BMWアッパーカウル塗装 完成

 大変お待たせしました!古いBMW Motorradのアッパーカウル塗装、本日完成となります。

最初の状態も紹介しますね。

元々ブルーメタリックに塗られた新品部品で、 オーナー様曰く「 R90S用と同デザインの純正後付キットで、 製造年は不明ですが恐らく40年前のものではなく補修用の事後生産品ではないかと思います。」との事です。

既存のデザインはそのままに、ただしラインはフリーハンドでのピンストライプでは無く、「2mm 幅 & エッジ起算 3~4mm 内側」といった内容で仕上げています。
 塗色については現在のボディーカラーと同色で、カラーコードは 「532」と調べて頂いたのですがSTANDOXでは配合データが無く、一緒にお預かりしたフロントフェンダーから色を作りました。

 ゴールドのストラインプラインについては、「色名が GOLD。カラーコードが #104 。共に ’77~’78年の R60/7 ~ R100/7 に使用。太いものが 3.8mm 幅、細いものは 2mm 幅、2本の場合 3mm の隙間を開ける」との規定があるそうです。

こちらも配合データは存在しなかった為、近似色で作成しています。

 クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーで、元々塗られていた塗装とはまるで質感が違うのが判ると思います。

ちなみに先日ご依頼頂いたトヨタ86テールランプのオーナー様からは、「写真でもその美しさを拝見しておりましたが、実物のクオリティは圧巻でございました。マスキング部の仕上がりが個人的にすごくツボで、丁寧な作業が伝わってくるようです。」とのお言葉を頂戴しまして、また同時期にお納めしたカローラフィールダーテールランプのオーナー様からは、「写真で見るより更にすばらしい出来栄えに只々、感動しております。」とのお言葉も頂戴しました。技術的な事は別として、とにかくクリアーの質感は画像で見るよりも断然実物の方が凄いですよね。

 アッパーカウル上部に着いている黒い樹脂部品は、カシメ部をドリルで揉めば外す事は出来るのですが、同じ物が用意出来無さそうだったので今回はマスキングで対応しています。仕上り的にはマスキングで塗ったようには判らないと思いますのでご安心下さいませ。

それでは後程完成のお知らせメールを差し上げますね。この度も当店をご贔屓頂き誠に有難う御座いました!

BMWアッパーカウル 磨き

先日本塗りを終えていた古いBMW Motorrad用のアッパーカウルです。

必要に応じて磨き処理を行っています。

 手前が色見本用として一緒にお預かりしたフロントフェンダーで、こちらも軽く磨いておきました。

ただこちらのフェンダーの塗膜はシリコンオフやコンパウンドを塗っただけで跡が残ってしまいますので(使われている塗料はラッカー系かも知れません)、軽い磨きに留めています。

ヘッドライトの穴部分についていたゴムは表面が白く粉を噴いたような状態だったので、シンナーで拭いて黒くしておきました。

 傷が付かないようマスキングテープを貼り、

ひっくり返してゴムを装着します。

ちなみに元々は瞬間接着剤の点付けで着いていましたが(ほぼ取れ掛かっていましたが…)、今回は一周両面テープを貼って取り付けています。かなりしっかり付けてありますので今後取れる事は無いと思います。

後程撮影をして改めて完成のご案内を差し上げますね。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

BMWアッパーカウル 本塗り

 先日ライン入れの検証を行っていた古いBMW Motorradのアッパーカウルです。

元々塗られていた白いラインテープはフタル酸樹脂塗料(所謂「ペンキ」)の可能性が高く、その上にウレタン塗料(またはラッカー・ポリエステル・エポキシいずれも)を塗るとチヂレやクラックが入る恐れがある為、完全に除去しておく必要があります。

さらに元々の肌は余り良くなく、ブツ(ゴミが付着して表面張力により突起状になった物)も多数あった為、全体を#800の水研ぎで平滑に均しておきます。

さらに全体をスコッチ&ウォッシュコンパウンドで足付け処理を行います。忘れがちなフチの断面などもしっかり足を付けておきます。

裏側も一緒に塗るので同じように足付け処理をしておきます。こういった場合は布状の研磨副資材(アシレックスレモン)が便利ですね。

よく水気を切って清掃し、マスキングを貼り直して台にセットします。

 裏側も一緒に塗れるよう、こんな感じでスプレーガンが入るスペースを空けておきます。

 最終脱脂を行い、よくエアーブローをして埃を飛ばしたらまずはベースコートを塗布します。

ベースコートの調色作業については以下の記事で紹介しておりますので宜しければご参照下さいませ(いつも見て頂いている方には直ぐ先日の事なのでわざわざリンクを貼る必要も無いのですが、初めてこのページにいらっしゃった方に判り易いようにしておりますので、少々クドクて申し訳無いのですが何卒ご容赦下さいませ)。

BMWアッパーカウル 調色作業

 ベースコートを十分に自然乾燥させ、テープフリーな状態になったらライン入れのマスキングを行います。

 最初に外側をフチのラインに合わせて3ミリ幅のラインテープを貼り、それに合わせて2ミリのラインテープを、さらにそれを挟むようににして3ミリのラインテープを貼っていきます。

 一度で綺麗に貼れない個所は何度か重ねてガイド用のラインを出し、それが決まったら先ほどと同じように3重に貼っていきます。

 最初の状態と比べて相違無いか確認しながら作業しています。

 ラインの位置が決まったら真ん中のテープを剥がします。

全体を見直して、良く無い個所があったら修正していきます。

 ラインテープのマスキングが終わったら全体を養生します。

 テープを貼る際には微細な毛埃を挟まなないよう注意していますが(見つけ次第回収しています)、念の為最後にタッククロスを使ってチェックします。ラインの谷間にピッタリ嵌っている毛埃は目視では見つけられないのですが、これでササっと擦ると隠れていた毛埃が見つけられるのです。

ちなみにタッククロスとは埃の出ない繊維に多少の粘着物質が着いた物で、塗装前にエアーブローするときにこれもセットで使うのが基本です。何故か分かりませんが被塗面にのったホコリって超強力にエアーブローしても飛んでくれない場合があるんですよね。

 そしてゴールドを塗り、

 マスキングを剥がします。

 これくらいのアール(曲線)なら先にゴールドを塗ってラインテープを貼る方が作業的には断然楽ですが、そうするとどうしても見切りラインが汚くなるので今回はわざわざこうしています。塗装屋さんなら判りますよね。

 そして最後にクリアーを塗って本塗り完了です。

 クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーへの変更で承っています。

元々の塗装は肌も綺麗ではありませんでしたが、高品位なクリアーのお陰で肉持ち感のある艶のある肌に仕上がっていると思います。

裏側は序でといった感じですが、元の塗装みたいにタオルが引っかかったりするようなザラザラな仕上がりではありませんのでご安心下さいませ。

この後一日自然乾燥させたら60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させ、磨き処理をしたらヘッドライト周りのゴムを着けて完成となります。お預かりしているフェンダーとも並べて色を確認してみますね。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

BMWアッパーカウル ライン入れ検証

 先日調色作業を終えている古いBMW Motorradのアッパーカウルです。

 現状はブルーメタリックに白いラインが入っていて、このデザインはそのままに、色を先日紹介した色見本のフロントフェンダーと同じ配色にすると言う内容です。

一応イメージし易いよう、色の見本にしているフロントフェンダーも紹介しますね。

ベースカラーをマルーン系のメタリックに、ストライプラインはゴールドに塗装します。

 現状の白いラインはフリーハンドでのピンストライプとなっていて、途中でライン太さや位置が結構バラバラになっています。

 今回は「フチから3~4ミリ」、「ラインの太さは2ミリ」とご指定を承っておりますので、カウルのエッジ部分の丸みが終わった辺りを起点とし、それに沿って3ミリ幅のラインテープを貼っていきます。真横から見た場合だとカウルのフチからは3.5ミリくらいの位置になっていると思います。

 今度はそれに沿って2ミリ幅のラインテープを貼っていきます。既存の白いラインとは大きく外れますが、そこは気にしなくて大丈夫です。ちなみにこの作業は検証(練習)であって、本番のマスキングではありませんので念の為。

さらにその外側に再び3ミリのラインテープを貼って、真ん中の2ミリ幅のラインテープを剥がすと、エッジに沿った「ほぼ2ミリ幅のライン」のマスキングが出来上がるという寸法です。

工程としては、この後全体を足付け処理し、まずベースカラーとなるマルーン系メタリックを裏表全面に塗り、テープフリーな状態になったらこのラインテープでのマスキングを行い、周りも全て覆ってゴールドを塗装、全てマスキングを剥がしてクリアーを塗って本塗り完了!と言う予定です。

ちなみに塗装だけであれば現場作業は4時間程度ですが、今回のようにライン入れを行うとその3倍以上の時間が掛かってしまう為に費用も倍以上の金額となってしまいます。

今回も当店で塗るのは本体色だけで、ピンストライプについてはそれ専門のショップさんにお願いされればと進言させて頂いたのですが、こういった事もご理解の上で今回当店へご依頼頂いております。全てのご依頼がそうですが、ご希望に沿えるよう尽力したいと思います。

それでは作業進行しましたらまた紹介させて頂きますね。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

BMWアッパーカウル 調色作業

大変お待たせしておりました。BMWのアッパーカウルは作業着手しておりますのでご安心下さいませ。

アッパーカウルは新品ですが、色が車体色と違う為、今回はこちらのフロントフェンダーを一緒にお借りしてこちらの色を基に調色作業を行います。

まずは色がちゃんと見えるよう表面を磨きます。

表面がくすんでいたので良く判りませんでしたが、かなり粗いメタリックが使われているようです。

また粒子自体がゴールドっぽく見えているので、着色メタリック(ゴールド)か、もしくはパールが使われているのかとも思いましたが、恐らくこれは透明度の高いマルーン系原色が使われているからだろうと予測して、取り敢えずそれらは使わない事にしました。ちなみにですが今回の塗色は配合データが存在しません。

メタリックの粒子を選ぶ際にはこういった原色色見本帳を使います。

取り敢えず一番粗いMIX598を使ってみます。

尚、色を見る時には専用の調色ライトを使います。

最初に使った原色の一部は要らなかったようで、途中で一度色を作り直し、また最終的にはメタリックの粒子感(サイズ)を少し抑えたかった為、二段階したのメタリックMIX811を使いました。MIX593では無くMIX812でも無くMIX811だった理由としては、MIX593に特徴が似ているからで、色の変化を大きく崩したくなかったからです(メタリック原色はサイズだけでは無く粒子の形などそれぞれ特徴があります)。

終わってみたら使った原色は少なく5色のみでした。左の原色MIX822はマルーン寄りの茶色で、透明度が高いのが特徴です(故に隠ぺい力は悪いです)。

ちなみ先ほど色を見た方向が「正面」で、こちらが「スカシ」となります。通常は白またはメタリックアディティブ(MIX008)を入れてスカシを調整しますが、今回はそれも必要ありませんでした。

ちなみに白はスカシの粒子感を濁らせたい時に使い、メタリックアディティブ(DUPONTだと4530S)は白くはさせたいけどメタリックのキラキラ感を残したい場合に使います。ただし後者は正面が黒くなると言う特徴もある為、そのバランスも考える必要があります。

また色の見方は調色ライトだけでは無く、自然光の下や他の人工照明など、それぞれ違う環境下でも確認する必要があります。

そしてストライプラインのゴールドです。こちらは「調色」と言うよりかは色の作成といった感じですかね。「似たような色」と言う事で余り作業時間は掛けません。

メタリック粒子は先ほどとは真逆に、一番細かいMIX595を使います。正面の輝きも鈍く、また刷毛目も出難いといった特徴がある為、今回のピンストライプに採用されたのでは、と言う予測も立てています。

先ほどの色だと色味(色相分と彩度)が強かった為、シルバーと黒を足して彩度を落としました。また正面を少し明るくしたかったので、メタリック原色は二つ上の物(MIX590)を足しています。

序でなので実際に色板にスプレーしてみて確認も行っています。スティックで塗った場合だとメタリック粒子は倒れたままなので色は濃く(暗く)見えがちで、スプレーで塗るとメタリック粒子は立つ為に正面が明るく色相・彩度は低くなります。またベースコートはウェットな状態と表面が乾いた状態では色の濃さが大きく変わる為、スティックで色を見る場合はその辺の特徴も踏まえておく必要があります。それぞれビックリするくらい色は変化しますので。

使った原色はこんな感じで、あと画像に写っていませんが黒も使っています。

塗装の調色で難しい事は、一つの原色を入れた場合全体のバランスも崩れるという事で、単に「黄色味が欲しい」といって黄色を入れると全体の明度も上がってしまう為、その分「黒」を入れたり「茶」も入れたりと、色々考えなければなりません。

以前の自動車の塗装をしていた頃のプロフィットで、バンパーを交換して塗装した際にそのオーナー様から「フェンダーと色が違う」と言われた事がありまして、勿論調色作業は行ったのですが、そちらのオーナー様は美術の先生をされている方でしたので色を見る目には非常に厳しく、それであれば「両フェンダーへのベースコート暈し」をお勧めしたのですが、「いや、後微妙に青味が欲しいだけだから」と言う事でバンパーを塗り直す事にしました。

が、私的にその色は難しい事も判っていましたし、彩度調色を行っても良い方向に行くか判らないと申しまして、その結果「一緒に調色を行う」(!)と言う事になりました。勿論通常はお受付もしていません。どうしてもご納得されなかった事と、私的にも是非納得して頂きたいという事で、確か夜の9時からスタートして3時くらいまでやったと思います。

結果としては最初よりはよくなったのですがやはり色は違っていて、ただしその先生も「青くしたくも単に青を入れれば良い訳では無いんですね」とご納得して頂けました。

しかし塗装屋さんなら判ると思いますが、一度入れた色は元に戻せなくても一般の方は「やっぱりさっきの状態に戻したい」と言われますので、最初に作った色からは少しずつ色を残すようにして、延々枝分かれして塗料が増えていくような事となりました。またそれぞれの色には説明書きも加え、最終的に現場はこの世の物とは思えないような光景になりました(笑)。仕事としてはあり得ない(やってはいけない)ような事ですが、今となっては良い思い出です。

と言う訳で色は出来ましたので、次はストライプラインの検証を行いたいと思います。念の為2ミリと3ミリのラインテープを追加で発注しておきました(結構沢山使うかも知れなく途中で切れたら大変な事になりますので…)。

どうぞもう少々お待ちくださいませ!