームです。

 サフェ研ぎの際に露出したアルミ部分にはプライマーを塗っておきます。

 まずは下色のシルバーを塗ります。STANDOXで最も粒子の大きい(粗い)原色MIX598です。

 メタリックはフレーク顔料が大きいとその分肌が荒れやすい為、塗装の際は極力ウェットコートで行います。画像では艶がありますがクリアーでは無くベースコートです。

 そしてシルバーの上にキャンディーカラーのグリーンを塗り重ねていきます。

 規定の色味になるまでベースコートを行い、

 最後にクリアーを塗って下塗り完了です。

 今回はロゴ入れの塗装も承っていますが、一度に行うと仕上りが悪くなる為、二回に分けて行います。

また今回は追加でペダリングモニターセンサーのカバーも同色で承りました。こちらのpioneerロゴも改めて塗装し直します。

その後60℃40分程熱を掛けて塗膜を強制乾燥硬化させ、さらに数日寝かします。

下準備をする前に4回目の計量を行ってみました。

剥離作業前の重さが1138.3gで、旧塗膜を剥離後は1057.2gで81.1g減、サフェーサーを塗って研いだ後は1112.9gとなり、その後キャンディーグリーンの下塗りを行ってこちらの数値となります。

ただしこの状態だとイモネジが3個入ったままで、こちらが4g×3=12g、実際は1148.1gになります。今回塗ったキャンディーグリーン(ベースコート+クリアー)の塗装分が35.2gといった感じです。

ちなみにオーナー様からは重量増については全くの不問で、単に私が興味がある事と、参考の為に計量を行っています。

本塗りに続きます。

S-WORKS VENGE VIAS③

S-WORKS VENGE VIAS①

キャンディーグリーンに塗装を施したS-WORKS VENGE VIASのカーボンフレームとカーボンフォークです。一連の作業を纏めて紹介致します。

 こちらが元の状態です。

ロゴは同じように復元しますが、再塗装の際にロゴを残す事は出来ませんので、これらを一旦データ化して改めて塗装で入れ直します。

尚、この型のフレームは今回が二度目の施工で、ある程度のデータは一回目に作ってあるのでそれらのデータ作成費は掛かっていません。新たにデータを作製する場合は塗装費とは別に「データ作成費」が必要となりますのでご注意下さいませ。

尚、以下が最初に施工した時の案件で、宜しければご参照下さいませ。

SPECIALIZED S-WORKS ①

こちらのロゴは以前作製(復元)していなかった為、今回改めて一から作製します。

撮影したロゴの画像をPCに読み込み、ソフトを使って輪郭をトレースしてべクトルデータを作製します。

さらにそれらのデータを使い、フレームに配置する位置やサイズなどもデータ化しておきます。

さらに色付けをして完成時のイメージを判り易くしてみました。

当然ですが一度塗装を剥がしてしまうと元の姿は判らなくなってしまう為、とにかくデータとして集め、残しておきます。

 フロントディレイラーのステーはリベット止めで、外す事は問題無いのですが取り付け時にカーボンを割ってしまう恐れがある為、ここは前回同様にマスキングで行う事にしました。

またボトムブラケットの部分はベアリングを外す事は出来ますが。枠となる部分はフレームに接着されている為、塗装する上ではベアリングを外しても余り意味が無いのでここもマスキングで対応します。

作業前には重量も量っておきました。

素材が金属であれば溶剤やサンドブラストによる剥離作業が出来ますが、カーボン素材ではそのどちらの方法も出来ない為、手作業で研磨・剥離していきます。

旧塗膜を剥離した後にも重量を量っています。今回フレームから剥がした塗膜の重さは81.1gとなります。

 良く脱脂清掃し、各部をマスキングします。

 まずは金属部品が使われている箇所にプライマーを塗ります。

  続けてサフェーサーを塗ります。

サフェーサーはSTANDOXのシステムフィラー、2液硬化型のウレタン樹脂です。

 60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、ガイドコートとして全体に黒をドライコートで塗布しておきます。

 サフェーサーを研磨します。

 サフェーサーを研ぐ際には硬い当て板をペーパーに当て、凸凹した素地を平滑に研ぎ出します。

 曲面も最初は平らに砥ぎ付け、最後に角を取るようにしてシャープで美しい曲線を表現させます。

最初は空研ぎの#320→#400でラインの粗研ぎをし、さらにその後は#600で細かいラインを、最後に#800でペーパー目を均します。

サフェーサーを研ぎ終えた時の重量は1112.9gとなりました。

本体は塗れる状態になりましたが、まずはキャンディーグリーンで下塗りを、ロゴの塗装はその後となります。

また今回は単なるキャンディーグリーンでは無く、ペーター・サガン氏が乗るレーサーモデルの色に近づけたいと言う事で、2色のキャンディーカラーを配合してオーナー様が希望される色味に近づけました。

色については以下ページにある画像を参考にとご指示頂いています。

https://matome.naver.jp/odai/2146741650393168701/2146938553598436603

http://www.cyclowired.jp/image/node/206762

調色作業と下塗りに続きます。

S-WORKS VENGE VIAS②

LOOK 585③

②に続き、完成の紹介となります。

本塗り後に60℃40分程の熱を掛け、必要に応じて磨き処理を行ったら完成となります。

最初の状態も紹介しますね。

 元々はこのようなデザインだった物を、

オーナー様のご要望に応じてロゴを作製し、事前にイメージイラストを作製しました。

新車時の塗装が良く無かった事もあり、結局塗膜の殆どを削り落として下地からのやり直しとしています。

 このフレームはラグ部の継ぎ目のなる箇所があり、一度だけのサフェ研ぎではラインの形成が難しかった為、一旦クリアーを下塗りして微細なラインを再現しています。特に鋭角な谷ラインをシャープに美しく仕上げる事に意識しました。

 アウター受け(ワイヤーガイド)については基本的には取り外して作業するのですが、取り付け時にカーボンチューブが割れる恐れがある事、また今回のようにチューブの端が接着剤で埋まってしまっていてリベットを揉んで外した際に裏側の破片が回収できない(破片がチューブの中に残る)と言う事もあり、最初から最後まで取り外さずに作業を行いました。

ただしアウター受け部分は手作業で旧塗膜の剥離は難しい為、そこのみをサンドブラストで処理しています。

ロゴ部分は黒では無く「スモーク」で、強い光に当たった場合のみ素地のカーボン目が見えるようになっています。

ヘッドチューブのロゴは元のデザインのままで、ただし二個あった物を一つとしてシンプルなデザインにしています。色のフルカラーロゴのグレーと御揃いにしています。

 この辺はアルミでは無くカーボン素材なのでサンドブラストは使えず、窪みや穴の部分はリューターの先端にペーパーを巻くなどして手作業で行っています。

 元々あったフルカラーのロゴは純正のデカールでは無く塗装で再現しています。

 色は元々貼ってあったデカールとシールを参考に、それぞれの色から近似色を選んで作製しています。

 クリアーは高品位なタイプのSTANDOXクリスタルクリアーを使い、まるで磁器のような美しい光沢感を表現しています。

 ベースカラーのホワイトはロールスロイスのARCTICA(カラーコード:9561001)を使用しまいた。

ロゴ部分は新車時のような段差は無く、シャープな輪郭で美しく仕上がっていると思います。

最初の状態も紹介しますね。

元々の塗装ではロゴ部分に激しい段差があったり、

最後に塗られているクリアー層が密着不良でペリペリと剥がれているような状態でした。

剥がれた所を見ると下から艶のある塗膜が見れる為、最終クリアーを塗る前に足付け処理は行われていない事が判ります。

私的な見解ですが、恐らくデカール等を貼って最終クリアーを塗る前には足付け処理では無く「密着剤」が使われていて、それが経年による劣化で塗装が剥がれて来たものと思われます。

接着剤と違い塗膜自体に密着効果は少ないですから、塗装の前に足付け処理を行うのはとても重要です。

 塗装の塗り方に関しても、隠ぺい性の違いによる塗り方の順番やマスキング・スプレー方法によって無駄な膜厚を極力抑え丁寧に塗る事によってシャープで美しく段差の少ない仕上がりに出来ます。

ロゴに関しては折角各色の塗料を作ったと言う事で、

本塗りのついでにアクリルプレートにも塗装を行って、

今後の為に色見本を作製したり、

レーザー加工機でカットしたアクリル板を使って立体ロゴを作製したりもしました(これは仕事とは関係ありません)。詳しくはこちらの社外記でどうぞ。

さらにデータを使い回し、カッティングシートでタッチペン用ボトルのパッケージシールを作製したりも出来ます。

その後オーナー様から組み付け後の画像とコメントも頂きましたので紹介させていただきます。

「フレームは先週の先々週の金曜日に無事届いておりました。とても奇麗です。次の日には、組付け完了して乗り始めてました。

 写真を送ろうと思ってたのですが、iPhonの限界と天気が良すぎて思ったような質感の写真になりません。改めて今日(曇り)にコンデジで撮ったので送ります。 肉眼なら晴の日にも奇麗に見えるんですがね。
良い仕事をしていただきありがとうございました。気持ちよく自転車に乗れるようになりました。また色を塗りたいものが出来たらお願いしたいと思います。」
との事です。わざわざ有難うございました!
確かに今回の塗色は少々特殊で、通常ソリッドカラーには使われないエフェクトホワイト(STX MIX810。DUPONTだとAM3のマイクロチタン)が大量に使われていて、透かすと青く、光が反射すると黄色味が出ると言う透明な白味が表現されています。こういった配合は殆ど見かけない為、車でも自転車でも同じような色をした車体は殆ど存在しないと思います。
この度のご依頼、誠に有難うございました!

LOOK 585②

LOOK 585①の続きとなります。

下地のサフェーサー研ぎも完了し、いよいよ本塗りの為の準備となります。

付属のアウター受けは隙間が目立つ為、シーラーを塗布しておきます。

使うのは1液変性シリコーンシーラーで、これは塗装の下への塗布が可能なタイプです(通常のシリコーンシーラーの上には塗装は出来ません)。

しっかりと充填し、

余分をシリコンオフとウェスで拭き取ります。

シートポスト部の仕上りが悪かったため、先にここを塗っておく事にしました。

ベースコートの黒を塗布し、乾燥したらマスキングをします。

そして本塗り準備完了です。

事前に作成したデータから各マスキングシートをカットします。

ダウンチューブはカーボン地を活かした「抜き」の為、オス型のマスキングシートを貼り付けます。

ベースコートの白を塗布し終えました。

多少なり修正を加え、近くで見るとこのように仕上がっています。ロゴは黒く見えますがここは透過性のスモーク塗装で、カーボン地が透けて見えるようになっています。

ヘッドチューブはグレーを塗布し、

シートチューブの後ろ側にフルカラーのLOOKロゴを塗装で入れます。

枠の黒を塗り、

それぞれマスキングを貼り直して、

ベースコートが完了です。

全てのマスキングを剥がし、

念の為ベースクリアーを塗布し、

クリアーをコートして本塗り完了です。

この後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させ、必要に応じて磨き処理を行い、数日寝かしたら完成となります。

LOOK 585③へ続く

LOOK 585①

LOOKのカーボンフレーム&フォークです。現状のデザインは派手過ぎるようで、以下のようなデザインへの変更でご依頼を承りました。

基本となる塗色は現状と同じ様な白で、ダウンチューブに入れるLOOKのロゴはカーボン地を活かしたスモーク仕様となります。

 またシートポスト後部にあるLOOKのロゴを塗装で再現します。

フレームのベースカラーはこちらのロールスロイスのARCTICA(カラーコード:9561001)となります。ソリッドカラーでは通常あり得ないエフェクトホワイト(MIX810)が入っていて、透明感のある白が表現されています(それ故に隠蔽力が相当悪いです)。

 LOOKのフルカラーロゴについては純正のようなデカールでは無く、塗装で再現します。

 それぞれの色の近似色を色見本帳から選び出します。

ヘッドチューブのロゴは2個の物を一個に変更しますが、形状はそのままとするので、これをデータ化します。

マスキングテープを貼り、塗膜の段差を利用して輪郭を抽出します。石刷りの方法ですね。

転写したロゴをスキャナーでPCに読み込み、Illustratorなるソフトを使って輪郭線をトレースし、ベクトルデータを作製します。

各ロゴデータを実寸化し、

プリントアウトして、

 実際にフレームに貼り付けて位置や具合を確認します。

さらにシートポスト下部にあるロゴもデータ化します。

PCのソフトを使ってデータを作製し、

マスキングシートを作製します。

これでようやく作業前の準備が整い、ここからようやく塗装の実作業となります。

既存の塗膜状態としては、一部の剥がれた塗膜の下に艶のある塗膜が確認出来たので、最低でもその層までの塗膜は削り落とす事が必要となります。

何故か判りませんが、自転車の塗装では足付け処理をしないまま塗装を塗り重ねるケースが多く見られ、最初の数年は良いのですが、経年の劣化で塗装間の密着力が弱待って来て徐々に塗膜が剥がれて来ます(層間剝離)。

カーボン素材には溶剤やサンドブラストを使った剥離作業が出来ない為、ペーパーを使って手作業で塗装を剥がします。

その後、ペーパー掛けでは取り切れない箇所の塗膜をサンドブラストを使って剥がします。

ブラスト処理を行うのはワイヤー受けの部分で、こういった箇所はエアーツールや手研ぎでは綺麗に剥がず、かといっていずれ剥がれてしまう塗膜が残っている以上は剥がさなければなりません。

ブラストボックスに入れ、

カーボン素地に当てないよう、アウター受けのアルミ部分のみブラスト処理を行います。

ここまでで素地調整が完了です。

全体を綺麗に脱製洗浄したら、

アルミ部分を残しマスキングを行います。

金属用のプライマーを塗布します。

続けてカーボン抜きのLOOKロゴを入れるダウンチューブ全体に下塗りのクリアーを塗ります。

この時点ではまだスモークでは無く、ただのクリアーとなります。

巣穴が残ったままスモーク塗装を行うとそこで濃淡が変わって跡が残ってしまう為、まずは平滑な下地を作る事から始めます。今回はこのダウンチューブだけで4工程(4回分)の塗装を行いました。

一旦熱を入れてクリアーを硬化させ、改めてペーパーを掛けて下地を整えます。

今度はダウンチューブ部をマスキングし、その他の部分にプライマー&サフェーサーを塗布します。

フォークのホイールが着く部分は元々カーボン素地が露出していた為、ここは最後までカーボン素地を残すように作業を行います。

まずはアルミ素材部に金属用のプライマーを塗布し、

続けて全体に2液ウレタンサフェーサーを塗布します。

この後熱を掛けてサフェーサーを硬化させ、

完全硬化したサフェーサーを#320→#400の空研ぎでライン出しを行います。

ライン出しでは必ず当て板を使い、狭い箇所はヘラなどを使います。ペーパーを直接手で持って研いでも歪は取れず、また指の跡などが残ってしまうからです。

今回のフレームはラグのチューブに段差がある為、砥ぎ作業はかなり手間が掛かりました。

空研ぎの後は#600→#800の水研ぎで細かいラインの修正&深いペーパー傷の目消しを行います。

サフェ研ぎが完了です。通常はこのまま本塗りとなりますが、今回はさらにクリアーを使った下塗りを行います。

研ぎ作業の際にアルミ素地が露出した箇所には再び金属用のプライマーを塗布します。

続けてフレーム全体にクリアーを塗ります。

ダウンチューブはこれが二度目の下塗りクリアーで、ここでようやく平滑なラインが形成されました。

クリアーをフレーム全体に塗ったのはペーパー傷を埋める事と、細かいラインの確認を兼ねています。

この後、再び熱を入れて塗膜を完全硬化させます。3度目の熱入れですね。

フレーム全体に足付け処理を行い、ダウンチューブを残してマスキングを行います。

透過性のある黒の塗装=スモーク塗装を行い、3回目のクリアーを塗りました。

オーナー様のご要望に沿ってスモーク塗装を行いカーボン目を目立たなくさせました。

この後再び熱を入れて塗装を硬化させます。4度目の熱入れです。

LOOK 585②に続きます