BMWパニアケース 下準備

bmw93下準備と言うよりは本番前の予行練習です。実際にはまずベースカラーを塗ってからその上にマスキングをしますからこの時点でマスキングするのはおかしいですので・・・。

実際にマスキングの作業をするのは工場二階のこの場所で、当初はどうにかして廃棄して貰いたかった昔ながらの事務机で行います。キャスターを付けて自由に動くようにしたら使い勝手が良く、古くてデザインも微妙ではありますが物自体は堅強に出来ていますから実は気に入っていたりします。何より天板が平滑でスベスベだったのが今回の作業に適していました。

bmw68今回の御依頼としては元々ザラザラの梨地だったパニアケースをこのタンクと同じ様なデザインで左右に分割させるという内容になっています。単純そうではありますがラインを綺麗に且つ左右対照にするには結構骨が折れるんですよ。と言うか実際の作業を想像するとみるみる気分が悪くなっていきまして・・・(プレッシャーが高くてです)。

bmw94と言う事で今回思いついたのがこのトースカン改水平マスキング台です。改造費は¥200くらいですが実に画期的な物になりました。

使い方としては大体の高さに合わせてマスキングケースを水平にし、それを固定しているネジを微調整して貼りたい位置にセットします。当たり前過ぎますが、一旦位置を固定すれば左右の部品で同じ位置に使えますからシンメトリーなラインを描ける訳です。ただし思わぬ落とし穴がありましたが・・・(まあいつもの事です)。

画像に写っているマスキングテープは今回の為に取り寄せた0.7ミリの物で、ただ長期在庫品かそもそもがそうなのか判りませんが糊残りがひどいです。昔から売っているプラモデル用の白いマスキングテープもひどいですが(私的経験なだけで今は改善されているかもです)、自動車塗装用のマスキングテープでそんな事が起きたら箱ごと返品して貰えて当然なくらいの問題です。そもそもまだ何も塗っていないこの時点で糊が残ってしまうという事は、本番で溶剤が付くとさらに大変な事になりますので・・・。うーん、ちょっと(と言うかかなり)参りました・・・。

bmw96ただ幸いだったがいつも使っている2ミリのラインテープが予想以上に上手くいった事で、テーパー状に傾斜した面も綺麗に馴染んでくれました。上の画像で3週目ですがズレも無くピタリと同じ位置に貼り重ねていきます。凄い事なんですよ、これは。

bmw972ミリのラインテープが三枚重なった状態です。見た目では寸分の狂いも無く貼れています。これなら本番も安心ですね(練習だけで相当のマスキングテープを使いましたが・・・)。

bmw95ちなみに四角くカットした緑色のマスキングシートは定規の代わりみたいな物です。こういった作業でわざわざメジャーを使って測るなんて事はしませんので(精度的に無意味です)、予め既定のサイズ(今回は40mm)にカットした物を予め貼ったり後から貼ったりして貼り位置の確認にします。大工さんが同じ建具を造る時にまず最初にそれ専用の定規を造るのと同じですね。目盛り読むよりそのサイズにカットした方が早く確実に読めるんですよ(と何かの漫画で読んだ技を盗ませて頂いた訳です)。

と言う事で実は先程本塗りも終えております。昨日この練習を終え夜の内にセッティングをしておき、本日朝から本塗りに挑んでいましたが中々想定通りには行かずかなり時間をオーバーしてしまいました。

時間が掛かったのはライン塗装後の修正で、今回は白を先に塗るか後にするかで結構悩んでいたのですが、結果的に面倒で時間の掛かる「白は後から」にしたのです。直前まで(昨日まで)白を先に塗る予定だったのですが何か嫌な予感(と言うか上手く行かないイメージ)がして、結局いつも通り「ライン入れは後から」と言う選択となりました。色的には隠蔽性の強さからして白を先に塗るのがセオリーなんですけどね。まあお陰で無事綺麗に出来たと思いますのでそちらは御安心下さい。後ほど(または後日)紹介致します。

BMWパニアケース 下準備

bmw89 こちらもお待たせしました。BMWのパニアケース蓋も作業進行しておりますので御安心下さいませ。

上の画像はサフェーサーを塗った後に全体に缶スプレーの黒をパラっと塗った状態で、これによりサフェーサーの研ぎ忘れなどを防止します。所謂「ガイドコート」ですね。

bmw90 サフェ研ぎはちょっと前までは水研ぎのみだったのですが、近年は細かい番手の空研ぎペーパーが使い易くなってのでこれが主流となっています。昔のペーパーは切れが悪いのに耐久性が低く、目詰まりもひどかったのでサフェーサーの研ぎと言えば耐水ペーパーによる水研ぎが常識だったのです。近年は石(=研磨粒子の事を業界だとこう呼びます)が良くなかったのか目詰まりも少なくペーパー傷の入り方も均一なので水研ぎよりも良い品質に仕上げられたりするのです。

最初に#320で肌を落としその後クッションパッドを挟んで#400で仕上げます。パッドを付けるのはアール曲面を研ぐ為ですね。固い面で研ぐと下地が出るかまたはカクカクした仕上がりになってしまいますので。

ちなみに空研ぎのデメリットとしては「粉塵が凄い」と言う事で(周りはあっという間に粉だらけになります)、ただこれは掃除機を繋いで吸引しながら作業出来る専用のダブルアクションサンダーもあるのでそういった事で軽減は出来ます。ただうちの場合は塗装ブースの排気装置が水洗式なのでここに直接吸って貰って後で一気に回収する方法を取ってます。これが本当に楽で便利なのです。

bmw91そして最後は#800で全体を均します。空研ぎペーパーで#800と言うのもあるのですが、やはり気分的にと言うか最後は直接被塗面に触れて確認したいと言うのもあるのです。まあコスト的な要因もありますけどね(笑)。空研ぎペーパーは凄く高いんですよ(#800だと同じサイズで10倍以上になるのでは無いでしょうか)。

ちなみに工場の外にはこんな感じでちょっとした流し場と水研ぎも出来るスペースがあります。と言うかそもそも一階の工場の中には流しが無く、それだとちょっと困るので流し台と上下水道を引き込んで中でも水が使えるようにしました。理想としてはトイレもあると助かるんですけどね・・・(さすがに止めておきましょう)。

bmw92そしてフチ周りも綺麗に整え、裏のマスキングもしっかりとやり直してサフェ研ぎ完了です。次はいよいよラインマスキングの予行練習ですね。と言うかそちらも既に終わっているのですが、ちょっと画像が多いのでこちらは後ほど改めて紹介します。トースカン(改)の実力は凄かったですよ・・・(惚)。

BMWパニアケース蓋 素地調整

bmw86 こちらもお待たせしました。遂に本格的に作業着手しています。まずは深く入った傷部の修理ですね。

出来るならばパテは使わず「削り落とす」事が理想なのですが(余計なトラブルが減りますので)、何個かは結構深めの傷が残ったのでこれ以上削っても意味がありませんからそこだけパテで処理する事にします。勿論パテを塗る前には「足付け」「脱脂」「プラスチックプライマー塗布」は必須です。

bmw87パニアケースは元々の素地がザラザラとした梨地なので、ボディ同様のツルツルにするにはそれを平滑にしなければなりません。梨地は#120→#180のダブルアクションサンダーで削り、#240で全体を均します。最後にフチの裏側は#320のペーパー(と言うか足付け専用の副資材)で足付け処理をしておきます。傷が付いていないところにサフェーサーが付くと最初は良いですが後でペリペリと剥がれてくるので、実際には必要が無いにしても大き目の範囲に足を付けておくのは必須です。

bmw88全体をよく脱脂清掃したらプラスチックプライマーを塗ってサフェーサーを塗布します。かなり艶が出ていますがサフェーサーも肌を荒らしてしまうと後で研ぐのが大変なのでウェットコートに塗っておくのは普通です。またこの後の研ぎでもかなり力強く研ぎますからこの時点でしっかり膜厚を付けておかないとなりませんので。

ちなみにサフェーサーの役割としては「密着性をよくする為」と言われたりしていますが塗装屋的にはそんな風に考えた事はありません(多分これが普通です)。密着性を確保するのは「プライマー」の役目でして、サフェーサーは膜厚の充填がその役割となります。プライマーは基本的に薄膜ですからそれを研ぐ事は出来なく、その上にこのサフェーサーを塗って膜厚を稼ぎ、後にこれをしっかり研いでラインを整えるのです。ちなみにラッカーサフェーサーでの厚塗りは駄目ですよ・・・(2液ウレタンサフェーサーでの話です)。

と言う事で何とかここまでたどり着きましたので、完全硬化して寝かしている間にライン入れのマスキングを色々テストしてみたいと思います。本塗りはまだ先ですがまた進行しましたら紹介させて頂きますね。もう少々お待ち下さいませ・・・!

BMWパニアケース蓋 下準備

bmw85こちらもお待たせしております。裏側のマスキングだけですがとりあえず作業着手しましたので御安心下さいませ。

ちょっと昨日から業者さんの仕事で時間が掛かってしまっておりまして、こちらで紹介している案件は余り進行しておりません。ただようやくそちらも先が見えましたので明日からは色々進行出来る出来ると思います。

当店で行っている仕事の殆どは個人の方からの御依頼なのですが(9割以上になるかと思います)、時々業者さん(と言うか企業様ですか)から単発的に御依頼がやって来たりして、それが結構大きなプロジェクトだとどうしても時間を拘束されてしまいます。まあこういった仕事が無いと経営的には成立ちませんのでこれも含めての小物塗装ではあるんですけどね。

しかし考えていたよりも結構面倒で、12セットの内の4セットだけでかなりの体力を奪われました。とりあえず急ぎの物は終わったので後はまた後日に行う予定です。

BMWパニアケース ライン入れ準備

toskan5 現在お預かりしておりますBMWのパニアケースに入れるラインのマスキング方法についてちょっと進展があったので紹介させて頂きます。

上の画像が装着時の状態で、通常はこの蓋の部分を「ボディ同色」にするのですが、今回はこれにさらに白いストライプラインを二本ずつ入れるよう承ってます。

toskan6そのラインがこちらで、タンクにはラインは3本ですがこれを左右に分断させたような形で左右それぞれに2本ずつ、計4本のラインを入れるのです。

平面であればそんなに意気込んでやるような作業でも無いのですが、最初の画像にあるようにパニアケースはあんな形状なので、それを左右対称になんてそんな事がとても人の手で出来るなんて到底思えなかったんですよ・・・。

toskan1と言う事で考えついたのがレーザー墨出し器です(何故か笑)。これなら一発で水平が出せますからどんな形の物でも大丈夫でしょう!と思ったのですが実際はそんなに甘くありませんでした。

toskan2そもそもレーザー墨出し器はそれ自体がどんな状況でも地面(と言うか地球)に対して水平線を出してくれる訳で、そうなると被塗物であるカバーも完全に縦横の水平を出さなければいけません。これがズレとむしろ水平な線が引けないのです。その為のセッティングの方が余程大変ですよね・・・。

しかもこのレーザー線、ちょっと太過ぎるんですよ(苦)。輪郭も滲んだような感じで、これではマスキングテープを貼る目安には不向きなんですよね。今まで余り気にしませんでしが、私的な理想としてはもっとこう髪の毛のような細さをイメージしていましたので・・・。

toskan3と言う事で今回用意したのが先日もちょっと名前だけは紹介した「トースカン」です。造形美術などを行う方には馴染みの道具で、左右の形を揃える場合に使います。今回は鉛筆が固定出来る物を買いました。これであれば同じテーブル上に被塗物(パニアケースの蓋)を置いてそれを中心にしてこれをスライドさせていけば水平線が描ける、と言う事です。原始的ですがこっちの方が余程水平なラインを描き易いですよね。

toskan今回はそれにさらに一工夫加え、トースカンに直接ラインテープ(2mm)を固定してみました。工夫といっても鉛筆と同径の全ネジをカットし、それをワッシャーとボルトでタミヤのマスキングテープケースに固定しただけですけどね。これなら直接ラインテープを水平に貼る事が出来るのでは?なんて事を年末年始の休み中色々考えてました。ただテープを貼る被塗面は多少傾斜していますからそれによってテープを貼る時にズレが生じてしまう可能性もあるのでこれが本当に上手くいくかどうかはまだ判りません。まあそれも想定して先ほどもっと細いマスキングテープ(0.4mm~1.0mm)も手配済みなんですけどね。とにかく失敗しそうな事は先回りして消去しておきます。

toskan4面白いのがこれの土台に彫ってあるこの言葉「平常心」。ああなるほど、良く判っていらっしゃるようで(笑)。確かにこれを失うのが一番の失敗なんですよね。判ってはいます。判ってはいるのですが・・・(苦)。