アテンザフロントグリル 本塗り(2日目)

atenza22 初日に下準備を行い、2日目からいよいよ本塗り開始です。準備したガンはベースクリアーとマツダのジェットブラック(41W)、そしてフィンの部分に塗るグレーメタリックのホンダ「ポリッシュドメタルM」(カラーコードNH-737M)です。

この時点で塗るジェットブラックは少量なので口径0.6ミリの小さいガンを用意していますが、後日行った本塗りでは1.3ミリを使っています。口径が小さいガンで広範囲を塗ると肌が荒れるので、スプレーガンはそれ一丁でオールマイティーと言う訳ではないんですよ。今回は5種類使っています。

atenza23 まずは全体にベースクリアーを塗布します。これは色の着いていないベースコートといった感じで、この後に塗る塗料やミストがよく馴染む為の物です。やらなくても構わないのですが、やった方が見切りのラインが美しく仕上がると思うのでそうしています。商品名で言うとSTANDOXはベースコートカラレス、DUPONTだとXB165をシンナーで希釈した物ですかね。各塗料メーカーで必ずある筈です。

その後柱の部分をジェットブラックで塗ります。ここでは口径0.6の低圧ガンを使っていて、例えば0.3mmくらいのエアーブラシでも塗れない事はありませんが、それだと塗料が微粒子化し過ぎて肌が荒れてしまい、密着不良や後の艶引けの原因になるので、こういったケースでそこまで小さい口径のガンは普通使いません。

atenza24 その後しっかり乾燥させマスキングします。比較的簡単な部分ですがしっかりプレスラインの谷の真ん中に貼りたいのでテープは6mm幅のを使い、6枚~8枚に別けて貼っています。

atenza25 その後フィンの部分にグレーメタリックを塗布します。

今回はこの順番を色々と考えたのですが、私的に思う一番仕上がりが良くなる仕様にしています。フロントグリルの塗装にここまで時間を掛けたのはちょっと問題かと思いましたが、これを塗り直しとなると相当大変な事になりそうなので時間を掛けてでも一度で終わらせようと考えています。

atenza26 フロントグリル上段に着くグリルフィンも同じくグレーメタリックで塗布します。

atenza27 その後さらによく乾燥させたら見切りのラインをマスキングしていきます。使ったのは2ミリ幅のラインテープで、これは通常の和紙タイプのマスキングテープとは違い素材がPP(ポリプロプレン)なので塗料がくっ付かず、その性質によって見切りのラインが美しく仕上がると言う優れものです。ただし厚みがあってコシが強いので少し使い難い点もあり、また塗り方を間違えると(厚塗りすると)余計に汚くなる場合もあります。

この辺はケースバイケースで、私的にはこの厚みを使って塗膜の段差にグラデーションが掛けられるので気に入っています(と言っても数マイクロメートルの世界ですが)。

atenza28 上から2番目、三番目のフィンに関しては内側部分で5ミリの隙間を残すようご指定頂いています。最上段に着くフィンと合わせる為ですね。

こういった場合は定規などでは測らず、今回は5ミリ幅のマスキングテープ(伸びるタイプのボディコンテープ)をガイドとして貼り、そのフチに沿ってラインテープをマスキングします。今回は丁度良いサイズがありましたが、無ければカッティングプロッターで自作します。以前別件でご依頼頂いたBMWの内装ボリュームツマミの塗り分けみたいな感じですね。

atenza292日目の作業はここで終了です。本当は全部マスキングしておけば次の日の本塗りが楽になりますが、マスキングテープを長時間貼ったままにするとそれの糊が下に塗った塗膜を侵してしまい(と言うレベルでも無いのですが)、この後の塗装に悪影響を出してしまうので、本マスキングは本塗り当日に行うのが基本となっています。

昔はこのまま一気に作業して塗り終わるまで帰らない!なんて事をしていましたが、さすがにもう体力的に無理ですし、そもそも今の工場は住宅街の中にあるのでそういう事は出来ないのです。むしろその辺でブレーキが掛かって丁度良いんですけどね。

と言う事で3日目に続きます。

アテンザフロントグリル 下準備(1日目)

atenza15こちらは先日下塗りを終えた時の画像で、その後熱を掛け、さらに一週間程度寝かしておきました。今週始めから作業を着手しておりまして、ようやく先ほど本塗りを終えたところです。今回は3日間掛かったのでそれぞれ別けて紹介しますね。

atenza16 先ほどの画像だと塗ったばかりなので艶がありますが、梨地だった箇所はこのように艶が消えた状態です。またペーパーが強く当たった箇所は摩擦熱で毛羽立ってゴミが付着したような状態になっていますので、まずは全体に#800のペーパーで水研ぎを行います。

atenza17 その後全体の足付けにはスコッチ(繊維に研磨粒子を塗着させた副資材)とウォッシュコンパウンドを使い、さらにナイロンブラシで細部にも足を付けていきます。

atenza18 さらに細かい所は布状の研磨副資材(アシレックス)を使い足付け処理を行います。下塗りの前に使ったのは#800相当のイエローの物でしたが、ここでは#1500相当のオレンジの物を使っています。

atenza19 その後全体を洗い流してよく乾燥させ、指定箇所にマスキングを行いました。

atenza20 全体に細かい傷が付いて艶消しのような状態になっています。この後の上塗り塗料を密着させる為ですね。ここをしっかりやっておくとガムテープを貼って剥がしてを繰り返しても剥がれない様な塗膜になり、結果として飛び石にも強い塗膜になる訳です。

atenza21フィンの上部に着くモールも同じように足付けしておき、指定箇所をマスキングしておきます。

ブース内は床と浄化槽を掃除しておき、ここで一日目が完了です。この後二日目に続きますね。

マツダアテンザフロントグリル 下塗り

atenza6 大変お待たせしました!マツダアテンザの純正フロントグリルも作業着手しておりますのでご安心下さいませ。

ご依頼内容は2トーンカラーでの艶有り仕上げで、ただ新品部品は素地がザラザラとした梨地なので、まずは一旦これを平滑な下地にしなければなりません。

ただしこれ全てをいつものように「研磨→プライマー塗布→サフェーサー塗布→完全硬化→研磨」といった工程をやるとそれだけで大変な時間と費用になってしまいますので、今回は「2度塗り」といった方法で対応するようにします。ちなみに梨地の目が粗い場合はこれでは対応が出来ませんので御理解下さいませ。(むしろデロデロと汚い仕上がりになってしまいます)。

atenza7 まずは全体の足付け処理ですが、形がここまでイビツだとそれだけでもかなりの手間が掛かりますし、サフェーサーでは無く通常の上塗り塗料(STANDOX 2Kエナメル)を下地として使うので余り粗いペーパーは使えないと言う縛りもあります。

なので今回は空研ぎでは無く水研ぎをメインに色々やってみる事にしました。

atenza8 まずは全体的にスコッチとウォッシュコンパウンド(先ほどのハジキシラズ)で脱脂&足付け処理を行います。素材はPP(ポリプロピレン)なので、この場合粗いペーパーや研磨時の摩擦熱で傷が毛羽立ちますから今回はそれに気をつけての水研ぎとしています。

atenza9 その後、スコッチが当たら無い箇所に、布状の研磨材(アシレックス)をヘラに巻いて足を付けていきます。アシレックスは水研ぎだと目詰まりがし難く、またペーパーのように破れたり角が立ったりしないので非常に便利です。

atenza11 ナイロンブラシとウォッシュコンパウンドのお陰で、ペーパーでは入りきらないような細かい凸凹部分も綺麗に足が付きました。これだけ見ても何の事だか判らないと思いますが、塗装屋さんならこの凄さが判りますよね。

atenza12 そしてさらに物理的に足が付きにくかった箇所(穴の断面部分など)にもと言うことで、最後は専用のバーナーを使って火炎処理を行っておきます。樹脂の表面を炎で溶かしつつ、ガス中に入った成分(多分ガラス珪素系)が被塗面に形成され、この後に塗るプラスチックプライマーの密着性を向上してくれます。

atenza10そして指定の箇所(モールが装着される箇所の穴)をマスキングしてようやく下塗りの準備完了です。もう今回はフルコースみたいな感じで、これが雇われだったら多分クビになっていますよ(笑。たかだか足付け処理に時間を掛け過ぎてます)。

atenza13 下塗りといっても本塗りと変わりありませんのでブース内もこんな感じです。

atenza14 あれだけ下地処理を行っていてもプラスチックプライマーが塗られていなければ簡単に剥がれてしまうのがPPと言う樹脂ですから、プライマーは四方八方、裏からもしっかりスプレーしています。

atenza15塗っているのは通常1コートソリッドとして使用する上塗り塗料で、一応次に塗るグレーシルバーの隠蔽が良いように同じ程度の明度にしておきました(白と黒を混ぜているという事です)。

ちなみに塗った直後は画像のように艶がありますが、素地は細かくてもザラザラと梨地なので、完全硬化すると艶が消えたような仕上がりになります。さすがにこれを磨きで艶を出すと言うのは現実的では無いですから、下地の段階でその凸凹を平滑にしておく必要がある、と言う事ですね。何にしても重要なのは下地です。

この後熱を掛けて完全硬化させ、ただしチヂレが怖いのでさらに一週間以上寝かしてからの本塗りとなります。その前にまたこれを全部足付け処理しなければならないんですけどね(苦)。

どうぞもう少々お待ち下さいませ!

マツダアテンザフロントグリル塗装承ってます

atenza4 先日到着しておりましたマツダアテンザのフロントグリルとグリルフィン一式です。この度のご依頼、誠に有難う御座います!

このグリルは今までも何度か施工させて頂いているのですが、今回は2トーンカラーで、塗り分けも少々複雑なのでそちらの内容も含めて紹介させて頂きますね。

atenza5 フロントグリルのベースカラーは今まで通りマツダ純正色のジェットブラック(カラーコード:41W)なのですが、もう一色のグレーメタリックについては塗装された色見本のフィンはあるのですが配合データが不明ですので、それに近い色を見本帳から選び、一旦塗装済みのフィンと一緒に送らせて頂きました。

atenza3 そして後日色見本を返送して頂きまして選んで頂いたのがこちらの色となります。ホンダの「ポリッシュドメタルM」(カラーコードNH-737M)となります。お手数を頂き有難う御座いました。

atenza フロントグリル本体はマツダ純正色の「ジェットブラック」(カラーコード41W)をベースカラーとして、先程のフィンと、グリル本体のフィンをそれぞれグレーメタリックで塗り分けます。イメージイラストを作成しましたのでそちらも紹介しますね。

atenza1先程の画像を元に塗り分け位置と注意事項を記載しておきました。実は既にオーナー様にも作成して頂いていたのですが、細かい箇所を把握する為に自分でやっておきたかったんですよね。何にしてもお手数を頂き有難う御座いました!

atenza2フロントグリル最上段に付くこちらのグリルフィンも同じようにグレーメタリックで、艶は全て「艶有り」仕上げで承っています。

尚フロントグリルについては素地がザラザラとした梨地なのでそのまま塗っても艶が引けたような仕上がりになってしまいますから、こちらは今までの施工方法と同様に「2度塗り」で対応します。

それでは作業進行しましたらまた紹介させて頂きますね。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!