RB26→RB27タイミングベルトカバー下準備

先日お預かりしておりましたBNR34純正の樹脂製タイミングベルトカバーです。「6」の部分を「7」に変更し、青黒い結晶塗装で承っております案件となります。

予め作成しておいた「7」のデータを使い、レーザー加工機でアクリル板をカットします。

ちなみに元々ある凸文字は、それぞれかなり高さが違っています。恐らくは車体にエンジンが詰まれた際時に、この文字が正面を向くようになっているのだと思います。

最も高いのが左端の「R」で、

今回加工する右端の「6」の部分が最も低くなっています。既に切った物を右端に置いていて、これにより使う今回使うアクリル板は厚さ2mmで丁度良さそうなのが判ります(接着後に削って高さを合わせます)。

レーザー加工機でのカットは、刃で切るカッティングプロッターと違い、切断した箇所が溶解&蒸発してその分目減りしてしまう為、それを見越して4種類の太さのサイズをカットしておきました。

その中から丁度良さそうなのを選びます。「6」に比べると少し大きいですが、この後周りをテーパー状に削って調整するので問題ありません。

先に7の制作を行おうと思っていましたが、既存の「6」があるとやり難いので、

先にこちらを除去する事にしました。まずは#120シングルサンダー(3Mロロック)で粗削りします。

そういえばと途中で気づき、裏側にアルミ板を貼る部分の足付け処理の為にサンドブラストを行っておく事にしました。

既に表からある程度削っていたので、サンドブラストを行った部分は穴が開きました。もちろん想定していたので問題ありません。

アルミ板を切り出し、当てる部分の形状に合わせて曲げ、接着する箇所にはダブルアクションサンダーで研磨~足付け処理を行います。

よく脱脂清掃し、タイミングベルトカバー側にはプラスチックプライマーを塗布して、十分に乾かしたら構造用エポキシ接着剤=3Mオフホワイトを塗布します。

その後60℃30分程の熱を掛けて硬化させ、表側に貼ったマスキングテープを剥がし、シリコンオフで糊をしっかり除去します。

とここで、接着剤を充填した中に気泡が残っていたのが見えたので、

表面と周りをカッターで切り出し、

再びエポキシ接着剤を練って巣穴に埋め込んでおきました。これが雇われの身だったら見て見ぬ振りをするか、手っ取り早くポリパテを詰めたりしていたかも知れませんが、一人でやっている分には誰にも文句が言われないのでやりたいように出来るのが良いですね。

レーザーでカットした「7」のフチをテーパー状に削ります。射出成型品は金型から外れ易いよう、真っすぐに見えても実際には真っすぐではない場合が殆どなんですよね(それ故に真っ直ぐにデザインされた無印良品の製品に多くの方が惹かれるのだと思います)。

「RB2」の横に並べて違和感が無ければ完成です。ただ今回はこれをそのままは使わず、これを基にシリコーン型を作成し、レジンを流し込んで複製した物を使うようにします。なので多少サイズが小さくなる事を考慮してこの時点ではほんの気持ち大きめにしてあります(後でレジンを削ればよいので)。

尚、こちらの日記では、ある程度作業が進んでから内容を纏めて紹介していますが(どれも一日で出来ている事ではありません)、当Twitterアカウントでは単発で紹介していたりしますので、こちらの方がリアルタイムでの進捗状況は判り易いかも知れません。

その後はタイミングベルトカバー本体を、いつものように脱脂用に使う溶剤=シリコンオフを使って清掃したのですが、なんと下地に使われているプライマーが溶ける事に気づきました!通常そんな事はあり得ないのですが、時々こういう物が見られたりするのも塗装の難しい所で、トヨタの内製工場に勤めている知り合いは、ヴィッツ外装の塗膜がシリコンオフで溶けたと嘆いていました。何台かに一台かの割合で新しい塗料を使った暴露テスト等を行っているのかも知れません。

今回は結晶塗装なのでそこまでナイーブになる必要は無いのですが(結晶塗装の塗料は下地を侵し難い塗料です)、この後の「7」を貼り付ける工程で不具合が出るのが嫌だったので、一旦全体に何かしらの下塗り(ノンストップフィラー=ノンサンディングサーフェサーまたはクリアーまたは2Kエナメルの1コートソリッド)を行う事にしました。

ちなみに通常の塗膜はベースコート→クリアーコートとなっているのが一般的ですが、こちらの製品はプライマー(サーフェサー)の上に塗られている塗膜が赤パール(メタリック)とクリアーを混ぜたような塗装なので、研磨するとその研ぎ汁で現場はちょっとしたホラーみたいな感じになっています。

ペーパーが入り難い箇所は、ウォッシュコンパウンドとナイロンブラシを使って足付け処理を行います。

その後よく清掃し、脱脂を行います。ここでいつものようにシリコンオフ=ノルマルヘキサン系の溶剤を使うと再び露出したプライマー層が溶けてしまうので、さらに溶解力の弱いIPA=イソプロピルアルコールを使います。油系の脱脂には威力が弱いのですが、既にウォッシュコンパウンドで油分の洗浄も行われているので今回は問題ありません。

その後プラスチック素地が露出した箇所にはプライマーを塗っておきます。

そして下塗りとしてクリアーを塗りました。前記したようにここでは他の方法もありましたが、丁度他のご依頼品、具体的にはブレンボキャリパー一式の本塗りを行っていたので、そちらと一緒に塗らせてもらう事にしました。

見た目はちょっとアレですが、要はこの後の作業で既存のプライマー層を露出しないようにすれば良いので問題ありません。

この後は熱を入れて完全硬化させ、次はいよいよ「7」の接着作業を行います。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

RB26→RB27加工 エンジンパーツ塗装承ってます

先日到着しておりました日産BNR34純正のヘッドカバーと、プラグカバー2点、そして樹脂製のタイミングベルトカバーです。この度のご依頼、誠に有難う御座います!

ヘッドカバーは新品ですが、

少し前に施工したRB26改RB30タイミングベルトカバーと同様、元々塗ってある塗装はザラザラとしていて、その際は下地の状態(アルミの素地調整)が良くありませんでしたから、今回もこちらは一旦剥がしてプライマーの塗装からやり直そうと思います。

プラグカバーは一枚は新品ですが、

やはりアルミの素地調整が悪く、また腐食を止める為の防錆塗料(プライマー)も塗られていないと経年でこうなってしまう事が予想される為、一旦剥がしてから塗り直す事にします。既に腐食が出ているこちらのプラグカバーは、一旦こうなってしまうとサンディング(サンダーや手作業によるペーパー掛け)だけでは腐蝕は取り除けませんので、サンドブラストも行う予定です。

尚、ご希望の塗装は結晶塗装で、以前施工したNAロードスターヘッドカバーの色味がそれに近いとの事ですので、それを参考に色を作成するようにします。そちらの画像も紹介します。

この時はマツダ「ブルーブラック」(カラーコード:HQ)を参考にして、結晶塗装の黒に青を混ぜて色を作成しています。

タイミングベルトカバーは樹脂製(PP=ポリプロピレン)で、これに関しては変形の恐れがあるので硬化時に熱を掛ける結晶塗装は今までお受付をしておりませんでしたが、その後私物のバイク用パーツや、PMMA=アクリル樹脂で色々と試してみて大丈夫な方法を見つけましたので、今回初めてお受付する次第となりました。

また今回はこちらのRB26の「6」を「7」への変更で承っております。いつものアルミパーツで行っているような面研はせず、塗装したそのままとします(削ったところで黒い樹脂が出るだけですのでこの場合は塗ったそのままが間違い無いかと思います)。

ちなみに「8」に関しては何度か施工事例がありますのでそちらを紹介します。

BNR32 Timing Belt Cover RB26→RB28

こちらは「26」を「30」に変更しました。

NISSAN BNR32 RB26→RB30

今回の「7」は初めてとなりますので、まずはそれのデータ作成からとなります。

またいつものアルミ製のタイミングベルトカバーとはフォント自体も違うので、そこからの制作となります。

 

既存の凸文字にマスキングテープを貼り、それを石刷りの要領で輪郭を描き、スキャナーを使ってPCに読み込み、デザイン作成用のソフト(Illustrator)を使ってデータを作成します。まずは「RB26」に似たようなフォントを探す作業からとなります。

元々PCに入っていたフォントでは良さそうな物が無かったので、フォント集から一つ一つ選び、似たような物をインストールします。ポルシェのフォントなんてあったんですね!

色々と探し続けた結果、こちらの「Aggie」なるフォントが似て居そうなのが判りました。

それをインストールして既存のフォントと合わせ、

そこから「7」を導きだし、既存のフォントの太さ、サイズに合わせて各部を修正します。

その後は印刷→修正を繰り返し、

とりあえずはこちらのデータを基本として使う事にしました。

「2」に比べると少し大きいのは「テーパー状の底」の部分にサイズを合わせている事と、この後レーザーカットで原型の元となる物を作成する時にさらにサイズが小さくなる事を想定しています。

尚、今回はアルミでの制作では無いのでまずはPMMA=アクリル樹脂で原型を作成し、そこからシリコーン型を作ってエポキシ樹脂(レジン)で作成してそれを貼り付ける作戦としています。

参考までに以前施工した似たような案件を紹介しますね。

こちらは以前「RS」のサイズとデザインに似せて「CS」のエンブレムを作成し、艶消し黒の塗装を施した案件となります。

この時は成型した原型をそのまま塗装した内容ですが、今回はPMMAよりはエポキシ樹脂の方が耐熱性がある事、また今後同じような内容でのご依頼があるかも知れないのを想定し、複製を作って使う事を想定しています。

またこの時はMDF材を使って原型を作成し、それを基にシリコーン型を作成して複製した物に塗装を施しました。コスト的に許されるならちゃんと蒸着メッキを施して完成度を上げたかった案件ですね。

尚今回の樹脂製タイミングベルトカバーは、

凸文字の所が中空になっているので、それを削り落とすと穴が開いてしまいますから、裏側から補強として薄いアルミ板か何かを接着しておく予定です。以前施工したロータスの樹脂製エンジンカバーに、鋳造して作成した凸文字を取り付ける際に行った時と同じような方法ですね。

自動車車体の補修塗装を行っていた時にはどれもやった事の無い内容ですが、その後小物の塗装専門となり、さらに趣味で始めた様な事が仕事に繋がっているのが楽しいです。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!