ブラインドナット

ブラインドナット

現在ご依頼中のクロモリフレームで、錆びたブラインドナットを外して新たに取り付けるナットを「スチール」か「アルミ」かでご検討頂いていたりします。

画像はM5ビス用のブラインドナットで、一番左が普通のアルミ製、真ん中がそれに「ギザ」が付いたアルミナット(皿の裏に付いてます。良く見ると見えませんでしょうか?)、そして一番右はスチール製のナットです。こちらは側面にギザが付いたローレット加工済みです。

ブラインドナット(またはポップナット)はネジ山が切れない薄物にネジを固定出来るようにする為の便利物で、自転車フレームのような軽量化が求められる製品には重宝されるアイテムです。肉厚が2ミリとかあれば必要ないんですけどね(ただそれじゃ凄く重いでしょうし・・・)。

で、今回もそうですがどうも自転車のフレームに元々使われているブラインドナットは下穴が大きいタイプのようで、M5用のナッターを入れてもスカスカなのです。どう考えてもミスマッチなサイズでして・・・。なので万が一の滑り止めの為にローレット加工された物を好んで使っています。

で、このブラインドナットはそれぞれ「アルミ」と「スチール」の種類がありますが、それぞれ一長一短がありますのでお好みによって選んで頂いても構いません。一応それぞれの特徴を紹介しますと・・・

【アルミ製のブラインドナット】

・メリット・・・軽い。錆び難い。万が一の時に外し易い。

・デメリット・・・強く締めすぎるとねじ山が飛ぶ。場合によっては錆び易い。

・対応策・・・強く締めて止めると言うより「緩まないように」を心掛けてプレッシャーワッシャーを入れるなど。

【スチール製のブラインドナット】

・メリット・・・強く締めてもネジ山がナメってしまう心配は少ない。

・デメリット・・・重い。場合によっては錆び易い

・対応策・・・付けない時には水が入らないようにネジにグリースを塗って締めておくと宜しいかと。

といった感じです。昨年ご依頼頂いたcannondale sistemsixのオーナー様は、「とにかく軽く」と言うことで迷わずアルミを選択されましたが、通常ここに使うナットはスチール製が一般的ですかね。ただそんなに頻繁に付けたり外したりしなければアルミだからといってそう簡単にナメってしまう事も無いかとは思いますが・・・。

ちなみに上記のデメリットで「場合によっては錆び易い」とありますが、これは異なる金属素材の組み合わせで起こる電位差による腐食を指しています。アルミは鉄よりも腐食し難いと思われますが、この両者が接触しているとなるとアルミの方がイオン化傾向が大きいので鉄よりもアルミの方が先に錆びていきます。うーん、ちょっと難しいですかね。

もっと身近な物であれば「トタン板」があって、あれは鉄に亜鉛を被せてあります。鉄は本来錆び易いですが亜鉛の方がイオン化傾向が大きいので鉄よりも先に錆びようとします。が!亜鉛はたとえ錆びたとしても酸化鉄のように脆く風化していったりはしないので(変化が少ないので)、錆がみるみるうちに進行して穴が開いたりとかはし難いのです。これが4輪自動車に採用されている「亜鉛鋼板」の仕組みですね。屋外に放置してあっても錆び難いのはこれのお陰です。鉄の代わりに亜鉛に犠牲になってもらっているのです(犠牲防食?でしたっけ)。

ちょっとうろ覚えなので間違っていたらすいません。ちなみに一部の自動車には「アルミボンネット」なんて採用されていたりしますが、あれもスチール製のヒンジとアルミボンネットの間にはシーラーやら塗装やらで通電しないようにされています。なのでこれと同じように、異種金属の組み合わせを懸念するならばそこに何かしらの措置をしてあげれば良いだけの話しでして、例えばクロモリフレームにアルミナットを付けるならば予めエポキシ接着剤を塗布しておくなど、ちょっと手を掛けてあげれば良いだけの話なのです。DIYならプライマーやらグリースを塗るだけでも良いですし。

やるやらないは別として「なんでこうなったか」を知っておけば、いつか困った時でも助かる場面が出てくると思いますし事前にトラブルも防げますからね。塗装は本当に奥が深いのです。

ポップナットの錆

アルミフレーム ブラインドナットの錆

正確な名称が何と言うか知らないのですが、自転車フレームにボトルなどを載せられるようにするステーを固定する箇所のネジ部です。

通常塗装の時にはネジ穴内部にイモネジを差し込んで一緒に塗るのですが、それにしてもこれは残すべきじゃないのでは・・・と思って外す事にしました。フレームは全体にサンドブラストを掛けますが、アルミとスチールの合わせ目は処理が届きませんから錆の再発はかなりの確立になってしまいますので。

 

ポップナット取り外し

という事で取り外しました。ポップナット(ブラインドナットとも言いますかね)は合計四個ありますが、そのうち3個はドリルで外れて残り一個は空転しまったのでベルトサンダーで頭を跳ねて取り外します。

自転車のフレームでポップナットを外す時に注意する事は、外れたナットが内部からちゃんと取り出せるかどうかを事前に確認しておくことです。表側の見える方は削り落とすのですがその殆どは内側に残るので、外れたそれはフレームの内側に落っこちます。

普通はちゃんとサービスホールから取り出せるのですが、以前業者さんからご依頼頂いたフレームはそのサービスホールがナットよりも小さかったらしく、中にコロコロと残ったままでやってきました。当然うちでも未加工では出せる訳も無く・・・(穴を広げれば可能ですが結構手間が掛かりますし強度面でどうなのか解らなかったですからそのまま塗って戻しました)。まあグリースを入れておけば転がることは無いと思いますから気にし過ぎかも知れませんかね(自分でやった場合は多分気になって夢に出て来くると思いますが・・・)。

ちなにみ今回は「錆」を懸念しての取替えですが、通常は恐らく強く締め過ぎてネジ山をナメってしまった場合が殆どだと思います。アルミ製のナットだと結構簡単にイってしまいますよね。緩むのが嫌ならばロックタイト(緩み防止剤)かプレッシャーワッシャーを入れた方が確実です。・・・と言いつつ私も先日帰り道に危うく工具入れがステーもろとも落ちる所でしたが(恥)。

 

発送準備完了

そして発送の準備が整いました。単に丸投げって訳ではなく、ボトムブラケット部やフォークが通る箇所など、ブラストを掛けて欲しく無い箇所には予めマスキングをしておきます。よく見ると詰め物がされているのが解ると思います。自ら自転車に乗らない時はそんなに気にしなかったのですがボトムブラケットの交換とか自分でやってみると(やってみたんです。笑)ここは触れない方が良い場所だとか色々気がついてちゃんと仕事に役立っているような気がします(気のせいかも知れませんが…笑)。

上の画像は実際の作業中の現場風景で、通常作業している時は大体こんな感じに、間借りさせて頂いているTACさん(自動車板金塗装)の工場内の空いているスペースに一畳分くらいのダンボールを敷いて作業しています。被塗物対象が「小物」なのでそんなにスペースが必要な訳ではありませんが、工具と設備に関してはちゃんとした物が必要なので中々小規模での運営は難しいのです。年末年始の休みに自宅で塗装を試みようと思いましたが日頃塗っている環境では無いので色々大変そうでしたから断念してしまいましたし・・・。

で、メールをしておいたブラスト屋さんから返答があったので早速発送の手配を致します。戻って来たらまた紹介させて頂きますね。